海外企業のユニークな福利厚生を紹介! 労働環境から見る多様な働き方

From: 働き方改革ラボ

2023年03月14日 07:00

この記事に書いてあること

コロナ禍で一時中断されていた海外渡航が解禁されたことで、海外企業での就職や移住を試みる方はこれから増加すると考えられます。

海外企業においても「福利厚生」は求職者が会社を選ぶうえで重視するポイントのひとつといえます。また、多くの海外企業が、従業員に満足度を高く保ちながら働いてもらうためにさまざまな福利厚生を設定し、その充実をはかっているでしょう。

今回は海外企業をはじめとした珍しいユニークな福利厚生を紹介していきます。あわせて日本企業の事例など手厚い福利厚生を用意したい方へのヒントもご紹介するので、ぜひご活用ください。

※2019年11月に公開した記事を更新しました

海外で働く日本人は増えている? 現状を解説

そもそも、海外で働く日本人はどのくらい増えているのでしょうか。新型コロナウイルスの影響を経てどのように変わっているのか、現状を解説していきます。

コロナ禍における海外在留邦人数の変化

まず、海外在留邦人数の変化について見ていきましょう。海外在留邦人数とは、3ヶ月以上の長期間海外で生活しているものの、いずれ帰国する予定の「長期滞在者」と、永住権を持っている「永住者」の合計数のことをいいます。

2022年10月1日に外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」によると、年を追うごとに人数は増えていましたが、新型コロナウイルスが流行した令和2年(2020年)にはおよそ5万人減りました。

しかしグラフをよく見ると、永住者はコロナ禍においても影響を受けず、むしろ上昇傾向にあることがわかります。また長期滞在者に関しても、令和2年を機に減少してはいますが、海外渡航が解禁された現在、これから増えていくことが考えられるでしょう。

海外在留邦人の数

福利厚生先進国!? アメリカの労働環境

福利厚生先進国!? アメリカの労働環境

海外で働く日本人が増えることが考えられる一方で、海外企業と日本企業では具体的にどのような違いがあるのか、わからない方も多いかもしれません。そこでこの章では、アメリカの労働環境について解説します。

アメリカ企業の特徴

まずはアメリカ企業の特徴から見ていきましょう。

1. 実力主義で仕事にシビアである

アメリカ企業の1つ目の特徴として、実力主義で仕事にシビアであることが挙げられます。

個人でスキルを上げていくことが前提のため、実力がなければすぐに解雇されることもあります。日本においては解雇に対する規定が設けられていますが、アメリカにはそういった決まりがないため、即日解雇されることも考えられるのです。このことから、アメリカは実力に対して非常にシビアである国だということがわかります。

2. 転職文化が浸透している

アメリカ企業の2つ目の特徴として、転職文化が浸透していることが挙げられます。日本では「仕事は人生の一部」と考える人が多い一方で、アメリカでは「仕事は人生を豊かにするための手段」という考えが浸透しています。

アメリカでは自身のライフ・ワーク・バランスを重視し、スキルアップや理想を追い求めて転職を繰り返す人が多くおり、また会社がそれを容認していることも、アメリカ企業の特徴といえるでしょう。

アメリカの福利厚生の3つのポイント

続いて、アメリカの福利厚生を知る上で押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

1. 退職金制度がない分、民間の年金プランが充実している

1つ目のポイントが、退職金制度がない分、民間の年金プランが充実していることです。

退職金制度がないアメリカでは、その代わりとして、民間の年金プランに加入するのが一般的で、企業が給料から積立金を天引きし、福利厚生の一環として運用することが多いそうです。

また、自社株の購入権を付与する企業が多いのもアメリカ企業の特徴といえるでしょう。同国では、資産運用の方法として株式投資が身近に行われていることが影響していると考えられます。

2. 日本のような健康保険制度がない

2つ目のポイントが、日本のような健康保険制度がないことです。

従来のアメリカでは、日本国民が入っているような公的医療保険制度は高齢者と障がい者、低所得者のみが対象となっていました。また、アメリカの民間の医療保険は高額で、医療に対するケアが遅れていたと言われています。

