労働時間の変化で見るウィズコロナ時代の働き方

From: 働き方改革ラボ

2020年10月22日 07:00

この記事に書いてあること

新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言の発令や外出自粛の動きを受けて、テレワークが普及し始めました。企業活動に制限が生まれた一方、新しいサービスが登場したりと、多くの業界で仕事のスタイルが変化してきています。在宅勤務の導入によって時間に余裕ができたという声も聞かれますが、実際、働く人の労働時間はどのように変化したのでしょうか。データから見る労働時間の変化や、ウィズコロナ時代に浮き彫りになった働き方の課題と解決策についても解説します。

コロナの影響で労働時間は変わった?

2019年4月に施行された働き方改革関連法によって時間外労働の上限が定められ、企業の間でも労働時間を削減するための取り組みが進められています。また、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークの普及も、従業員の働く場所や労働時間に大きな影響を与えました。通勤時間や取引先へ訪問するための移動時間がなくなったり、会議の時間が短縮されたりと、仕事中の時間の使い方にも変化が生まれています。では実際に、労働時間や働きやすさはどのように変化したのでしょうか。

時間外労働はコロナ禍に最大30%減少

厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」は、企業の雇用の状況や給与、労働時間の変動を示しています。令和2年6月分の毎月勤労統計調査 によると、2020年4月には、企業で働く人の所定外労働時間は前年比・調査産業平均で18.9%減っています。緊急事態宣言発出後の5月には、所定外労働時間は前年比?30.7%。6月も前年比?23.9%という変化がありました。

時間外労働は、5月に前年比がもっとも落ち込み、6月には前年比が戻りつつあります。緊急事態宣言が解除されてから、テレワークを推奨しつつも出社や対面での仕事の再開に移る動きもあるため、減少幅はこれからさらに減っていくと予想されます。

コロナ禍の時間外労働は業界で違いも

業種全体で見ると時間外労働は減っていますが、一方で、労働時間の増減幅は業種ごとに違いがあります。旅行関連や映画館、美容室などの生活関連サービス等を手がける企業では、6月は所定外労働時間が前年比-47.1%。飲食サービス業等も、6月に前年比-40.7%と大きく落ち込んでいます。新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛や、営業自粛を余儀なくされたなどの原因が、労働時間の減少に関わっていると推測されます。なお、製造業(6月前年比-38.2%)、医療、福祉(-24.5%)、不動産・物品賃貸業(-24.5%)も、減少幅が大きい業種です。

残業が減った会社もある一方で、金融業、保険業は-1.6%、情報通信業は-6.8%と、昨年と比較して大きく変わっていない業種もあります。また反対に、鉱業、採石業等は+16.5%、電気・ガスは+5.9%と、所定外労働時間が増えている業種も。事業の内容によって、労働時間の状況に差があるのが現状です。

コロナ禍の働き方には課題も

新型コロナウイルス感染拡大の影響で所定外労働時間が減少しているというデータを見ると、これまで問題だった長時間労働の実態が見直されている部分もあると言えます。ただその一方で、コロナ禍特有の働き方の課題も浮上しています。

コロナ対応による過労の問題

新型コロナウイルス感染症への対応が必要な保健所や医療機関で働く人に負担が集まっています。医療従事者向けの会員制サイト「m3.com」は、会員向けにコロナ禍の労働時間に関する調査を実施。感染が拡大していた3月下旬から5月のゴールデンウィーク頃までとそれ以前の勤務時間の変化を聞いたところ、指定感染症医療機関で患者対応をした医師の21.3%が、労働時間が増えたと答えました。また、勤務時間が増えたと回答した医師に、感染拡大第一波中のもっとも忙しかった時期の1週間の労働時間を聞くと、5.8%が「100時間以上」と回答。特に指定感染症医療機関で、労働時間に変化があった医師がいることがわかりました。

