テレワーク時代の人事制度の課題と解決策とは?

From: 働き方改革ラボ

2021年09月10日 07:00

この記事に書いてあること

新型コロナウィルス感染症の影響で広く浸透したテレワーク。ワクチン接種は進んでいるものの未だ収束の見通しは立たず、企業の間では、ニューノーマルな働き方を見据えた動きがあります。そんな中、対面機会の少ないテレワークでのキャリア形成という新しい課題も発生しています。

そこで今回は、人事担当者が抱える社員のキャリア形成に関する課題と解決策を解説。また、テレワーク社員のキャリア形成に成功している企業の事例を紹介します。

テレワーク勤務者が多い場合の課題

テレワーク勤務者が多い企業においては、キャリアや評価制度に関してどのような課題があるのでしょうか。テレワークでのキャリア形成の実現に向けた課題と、その解決策をお伝えします。

社員間の不公平感

在宅勤務やテレワークを導入する企業が抱える課題のひとつが、社員間の不公平感です。出社が必要な社員が、在宅勤務が可能な社員に対して抱く不公平感のほか、出社/在宅すべき業務が不透明であることが、会社や同僚への不信感を招くこともあります。

不公平感の解消のためには、テレワークに関する会社の方針や、出社/在宅すべき業務を明確にした上で、丁寧にルールの説明を行うことが大切です。また、テレワーク勤務者、出社が必要な社員のどちらに対しても、公正で明確な評価を行える人事制度を導入することも不可欠です。

コミュニケーション不足

テレワーク勤務者と出社社員、またテレワーク勤務者間でのコミュニケーション不足も課題です。テレワーク社員が、会社やチームの一員として仕事を続けキャリアを積むためには、チーム間での連携や上司とのコミュニケーションは欠かせません。チームやプロジェクト単位でのオンラインミーティングの定例化、上司との1on1ミーティングの新設など、連絡の機会をルール化することで、コミュニケーション不足の課題を解消できます。

マネジメントに対する不満

テレワーク中は上司と顔を合わせる機会が減るため、自分の仕事が上司に正当に評価されていない、上司が自分の業務をケアしていないといった、マネジメントに対する不満が生じやすくなります。部下の不満は、仕事へのモチベーションや生産性の低下にもつながります。

テレワーク中の社員のマネジメントには、上司との週次の1on1ミーティングや、チャットなどのツールを使った報告といったコミュニケーションの機会を増やすことが有効です。仕事のプロセスを透明化することで、上司と部下がお互いに信頼を得ることができるほか、会社や部署へのエンゲージメントを高めることもできます。

部下のマネジメントの難しさ

テレワーク社員を管理するマネジメント層にとっても、テレワークならではの課題があります。対面の機会が少ないテレワーク社員の仕事の進め方や成果は見えにくく、部下が抱えるトラブルや心配事にも気付きにくいといった難しさがあります。

テレワーク社員のマネジメントを成功させるためには、密なコミュニケーションを意識することに加えて、メンバーに対して、組織の方針や目標を共有することが大切です。また、メンバーに仕事を依頼する際は、その条件やゴールを詳しく説明しましょう。部下が納得感を持って業務を進めることができ、相談や報告も受けやすくなります。

在宅手当て中の費用への不安

在宅勤務社員が増えると、在宅で仕事をする際にかかる費用に関する問題が生じます。テレワーク社員の経費に対する不安を解消するためにも、在宅勤務中のエアコンやパソコンにかかる光熱費などの経費について、ルールを定めましょう。

テレワークに切り替わったことで、通勤手当が不要になるケースもあります。通勤手当を月単位での支給から出社する日数分の支給に切り替える、テレワーク社員には在宅勤務手当を支給するなど、社員に不利益にならないルール作りが必要です。

テレワークを前提としたキャリア形成の取り組み

では、テレワークを前提としたキャリア形成を進める制度の中には、どのような取り組みがあるのでしょうか。事例を交えてご紹介します。

都市部に集中する業務をテレワークに分散

場所にとらわれない働き方を実現するため、地方の拠点でもキャリア形成のために多様な仕事ができる取り組みを進めている企業もあります。

アフラック生命保険株式会社では、2021年1月から、転勤なしの条件で働く社員を対象に、もともと大規模拠点で担当していた仕事を、地方や在宅勤務で働く社員が担当できる「リモートキャリア制度」をスタート。地方や在宅で働く人も、東京や大阪などの拠点にある多様な仕事を担当できる仕組みです。地方勤務者やテレワーク社員が、働いている場所にとらわれずキャリアを形成できる制度として、今後広く展開されていくそうです。

