企業事例で知ろう!女性活躍を推進するテレワークの取り組み

From: 働き方改革ラボ

2021年04月27日 07:00

この記事に書いてあること

2016年4月に施行された、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)。2020年にはその一部が改正されました。政策としても、企業が働き方改革を行う上でも重要な女性活躍は、どのように進めていけば良いのでしょうか。テレワークが広がる今こそ知っておきたい、女性活躍を推進するテレワーク活用の企業事例をご紹介します。

女性活躍推進法とは?

女性の活躍を進めて社会を活性化させる目的で国が定めたのが、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、通称「女性活躍推進法」です。まずは、女性の働き方を考える上で重要なこの法律について解説します。

女性活躍推進法施行の背景

女性活躍推進法制定の背景には、労働人口の減少と、女性の雇用拡大や管理職登用が進まない日本の現状があります。厚生労働省がまとめた資料「女性活躍推進法について」によると、日本の人口は減少局面を迎えており、2060年には総人口が9000万人を下回ると推計。高齢化も進み、生産人口の割合は50.9%まで落ち込むと予測されています。

また、女性の雇用者のうち、正規職員・従業員の割合は43.4%。正規職員・従業員の数は25~29歳をピークにその後低下し、年齢が上がるにつれて、パート・アルバイトなどの非正規雇用が女性の主な働き方になることがわかっています。また、厚生労働省の資料「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」によると、第一子出産を機に約5割の女性が離職。管理的立場にある女性の割合も2018年のデータで約15%で、割合は少しずつ上昇しているものの、国際社会でも低い水準です。企業が採用する女性の数が少ないことや、管理職候補として育成していないという実態があるほか、出産や育児を理由に離職する、また女性自身が長時間労働の仕事と家庭の両立が困難で活躍を望まないという現状が、女性活躍を妨げています。

女性活躍推進法施行の概要

女性活躍推進法は、女性たちが職業生活において十分に活躍できていないという課題を解消するため、以下の原則に基づき制定されました。

  • 女性に対する採用、昇進などの機会の積極的な提供とその活用、性別による固定的役割分担などを反映した職場慣行が及ぼす影響に対する配慮が行われること。
  • 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備によって、職業生活と家庭生活との円滑で継続的な両立を可能にすること。
  • 女性の職業生活と家庭生活との両立に関して、本人の意思が尊重されること。

法律では次の3つの項目が、企業規模301人以上の大企業には義務として、300人以下の中小企業には努力義務として定められました。

(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

現状把握の必須項目は、女性採用比率、勤続年数男女差、労働時間の状況、女性管理職比率。

(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表

行動計画の必須記載事項は、目標(定量的目標)、取組内容、実施時期、計画期間。

(3)自社の女性の活躍に関する情報の公表

女性の職業選択に資するよう、省令で定める情報から事業主が適切と考えるものを公表する。

また、行動計画の届出を行った企業で、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業には、申請をすることで厚生労働大臣の認定を受けられます。

またその認定マークを商品やサービスに付けて、女性活躍を積極的に進める企業であることを、消費者に伝えることが可能です。

女性活躍推進法の改正内容

女性活躍推進法の一部を改正する法律が2019年5月に成立し、6月に公布。2020年4月から順次施行されました。その改正内容は次のとおりです。

(1)一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

一般事業主行動計画の策定・届出義務と、自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大。

(2)女性活躍に関する情報公表の強化

労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、?職業生活に関する機会の提供に関する実績、?職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績の各区分から1項目以上の公表が必須に。

(3)特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設

女性の活躍推進に関する状況などが優良な事業主への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い、「プラチナえるぼし」認定を創設。

テレワークと女性活躍の関係は?

働く女性に関する課題を解決するために有効な取り組みのひとつが、テレワークです。女性が離職することや、企業での昇進などのチャレンジを避ける理由に、出産や育児が挙げられます。厚生労働省が総務省統計局「労働力調査」の結果をまとめたグラフを見ると、女性労働力率は30代で下がり、30代後半から上がっています。全労働人口のうち、就業者に失業者や就業希望者を加えた人口の割合を指す「潜在的労働力率」から計算すると、希望しつつも就業ができていない女性は237万人にのぼります。女性が、結婚、出産、子育てをする時期を中心に、希望しても企業で働くことができていない人が一定数いることがわかっています。

テレワークは、場所や時間にとらわれずに働けるスタイルです。通勤にかかる時間も仕事に充てることができ、私生活の事情に合わせて働く時間を柔軟に決められるため、子育てや介護などの事情を抱える人も働きやすい制度です。

