女性活躍推進法改正で企業に求められる取り組みとは?

From: 働き方改革ラボ

2022年09月20日 07:00

この記事に書いてあること

2022年4月に女性活躍推進法が改正され、女性活躍推進に関する情報公表などが中規模企業にも義務化されました。働きやすい職場の実現のために、女性をはじめとした多様な人材の活用が求められる中で、どんなことから始めたら良いか分からないという経営者もいるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、法改正の概要や、女性活躍推進に関する企業の成功事例を含めて、その具体策を解説します。

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法の正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」。女性が仕事で活躍できる社会の実現を目的に、2016年4月に施行されました。

女性の採用・昇進機会の提供や、職業生活と家庭生活の両立を可能にする取り組みなど、女性にとって働きやすい環境の整備を促すため、企業に対し、女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定・届け出、そして女性活躍推進に関する情報の公表を義務付けています。

女性活躍推進法の一般事業主行動計画とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題の分析を行い、それをふまえた改善行動を策定すること。計画期間や数値目標、取り組み内容、取り組みを実施する時期を盛り込む必要があります。

また、女性活躍に関する情報公開については、?女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供、?職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備というテーマで定められた項目の中から1つ以上を選択して、ホームページなどで公開することが義務付けられています

女性活躍推進法については以下で詳しくご紹介しています。

企業事例で知ろう!女性活躍を推進するテレワークの取り組み

SDGs達成にも欠かせない女性活躍推進

国が推進する女性活躍は、SDGsの観点からも重視されています。SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、世界が2030年までに目指す持続可能な開発目標のこと。その5番目の目標に、ジェンダー平等の実現が掲げられています。

その目標とは具体的には、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う」こと。女性に対する暴力や男女間の教育格差をなくすほか、職場での差別的扱いの廃止や男女間の賃金格差の解消、女性のリーダーシップ確保など、職業生活における女性の立場改善が、世界的に求められています。

女性活躍推進法の2022年4月の改正内容

2022年4月1日に女性活躍推進法が改正されました。2022年3月までは、「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届け出」および「女性活躍推進に関する情報公表」は労働者が301人以上の事業主に義務付けられていましたが、2022年4月1日からその対象が101人以上300人規模の企業にも広がりました。

さらに2022年、この法律に関する制度改正も行われました。2022年7月8日から、「女性活躍推進に関する情報公表」の項目に「男女の賃金の差異」が追加され、常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対してこの公表が義務付けられました。

中小企業の女性活躍取り組み事例

働く女性の視点から職場環境を見直すことは、人材確保や、すべての人にとって働きやすい会社を作るために欠かせない取り組みです。そこで、中小企業が具体策を検討する上でヒントとなる、女性活躍の取り組み事例をご紹介します。

職域拡大と私生活との両立支援で女性活躍を推進

東京都に本社を置く大成建設株式会社は、女性活躍を会社の重要課題と位置づけ2007年に人事部内に「女性活躍推進室(現・人材いきいき推進室)」を設置。女性の理系人材自体が少ない中で、女性技術者をアニメ化した広告や、ホームページや就職情報誌に女性社員を積極的に紹介するなどの取り組みで女性の採用を強化。また、トイレや更衣室、女性向けヘルメット・作業着導入などのハード面の整備、また施工管理・事務管理双方への女性の積極的な配置などにより、女性が担う職域の拡大を実現しました。

仕事と育児の両立を長いスパンでサポートする「育児サポートプログラム」、ライフスタイルの変更に応じて働き方を変えられる「キャリア選択制度」といった私生活との両立支援も行い、建設現場で働く女性社員は8年で10倍に、ひとりもいなかった女性営業職が20人に増えるなどの成果があがっています。

時間外労働削減と女性の意欲を引き出す施策で「えるぼし」認定

広島県の調味料メーカー・オタフクソースを含むオタフクホールディングスは、グループとして女性活躍を社会的使命ととらえて推進しています。2005年に育児休業を1歳6ヵ月までに延ばし、時短勤務制度の期間もあわせて延期。再雇用制度を事業所内託児所も設けるなどして、育児をしながら働く社員を支援しています。その後も、女性社員の働く意欲を妨げる要因であった一般職制度の廃止や、パート社員の無期雇用制度などの取り組みで、女性社員の活躍の場を広げています。

2016年に、優れた女性活躍推進の取り組みを行う企業として「えるぼし」の認定を得てからも、時間外労働削減、勤続年数の男女差異縮小、女性管理職割合向上などを目指し、多様な人材が、性別や事情に関わらず活躍できる環境の整備を進めています。

育休・時短のハンデをなくす評価制度で女性のキャリアアップを支援

自動車教習所のコヤマドライビングスクールは、女性副社長が、男女ともに固定的な性別役割意識にとらわれず家庭や職場で活躍することの重要性を発信するなど、女性活躍推進を主導。会社案内やホームページで女性指導員の活躍を伝えているほか、育児による時短勤務中の女性指導員や女性管理職の声を積極的に紹介するなどして、女性の応募・積極採用につなげています。

また、契約社員も利用できる子育て支援制度の拡充、育児休業や時短勤務で昇進が遅れた社員の昇進のスピードアップを促す制度を創設するなどして、性別や私生活の事情にとらわれずに活躍できる職場環境を整備しています。

テレワークやコアレスフレックス制度で働きやすさを改善

愛知県の情報通信業・株式会社キャッチネットワークは、長時間労働の常態化によって子育てと仕事が両立しにくくなっていた労働環境を改善するため、働き方改革を実施。業務効率改善のため、制度変更、経費システムの改善、業務の棚卸し、アウトソーシングなどを行い、社員の労働時間は月平均40時間以上から26.6時間まで減りました。また、テレワークや、コアタイムのない「コアレスフレックス制度」、失効有給休暇を積み立てて利用できる「思いやり休暇」などの制度で、労働環境を改善しています。

また、有給休暇を3日以上含む5連休以上取得すると20,000円を支給するライフ充実手当、1人目の子どもに対して毎月15,000円、1人増えるごとに10,000円が加算される子育て支援手当など、金銭面でも社員の私生活や子育てを支援しています。

女性活躍を妨げる根本原因の長時間労働体制を変革

東京都の情報通信業のSCSK株式会社は、7割の女性社員が30代前半までに離職していることを問題視。育児両立支援制度があるにも関わらず仕事を続けられない原因は長時間労働体質だととらえ、仕事の質を上げるための働き方改革を推進しました。

産休・育休で職場を離れる社員の円滑な職場復帰を促す職場復帰支援プログラムや、出産手前の若手女性向けのキャリア支援プログラムなど、女性の就業継続のための施策を実施。さらに、属人的な業務の排除、チーム単位で効率的な仕事を行うためのマネジメントの徹底、削減した残業代をボーナスとして社員に還元する仕組みなどを導入し、残業削減・有給消化を推進。30代前半までの女性社員の離職率が約7割から約3割へ低減、残業の約25%削減、有給取得日数が約5割増えるなどの成果があがりました。

労働環境改善も実現する女性活躍を進めよう!

女性活躍推進の成功事例からは、長時間労働など働き方の問題が女性活躍を妨げる要因であること、また、性別に関わらずさまざまな事情を持つ人にとって働きやすい環境を整えることが、女性活躍を進めることがわかります。今回の法改正を機に、事例を参考にしながら、自社の制度や業務効率を見直してみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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