凸版印刷株式会社 生産性向上を軸に考える新しい働き方(前編)

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新しい働き方を進めている企業の担当者に、導入までの道のりや成果についてお聞きするシリーズ『新しい働き方へ』

今回のテーマは新しい働き方における「生産性向上」。残業時間削減にしても、リモートワークなどの新たな勤務形態しても「生産性向上」というキーワードを欠かすことはありません。そんな中2020年10月よりニューノーマルな働き方の実現に向けて在宅勤務/サテライトオフィス勤務/モバイル勤務の 3つの勤務形態を包括した新たな勤務制度の導入や、一部の勤務制度に従来設定していたコアタイムを廃止などの取り組みを実施した凸版印刷株式会社。生産性向上という観点でこれからの勤務場所と勤務体制のスタイルを見ていくために、今回は人事労政本部労政部部長の奥村英雄氏にお話を伺います。

テレワークトライアルの実施と効果測定のアンケート結果について

―オフィスの話の前に、その土壌となるテレワークについて伺いたいと思います。まず、テレワークのトライアルを複数回実施してきたとのことですが、トライアルの経緯・回数・期間・対象職種について教えていただけますでしょうか?

「働きがい推進委員会」という組合との意見公開の場でテレワークの話が浮上し始めたのと、2019年の夏に政府、東京都がテレワークデイズを実施したので、そこに合わせて第1回のテレワークトライアルを行いました。第1回は首都圏の事業所を中心に、強制ではなく手を挙げた職場を対象としました。第2回は2019年の冬に、全国の事業所に拡げ、任意にて実施しました。第3回は2020年3月に実施する予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で急遽、全従業員を対象に在宅勤務を適用する緊急トライアルを実施しました。

―トライアルの度に効果検証としてアンケートを実施したとのことですが、それぞれのアンケートの狙いを教えてください。

第1回のトライアルはエリアを都内近郊に絞り、テレワークがどんなものなのか、効果があるのかなど、”お試し”という意味合いが強かったので、トライアルの事前と事後にアンケートを取り、生産性の向上を感じたかどうかや、テレワークの望ましい回数はどのくらいなのかなど、テレワークがどの程度社員に受け入れられるかを知ることを狙いとしました。

第2回は全国を対象としていたので、テレワークに向いた人や部門があるかどうかを把握することを狙いとしました。

第3回はコロナ禍での業務パフォーマンスはどうだったのかをキャッチすることを狙いとしていました。

―それぞれのアンケート結果はどうだったのでしょうか?

第1回はテレワークのメリット・デメリットとして通勤時間の削減、業務集中度の向上がある反面、部門連携、チームでのコミュニケーションが難しいという意見が上がりました。

第2回はテレワークした人は生産性が向上したという反面、テレワークしなかった人で低下したという方が約3割いました。例えば電話対応など、本来テレワークしている人の業務をテレワークしていない、オフィスに出社していた人が代理応答していたという背景があると思います。生産性向上という意味では、SEが向いていて、営業・企画はすでに裁量労働制をとっていたのでさほど変化なしという結果でした。

第3回は生産性が下がるという意見が増えました。これは緊急事態宣言で急な在宅勤務となったことで環境整備が出来なかったり、全社員が在宅勤務となったことで業務が滞ったときのキャッチャー役がいなかったからだと考えています。また、押印等を用いた業務も低下しました。

―コロナ禍でのコミュニケーションについての意見はどうだったのでしょうか?

60%以上の方が「支障はなかった」と回答していますが、30%近くの方は「支障をきたした」と回答しました。

―コロナ禍でのコミュニケーションツールは何を活用していたのでしょうか?

Google Meetやメール、Googleハングアウト、Zoom等です。ITリテラシーがあまりなく、これらを使いこなせなかった従業員は生産性を下げる傾向がありました。

―そういった方への教育やレクチャーは行なっているのでしょうか?

全社で行なってはおらず、事業部単位で各ツールの教育を実施しています。

―新型コロナウイルス以前から通信環境は整っていたのでしょうか?

新型コロナウイルス以前から営業・企画を中心に約70%の従業員にWindowsタブレットやiPadを支給していて、緊急事態宣言の時には配布率は95%ほどでした。

新しい働き方のオフィス設計にも影響しているコロナ

―新しい働き方に伴いオフィス面積の削減が考えられると思うのですが、どうお考えでしょうか?