テレワークの活用によって、女性が出産や育児を理由に離職したり、企業での活躍を制限することなく働くことができます。また、家庭や私生活と仕事を両立したい男性がテレワークを行うことで女性へのサポートもよりしやすくなるため、男女ともに活躍できる環境が実現します。

テレワークの利用で女性活躍を進める企業事例

では実際に、女性が働きやすい環境を実現するため、テレワークをどのように活用すればよいのでしょうか。厚生労働省が発表しているテレワーク活用の好事例集から、テレワークを女性活躍のために役立てている事例をご紹介します。

テレワークの選択肢を増やし女性活躍を推進

都市・地域計画に関する調査やコンサルタント業務を行う株式会社日建設計総合研究所では、多様なテレワークの選択肢の提供によって利用を推進しています。

2012年から裁量労働型社員を対象に在宅勤務制度を導入し、2015年からは標準型社員や契約社員にも対象を拡大。コワーキングスペースの利用や、在宅勤務の終日利用と4時間の半日利用が可能で、社員の状況に応じた形でテレワークを行える環境を整えています。半日利用を導入した2013年からは、テレワークの利用者が4割に達するなど普及が促進。

在宅勤務制度がなかったグループ会社から出向した女性社員が、テレワークを利用して仕事と育児を両立させ、出向元に戻ってから管理職に昇格したという活用事例も生まれました。

自社アプリ活用で在宅勤務をスムーズに実現

アプリケーションの開発・販売を行う株式会社 Phone Appliでは、全社員が在宅勤務制度の対象。事前の準備をすることなく、申請のみでテレワークがスムーズに利用できる環境が整っています。利用できるのは、終日在宅勤務と部分在宅勤務で、部分在宅勤務から終日在宅勤務への変更も可能で柔軟な働き方に対応可能です。

テレワークでの業務には、社内外のコミュニケーションを効率化するために開発したアプリケーションを活用しています。アプリと連携するツールから使い慣れたものを選べるため、在宅でもオフィス勤務時と同様の業務や連絡ができます。

コミュニケーション活性化やツール利用による効率化が進み、在宅勤務時だけでなく社内業務の生産性も向上しています。育児や介護などのライフステージを迎えた社員も活躍できるように制度の改善を重ねた結果、社員満足度も高まりました。

制度の充実で育休からの早期復職を促進

鉄道や不動産事業を行う東京急行電鉄株式会社は、女性活躍に優れた企業を選定する「なでしこ銘柄」に4年連続で選ばれるなど、多様な働き方を支える制度が評価されています。

妊娠・育児・介護者は在宅勤務が可能で、本社従業員は、サテライトオフィスでの勤務が可能です。テレワークのほかにも、勤務時間帯の繰り上げや繰り下げが可能な「スライド勤務制度」や、就業前30分間を業務効率向上時間として免除する「バリュータイム制度」を組み合わせることで、働き方を柔軟に選べます。

テレワーク導入によって育児休業からの早期復職が促進され、男性社員の育休利用も増加。サテライトオフィス勤務制度においても、通勤時間削減や生産性向上という効果が生まれています。

男性管理職のテレワーク利用が女性活躍を推進

コンビニエンスストアチェーン大手の株式会社ローソンでは、小学校3年生までの子どもを持つ社員はテレワークを利用できます。

テレワーク導入当初、社内では在宅勤務は子育て中の女性を救済する制度という認識が持たれていたものの、3人の男性管理職が育児を理由に利用したことで、性別を問わず誰もが利用できる制度という意識が浸透。男性社員の間でも、テレワーク利用が普及しました。在宅勤務中の男性の育児・家事参画が、配偶者である女性の復職や活躍をサポート。年1回、テレワーク利用者へのアンケートで意見収集を行い、手続きの簡素化などテレワークの普及・効率化のための制度改善を行っています。

事例とチェックリストで女性活躍へと踏み出そう

テレワークの活用は、意欲があるにもかかわらず、時間や場所を制限されて機会を失っている女性の雇用や活躍を推進します。育児休業からの早期復職や、子育て中の社員のワークライフバランス実現など、社員満足度を向上する施策としてもテレワークは重要です。

テレワークの導入・活用イメージを持ちにくいという方は、まずは他社の取り組みに触れることで、アイデアを得ることができます。人材不足の解消や働き方改革実現のため、テレワークによる女性活躍を進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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