テレワーク時代の人事評価とは?おすすめの人事評価システムも解説!

From: 働き方改革ラボ

2022年05月26日 07:00

この記事に書いてあること

「働き方改革」の一環として注目され、時間と場所に縛られない就業スタイルの「テレワーク」。導入する企業が増えていた中で2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、業種や職種を問わず導入する企業が急拡大しました。

テレワークの定着が進む中で運用上の課題も表面化してきました。中でも課題視されているのが「人事評価制度の見直し」です。テレワークではマネジメント層が実際の勤務態度を直接見ることができないため、最適な人事評価が難しいとの声があがっています。

この記事では、テレワーク下での人事評価制度について、課題やその解決方法、テレワーク下での人事評価制度の成功事例、おすすめの人事評価ツールを解説していきます。

※2020年7月に公開した記事を更新しました。

テレワークでの人事評価が難しい理由

テレワークでの人事評価が難しい理由は、実際に働いている従業員の状況が見えにくいことによる、「業務プロセスの評価」がしにくい点です。企業の人事担当者には、業務における客観的な視点での評価が必要になりますが、テレワーク下では従業員の業務状況が確認しにくいために、定量的な人事評価が難しいのが現状です。では具体的にどのような点で評価が難しいのか、3つの観点で見ていきましょう。

勤務態度の評価が困難

テレワークによって評価が困難になった代表例として、従業員の勤務態度への評価基準があげられます。オフィス勤務の場合はマネジメント層が部下の様子を直接確認できたため、仕事への取り組みや従業員個人のモチベーションなど勤務態度全般における評価をすることができました。しかしテレワークの導入によって部下の仕事に対する態度が直接見ることができなくなったため、取り組み姿勢やモチベーションなどの勤務態度を評価することが困難になりました。

またリモート勤務によってコミュニケーションの質の維持が難しくなり、従業員とマネジメント層の意思疎通も以前に比べると希薄になるケースも散見されます。結果として、人事評価の基準が成果を重視する傾向が強まり、モチベーションや業務への態度といったプロセスの評価材料が減ってしまうという問題があります。

評価方法や基準にばらつきが生じる

テレワークによる人事評価の課題として、担当者による評価方法や基準のばらつきもあげられます。社内での直接的な交流が減った分、業務のやりとりで使用されるメッセージの内容や書き方、Web会議中の発言、といった直接個人の成果に結びつかない部分での業務姿勢を評価軸に入れるかどうかにばらつきが生じるケースがあります。

評価担当者によっては、テレワークで対面での交流ができないからこそ普段の業務姿勢を重視する場合もあれば、テレワークでは普段の仕事ぶりは見えないものと割り切った上で、成果と実績のみを評価するというケースもあります。

このように評価担当者によって人事評価のばらつきが大きくなると、評価自体が極端に分かれてしまい、評価される側の混乱や不公平感が高まり、結果的に人事評価制度の機能不全に陥る可能性があります。

人事プロセスの遅延

人事評価でもテレワークによるコミュニケーション濃度の低下によって、人事プロセスの遅延が発生するケースがあります。特に複数人で行う人事評価の場合、担当者同士の情報交換の滞りや、コミュニケーション不足によって、評価プロセス自体の遅延に繋がる可能性があります。

特に評価担当者は人事評価の他にもそれぞれ業務を兼任している場合があり、個別業務で発生した遅延が結果として人事プロセスの遅延に繋がる場合もあります。テレワーク下では細かい状況をお互いに把握しきれないケースが多いため、人事プロセスの遅延は従業員満足度低下の要因になる可能性があります。

テレワークに適した人事評価 6つのポイント

テレワークの普及によって、人事評価には新たな課題が浮き彫りになりました。ではテレワーク下における最適な人事評価方法とはどのようなものでしょうか?6つのポイントに整理して解説します。

評価項目の明確化と共有

テレワークでは直接対面する機会が減るため、オフラインでの人事評価以上に評価項目の明確化と従業員への共有が重要になります。

特にテレワーク下では、従業員の業務への取り組み姿勢が確認できないため、評価をしやすい成果や実績だけを見る傾向が強まります。しかし成果や実績だけの評価となると、従業員は評価されやすいポイントにだけ注力するようになるため、中長期的に見ると業務効率や従業員満足度の低下に繋がる恐れがあります。

