労働時間と勤務時間の違いは?労働時間の計算方法や具体例まで解説!

From: 働き方改革ラボ

2023年11月09日 07:00

この記事に書いてあること

長時間労働や過労死などの問題によって働き方を見直す動きが活性化しています。労働環境の改善を進めたいけれども、労働時間とは何を指すのか細かく理解できていない人もいるのではないでしょうか。この記事では、労働時間と勤務時間の違いや、労働基準法で定められた休憩時間、残業などについてわかりやすく解説します。働き方改革を進める上での参考にご覧ください。

労働時間・勤務時間とは?

そもそも、労働時間はどのような定義があるのでしょうか。似た用語である勤務時間との違いもあわせて解説していきます。

労働時間・勤務時間の定義

労働時間とは、使用者の指揮命令下で労働者が会社のために働く時間を意味します。一方で勤務時間とは、就業規則で定められた「業務を開始する時間から終了する時間まで」を指します。就業時間と意味は同じです。勤務時間から休憩時間を引いた残りの時間が、労働時間となります。

労働時間には「所定労働時間」と「法定労働時間」がある

労働時間には、「所定労働時間」と「法定労働時間」があります。それぞれの意味を解説します。

所定労働時間とは

所定労働時間とは、会社が設定している労働時間を意味します。法定労働時間内で自由に設定することが可能です。

法定労働時間とは

法定労働時間とは労働基準法で定められている労働時間を意味します。週に40時間、1日8時間以内と決められています。

実労働時間とは

実労働時間は実際に働いた時間を意味します。使用者の指揮命令に従って実際に働く、休憩を除いた時間が実労働時間です。

休憩時間とは

休憩時間は、労働者が業務を離れて休息する時間のことを意味します。休憩時間は会社の拘束時間に含まれますが、会社側は労働者に賃金を支払う必要はありません。

労働基準法では、付与すべき休憩時間を労働時間に応じて定めています。1日の労働時間が6時間までであれば休憩は与えなくて良いとされていますが、6時間以上8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上という下限が定められています。

どんな時間が「労働時間」として認められるのか? 5つのケース

では、次の時間は労働時間に含まれるのでしょうか。具体的なケースごとに説明します。

1.始業前・終業後

朝礼に出席した、片づけを命じられたなどの理由で始業前や終業後に働いた時間は、会社からの指揮命令下において仕事をしていますので、法律上は労働時間にあたります。

2.研修時間

会社が命じる研修の時間は、業務時間にあたるため労働時間に含まれます。ただ、会社からの指示ではなく自主的に参加する研修に要した時間は、労働時間にはあたりません。

3.自発的な残業時間や持ち帰りの残業時間

指示された仕事が終わらない場合や、会社の許容の上での残業は労働時間と見なされます。持ち帰りの残業も会社の指示があれば労働時間に認められる可能性がありますが、自主的な持ち帰り仕事の時間は労働時間にあたりません。

4.仮眠の時間

深夜労働の合間に設けられた仮眠や、業務上必要な仮眠時間も、労働時間とみなされます。休憩中の仮眠は労働時間にはあたりません。

5.有給休暇

有給休暇の時間は、実労働時間ではありませんが、所定労働時間として計算されます。

時間外労働時間(残業時間)とは

残業とは、定められた時間を超えて働く時間外労働のことをいいます。残業時間について定めたものが、時間外労働協定(36協定)です。

時間外労働の上限は、月45時間、年360時間で、臨時的な事情がない限り超えることはできません。36協定で定められた範囲を超えた残業は、労働者は拒否することができます。法定労働時間内の「法定内残業」と、法定労働時間を超える「法定外残業」では、賃金の計算が異なります。

1.法定内残業

法定内残業とは、所定労働時間は超えるものの、法定労働時間内におさまる残業のことをいいます。

たとえば、所定勤務時間が5時間のところを1時間残業したケースは、法定労働時間である8時間を超えないため、この1時間は法定内残業です。この場合、労働者には割増ではない、所定の時間あたりの賃金が支払われます。