そこで、2020年度にはカリフォルニア州にて医療保険加入を義務化する法律が施行されました。国民が医療を受診しやすいように整えられつつあります。とはいえ、州によっては健康保険制度が整っていなかったり、仕組みが異なったりするため、注意しましょう。

アメリカの福利厚生事例5選

アメリカの福利厚生事例5選

続いて、アメリカの企業の福利厚生に関する事例を5つご紹介します。

1. 社員の家族にも手厚い|Google

福利厚生が手厚い企業としてまずご紹介したいのが、Googleです。アメリカの大手IT企業である同社では、その充実した福利厚生が優秀な人材の獲得に大いに役立っているそう。たとえば、オフィスでの食事を無料で提供しているほか、社内にはジムやスポーツ施設を設置されており、従業員が無料で利用できることがよく知られています。

ほかにも、Teck Stopと呼ばれる社内技術サポートが用意され、社員のハードウェアやソフトウェアの問題をサポートしており、長い労働時間の中でも社員がストレスなく働けるよう、あらゆる配慮が行き届いているそうです。

また、社員が亡くなってしまった際には、配偶者またはパートナーに給料の半額を死後10年間支給するといった手厚い支援制度も設けています。

2. 社内独自の通貨がユニーク|Zappos

続いてご紹介するのが、アメリカ、ラスベガスを拠点とする靴の通販会社で、現在はAmazon傘下に入っているZapposです。Zappos は2011年には米ビジネス誌「Fortune」が発表した「最も働きがいのある企業100社」で6位にランクインし、そのユニークな企業文化に注目が集まっています。

「いかに社員が幸せに働けるか」を大切に考えている同社では、福利厚生も充実しています。なかでも、社員の医療費を100%企業側が負担するという制度は、「最も働きがいのある企業」に選ばれた企業の中でも数少ない、手厚い福利厚生だそうです。

また、Zappos独自の社内通貨「Zollars」もユニークな制度のひとつ。社員は毎月、同僚に50ドル分のボーナスを付与できる権利を持ち、企業文化に沿った良い行動をとった社員に対し、この Zollarsを送ります。貯めたZollarsの額によって、マグカップやPC用キーボード、リュックなどのさまざまなアイテムと交換できるそうです。社内のコミュニケーションを活性化させるための仕組みも整っていると考えられます。

3. 健康マネジメントで負担軽減|Chevron

続いて、アメリカ、カリフォルニア州に本社を置く石油関連企業・Chevronについて見ていきましょう。

ガスやオイルの会社というのは、その業種の性質上メディアに誹謗中傷を受けやすく、ストレスが多いといわれています。そこで同社は、福利厚生として「Healthy Heart Program」を実施。社員それぞれにヘルスコーチをつけて、健康のマネジメントを行っています。健康のマネジメントを行うことで社員の負担を軽減し、働きやすさを追求していると考えられます。

4. 従業員が日中にサーフィンしてもOK|Patagonia

アメリカ、カリフォルニア州に本社を置くアウトドア衣類メーカーであるPatagoniaは、山や自然を愛する顧客にむけた商品を展開しており、社員自身も健康でアクティブであることを大いに推奨しています。

たとえば社員が日中にサーフィンに出かけることも社内文化として受け入れており、受付スタッフは毎日、サーフィンの気象条件を発表しているそう。社員のリフレッシュにつながる、ユニークな福利厚生といえるでしょう。

5. 4週間の有給休暇が与えられる|Epic

最後にご紹介するのは、アメリカ、ウィスコンシン州にある医療テック企業Epicです。同社では、社員に入社後5年ごとに4週間の有給休暇の資格が与えられるという制度「サバティカル・プログラム」を用意しています。

この休暇を利用して、社員が今まで行ったことのない国へ旅行する場合は、社員と同伴者の交通費や滞在費をなんと会社が負担してくれます。新たな世界に積極的に飛び込み、視野を広げることの大切さを福利厚生の制度によって後押ししているのです。

海外のユニークな福利厚生3つ

海外のユニークな福利厚生3つ

これまで、アメリカ企業を中心にご紹介してきましたが、他にもユニークな福利厚生のある国がたくさんあります。そこでこの章では、フランス、ドイツ、インドネシアの福利厚生を解説していきます。