そのためテレワークであっても、定期的にWeb会議ツールを使用した面談を実施し、成果に至るまでのプロセスを確認する体制を整えるのが良いでしょう。またプロセスの評価には、「いつまでに、何を行うか」といったマイルストーンに区切った目標設定が重要になります。

業務スピードやレスポンスといった定量的に計測できる部分を人事評価の材料にすることも客観的な評価につながります。オフィス勤務を前提としていた人事評価制度を、テレワークに最適な評価項目に再設定し、従業員へ共有することで適正な評価が可能になります。

目標管理制度を活用する

テレワーク下での適切な人事評価を行うために、目標管理制度を活用すると良いでしょう。

目標管理制度とは、「MBO(Management By Objective)」とも呼ばれ、従業員個人が期間内に達成したい目標を定め、実現するための取り組みや中間目標を設定し、それに基づいて取り組み内容の振り返りや人事担当者による評価を実施することを指します。

目標管理制度では、上司と部下が目標や達成方法を相談した上で決定し、期間中は上司が部下の取り組みをサポートする体制を整えます。そのため目標や達成方法について部下の理解も得られやすく、上司も目標達成に至るまでのプロセスを把握しやすいため、テレワーク下でも適正な人事評価がしやすくなります。

経営方針と連動した評価制度を導入する

前述の目標管理制度や人事評価自体にも経営方針と連動した評価軸を導入すると良いでしょう。

業務である以上、達成目標が個人のスキル向上に寄りすぎていたり、自社の経営方針とかけ離れすぎたポイントを高く評価する仕組みでは、企業の利益向上には繋がりません。

そのため人事評価の中には、業務プロセスと共に経営方針と連動した成果に対する評価軸を入れることで、テレワークでも人事評価をしやすい体制が整います。特に業績評価の指標や部門ごとのKPIをどの程度達成できたのかに対するインセンティブ制度を採用することで、従業員のモチベーション向上にも繋がるでしょう。

企業ビジョンの共有で自立性を促す

人事評価の中にも数値では現れにくい自社独自の企業ビジョンを反映した評価軸も入れると良いでしょう。

企業ビジョンの共有をこまめにすることで、従業員それぞれが企業の価値観に沿った自立的な取り組みを促すきっかけにもなります。

特に企業ビジョンの部分は定量的な評価が難しく、従業員によって価値観も多様です。そこでゆっくりと時間をかけて社員の育成に注力することで、従業員の行動指針が企業ビジョンと合うようになります。

直接的には利益と連動しない部分でも、従業員の自主的な行動が企業ビジョンと沿うかたちになるため、結果として企業全体の業務効率と従業員満足度の向上に繋がり、利益の拡大が見えてくるでしょう。

360度評価を取り入れる

業務に対する成果や、部下上司の関係ではなかなか見えてこない部分を評価するために、同僚や部下の意見を多面的に評価する方法として360度評価の導入も良いでしょう。

従来までの成果や上司からの評価だけでなく、同僚や部下の違う目線からの評価を取り入れることで今まで見えてこなかった長所を発見するきっかけになります。また多面的な評価軸が加わることで、評価そのものにも客観性が生まれます。

また360度評価を導入することで、関連する人と良好な関係を築きながら業務を遂行する必要があるため、自然と横のコミュニケーションが生まれやすく、テレワーク下で減少してしまったコミュニケーション不足の解消も期待できます。

ITツールを導入する

テレワーク下によるコミュニケーションの質低下と、人事評価のばらつきを防ぐためにITツールを導入するのも良いでしょう。

特にクラウドシステムを利用した「人事評価システム」を導入することで、情報を一元管理できるため、マネジメント層はスムーズに人事評価を実施できるようになります。

また人事評価システムの中には、上司との画面共有機能や勤怠管理を行える機能も備えており、管理工数をかけることなく、従業員の働き方を事前に定めた基準によって評価できる環境をつくることができます。

