今流行りのワーケーション制度とは?メリット・デメリットと導入ステップを解説
2023年11月21日 07:00
この記事に書いてあること
働き方改革の一環として以前から話題となっていたワーケーションが、コロナ禍を経てさらに注目を集めています。ワーケーションは休暇と仕事を組み合わせた概念とは知っていても、具体的な導入イメージが湧かずに、自社には縁のない制度だと思っている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、ワーケーションの考え方やメリット・デメリットを改めておさらいした上で、導入を検討する際に必要な準備について解説。ワーケーションを運用する上でのポイントもお伝えします。
ワーケーションとは?|提唱された背景など
はじめに、ワーケーションの定義と、ワーケーションが提唱された背景を解説します。
ワーケーションの定義
ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、国内外のリゾート地や帰省先、地方など、通常とは異なる場所で、休暇を楽しみつつ仕事をするという新しい働き方です。
テレワークは、オフィスに出社するのではなく、自宅やサテライトオフィスで業務する事を指します。
一方、ワーケーションはオフィスではなく帰省先や旅行先などで仕事をしますので、仕事の仕方としてはテレワークの一面もありますが、大きく異なるのは仕事と休暇と組み合わせた働き方を行う点が大きく異なります。
例えば、部署やチームでリゾート地へ行き、仕事をしながらメンバーとの旅行を楽しむスタイルもワーケーションのひとつの形です。
ワーケーションが提唱された背景
ワーケーションは、アメリカで生まれたと言われています。日本においては、働き方改革や、新型コロナウイルスの影響によりテレワークの環境が整ったことにより、ワーケーションが提唱されるようになりました。
ワーケーションの種類・類型
ワーケーションには大きく分けて「体験型」と「業務型」があり、それぞれ特徴が異なります。ワーケーションにはどのような種類があるかを知り、自身の企業に合うのはどれか、考えるといいでしょう。
1.体験型
体験型は「福利厚生型」ともよばれ、従業員が有給休暇を取得し、テレワークを行いながらリゾートや観光地でのアクティビティを体験します。リフレッシュを中心にワーケーションを進めたい場合におすすめです。
2.業務型
業務型は、体験型と比べて仕事の割合が多くなります。業務の一環としてワーケーションを行うため、従業員が有給休暇を取得する必要がない場合もあります。業務型は、さらに3つに分かれます。
1.地域課題解決型
ひとつ目が、地域課題解決型です。地域の持つ課題をどうしたら解決に導けるのか、自治体など地域の関係者との交流を通してともに考えるワーケーションになります。地域との交流を深めたいと考えている場合にぴったりといえるでしょう。
2.合宿型
ふたつ目が、合宿型です。これは社員旅行に近いワーケーションで、普段のオフィスと場所を変えることで気分を切り替えながら、職場のメンバーと自社の課題やプロジェクトに関する議論を交わします。集中して取り組みたい業務がある際に最適です。
3.サテライトオフィス型
最後に、サテライトオフィス型です。これは地方にあるサテライトオフィスやシェアオフィスで勤務をするワーケーションです。インターネット環境が整っていることも多く、業務を中心に進めたい場合におすすめします。
企業視点のワーケーションのメリットとデメリット
それでは、ワーケーションにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。企業視点・従業員視点・自治体視点の3つの視点からメリットとデメリットを解説していきます。まずは企業視点のメリットとデメリットを見ていきましょう。
企業視点のワーケーションのメリット
はじめに、企業視点によるワーケーションのメリットを2つ解説します。
1.有給取得など働き方改革につながる
ひとつ目が、従業員に有給取得を促すことができ、働き方改革につながることです。
2018年6月に成立した「働き方改革法案」によって、長時間労働の是正や年次有給休暇(有給)取得の促進など、働き方のさまざまな見直しが行われています。その一環として、労働基準法の改正が行われ、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年に最低でも5日間の有給を取得させることが企業側に義務づけられています。
しかし、なかには有給休暇を取りづらいと考える社員もおり、自発的な取得を促すのみでは対策が足りないこともあるでしょう。そこでワーケーションを導入することで、休暇が取りやすい環境となり、働き方改革につなげることができます。
2.従業員の生産性向上に効果がある