新しい働き方において、オフィスの面積は削減できると考えていました。しかし、コロナの影響で従来は1m半置きに置いてあったデスクが2m間隔に距離をとる必要性なども出てきました。

それを踏まえると、リモートワークによりオフィスへの出社人数が減ったとしてもデスクの配置間隔などが広がり、コロナ禍が落ち着くまではオフィス面積の大きな削減には繋げるのは難しいのかなと考えています。

―新しい働き方においても、出社しないとできない業務があると思います。その兼ね合いでオフィス設計の変容があると思うのですが、どう考えていますか?

これからのオフィスのあり方として、個人のスペースと共有スペースのバランスが大事だと思います。

また、感染拡大の観点から、誰がいつどこで仕事をしたのかを管理できるようにしておかないといけません。そういう意味ではフリーアドレスを入れてしまうと、誰がどこで作業をしたのかをトレースできないので、個々人のデスクを持たせることで対応せざるを得ない面もあると思います。

こういった点を考慮すると、コロナが落ち着いたらまたオフィス設計の姿も変化していくのではないかと思います。

生産性向上を軸にオフィスを使い分ける

―リモートワーク制度の勤務体制は「凸版印刷所有の専用施設」「契約しているシェアオフィスでのサテライトオフィス勤務」「外出先でのモバイル勤務」の3つがありますが、どのようにカテゴライズしたのでしょうか?

生産性向上を目的に、セキュリティと費用の問題を考慮して3つの形態となっています。

はじめは会社所有のオフィスや生産性の向上という観点でシェアオフィスを契約しました。シェアオフィスは外出先からの会社の往復など移動時間を削減し、生産性を上げることを狙いとしています。

外出先でのモバイル勤務は得意先との打ち合わせ、や移動中の車内や機内での作業などのモバイルでの勤務を想定しています。

―2020年11月に新オフィス「Atte」(アッテ)をオープンしましたが、どういったオフィスなのでしょうか?

名前の通り直接「会う」ことによってイノベーションを創造する場という狙いを持たせています。

例えば、この画像は新オフィスの1つのスペースなのですが、太陽の光を再現した照明となっており、実際にこの下に行きますと蛍光灯では味わえない太陽光のような温かみを感じることができます。

奥にある窓のようなディスプレイでは4Kのハイブリッド映像で自然を感じられる景色が映し出されるようになっています。デスクの中央にはアロマシューターがあり、いい香りが出てきたりと、照明・映像・音・香りでイノベーションを創造しやすい空間を作っています。実際に海の映像の時は海の香りが出るようになっています。

―「リモートワーク制度」の導入により、従来とは異なるオフィスの役割やあり方があると思うのですが、それついてはどう考えていますか?

人は言葉だけではなく五感で色々なことを感じとるので、オンラインでは生まれにくく会うことによって生まれるイノベーションがあると考えています。やはりオンラインでは対面して五感で伝え合うのと同じというのは難しく、今の技術はまだその域に辿り着いていないと思います。

そうすると、会うことによって生まれるイノベーションはオフィスで行わないと難しいですし、個人で集中してクリエイティブのことをしたいという時は家やシェアオフィスの個人ブースが向いています。そういった観点で、オフィスは、個々人が仕事・業務に応じて生産性向上、クリエイティブやイノベーティブに遂行できるといった視点で”選択していく場所”となっていくと思います。

オフィス設計は新しい働き方とコロナの両面で考える必要性がある

新しい働き方のオフィス設計は、「直接会うことによるイノベーションを引き起こす空間づくり」を前提に、フリーアドレスの導入や個人スペースのバランスも重要だとわかってきました。コロナ禍の現在、どこに座ってもいいという仕組みだと誰がいつどこで作業をしたのかを把握できることが理想的です。誰が出社していて、誰がテレワーク、誰が社内のどこにいるなどの情報がわかる仕組みは今後ますます必要になっていきそうです。

株式会社凸版印刷 生産性向上を軸に考える新しい働き方(後編)

プロフィール

奥村 英雄(おくむら ひでお)

1992年に入社。2001年4月〜2013年3月まで人事部として、グループ会社を含む全社の組織・人事に従事しながら、「自己申告制度やセカンドキャリア支援制度」の制度構築、運用を担う。2019年4月より人事労政本部労政部長兼安全衛生・防火推進部長として、「ハラスメント防止協定」を労組と締結や「同性パートナー制度」の導入を推し進め、現在は、昇給・賞与や労働条件、福利厚生などの人事諸制度の組み立てや労使交渉業務に加え、グループ全体の安全衛生・防火の管理業務も兼務している。

新しい働き方へ

新しい働き方を進めている企業の担当者に、導入までの道のりや成果についてお聞きするシリーズ

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