フランスの「チケ・レストラン」と昼食補助

1つ目の福利厚生が、フランスの「チケ・レストラン」と昼食補助です。

フランスでは「チケ・レストラン」という金券制度が普及しています。この金券は、従業員の就業日数によって支給される枚数が決定され、額面の半分は会社が負担し、残りの半分が給料から天引きされる仕組みで成り立っている福利厚生です。日本国内でも注目を集め、およそ2,000社もの企業が導入しているとされています(2021年時点)。

金券は、就業日数に応じて枚数が変わるとされており、金額には上限がありません。フランスでの平均額は7.70ユーロ(日本円でおよそ約1,000円)で、従業員はその半額程度のみで食事ができます。フランス国内にはチケ・レストランを利用できる店が多く、とくにランチ時に利用する人が多いようです。

また、フランスの法定年次有給休暇の最低日数は年間25日ですが、「週35時間労働制」によって35時間を越したら休暇がもらえるという仕組みもあります。さらに、労働契約の種類によっては年9~12日の有給休暇を追加取得できるそうです。

ドイツの「クリスマス手当」

2つ目が、ドイツの「クリスマス手当」です。

ドイツでは「クリスマス手当」という、多くの企業で採用されている福利厚生制度があります。ドイツのボーナスに当たる手当で、給料のおよそ1か月分の額が支給されます。この季節に福利厚生が設定されているのは、キリスト教の国ならではといえるかもしれません。

ただし、すべての人に適用されるものではなく、日本でいう「正社員」にあたる人が対象とされているそうです。2019年にStatistaに掲載されたデータによると、ドイツの労働者のうち86.9%がクリスマス手当をもらっていることがわかりました。

インドネシアの「レバラン手当」

3つ目が、インドネシアの「レバラン手当」です。インドネシアでは、イスラム教に関連した手当が法律で義務付けられています。

ラマダン(断食月)明けの大祭であるレバランの際に支給される「レバラン手当」は、レバラン休暇に入る前に、基本給1ヶ月分程度のボーナスが支給されるというものです。支給額は勤続年数によって変わるとされています。

レバラン手当はTHR(宗教大祭手当)のひとつで、「Tunjangan Hari Raya」の略称です。

イスラム教徒に関連した手当となりますが、仏教やキリスト教に信仰のある人も対象となるほか、国籍も問いません。ただし、本社からの駐在派遣の場合は例外とされています。

海外の福利厚生にも負けない! 日本の人気企業の事例

独創的な海外の福利厚生を取り入れるのも大切ですが、まずは身近な企業の事例を参考にするといいでしょう。そこで最後に、海外の福利厚生にも負けていない、日本の企業の福利厚生を解説していきます。

女性活躍促進制度も|株式会社サイバーエージェント

1社目が、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業を手掛けている株式会社サイバーエージェントです。サイバーエージェントは、「挑戦と安心はセット」という考えを大切にしており、福利厚生にも力を入れています。

なかでも「女性活躍促進制度 macalonパッケージ」という独自制度が新しく、月に1回の女性特有の体調不良の際に「エフ休」をはじめ、女性の活躍につながる福利厚生が充実しています。「エフ休」はいわゆる「生理休暇」にあたりますが、Femaleの「F」をとって「エフ休」と呼ぶことで、取得理由を言いづらいと感じる社員にも考慮されています。

多様な働き方を選択可能|サイボウズ株式会社

2社目が、ソフトウェア開発会社のサイボウズ株式会社です。「100人いたら100通りの働き方」があって良いという考え方を持っている同社は、ワークスタイルの変革に定評があります。

働き方改革が取り入れられるよりも前の2007年にはすでに自らのライフスタイルや副(複)業などの実現に力を入れてきましたが、2018年には「働き方宣言制度」を施行。一人ひとりが「自身の働き方」を自由に記述する形で宣言することで、周囲に意思表示をでき、かつ、実行しやすい環境を整えています。

まとめ

今回の記事では、アメリカ企業をはじめとしたユニークな福利厚生を解説しました。一見日本の企業文化には根付きにくそうな海外の事例も、自社の特色やポリシー、制度などを顧みて、親和性の高いものからその実現の可能性を探ってみても良いかもしれません。

従業員一人ひとりが生き生きと働くために、自社らしさを活かせる福利厚生の制度を今一度考えてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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