テレワークは誰もが成果を出せる働き方(後編)  今すぐできる日本型テレワーク実践法/田澤由利氏

From: 働き方改革ラボ

2020年10月27日 07:00

この記事に書いてあること

日本の働き方に即したテレワークのあり方を提言している株式会社テレワークマネジメント代表取締役の田澤由利氏。テレワークのメリットや、日本企業が直面しているテレワークの課題や解決策を語っていただいたインタビュー前編に続いて、後編では、テレワーク導入を成功させるために必要な姿勢や今すぐできる実践法について詳しく聞きました。

「あなたと長く一緒に働きたい」
経営者はテレワーク導入の思いを熱く語るべき

―テレワークの導入を決めても、管理職や従業員がなかなか本格的に取り組んでくれないという課題も聞かれます。どのようなステップで導入を進めるのがよいのでしょうか?

経営層が一方的にやれと指示をするだけでは、社員が自分ごとと感じられないためうまくいきません。ウェブ会議ツールなどを使って、トップが社員全員に「なぜテレワークを導入するのかというと、みなさんと長く働きたいからだ」ということを熱く伝えてほしいです。

トップがちゃんと伝えたあとは、部署ごとにプロジェクトチームを作るのがおすすめです。ひとつひとつの仕事に対して「これ、どうやったらテレワークでできるだろう?」と現場で知恵を絞りましょう。今まで脈々と続けてきたことを変えるのは難しいですから、みんなで議論しながら進める必要があります。熱意のある号令がけと議論の場を作らないとなかなか動きません。でも、今が大きく変えるチャンスです。

―コロナ禍で出社が難しくなり、急遽、テレワークを導入しなければならない企業も多かったと思います。在宅勤務を導入するために、すぐにできる方法はありますか?

2月にYouTubeに「仮設クラウドオフィスの作り方」という動画をアップしました。今すぐテレワークを導入しなければいけない企業が、離れていてもみんなで一緒に働けるという体験を得るために、ウェブ会議ツールの「Zoom」を活用してクラウドオフィスを作る方法をお伝えしました。

具体的には、朝、「おはよう」とZoomに入室して出社します。朝はみんなで顔を合わせてもいいですね。仕事中は、カメラとマイクはオフ、スピーカーはオンにします。声をかけたいときは、マイクをオンにして話しかければ、みんなに聞こえます。じっくり話す必要があれば、実際のオフィスと同じように別の会議室に移って話をします。仕事が終わったら、「お疲れ様でした」とあいさつして退室します。

在宅勤務の経験で、皆さんは「オフィスって大事なんだ」と気付いたはずです。オフィスには、いろいろな情報や人との交流があります。クラウドオフィスで一緒に仕事をするという体験ができたら、テレワーク中の孤独が解消できますし、ずっとスピーカーがついているから怠けることもできません。やり方を工夫すれば、日本型の働き方を保ちながらテレワークができるわけです。

動画リンク:【新型コロナ対策】仮設クラウドオフィスの作り方

テレワーク中のマネジメントの課題を解決
時間とプロセスを適切に把握する方法

―マネジメントしにくいという課題は、どのように解決すればよいのでしょうか?

日本の場合は、評価において成果だけを見ていません。働く時間の長さやプロセスなどを、総合的に見て判断しています。テレワークだと時間管理もプロセスのチェックもできないから、これからはジョブ型で成果主義にしましょうと言っている人もいますが、私は手放しに賛成できません。社員全員が自律的に働けるとは限りませんし、育児や介護などをしながら働く人にも無理を強いることになります。そういう人たちが働くための枠として、時間管理は必要だと思います。加えて、業務やコミュニケーションの見える化をしっかりしていけば成果もプロセスも評価できて、テレワークでもマネジメントがしやすくなるわけです。テレワークでもそれができれば、オフィスに出勤する人に対しても同じような評価ができるようになります。すると、これまでは働く時間の長さの比重が多かったことに気付いて、大きな改革にもなります。

―テレワーク中の時間管理については、裁量を任されて無理をしてしまうケースや、反対に、在席管理で監視されている気分になるという課題も聞かれます。どのような方法が適切なのでしょうか?