2つ目が、従業員の生産性向上に効果があることです。普段働いているオフィスとは違う環境で仕事をすることで気分の切り替えができ、結果、仕事の生産性が向上すると考えられます。
企業視点のワーケーションのデメリット
続いて、企業視点によるワーケーションのデメリットを見ていきましょう。
1.従業員の勤怠管理が複雑化する
1つ目が、従業員の勤怠管理が複雑化することです。企業や部署全体でワーケーションを行う際には管理がしやすいですが、個人に委ねる場合、どの時間帯で業務を行い、どの時間帯からプライベートの時間か、管理しづらくなります。
そのため、あらかじめ勤怠管理システムを導入する、都度報告をするように依頼するなどの方法を検討するといいでしょう。
2.人事評価をしづらくなる
2つ目が、人事評価をしづらくなることです。企業側が目に見える姿だけを評価してしまうと、ワーケーションを選択している人が不利になってしまいます。
そのため、ワーケーション導入にあたって、業務時間を基準にするのか、業務内容を基準にするのか、オフィスにいる従業員とワーケーションをしている従業員とでどのような評価軸を持つのかなど、人事評価についてあらかじめ決めておくといいでしょう。
3.環境整備にコストがかかる
3つ目が、ワーケーション導入のための環境整備にコストがかかることです。
ワーケーションではオフィス外で業務をすることになるため、ネットワーク環境やオンラインチャットツールなどの導入が必要になります。それらをすでに運用している場合には初期費用はあまりかかりませんが、システムや機材の導入からはじめようとするとコストがかかるため、どのくらいの費用がかかるのか、事前に洗い出すといいでしょう。
従業員視点のワーケーションのメリットとデメリット
続いて、従業員視点によるワーケーションのメリットとデメリットを解説します。
従業員視点のワーケーションのメリット
まず、従業員視点によるワーケーションのメリットです。
長期休暇が取得しやすくなる
従業員のメリットは長期休暇が取得しやすくなることです。定例会議などがあり長期の休みをとれないなどの場合でも、ワーケーションであれば旅行先からその日だけ仕事をすることも可能です。日頃の疲れを癒したり、リフレッシュした状態で業務に臨んだりすることができるようになります。
従業員視点のワーケーションのデメリット
一方で、従業員視点によるワーケーションのデメリットもあります。
自己管理が必要になる
業務をする上では当たり前のことですが、自己管理が必要になることです。誰の監視下にも置かれず、業務を遂行するためには、自分を律する力が求められます。もし自己管理に不安がある方は、タスクで業務を決める、決まった時間にチャットツールなどに進捗を報告するなどの方法をとるといいでしょう。
自治体視点のワーケーションのメリットとデメリット
最後に、自治体視点によるワーケーションのメリットとデメリットを解説していきます。
自治体視点のワーケーションのメリット
まず、自治体視点のワーケーションのメリットです。
1.地域活性化に効果がある
ひとつ目が、地域活性化に効果があることです。ワーケーションの導入によって、自治体外からの人口流入が増え、地域活性化につながるでしょう。また、観光や食事などで経済効果も考えられます。ワーケーションが定着すれば、単なる旅行よりも密度の濃い関係性を築くこともできるかもしれません。
2.企業のつながりができる
ふたつ目が、企業のつながりができることです。地域課題解決型ワーケーションでは長期間滞在することも考えられるため、自治体と企業によるつながりが強くなることがあります。なかには自治体と連携して拠点を増やす企業もあり、長い付き合いになることも期待できるでしょう。
自治体視点のワーケーションのデメリット
続いて、自治体視点によるワーケーションのデメリットを見ていきましょう。
1.維持費がかかる
ひとつ目が、維持費がかかることです。自治体がワーケーションを誘致するにあたり、業務を行うサテライトオフィスなどの設備やネットワーク環境などを整備する場合があります。その場合、整備した設備や環境を維持するのは自治体であり、一定の負担がかかります。もしワーケーション誘致がうまくいかなかった場合、設備や環境設置に対する維持費が継続的に残り続ける可能性があるので、注意が必要です。
2.地域の人に理解してもらう必要がある
ふたつ目が、地域の人に理解してもらう必要があることです。もちろん場合によりますが、なかには地域外から来た人を快く思わない人もいるでしょう。さらに、ワーケーションでは一定の期間滞在する可能性も高いため、滞在者との良好な関係性構築についても考えなければなりません。企業と連携するなど、協力的な姿勢を見せていくことが大切といえます。
ワーケーション導入に必要な準備とは