2.法定外残業

1日8時間の法定労働時間を超えて働いた場合は、法定外残業とみなされます。所定労働時間が8時間の職場で10時間働いた場合は、2時間が法定外残業時間で、通常の1.25倍の割増賃金が支払われます。なお、22時から朝5時までは深夜労働の割増も発生します。

勤務時間計算の具体例と管理方法

では、勤務時間はどのように計算すれば良いのでしょうか。具体例で解説します。あわせて管理方法についても解説していきます。

1.勤務時間計算の具体例

まず、勤務時間計算の具体例から見ていきましょう。

所定労働時間8時間で10:00〜21:00勤務

はじめに、所定労働時間が8時間で10時から21時まで勤務した場合を解説していきます。

法定労働時間が、休憩時間1時間を挟むと19:00までのケースです。21:00までの2時間は、8時間の法定労働時間を超えているため、1.25倍の割増賃金が支払われる法定外残業となります。

勤務時間 … A+B+C+D=11時間
所定労働時間 … A+C=8時間
休憩時間 … B=1時間
法定外残業時間 … D=2時間(1.25倍の割増賃金)

所定労働時間6時間で10:00〜21:00勤務

始業時間が10:00で、所定労働時間が6時間の人が21時まで勤務した場合、労働時間の計算方法は次のとおりです。なお、12:00~13:00までは休憩時間です。

所定労働時間は17:00まで。17:00以降は残業ですが、19:00までの2時間は8時間の法定労働時間内のため法定内残業です。19:00~21:00の2時間は法定労働時間を超えているため、1.25倍の割増賃金が支払われる法定外残業となります。

勤務時間 … A+B+C+D+E=11時間
所定労働時間 … A+C=6時間
休憩時間 … B=1時間
法定内残業時間 … D=2時間
法定外残業時間 … E=2時間(1.25倍の割増賃金)

2.勤務時間の管理方法

解説したように、所定の労働時間によって勤務時間の計算方法が異なります。休憩時間や時間外労働時間を適切に管理するためにも、さまざまな勤務形態の従業員がいる場合はとくに、勤務時間を把握する必要があります。

では、具体的にどのように勤務時間を管理していけばいいのでしょうか。勤務時間の管理方法を3つご紹介していきます。

1.表計算ソフト

1つ目の管理方法が、表計算ソフトです。無料のテンプレートも数多く用意されており、パソコンを使い勤怠管理を行うため、コストがかからない、気軽に導入しやすいなどのメリットがあります。しかし一方で、共有できない端末の場合は入力ができずテレワークに適していない、手作業のためミスや不正申告が考えられる、などのデメリットがあります。

2.タイムカード

2つ目の管理方法が、タイムカードです。タイムカードは不正申告をできないこと、タイムカードを差し込むだけでできるので世代問わず理解しやすいことなどのメリットがありますが、機械を設置するためテレワークには適していない、代理打刻ができてしまうなどのデメリットがあります。

3.勤怠管理システム

3つ目の管理方法が、近年導入が増えている勤怠管理システムです。指紋などの生体認証によって本人確認ができる、スマートフォンなどの端末で入力でき、テレワークにも対応できるなどのメリットがあります。しかし、システムの導入にコストがかかること、導入した際に従業員への周知が必要などのデメリットがあります。

働き方の多様化! 変形労働時間制・みなし労働時間制とは?

変形労働時間制や、みなし時間労働制といった働き方についてもポイントを押さえておきましょう。

1.変形労働時間制

変形労働時間制とは、使用者が、特定の日や週のみ法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。繁忙期や閑散期がはっきりしている会社で主に導入されています。変形労働時間制は、次の4つのタイプに分類されます。

1.1週間単位

1週間の労働時間が40時間以内であれば、1日10時間を上限に従業員を働かせることが可能な制度です。労働者が30人未満の小売業、旅館、料理、飲食店のみ導入が可能です。