また、新型コロナウイルス感染症に対応する保健所などで働く自治体の職員にも業務が集中。NHKの調査によると、2020年4月前後に少なくとも1都13県の職員が、月100時間以上の過労死ラインを超える残業を余儀なくされました。残業が月200時間を超えたケースもあり、山口県では266時間、福井県では232時間、千葉県では217時間の残業をする職員もいたことがわかっています。

申告のない残業時間が増加

統計で残業時間の減少が認められる一方で、在宅勤務中に申告をしないで時間外労働をする「隠れ残業」の問題も起きています。労働組合の中央組織である日本労働組合総連合会の調査によると、テレワーク中に、通常の業務より長時間労働になったことがあると回答した人は51.5%。時間外労働や休日労働をしたけれども申告をしていないという人も60%以上となっています。

また、56.4%の人が、時間外・休日労働をしたにも関わらず、勤務先に時間外労働だと認められないことがあったと回答。99人以下の職場のうち23.5%の従業員が、テレワーク中は労働時間の管理をされていないという実態も明らかになりました。在宅勤務は、通勤時間が減るなど作業効率面でのメリットも期待される一方で、表面化しない労働による負担を感じる人がいることもわかっています。

残業時間減による収入減も

労働時間が減ったことによる収入減の問題も発生しています。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2020年6月の所定外給与は前年比?24.6%。日本労働組合総連合会の調査によると、労働者がテレワーク中の残業時間を申告できていない人も多く、時間外労働に対する給与が支払われていない事態が起きていると言えます。同調査では、時間外・休日労働をしても申告しなかった理由として、「申告しづらい雰囲気だから」(26.6%)「時間管理がされていないから」(25.8%)をあげる人が多く、中には「上司に申告をするなと言われたから」(11.7%)という回答も。テレワーク中でも時間外労働に対する給与が正当に支払われる仕組み作りが求められています。

コロナ禍の働き過ぎを防ぐためには?

コロナ禍における働き過ぎを防ぐために、企業はどのような対策を進めるべきなのでしょうか。厚生労働省が発表した「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」は、テレワーク中の長時間労働を防ぐための方法を提示。テレワークなど、新しい働き方を柔軟に取り入れる必要があるコロナ禍において、求められる対策が掲載されています。

ガイドラインでは、テレワーク中の過重労働を防ぐために、使用者は労働時間の適正な把握のための措置を講ずるべきという基本的な考え方を示しています。タイムカード、PCのログ管理等の客観的な記録が可能なツールを用いて、労働者の始業・終業時間を正確に把握する必要があります。

また、テレワークで長時間労働が起こる原因のひとつが、夜間や休日に自宅で確認したメールの指示に対する業務です。仕事を終えた後に発生する業務をなくすために、時間外や休日のメール送付を禁止する、チャットツールのスリープ機能を使って時間外にメッセージを確認しないなどのルール作りが有効です。夜間や休日は社内システムにアクセスできないように制限することで、長時間労働を防ぐことも可能です。

また、テレワーク実施中でも、通常の勤務時と同じように時間外労働を防ぐ取り組みを継続することが大切です。企業が、労働時間削減のためにやるべきことに手をつけられていないケースもあります。下記コラムのチェックリストを参考に、改めて自社の働き方を見直してみましょう。

残業減をきっかけに課題の解決を!

テレワークの普及で、移動時間などのムダが削減できて成果が上がったという声や、仕事の非効率を見直すことができたという声も聞かれます。とはいえ、コロナ禍の働き方の変化はビジネスの制限や営業自粛による影響も大きく、必ずしも働き方改革が良い方向に進んでいるとは言い切れません。まずは、社会情勢が変わる中で、自社で労働時間が増減した理由を把握することが大切。働き方の実態に向き合うことで、テレワーク中の課題や社員のストレスも浮き彫りになるかもしれません。新型コロナウイルス感染症をきっかけに課題が見つかったことをチャンスととらえ、労働時間を正しく把握する仕組みの確保や、評価制度の見直しなど、ウィズコロナの働き方を改善する取り組みを進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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