株式会社タニタ 社員の個人事業主化への道のり(前編)日本活性化プロジェクトの軌跡 / 二瓶琢史氏

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感染症対策を機にテレワークが珍しくない働き方となりましたが、その以前から様々な角度で働き方改革を進めている企業が多くあります。『働き方改革ラボ』では、そんな新しい働き方を進めている企業担当者へインタビューを行い、導入までの道のりや成果についてお聞きすることで、これから取り組もうとする企業の方へのヒントをご紹介していきます。

新しい働き方に取り組んでいる企業の事例を紹介するプロジェクト『新しい働き方へ』第一弾は「日本活性化プロジェクト」に取り組む株式会社タニタです。

新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で働き方が見直された2020年。その3年前となる2017年1月より、新しい働き方として、希望する社員を雇用から「個人事業主(フリーランス)」との業務委託に切り替える「日本活性化プロジェクト」に取り組んできた株式会社タニタ。2021年で5年目を迎える同プロジェクトから働き方改革に着手する上でのヒントを得るために、同プロジェクトの運営と推進を担う株式会社タニタ経営本部社長補佐の二瓶琢史様にお話を伺います。

タニタが取り組む「日本活性化プロジェクト」とは

次で5期目。これまでの「日本活性化プロジェクト」の軌跡とは

–1年目に1期のプロジェクトメンバーを募る上で苦労したことや心がけたことはなんでしょうか?

まず、プロジェクトの仕組み全体として意識していることは、職種や年齢にとらわれず、本人の意思でやりたい人が手を挙げるということです。その上で、当初苦労したことは、社内でこの取り組みに対して理解をしてもらい、不安を抱かずに手を挙げてもらえるようにすることでした。そのために私自身が先陣をきってプロジェクトメンバーになりました。そうすることで、他の社員に安心感を持ってもらえると思いましたので。

–会社の取り組みとして良かったことはありますか?

最初から社内公募をしたことです。実はプロジェクトの開始前は、私だけが先に1年間試してみて、その上で社内に説明していこうと考えていました。一方、社長の谷田は「理解できる人がいるはずだから」と最初から社内に公募をかける方針でした。そうしたところ、私以外に7人が手を挙げてくれました。そのメンバーで、スタートを切れたことが今につながっていると思います。

–それはどう影響したのでしょうか?

自分と同じ立場の人がいることで相談しあえる。1人だと考える幅が狭くなってしまいますが、年齢も性別も職種もバラバラな7人がいたことで、一気に幅広い視野で仕組みづくりができました。それが本当に助かりました。

–もし1人で行っていたらどうでしたでしょうか?

あまり先に繋がる仕組みにはできなかったと思います。というのは、実際、プロジェクトメンバーになった人たちの働き方を見てみると本当に多種多様で、一人ひとり異なる自由な働き方がこの仕組みでできるということを社内で示してくれました。これは、1人ではできなかったと思います。

–1期目を踏まえて対策を練れる、2期目以降はどうでしたか?

大きなハードルは、1期目に社長以外の経営陣から猛反対を受けていたことでした。それを払拭するために取り組んだことが、役員にもこの取り組みに参加してもらうということでした。
取締役とは取締役業務以外の事業について業務委託契約を結びました。実際にやってみてもらうことで、この取り組みの仕組みやメリットなどを理解してもらえるようになりました。

–次で5期目に入りますが、働き方の見直しがより強く求められたコロナ禍で例年よりもメンバーは増えそうでしょうか?

例年よりも検討している人は多いですね。しかし、最終的に個人事業主に移行する人数はほぼ例年通り、10人弱になる見通しです。

–それはどうしてでしょうか?

社員をやめて個人事業主になるというのはリスクが大きいという、今の日本社会の一般的な考え方の影響があると思います。ご家族の理解や賛同を得るのも容易ではないかもしれません。結局は日本社会の常識を打ち破ることへのハードルがまだ高いということだと思いますね。

社員からプロジェクトメンバーに移行するにあたり

–プロジェクトメンバーが、個人事業主が合わないと感じた場合、再度社員として契約することは可能でしょうか?

