必要な人に、必要な制度を。個を充実させる勤務体系/リコージャパン「働き方変革」

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リコージャパン 株式会社(以下、リコージャパン) が実施している「働き方変革」は、どのような取り組みから成り立っているのでしょうか?短期集中連載の第1回は、改革をはじめた背景や進め方のポイント。第2回は、生産性向上にフォーカスした施策を紹介しました。最終回は、育児・介護との両立を支援する勤務体系や、今後の展望について。プロジェクト担当者の加藤茂さんに伺いました。

リコージャパンとは

リコーグループの国内販売会社として、リコー製品やICTソリューションの販売、保守サービスを担当。社員数は約18,500人。全都道府県に支社を置き、全国で354の拠点、401の営業所がある。

勤務も休暇も、ベストなかたちを求められるように

―長時間労働の是正は、働き方改革で欠かせないポイントです。リコージャパンでは、どのような取り組みをしてきましたか。

小規模なトライアルからはじめて、フレキシブルな勤務体系や休暇制度を整えてきました。とくに評判がいいのは「時間単位年休」。1時間単位で年休を消化できる仕組みです。じつは3年前に私が人事グループを担当していた時、制度導入を提案されて、却下したことがあるんですよね(苦笑)。当時は1時間単位の休みなんて要らないと思っていましたが、これがとても役立っているようです。

育児中の社員が午前中だけ子どもの学校行事に出たいとき、午前休ではぎりぎり足りないため、以前は一日休まざるを得ませんでした。でも、午前休に1時間の年休を組み合わせれば、14時からの出社ができるため、問題なく間に合う。そのほか、単身赴任の社員が自宅へ戻るのにも便利です。平日フルに出社していると、自宅で過ごせるのは土日の一泊だけになってしまうけれど、金曜の夜と月曜の朝に時間休をとれば、金土日の3泊が可能になるでしょう。こうした活用で、家族との時間が増えた社員も多いと聞いています。

―ほかにも、休暇をとりやすくする仕組みはありますか?

個人ごとの「計画年休」も好評ですよ。あらかじめ、自分で休暇日を決められるんです。日本人の特徴らしいんですが、これまでは、プライベートの予定で会社を休むことに、少なからずみんなが罪悪感をおぼえていました。でも、計画年休を設定すれば、周りも「その人はその日が休日」と認識してくれる。休む人が増えてきたことで、会社の風土が変わり、諦めていた休暇がとりやすくなってきたと感じています。実際に、有給取得率は前年比108.7%の55%になりました。もっと数を増やして「休暇を取るのは特別なことだ」という文化を、生活に合わせて積極的に使う文化へ変えていきたいですね。

―そのほか、働きやすさをアップするための施策を教えてください。

1ヶ月単位の変形労働制は、仕事の効率を上げつつ、きちんと休める制度です。請け回収や受発注など、繁忙期のある業務の人員に適用されます。忙しい月初や月末は勤務時間を伸ばし、そのぶん余裕のある時期は早く帰ってもらう。また、早朝や夜間に仕事が発生しやすい職種には、始業時刻を前後にずらして、勤務時間が増えないよう調整するシフト制もあります。メリハリのある働き方ができるようになり、総合的には時間外勤務が減っていますね。

そのほか、地元で働き続けたいという社員の意向を受けて、社員が本拠地を登録し、本人の同意がなければ転勤のない勤務制度もつくりました。転勤の不安がなく、地域に根づいて勤務できるため、採用にもいい影響を与えています。もちろん、全国で活躍したいという社員は自己申告制度を通じて、自分の希望を申告することもできます。

育児や介護をしていても、前向きに働ける環境を

―育児や介護をしている社員には、どんなフォローをしていますか?

「両立支援制度」として、育児休業や時短勤務、介護休業のほかにも、バラエティ豊かな制度を用意しています。たとえば、妊娠・出産・介護などで退職をしても、5年以内なら再雇用に対応。配偶者の転勤に帯同する場合は、特別に最長3年間の休職も認めています。社員たちがそれぞれの人生を大切にしながら、長く当社で働いてもらうための環境づくりですね。また、育児介護休職者の昇格基準も見直しました。

―育休などが昇格のネックになった、というのはよく聞く話ですね。どのように基準を見直したのでしょうか。

昇格試験を受けるためには、直前の2年間で、一定以上の評価ポイントを獲得する必要がありました。これまでは休職期間を含んで評価していたため、どんなに優秀な社員でも、復帰後すぐには試験にチャレンジできなかった。そこで、評価と休職の期間が重なる場合は、休職前にさかのぼった評価を適用することにしたんです。上位ステージへの挑戦がしやすくなったため、モチベーションが上がったという声も聞いています。

仕組みが「絵に描いた餅」にならないためのフォローアップ

―さまざまな仕組みがつくられていますが、現場で使われるまでに壁はありませんでしたか? 「制度はあっても使えない」なんて声を、ちまたではよく聞きますが……。

確かに、制度をうまく活用できるかは、職場や上司の風土にかかっていますね。それはよくわかっていたので、2017年からはマネジメント層への働きかけを強化していきました。全80コース/2660名の全マネージャーに対して、制度の説明会や評価者トレーニングを実施したんです。

これまでは新しい制度ができても文書で通達するだけだったので、浸透が不充分でした。たとえばシフト制度などは昔からあったのに、知られていなかった。今回あらためて説明の機会を設けたことで、ぐっと制度が身近になり、活用者が増えています。地域で社員の働き方などについて悩んだとき、直接人事に相談してくれるマネージャーも出てきて、サポート体制も強まりました。

―最後に、働き方変革について今後の展望を聞かせてください。

ひととおりの道具や制度は整ってきたため、これからは、各地域の特性や個人の事情に応じて使いこなしてもらうことが肝要です。本部から制度を考えるフェーズは終わったので、我々プロジェクトチームも、2019年は地域を行脚します。現場を支援しながら、地域や人に合わせたカスタマイズの事例を集める。そしてまた全社に還元していけば、さらに変革が進むと考えています。

それは、社内の話だけではありません。関心のあるお客様にも具体例をシェアすることで、貢献になるはず。(中小企業のお客様の場合、)大企業や外資系企業の事例は参考にしづらくても、多拠点分散型のリコージャパンなら、ちょうどよいのではないでしょうか。今年の4月には「働き方改革関連法」が動き出します。でも働き方は、一朝一夕で変えられるものではありません。だからこそ、できるだけ早く手を打ち始めて、トライアンドエラーを繰り返しながら進めていきたいと考えています。

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