教員の働き方改革 ー学校における取り組み事例も紹介

From: 働き方改革ラボ

2019年09月12日 07:00

この記事に書いてあること

世間では、働き方改革を推進し勤務時間の削減に勤しむ企業が増える一方、小・中学校の教員に関しては従来の働き方と大きな変化が見られず、むしろ負担が増えているとも言われています。

今回は、先生の労働環境の現状を把握しながら、「学校における働き方改革」について考えていきましょう。

先生の働き方の実態とは?

労働時間

?文部科学省が平成28年度に実施した「教員勤務実態調査」によると、小学校の先生の1日あたりの学内勤務時間の平均は、平日11時間15分+土日1時間7分。中学校の先生では、平日11時間32分+土日3時間22分で、平成18年に行われた前回の調査よりも1日当たり1時間前後増加しているという結果になりました。

さらに「過労死ライン」といわれる1か月80時間以上の時間外勤務を行っている先生は、小学校で約3割、中学校で約6割に上るというデータも 。通常休憩時間に当たるようなランチタイムですら「給食の時間」として児童生徒と向き合っている先生たち。実質の休憩時間は1日5分程度という結果も出ています。

時間外手当

これだけ見ても先生の過酷な労働状況がわかりますが、手当はどのようになっているのでしょうか。

公立学校の教員については、関連する法律で、給与の4%に当たる「教職調整額」を支給する代わりに「時間外勤務手当および休日勤務手当は支給しない」ことが定められています。しかし、この4%という数字は法律が成立した1971年の残業状況をもとに計上されたものであり、現在の残業状況に見合うものではありません。
また残業時間と連動せずに手当を一定率で支給するという仕組みが、長時間労働の常態化をまねいているという指摘もあります。

有給休暇取得

有給休暇の平均取得日数については、小学校の先生は日本人の平均日数程度(11.6日)である一方、中学校の先生は8.8日と、平均よりも下回っていることも見逃せません。

国や自治体が学校のためのガイドラインを作成

こうした過酷な現状を踏まえ2019年1月、国は「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を設定。所定の勤務時間を超えて勤務する場合の上限として、1か月45時間、1年間360時間以内などの目安を定めました。

先生が授業などの本来の業務に専念できるようにするために、例えば下記のように、これまで学校が担ってきた業務を仕分けし、優先順位をつけながら現状を解決していくことを勧めています。

学校以外で担うべき業務の例

登下校に関する対応や放課後以降の見回り、学校徴収金の徴収・管理など、業務内容に応じて地方公共団体や教育委員会、保護者や地域ボランティアなどが担うべきとしています。

必ずしも教師が担う必要のない業務の例

調査等への回答や児童生徒の休み時間対応、校内清掃、部活動など、学校が担う業務ではあるものの必ずしも先生が対応しなければならないわけではないとし、代わりに事務職員や地域ボランティア等の外部の担い手を提案しています。

教師の業務であるが、教師の負担軽減が可能な業務

給食時の対応や授業準備、成績処理、学校行事の準備・運営、進路指導や支援が必要な児童生徒や家庭への対応など、基本的には学校の業務であるとしつつ、サポートスタッフや事務職員、民間委託の外部人材等との業務分担により対応を図るべきとしています。

なお、夏休み期間のプール指導や朝練、時間外の部活動指導、行事の過剰な準備など、これまで慣習として学校が担ってきた事項については、学校が家庭や地域社会と協力し合い、大胆に削減を図ることが重要としています。

各学校の具体的な取り組み

最近では、こうしたガイドラインと共に働き方改革に取り組む学校も増えています。ここでは、成果がみられる都道府県や学校の具体的な取り組みを見ていきましょう。

静岡県のモデル校では「やめる・かえる・減らす」の視点で校務の整理を行い、家庭訪問、会議、運動会などの時間短縮を実施。また並行して、部活動指導員や地域サポーターといった外部リソースの活用を行うことで、月平均約8.4時間の残業時間削減に成功しています。

横浜市では、2018年3月から、小中学校の教員を対象にICカードによる勤怠管理を導入。日々の出退勤時刻や時間外労働時間をシステムで集計することで、年間を通じての勤務実態を把握し、勤務実態を踏まえた改革に取り組んでいます。
またICTを活用した業務改善に力を入れており、モデル校では従来紙で行ってきた保護者アンケートや行事の申し込みを電子化。学校は効率的な集計ができ、保護者からも簡単に回答ができると高い評価を得ているようです。

石川県では、今まで各先生が個人で作成していた教材等のデータベース化を進め共有を図ることで、授業準備の手間を省くことに成功。事務機器の最新鋭化や台数を増やすことで業務の効率化も図っています。

岐阜県では、原則として勤務時間外の電話対応は行わないものとし、留守番機能付電話の拡充を進めています。児童生徒対応に加え、保護者への対応についても少しずつ改革が進められているようです。

先生の働き方改革のこれから

一般企業に比べるとまだまだ取り組むべき課題が山積する「学校の働き方改革」。過酷な労働状況を改善するには、外部委託やICT の活用など、これまでの「慣習」を断ち切るための新しいシステムが必要かもしれません。

業務効率化を図ることは、先生の労働時間削減だけでなく「健康経営」の視点でも大切なこと。先生の健康的な働き方は、子どもたちへの健全な教育にもつながります。すでに成果がみられる学校の取り組みや、一般企業の取り組みなども参考にしながら、まずは現状の把握・検証から始めてみてはいかがでしょうか。

2020年1月14日 : 更新

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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