やってみてわかったテレワークの課題と対策を解説

From: 働き方改革ラボ

2020年03月10日 07:00

この記事に書いてあること

2019年は、「テレワーク・デイズ」の参加企業も過去最大を記録。この1年の間に、テレワークに初めてトライしたという企業や人も多いのではないでしょうか。ただ、実際にテレワークを導入してみると、想定外のトラブルや改善すべき課題が見つかることも。今回は、テレワークをやってみてわかった困りごとや問題について取り上げ、その改善策について解説します。

テレワーク、やってみたらどうだった?

2019年は、総務省や経済産業省などが推進する一斉テレワーク施策「テレワーク・デイズ」の参加団体や人数が過去最高に。2020年の夏に向けて、テレワークを新たに取り入れた企業や全社員への推奨を始めた企業もあり、全国的にテレワークが広がっています。

その一方で、テレワークを実際にやって初めて気付く課題も、企業の間で浮上。「テレワーク・デイズ2019」の実施結果報告資料にも、今後への課題や改善すべき点が多く挙げられています。次からは具体的に、テレワークの普及に伴いわかった主な問題と、その解決策についてお伝えします。

企業としての課題

テレワーク社員の人事評価がしにくい

管理職が、顔を合わせずに働いている部下をどう評価したらいかわからないという人事面での課題も発生。テレワーク社員の仕事の成果はチェックすることができても、勤務態度やふだんの仕事ぶりを見ることができないことに戸惑う声もあがっています。仕事の過程ではなく成果に偏った評価制度が、社員の不満につながるケースも。

テレワーク中の社員を正当に評価するために、テレワークで働くケースをふまえた評価制度を整えましょう。明確な目標設定など、管理職も、評価を受ける側も合理性を感じられる仕組みが必須です。また、チャットツールやWEB会議ツールを活用して、業務の進捗や1日の成果を確認する機会を持ち、テレワーク社員の日々の仕事ぶりを把握することも大切です。

テレワーク社員の労働時間を把握できない

テレワーク中の社員の様子を見ることができないため、正確な勤務時間を把握できないという課題も。いつから仕事を始めているのか、どれくらい休憩をとっているのかもわからないという労務管理上の不都合が生じています。また、長時間労働など、身体的・精神的な健康を害するリスクを見逃しかねないという課題も。

テレワーク中の勤務時間を正しく管理するために、始業時間・就業時間を報告する方法を決めましょう。メールや電話で出退勤を報告する、また勤怠管理ツールを活用するのもおすすめです。また、ログイン状況で在席を確認できるプレゼンス管理ツールも便利です。

在宅勤務の光熱費負担はどうする?

在宅でのテレワークを始めてみたら、通信費や光熱費など、在宅勤務中の経費について会社が定めていないことに気付くケースも。結果的に、テレワーク社員が費用を支払うことになり、その負担感が不満やトラブルにつながっています。

労働基準法は、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない」と定めています。在宅勤務を許可するときは、通信費や水道光熱費の負担について、明確なルールを作ることが必要です。水道光熱費や、家庭用の通信回線を仕事でも使うケースなど、プライベートの費用と切り分けが難しい場合は、一定額をテレワーク勤務手当として支払うという対応も可能です。実費を会社が負担する場合と定額制、どちらのケースも、経費について社員に十分に説明することが必要です。

テレワークが不可能な社員からの不満も

テレワークをしたくても、業務上オフィスに出勤しなければいけない社員の不公平感も、解決しなければならない課題のひとつです。テレワーク中の社員が、楽をしているのではないか、仕事をしっかりしていないのではないかと疑ってしまい、社員間の溝が生まれるリスクも。

多様な働き方を認めるために、お互いの仕事ぶりを理解できる環境整備が必要です。スケジュール管理ツールを使って、テレワーク中の社員の予定や業務内容を可視化するなど、オフィス出勤社員の不満解消にも取り組みましょう。

テレワークに取り組んだ社員の困りごと

他の社員とコミュニケーションがとりにくい

「テレワーク・デイズ2019」の実施結果報告のアンケートによると、テレワーク・デイズの特別協力団体の中には、多くの社員がチームメンバーとのコミュニケーションに問題を感じたという企業もありました。オフィスにいる人同士だけではなく、勤務する場所や勤務時間が異なる社員の間でどのようにコミュニケーションをとればいいのか、困惑している人が多くいます。