おすすめの人材評価システム

ここでは代表的な3つの人事評価システムをご紹介します。

HRBrain

HRBrainは人事評価や人材データ活用といった人事の重要業務を、活性化できるよう開発されたクラウド型サービスです。人事評価だけでなくタレントマネジメントにも利用できます。

また人材データの一元管理だけでなく、社員のスキルや特徴を簡単に把握できる上に、人事評価のプロセスを透明化することができ、従業員の納得度の向上も期待できます。蓄積した人材データを自由に掛け合わせた分析も可能なため、戦略的な人事部門の意思決定を支えるクラウドサービスといえるでしょう。

カオナビ

カオナビは、常に変化する人材情報をデータベースで一元化・見える化できるシステムです。社員の顔写真が並ぶデータベースから、最適な人材を選んでチーム編成が可能です。

また社員の配置変更による人件費の変化、スキルや性格のバランス、育成計画やキャリアプランなどを見ながら、さまざまな配置シミュレーションが行えます。部門ごとの管理だけでなく、事業部を超えた連携や子会社とのデータ統合も可能なため、グループ会社全体での優秀社員の発掘も可能です。

HRMOSタレントマネジメント

HRMOSタレントマネジメントは、株式会社ビズリーチが提供する人材クラウド管理システムです。従業員データベース、組織コンディションをリアルタイムで可視化するレポートや分析機能など、業務を効率化させる機能を備えています。

また採用管理クラウドサービス「HRMOS採用」と連携することで、従業員の採用から入社後にどの程度活躍したのかを簡単に確認できるようになるため、採用面でもより戦略的な方針決定ができるようになります。

テレワークに対応した人事評価制度の成功例

テレワークに対応する新しい人事評価制度に成功している企業が多くあります。ここでは実際にテレワーク下で人事評価制度を実施し、成功している企業を3社ご紹介します。

カルビー株式会社

菓子や食品の製造・販売を行うカルビー株式会社は、2009年の新経営体制への移行を契機に働き方改革を強力に推進していきました。同社は「ワークライフバランス」と「成果主義」の2本柱を掲げ、企業の成長には従業員個人の成長が必須という考えのもと、人事評価に年間ベースの業務目標に応じた絶対的な評価を基本とする人事評価制度を確立しました。

2014年には在宅勤務を本格導入していますが、今回の新型コロナウイルスの流行によって、社内の申請手続きをさらに簡素化し、成果での報酬を決定する仕組みの体制強化を進めています。

日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフト株式会社では、「インパクト」を軸に評価制度を定め、従来までの定常的な業務をこなすことには評価軸をおかず、会社や市場にどのようなインパクトを与えることができたのか、を重視する評価体制にシフトしています。

この評価制度によって、従来までの売上をあげるだけの営業スタイルでは評価を受けられず、様々な事業部門や役職責任者との関係構築をはかり、チームの垣根を超えた会社全体のコラボレーションによるインパクトが大きな業績を評価するようになりました。

結果として、コロナ禍による全面的なテレワークでも、チームを超えたコミュニケーションは活性化し、従業員はインパクトを残すための業務姿勢を維持することができています。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、新型コロナウイルスの収束後も在宅勤務を基本的な勤務形態と定めました。そのため週2?3日の出社でも効率的に人事評価ができるように、従来までの目標達成率で評価をする「MBO(Management By Objective)」ではなく、結果に至るプロセスや、本人が発揮する能力や行動特性、モチベーションも併せて評価する「GPM(Global Peformance Management)」へと移行しました。

この制度によって、テレワーク下でも従業員はモチベーションを落とすことなく効率的に働くことができ、結果としてコロナ禍の中でも業務効率の維持に成功しています。

まとめ

海外では一般的だといわれる成果主義。前述の通り、国内ではカルビー株式会社が先駆けて成果主義の報酬体系を採用し、多様な働き方を実現しています。しかしながら、日本の企業は「労働時間」を重視する働き方が主流であり、在宅勤務のように働きぶりを直接確認できない場合の評価制度に課題を抱えているのが現状です。

在宅勤務でのモチベーションを上げながら、個人や企業の生産性を高めるためにも、テレワーク時代の適切な評価方法とは何かを考える時期に来ているといえるでしょう。この機会に、自社の評価制度を大きく見直してみることも必要かもしれません。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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