私たちの会社で実際に使っていて、皆さんにおすすめもしているのが、F-Chair+(エフチェアプラス)というタイムカードのツールです。出社している人も在宅の人も、仕事を始めるときに着席ボタンを押します。すると仕事タイマーがスタートします。お昼休憩や、保育園のお迎えなど私用で抜けるときは退席をして、仕事を再開するときに着席をします。こうすることで、細切れの離席時間も含めて労働時間を明確にできます。所定労働時間が足りない場合は、時間有給をとったり、フレックスなら明日に回したり、子どもが寝てから1時間だけ仕事をするなどして調整します。

着席中のパソコンの画面がランダムに記録されて、後から上司が確認できる機能もあります。それを聞くとびっくりされる方もいるんですが、会社でも上司が画面を後ろから除きこむことはありますよね。それと同じイメージです。着席中なのに真っ黒な画面が続くとか、私用のネット検索の画面が続いていたら変だなということをチェックするだけで、本人が着席ボタンを押している時しか記録されません。もしネットでコンサートのチケットが買いたくなったのなら、退席中の休憩時間にすればいいわけです。

上司が画面をさっと見て、ずいぶん前に頼んだ仕事がまだ進んでいないようだからヘルプを出そうというようなことにも気付けるし、自宅で働く人も「さぼってると思われているんじゃないか?」と悩むストレスから解放されます。柔軟だけどきちんと働くというのが、私は日本のテレワークの正しい形だと思っています。

テレワークはそれぞれがもっとも活躍できる働き方
誰もが満足感を持って働ける社会へ

―オフィスで顔を合わせて一緒に働くのが一番いいと思っている人もまだ多いと思います。これからの人材難の時代に行うべき考え方の転換として必要なことを教えてください。

今まで、顔を合わせて一緒に汗を流して働くという成功体験を積み重ねてきた人に対して、今すぐ変われと言ってもなかなか変われませんよね。そういうときはしっかりと、今こういう状況だからこうしましょうと説明するのが良いと思います。これまでのやり方が丸ごと変わるのではなく、時間管理もコミュニケーションもこうやるから安心ですということを、ちゃんと見せてあげることが大切です。

それに、私はこうしてテレワークを勧めていますけれど、すべてテレワークにして一切会わなくていいとは一度も言っていないんですよ。テレワークをすることで、実際に会うことの大切さやオフィスのありがたさが感じられるんです。ただ毎日行くだけの場所だったオフィスが、人と会える楽しい場所になります。でも、毎日行かなくていいからより効率的に働ける。テレワークが当たり前になれば、オフィスも、テレワークで働く場所の一つになります。

―最後に、働く人自身にとってのテレワークの最大の意義を教えていただけますか?

テレワークは、その人がそのとき一番パフォーマンスを出せる方法として選べる働き方です。私がシャープに入った頃は朝から晩まで会社で働いていましたが、ずっと会社にいたいと思うぐらいそれが幸せだったんです。ただ、子どもができたらそういう働き方はできなくなりました。今、元気な人でも明日出社できなくなることだってあるわけです。さまざまな状況がありうる中で、誰もが、家にいても会社にいても一番満足感を持って働ける社会になるために、テレワークは必須だと思っています。

※このインタビューはWEB会議システムを活用して行いました。

<前編「日本型テレワークが会社を成長させる理由」

記事執筆

田澤由利

株式会社テレワークマネジメント代表取締役。株式会社ワイズスタッフ代表取締役。

1962年奈良県生まれ。上智大学卒業後、シャープでパソコンの商品企画を担当するが、出産と夫の転勤で退職。その後、パソコン関連のフリーライターとして働く。1998年、夫の転勤先の北海道北見市で株式会社ワイズスタッフを設立。2008年、柔軟な働き方を社会に広めるために株式会社テレワークマネジメントを設立。企業へのテレワーク導入支援やセミナー、国や自治体による事業への参画で、テレワークの情報発信・普及活動を行う。

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