テレワーク社員を含めたコミュニケーションを円滑に行うには、メールや電話だけでは限界があります。社員間のストレスない連携のために、タイムリーでスピーディな会話が可能なチャットツールや、離れていても顔を見ながらミーティングができるWEB会議ツールの導入が有効です。

リモート会議がスムーズに進まないストレス

一方、社員間でのリモート会議にストレスを感じるという声も挙がっています。WEB会議ツールを使い慣れていないため、トラブルが発生して予定時間に会議が開始できない、または通信環境が悪く音声が途切れるといった問題が発生。スムーズなリモート会議が行えないことが、テレワーク推進体制への疑問につながるケースもあります。出勤せずとも適切な連携ができるように、使いやすいWEB会議ツールの導入や、テレワーク中の通信環境の整備を進めましょう。

テレワーク社員の「仲間外れ感」

テレワークで周りに社員がいない中で働く人の孤独感や、チームから外されているように感じる不安も課題のひとつ。テレワーク中に、必要な情報がスピーディに届かないことによる業務の滞りや、上司が自分の仕事ぶりを見ていてくれるのかという疑問が、テレワーク社員の「仲間外れ感」を高めてしまいます。

この課題に対しては、チャットツールなどのコミュニケーションツールを活用して、タイムリーな情報共有を徹底しましょう。また、評価基準の明確化や、上司と部下のこまめな報告や相談の機会を設けることも大切です。重要な会議はテレワーク社員も含めてチーム全員で行うなど、仲間意識を保つための工夫も欠かせません。

テレワークできる仕事が意外と少ない

テレワークの導入を検討してみたけれど、実際はテレワークできる仕事が少なかったという声もあります。工場での業務など、機械の操作や手を動かして物を作る仕事はテレワークに向かないため、浸透が進まないケースも。

テレワークに向かないと思われる職種でも、資料や日報の作成などテレワークができる作業はあります。まずは業務の棚卸を行って、場所を選ばずにできる事務作業からテレワークを始めてみましょう。

テレワークの課題を解決したサイボウズの事例

働く時間数と働く場所を、社員それぞれが「どういう働き方をしたいのか」に応じて決める「働き方宣言制度」を実施しているサイボウズ。多くの社員がオフィス以外で働くサイボウズは、テレワーク導入の検討を始めたときから、発生し得る問題を想定した対策を進めていました。

サイボウズのコラムによると、サイボウズがテレワーク=在宅勤務の導入を検討し始めたのは2009年。当時から、マネジメントやチームワークがうまくいかないのでは?という心配の声があがっていたそうです。そこで、「業務効率の向上」、「ワークライフバランスの支援」、「雇用の創出」という導入の目的を明確にした上で、次のような対応策が用意されました。

・各自のスケジュールをオープンにしよう
・始業終業を、グループウェアで連絡(コメント欄に記入)、共有しよう
・各部門に適した運用ができるよう、各部門で裁量をもとう
・各自の稼働時間帯や働く場所については、事前に宣言しよう

出典元: サイボウズの働き方制度ができるまで

テスト導入を経て、2011年から「在宅勤務は月4回まで」と定めた本導入がスタート。その後、社員の要望や働き方の実態を踏まえながら、制度を発展・変化させています。

問題の発見は働き方改革を進めるチャンス

2020年のテレワーク・デイズの実施方針も発表されました。2020年は、7月20日~9月6日の期間、全国的なテレワーク実施が呼びかけられています。また、コロナウイルス関連肺炎の感染拡大を防ぐための対策として、早急にテレワーク導入を進めることになった企業も多くあるでしょう。

これまで社員のオフィス勤務が当たり前だった企業にとっては、テレワーク導入を具体化することで、これまでイメージできなかった課題や反省が多く見つかったかもしれません。新しい問題の発見は、柔軟な働き方の実現によって多様な人材が活躍できる環境を整えるチャンスです。ひとつひとつの課題を確実に解決して、働き方改革を大きく前に進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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