日本においても、働き方改革や社員の満足度向上のために企業がワーケーションを採用し始めています。しかし、休暇と仕事を組み合わせた働き方を認めるには、まだ準備が足りないと感じる方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために、この章では導入に必要なステップを解説します。なお今回は、社員それぞれが取得した休暇の間に仕事をするケースについてお伝えします。
1.ワーケーションの導入範囲の設定
まずは、業務や部署、役職など、ワーケーションの導入範囲を決定しましょう。取得が可能な時期についても検討が必要です。
ワーケーションに適した業務は、テレワークでも行えるデスクワークです。最初はチャットやWEB会議ツールを使って、リモートでもスムーズにコミュニケーションがとれる業務や部署を対象とするとスムーズです。
取得可能な時期は、まずは夏季休暇の期間や閑散期のみとするなどして、徐々に期間をひろげていくようにするといいでしょう。
2.テレワーク環境の準備
ふたつ目がテレワーク環境の準備です。ワーケーションをするには、前提としてインターネット環境が整っており、遠隔でのコミュニケーションをとれることが必要となります。Web会議ツールやチャットツール・勤怠管理ツールなどテレワーク環境を整えるには導入コストがかかりますし、使いこなせるようになるまでにはある程度の期間もかかりますので、計画的に進めていきましょう。
3.就業規則の変更
続いて、ワーケーション中の業務に関する就業規則を整えましょう。ワーケーションで行える業務の範囲や、1日、半日、時間といった取得の単位、ワーケーション中の禁止行為などの基本ルールの整備は必須です。
また、ワーケーションを許可制にする場合の申請・決済方法や、ワーケーション中の承認フロー、発生した経費の負担についても定めましょう。就業規則を作成したら、全社員に周知します。必要に応じて、就業規則の説明会を実施することも検討しましょう。
4.労働時間管理体制を確立
ワーケーションを利用する社員の意識付けや社員間の公平性を保つ観点からも、ワーケーション中の実労働時間の正確な把握も必須です。ワーケーション中でも、既定の就業時間をフルに仕事した場合は出勤となりますが、1日のうち一部の就業時間のみ仕事をした場合は、時間単位での有給休暇としてカウントする必要があります。パソコンのログ、もしくは出退勤の報告ルールを使って、労働時間を記録できる体制を確立しましょう。
5.情報セキュリティの強化
最後に欠かせないのが、ワーケーション中の情報セキュリティ対策の強化です。
会社のモバイル端末の遠方への持ち出しには、紛失や盗難、破損などのリスクがあります。ワーケーション中の端末や利用可能なネットワーク、また資料の持ち出しについてルールを整備するほか、万が一の事態に備えてセキュリティソフト導入等の対策を行いましょう。
ワーケーション運用上のポイント
ワーケーション導入のための準備を整えたら、運用する上でのポイントも押さえておきましょう。
1.私的な時間と仕事の区別をつけられる運用体制
ひとつ目が、私的な時間と仕事の区別をつけられる運用体制の構築です。
ワーケーションは仕事の予定をはさみながらまとまった休みがとれる一方で、休暇中に私的な時間と仕事の時間を切り替えるのが難しいという課題もあります。
休みに仕事を持ち込むという事態に陥らないように、予定していた会議などの業務のみに限定する、休暇中は新しい仕事を与えないといったルールを設けて、オンとオフの区別をつけられる運用体制を確立しましょう。
また、業務予定をあらかじめ決めてから休暇を取得する、長時間労働を防ぐために上司への業務報告を徹底するなど、仕事をしながらも確実にリフレッシュをするためのルール整備も合わせて必要です。
2.安全衛生面の注意喚起を
ふたつ目に、ワーケーション中の社員の安全面も意識しましょう。
旅行中やリゾート地での事故による怪我などは、業務上の災害であれば労災保険の対象となりますが、休暇として過ごしている間に発生したものは対象外です。
プライベートな時間で、思わず気が緩んでしまうこともあります。怪我をした場合の治療費の負担額にも関わりますので、ワーケーション中の怪我や病気に関しては、社員に対して必ず注意を促しましょう。
まとめ
休みと仕事を柔軟に組み合わせることで、多様な働き方を可能にするワーケーション。長期休暇の取得推進も目的のひとつですが、休暇に終わらなかった仕事を持ち込むという考え方では、ワーケーション導入は成功しません。ワーケーションを運用できるルールだけでなく、休み中の仕事の予定をしっかり立てた上でワーケーションが行える体制作りも大切です。
社員の選択肢を増やして仕事への満足度を上げるためにも、ワーケーション導入に向けた適切な準備を進めましょう。
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記事執筆
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