社員が居住地を自由に選択

社員が、離職をすることなく住む場所を選択できる制度も登場しています。パーソルキャリア株式会社は、全国に30ヵ所あるパーソルキャリアのオフィスに通勤可能であれば、日本国内のどこでも居住できるという制度を新設しました。

自由な居住地でのテレワークが可能であれば、介護や育児など、私生活の事情から転居が必要な場合も、離職や休職をせずに仕事を続けることができます。また、本社勤務が必要だったバックオフィス業務などの仕事も、本社に通える場所に転居することなく担当できるようになるため、キャリアの幅が広がるというメリットもあります。

オフィスのあり方を見直し

テレワーク勤務者が増えた企業の中には、生産性向上のためにオフィスのあり方を見直す動きもあります。出社人数減に伴うオフィス面積縮小や、オフィスの使い方に応じたレイアウト変更といった見直しが行われています。

テレワークが浸透する中で、オフィスを、出社時の対面での生産的なコミュニケーションを行う場所としてとらえてリニューアルする企業が増えています。フリーアドレス制や、業務内容によって働く場所を選べるABW(Activity Based Working)を導入する、ミーティングスペースやカフェエリアなど、社員が気軽にコミュニケーションをとれるスペースを作るなどオフィスの刷新が進んでいます。

新たな人事評価制度の導入

テレワーク従業員と出社社員を公正に評価する新しい人事制度も、キャリア支援の取り組みのひとつです。そのひとつが、目標をベースに人事評価を行うMBO(目標管理制度)です。

MBOはManagement By Objectiveの略。上司と部下がコミュニケーションをとって定めた目標に従って、進捗を確認しながら、上司は部下の目標達成度を評価します。自ら上司と話し合って決めた目標を目指すため、テレワーク中でも、社員の高いモチベーションを持った主体的な業務が期待できます。

テレワークを前提とした人事制度の実施事例

これまでご紹介した大手企業だけでなく、地方企業や中小企業の間でも、テレワークでのキャリア形成を推進している企業が増えています。その成功事例をご紹介します。

自由な働き方が自立した社員を育成

婚活サービスやレンタルオフィス事業を行う新潟県の株式会社トアイリンクスは、2010年の創業当時からテレワークを導入を実施。従業員が、働きたい場所でいつでも働ける環境を整えています。

社員は、会社が支給したノートパソコンを使って、都合の良い場所で勤務。無駄な会議は行わず、情報はITツールで共有するなど業務効率化の取り組みも進んでいます。女性だけでなく男性も、育児・介護と仕事を両立しながらキャリアを形成。個人の裁量が大きく、従業員はタイムマネジメントを意識した働き方を実施していることから、自立した社員の育成にも成功しています。

テレワーク採用の実施で優秀な人材を雇用

兵庫県の小売業である株式会社三協パーツ商会は、結婚・出産で離職する女性が増え人材確保が難しくなったことから、2017年よりテレワークを導入しました。

テレワーク導入後は出産・育児による離職者が0になり、女性社員の雇用を継続。さらに、週5日の在宅勤務を前提とした採用も開始したことで、人材難だった職種の社員を県外から雇用することに成功しました。また、テレワークの浸透に伴いITツールを使った連絡や報告が行われるようになり、業務が見える化。マネジメントがしやすくなったほか、風通しの良い社内体制が確立しました。

パート社員を在宅可能な正社員としてキャリアアップ

熊本県のクラウドサービス企業、株式会社システムフォレストでは、社員の仕事と家庭の両立支援と生産性向上を目的にテレワークを導入しました。

2012年からはクラウド化にも取り組み、2016年には全業務環境のクラウド化を完了。テレワークによる移動時間の削減や、社内コミュニケーションや決裁のスピード化によって生産性が向上しました。また、テレワークと短時間正社員制度の導入によって、それまでパート雇用だった社員でも、在宅勤務が利用可能に。キャリアアップによる、社員のモチベーション向上にもつながりました。

テレワークに対応した人事制度の整備を進めよう

育児や介護など、私生活の事情がある社員だけでなく、働く人の間で広がっているテレワーク。社員がテレワークを理由に仕事の幅を狭めたり、キャリア形成を諦めたりすることのないように新しい制度を作っていくことが、フルリモート時代の働き方改革を前に進めます。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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