完全に退職しますから、元に戻りたいとなったときの特別なルートはありません。もし社員に戻りたいということであれば、もう一度中途採用などの通常のルートで応募する形になります。「日本活性化プロジェクト」は自立して働くことを目的にした仕組みですから、個人事業主としてやっていく覚悟をして、移行します。もちろんリスクと感じる部分も少なくはないですから、退職前にじっくり考えることは必要です。会社はそのための情報提供もしますし、働き手と会社で意識のすり合わせも行います。

–雇用関係を解消することによる人材流出のリスクに関してはどう考えているのでしょうか?

「労働者は会社の所有物」というような意識が根底にあると、「流出」という発想になるのだと思います。そもそも人は自由なので、自由意志でタニタの仕事をしたいと思える仕事や環境を整えることが会社のすべきことだと考えています。むしろ、業務委託の関係よりも雇用関係の方が、従業員が離れてしまうリスクがあるとすら思います。

–と言いますと?

業務委託契約は、働き手が別の仕事をしたいと考え、タニタでの仕事量を減らしたいと思ったときに、例えば週一回程度の業務量にするということで、双方が合意すれば、柔軟に契約内容を決められます。ただ、雇用関係だとなかなかそうはいかないですよね。週5日勤務を前提にした正社員としての雇用関係の方が、人材の流出に繋がりやすくもなると思います。

–職種ごとに個人事業主への移行のしやすさなどの傾向はあるのでしょうか?

結果から見ると、職種による傾向はありません。タニタでは大きく「技術職」「営業職」「事務職」と3つに分けてみていますが、どの職種からも同じくらいの人数が移行していますので、偏りはないですね。そう言った意味では、職種に依らず個人事業主になりたい人がなれる仕組みがつくれていると思います。

–社員時代のような人事考課は無いということですが、託す業務が変わることが今までの人事異動にあたると思いますが、社員と個人事業主では評価ポイントが異なりますでしょうか?

個人事業主では社員のような評価制度は無く、相対評価はされません。業務委託契約に基づき、個人事業主と業務を委託する部門長で、委託業務に対しての成果や実施状況などを確認し、成果を評価していきます。契約面でのやり取りに関しては、プロジェクトメンバーと部門長とのやり取りで進めてもらっています。

–社員時代よりも人間関係を築くことがより大事になりますか?

はい。社員のときは例え上司と仲が悪くても会社の評価ルールによって評価されますが、個人事業主についてはそういったルールはありませんから、部門長との間に良好な人間関係や信頼関係がないと、評価を受け入れることも難しくなると思います。一方で、個人事業主側も業務を断ることができるので、委託する側の部門長にとっても、同様に重要となります。その側面でパワーバランスに変化がありますし、社員時代よりもコミュニケーションを重視している人は多いと思います。なお、部門長ごとの評価のバラツキが大きくなり過ぎないよう、「評価者会」といって個人事業主が所属する部門の責任者で集まって情報共有してもらう、といった工夫もしております。

>株式会社タニタ 「社員の個人事業主化」への道のり(後編)
日本活性化プロジェクトに学ぶ働き方のヒント

著者プロフィール

二瓶琢史(にへい たくし)

2003年に株式会社タニタに入社。2011年から総務部長となり人事・総務全般を統括。2016年より社員の個人事業主化の仕組みを作り上げ、2017年に自身も個人事業主として同プロジェクトの推進責任者を受託しつつ、社長補佐などの業務にも取り組む。

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新しい働き方を進めている企業の担当者に、導入までの道のりや成果についてお聞きするシリーズ

この記事を書いた人

リコージャパン株式会社
リコージャパンは、SDGsを経営の中心に据え、事業活動を通じた社会課題解決を目指しています。
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