助成金を有効活用しよう!?人材開発支援助成金?
2019年09月26日 07:00
この記事に書いてあること
IT化やグローバル化といった市場環境の変化や、労働力不足などによる先行きの不確実性が懸念される昨今、会社の生産性を継続的に上げるための手段として、人材の育成や社員一人一人のスキルアップが求められています。しかし、その実現には費用がかかるもの。今回は、そうした人材開発における経費負担を補う「人材開発支援助成金」について見ていきたいと思います。
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金とは、企業が雇用する労働者に対して職業訓練などを実施した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度のこと。主に人材確保で精一杯の中小企業に向けた制度として位置づけられており、人材育成やキャリアアップによって企業の生産性向上を狙うものです。
人材開発支援助成金は、平成29年3月までは「キャリア形成促進助成金」という名称でしたが、同年4月より現在の名称へと変更。そのタイミングで、コースの廃止や再編が実施され、労働生産性の向上(生産性要件)に応じて助成金が割増されるようになりました。
人材開発支援助成金の7つのコースについて
人材開発支援助成金には、7つのコースがあります。各コースについて詳しく見ていきましょう。
(1)特定訓練コース
特定訓練コースの助成メニューは、以下の7種類です。
?労働生産性向上訓練
職業能力開発促進センター等が実施する高度職業訓練や、事業分野別指針に定められた事項に関する訓練、専門実践教育訓練または特定一般訓練、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練等を実施することで助成が受けられます。
?若年人材育成訓練
採用5年以内かつ35歳未満の若年労働者に対する訓練を実施した場合に助成が受けられます。
?熟練技能育成・承継訓練
熟練技能者の指導力強化や技能承継のための訓練、認定職業訓練を受講する場合に助成が受けられます。
?グローバル人材育成訓練
海外関連の業務に従事する従業員に対して訓練を実施した場合に助成が受けられます。
?特定分野認定実習併用職業訓練、?認定実習併用訓練
??はいずれも厚生労働大臣の認定を受けたOJT(On the Job Training)を実施した場合に助成が受けられます。OJTとは、企業の事業活動内で行われる実務訓練を指します。
?中高年齢者雇用型訓練
直近2年間に継続して正規雇用されたことのない、45歳以上の新規雇用者等を対象としたOJT付き訓練を実施した場合に助成が受けられます。
(2)一般訓練コース
特定訓練コース以外の訓練を実施する場合に助成されます。
(3)教育訓練休暇付与コース
有給教育訓練休暇などの制度、または120日以上にわたる休暇が取れる「長期教育訓練休暇制度」を導入し、労働者が該当する休暇を取得して訓練を受けた際に助成されます。
(4)特別育成訓練コース
有期契約労働者の人材育成である一般職業訓練、有期実習型訓練、中小企業等担い手育成訓練を実施する場合に助成されます。
(5)建設労働者認定訓練コース
職業能力開発促進法(能開法)による認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の職業訓練が対象です。
(6)建設労働者技能実習コース
労働安全衛生法に基づく教習・技能講習・特別教育や、能開法に規定する技能検定試験のための事前講習、建設業法施行規則に規定する登録基幹技能者講習などが対象です。
(7)障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発訓練施設等の設置や、障害者職業能力開発訓練運営費(人件費や教材費等)が対象です。
適用条件
人材開発支援助成金はコースごとに条件が設けられていますが、全てのコースに共通する要件については以下の9項目となっています。
1.雇用保険適用事業所の事業主
2.人材育成制度を新たに導入し、その制度を雇用する被保険者に適用した事業主
3.事業内職業能力開発計画を作成し、雇用する労働者に周知している事業主
4.職業能力開発推進者を選任している事業主
5.対象となる労働者の雇用開始日の前後6ヶ月間に、事業主の都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていない事業主
6.対象となる労働者の雇用開始日の前後6ヶ月間に、特定受給資格者となる離職理由の被保険者数が、雇用開始日における被保険者数の6%を超えていない事業者
7.助成の適用を受ける期間、適用される被保険者に所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額を支払う事業主(無給の教育訓練休暇等制度を除く)
8.助成金の支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備し、5年間保存している事業主
9.助成金の支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じ、実地調査などの審査に協力する事業主
生産性を上げると助成金が増える?
前述の通り、生産性の向上は、事業所や組織だけではなく、労働人口が減少している我が国にとって必要不可欠です。そこで、国は事業所における生産性向上の取組みを支援するために、生産性を向上させた事業所に対して助成額を割増しています。
この生産性の向上は、「生産性要件」で計られます。「生産性要件」は、行政が用意した「生産性要件算定シート」に記入し、計算を行います。具体的には、まず生産性を以下の計算式で算出します。
付加価値(人件費+滅価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課+営業利益)÷雇用保険被保険者数=生産性
コースごとに生産性の比較方法が異なりますが、例えば特定訓練コースでは、ここで算出された数字(生産性)を、3年前のものと比較し、伸び率を以下の計算式で算出します。
(直近の生産性-3年前の生産性)÷3年前の生産性=生産性の伸び
こうして算出された数字が、3年前と比較して6%以上伸びていれば「生産性要件を満たした」と判断され、助成金の割増対象となるのです。またコースによっては、3年前に比べて1%以上6%未満の伸び率でも、金融機関から「事業性評価」を得ていれば生産性要件を満たしていることになります。
コースごとの詳細な条件は、厚生労働省の情報を確認しましょう。
申請方法
人材開発支援助成金は、それぞれのコースによって異なる点もありますが、基本的には以下の流れで申請します。
1.事業所が訓練計画を作成し、実施する1ヶ月前までに管轄都道府県の労働局に提出。
2.提出した訓練計画に則って、訓練を実施。
3.訓練終了後、2ヶ月以内に支給申請書を、訓練計画を提出した労働局に提出。
4.審査通過後、事業主の指定した口座に助成金が振り込まれる。
ただし、特定訓練コースについては、訓練計画の提出前に厚生労働省から「実践型人材養成システム実施計画認定通知書」の交付が必要となる場合があるため、注意が必要です。
その他にはこんな助成金も
今回は「人材開発支援助成金」にスポットを当てましたが、例えば先ほどの「生産性要件」を設定している労働関係助成金としては、他にも以下のようなものがあります。
ぜひ、自社のニーズにあった助成金を探してみてください。
●再就職支援関係:労働移動支援助成金
●転職・再就職拡大支援関係:中途採用等支援助成金
●雇入れ関係:地域雇用開発助成金
●雇用環境の整備関係:人材確保等支援助成金、65歳超雇用推進助成金
●仕事と家庭の両立関係:両立支援等助成金
●キャリアアップ・人材育成関係:キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金
●最低賃金引き上げ関係:業務改善助成金
助成金を上手に活用しよう
企業の成長をバックアップする助成金はいろいろとありますが、「人材開発支援助成金」では企業の成長を促す従業員のキャリアアップを軸にしています。従業員とともに企業が継続的に成長していくためにも、「人材開発支援助成金」の導入を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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