2.1ヶ月単位

1ヶ月以内で、1週間あたりの労働時間が平均40時間以内であれば、労働時間が1日8時間、週40時間を超えても時間外労働とみなされません。

3.1年単位

1ヶ月以上1年以内の期間内において、1週間の労働時間が平均40時間であれば、特定の週や日に所定労働時間を超えても時間外労働とはなりません。

4.フレックスタイム

労使協定で定めた働く総労働時間の範囲内で、働く人が、日々の出勤時間や退勤時間、労働時間を自由に決めることができる制度です。

どのケースにおいても、期間を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないように調整することが必要です。

2.みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、従業員が実際に働いた労働時間ではなく、あらかじめ定めておいた時間分の労働をしたとみなす制度です。次の3つに分類されます。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制は、働く人の業務が、事業場(会社)以外で行われるなど、会社側からの労働時間の把握が難しいケースで、あらかじめ定めた労働時間分働いたとみなす制度です。1日単位でみなし労働時間を定めることが法律で義務付けられています。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、仕事の性質上、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある職種が対象となる制度です。デザイナーや編集者、研究開発やシステムコンサルタント、弁護士、税理士など、専門性の高い仕事を行う19の業務を行う労働者と使用者との間で、みなし労働時間を含めた取り決めが必要です。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、会社の中核を担う部門での仕事に携わる従業員を対象とした制度です。企業の経営に大きな影響を及ぼす決定が行われる本社などにおいて、経営や事業運営についての企画立案、調査、分析に携わる労働者との間で、みなし労働時間を定めます。

テレワーク勤務の課題やポイント

新型コロナウイルスの影響などにより近年取り入れる企業が増えているのが、テレワークです。先述したように、タイムカードや表計算ソフトによる出勤管理には限界があります。

そこで最後に、この章ではテレワークにはどのような課題があるか、テレワークの勤務時間の管理方法についてポイントを解説していきます。

1.テレワークの2つの課題

まず、テレワークの持つ課題から見ていきましょう。

1.勤務時間を管理しづらい

1つ目の課題が、勤務時間を管理しづらいことです。必ずオフィスに出勤する業種であれば、上司や同僚が、ほかの誰が出勤しているのか確認できますし、打刻もスムーズです。しかし、テレワークは自宅やサテライトオフィスでの勤務のため、誰が、いつ、どのくらい働いているのかがわかりません。そのため、オンラインで朝礼時間を設ける、コミュニケーションツールの活用などオンラインによるコミュニケーションを積極的にとることが大切です。

2.人事評価に影響がある可能性が高い

2つ目の課題が、人事評価に影響がある可能性が高いことです。オフィスであれば、誰がどのような姿勢で業務に臨んでいるかひと目でわかります。しかし、テレワークの場合は成果しかみえないため、成果重視の評価に偏ってしまう可能性が高いです。

また、判断材料が少ないからといって勤務時間の長さなどの数値的な視点で見てしまうと、従業員の過重労働につながってしまうことも考えられるため、テレワークならではの人事評価を考えることをおすすめします。

3.テレワークの勤務時間管理の2つのポイント

次に、テレワークの勤務時間を管理するためのポイントを2つ解説します。

1.ツールを活用し、勤務時間を報告してもらう

1つ目のポイントは、ツールを活用し、勤務時間を報告してもらうことです。これは勤怠管理システムのほか、チャットなどでやり取りができるコミュニケーションツールが挙げられます。複数のツールを活用することで何かトラブルがあったときにも備えることができるため、慣れるまでは勤怠管理システムとコミュニケーションツールでの出勤コメントなど、複数のツールを使い分けることがおすすめです。

2.オンラインによるコミュニケーションを増やす

2つ目のポイントが、オンラインによるコミュニケーションを増やすことです。1つ目のポイントで挙げたような、ただ打刻をしたり報告したりするだけでは実際に業務にあたっているかわからないため、定期的に連絡をとる、オンラインでのミーティングを入れるなど工夫をするといいでしょう。

まとめ

今回の記事では、労働時間と勤務時間の違いや、勤務時間の計算や管理方法を解説しました。近年導入が増えているテレワークでは従来のやり方が通用しないケースも考えられます。時代に合わせて価値観をアップデートしながら、適切な労働時間の管理や人事評価ができるように意識しましょう。

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記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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