タレントマネジメントとは?効果と導入ステップを解説
2022年06月07日 07:00
この記事に書いてあること
1990年代にアメリカで登場した人材マネジメント手法、タレントマネジメント。今、日本でも、働き方の多様化やテレワークの普及によって注目されています。
そこでこのコラムでは、このマネジメント法が注目されている背景や、従来の経験などを重視する日本の人事制度との違いを解説。企業側と社員側にもたらされるメリット・デメリットや、タレントマネジメントの導入ステップもお伝えします。
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは社員の能力やスキルに注目し、最大化することで組織の成果につなげる人材マネジメント法のこと。社員の能力やスキルに主眼を置いて人材活用や育成を行うことで、組織力のアップを目指します。
日本でこれまで一般的だったのは、部門や部署ごとに社員を管理するマネジメント方法や、経験を重視しながら評価や配置転換を行う人事制度です。こうしたチームや組織を中心に考える従来の手法ではなく、社員ひとりひとりの能力に基づいて人事を行うのが、タレントマネジメントの特徴です。
タレントマネジメントが注目される理由
なぜ今、日本でもタレントマネジメントが注目されているのでしょうか。これまで大手を中心とした日本企業では、社員を新卒で一斉に雇用し、さまざまな仕事を経験させながら人材を育てるメンバーシップ雇用が一般的でした。ただ、労働人口が減り、仕事内容を限定したジョブ型雇用も普及する中で、従来の雇用スタイルで人材を確保することが難しくなっています。新しい人材を採用するのではなく、今いる社員の能力を最大に活かすマネジメント方法が、求められています。
テレワークの普及も、タレントマネジメントが注目される理由のひとつです。テレワーク導入企業では、社員同士が離れて働くことで、上司がチーム内の仕事ぶりを評価・管理しにくいという課題が挙がっています。ひとりひとりのスキルや成果に基づいたタレントマネジメントや、タスク型の働き方など、それぞれの社員が能力を活かすことでチーム全体の成果をあげる手法が重視されています。
タレントマネジメントは、働き方改革の面でも効果が期待できる仕組みです。社員が自分の能力に合った業務に就けるため成果が上がりやすく、働きやすい環境の整備や長時間労働の是正にもつながります。
タレントマネジメントのメリット
では、タレントマネジメントには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
生産性の向上
タレントマネジメントにおいては、個人のスキルに合った部署や仕事への配置が可能になるため、社員の能力をより引き出すことができます。仕事へのモチベーションやパフォーマンスが向上し、ひとりひとりの仕事の生産性がアップ。業務効率の向上は、企業の目的である利益の拡大にもつながります。
社員満足度の向上
自分の能力や適性に応じた仕事ができるため、仕事のやりがいや社員のスキルアップが実現します。仕事に対する満足感や、会社へのエンゲージメントが高まります。
また、タレントマネジメントでは、会社が社員の経歴や能力を把握した上で評価を行います。年功序列やチームの成績ではなく、自分の能力や成果に応じた合理的な評価が得られるため、社員の納得感につながります。
能力に適した人員配置が可能になる
タレントマネジメントによる人材活用においては、それぞれの社員の能力に適した人員の配置が行われます。部署やプロジェクトの特性に合致した、活躍できる社員を配置できるため、チーム全体のパフォーマンス向上を図れます。
人材の長期的な活躍
タレントマネジメントは、長期的な人材活用の面でもメリットがあります。社員が自分に合った部署で力を発揮しながら成長できるため、会社の中で、能力や、やりたいことに応じたキャリアビジョンを立てられます。会社側だけでなく、社員が社内で長く活躍するイメージを持てるため、離職の防止にもつながります。
タレントマネジメントのデメリット
一方で、タレントマネジメントには注意しなければならないポイントやデメリットもあります。
社内への浸透に時間と手間がかかる
タレントマネジメントは、まだ日本では一般的ではない人事の考え方です。そのため、仕組みやメリットについて社内に理解を深め、浸透させるためには手間がかかります。タレントマネジメントを効果的に運用するためには、個人のスキルなどに関する情報収集が不可欠。社員の協力を得るためにも、社員が受けるメリットや運用ルールについて、丁寧に説明を行うことが重要です。
社員ひとりひとりの管理が複雑化
タレントマネジメントを行う上では、社員ひとりひとりの能力に関するデータを管理し、運用することが求められます。また育成プログラムも、ひとりひとりに合った内容を提供する必要があります。年次や部署ごとにある程度まとまった管理が行える従来のメンバーシップ型雇用よりも、人事業務が複雑化することは、タレントマネジメントのデメリットです。
システム導入時のコストがかかる
新しい人事制度に見合ったシステム導入のコストがかかる点も注意が必要です。タレントマネジメントに必要な社員の情報の管理や分析をサポートするツールが、「タレントマネジメントシステム」です。社員プロフィールの一括管理や評価などが行えますが、システムの費用や、導入・メンテナンスの手間がかかります。導入時にコストや人手が必要な点もチェックしておきましょう。
タレントマネジメントの導入ステップ
では、タレントマネジメントはどのように導入すればよいのでしょうか。必要なステップを解説します。
タレントマネジメント導入の目的の明確化
まずは、自社がタレントマネジメントを導入する目的を明確にしましょう。経営上の課題や、現在のマネジメントや人材育成上の解決すべき問題を整理します。自社の人事戦略において、タレントマネジメントによってどのような成果を出したいのか、ゴールを定めましょう。
タレントマネジメントに即した評価制度・育成計画の構築
タレントマネジメントの体制に即した人事評価制度を構築しましょう。成果や能力に応じて、社員をどう評価して報酬に反映させるかという、合理的なルールを定めます。社員が自らの能力を発揮して、モチベーション高く働き続けるためにも、適切な評価がなされる環境を整備することが不可欠です。人材の採用方針や、研修やOJTを活用した育成計画も構築しましょう。
社員の能力の把握とデータ化
社員の能力などを詳しく把握して、データ化します。学歴や経歴、資格やこれまでの成果など、人事情報を収集しましょう。人事担当やリーダーが人材の情報を正しく知り、社員の成長に応じて情報をアップデートしていくためにも、データはシステム上で一元管理するのがおすすめです。
人材の配置・活用
把握した社員の能力に基づいて、ひとりひとりに合った部署やプロジェクトに個人を配置します。社員がそれぞれの能力を発揮して活躍し、成長できる環境を選びましょう。社員を活用しながら、その環境でモチベーションを保ち、能力を発揮できているか、定期的にチェックすることも重要です。社員の成長や状況に応じて、配置転換も検討しましょう。
効果のチェック・体制の見直し
タレントマネジメントの効果を測り、マネジメント方法を改善していくことも大切です。社員ひとりひとりの成果とチームやプロジェクトへの貢献度から、運用の効果を測りましょう。マネジメント体制や育成計画、社員データの精度などを見直していくことが、タレントマネジメントを成功させるために不可欠です。
【まとめ】マネジメントに新しいスタイルを取り入れよう!
組織重視ではなく、個人の能力発揮にスポットを当てて人材を活用するタレントマネジメント。会社全体のパフォーマンスを向上させたい企業だけでなく、人材が育たない、離職率が高いなどの人事面の課題を抱える経営者にとっても、自社のマネジメント方法を見直すヒントになるのではないでしょうか。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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