ストレスチェック制度を職場改善につなげる具体的な取り組みとは?

From: 働き方改革ラボ

2022年09月15日 07:00

この記事に書いてあること

2015年から、従業員50人以上の企業に実施が義務付けられているストレスチェック。実施企業は8割以上にのぼっているものの、検査結果を効果的に活用ができていない企業もあるのではないでしょうか。そこでこのコラムでは、ストレスチェック制度の概要をおさらいした上で、ストレスチェック結果を有効活用するための「集団結果分析」のメリットや、ストレスチェックを職場環境改善につなげる具体的な取り組みを解説します。

ストレスチェック制度とは?

2015年12月1日施行の労働安全衛生法改正で、従業員50人以上の事業所に対して、1年に1度ストレスチェックを行うことが義務付けられました。ストレスチェックとは、ストレスに関する質問表に社員が回答することで、個人のストレスの状況を調べる検査です。社員のうつ病などのメンタルヘルス不調を防ぐとともに、企業の職場環境改善を実現するために制度が定められました。

会社で働く人のメンタルヘルスケアは、個人のストレスへの気付きや対処、また職場環境改善によって体調不良を未然に防ぐ「一次予防」と、メンタルヘルス不調を早期発見して適切な対応を行う「二次予防」、また、不調により休職する社員の職場復帰を支援する「三次予防」に分類されます。ストレスチェック制度は、この3段階の取り組みのうち特に「一次予防」の強化を目指すものです。具体的には、社員のストレスを定期的に検査し、個人に結果を知らせることでストレスへの気付きを促すことで、心の不調を防ぎます。さらに、結果分析で集団のストレス要因を把握し、職場環境の改善や医師による指導につなげるなどの取り組みで、働く人のメンタルヘルス不調に対処するのが、制度の目的です。

ストレスチェックの実施方法

では、ストレスチェックは具体的にどのように進めればよいのでしょうか。まず、会社はストレスチェック制度に関する基本指針を定めます。衛生委員会での審議や社員への説明・情報提供を経て、産業医や保健師などが、ストレスチェックを実施します。検査は、一般定期健診と同じタイミングで実施することが可能です。

ストレスチェックは、質問表を社員に配布し記入してもらう形で行います。オンラインでの調査も可能です。内容は、?ストレスの原因に関する質問事項、?ストレスによる心身の自覚症状に関する質問事項、?労働者に対する周囲のサポートに関する質問事項の、3種類の質問が必須です。どんな質問をすればよいかわからないときは、厚生労働省が推奨する57項目の質問表が使えます。

ストレスチェック制度 簡単!導入マニュアル│厚生労働省

検査後、回答に基づくストレスチェックの結果を本人に通知します。「医師による面接指導が必要」という結果が出た社員に対しては、本人から申し出があった場合に、医師の面接指導を実施します。面接の結果、医師がメンタルヘルス改善のため労働時間の短縮などが求められると判断した場合は、会社は必要な措置を実施します。

ストレスチェックの効果を高める集団結果分析とは

ストレスチェックの実施に加えて、ストレスチェック結果の集団分析と職場環境改善の取り組みが、努力義務として定められています。集団分析とは、医師などのストレスチェックの実施者が、ストレスチェック結果を部署、課、グループなどの集団ごとに集計・分析すること。チェック結果から、その集団がどのようなストレス要因を抱えているのか把握して、会社が職場環境改善のための具体策を進めます。

ストレスチェック制度を、この集団分析や職場環境改善を含む「PDCA」のサイクルをまわしながら実施していくことで、会社はより高い効果を得られます。毎年1回、ただ実施するだけでなく、ストレスチェックと面談の実施状況、改善施策の内容などを点検して、次のストレスチェックの実施体制や方法に活かすことで、継続的に職場環境を改善できます。

集団結果分析のメリット

努力義務として定められているストレスチェックの集団分析は、働く人や労働環境改善を目指す会社にとって、さまざまなメリットがあります。

部署や課などの集団にどんなストレス要因があるか把握できるため、業務量の調整や、効果的な配置転換などの具体的な対策を検討することができます。働く人のストレス軽減だけでなく、部署やチームの連携強化や業務フロー改善による、生産性の向上も期待できます。

うつなどのメンタル不調や、職場への不満につながる問題に早めに対処することで、不安や負荷について発信しにくい新入社員や若手社員の思わぬ離職も防ぐことができます。ストレス要因を減らすことで、健康に長く働き続けられる会社になれば、人材が定着するというメリットも期待できます。

H2 ストレスチェック結果を活用した具体的取り組みとは?

では、ストレスチェックや集団分析の結果は、具体的にどのような取り組みに活用することができるのでしょうか。職場改善のための具体策をご紹介します。

適切な助言が受けられる1on1制度の導入

社員が不安なことや問題点について上司に直接伝えられる場を設けることは、ストレス低減につながる取り組みのひとつです。1週間に1度実施する1on1など、社員が定期的に話をできる機会を作りましょう。日ごろから社員が、ストレスについて相談しやすい環境を作っておくことが大切です。

なお、社員のプライバシー保護のため、ストレスチェックの質問表による個人の結果は第三者や人事権を持つ人が見ることは禁止されています。チェック結果や医師との面談結果などを理由にした不当な取り扱いも禁じられているため、注意しましょう。

休暇取得の推進

ストレスの原因となる過重労働や長時間労働を防ぐ取り組みも必要です。十分な休息を確保しながら健康に働くために、休暇取得を推進しましょう。

法律で定められた休日を確実に取得するだけでなく、有給休暇を希望通りに取れる環境を整えることも大切です。リフレッシュ休暇などの休暇制度の新設や、まとまった休暇を、社員が順番に計画的に取得できるようなルール作りも、休暇取得促進に有効です。

衛生設備や空調環境などの快適化

人間関係や仕事内容、仕事量だけでなく、働く環境を見直すこともストレス低減に役立ちます。冷暖房設備の不備による体感温度のストレスが、働く人の体調に関係することもあります。また、照明が暗い、明るすぎるなどの悪い視環境や、周囲の音がうるさいなどの音環境もストレスにつながります。空調や照明などの設備を、働く人にとって快適な状態になるよう整えましょう。

清潔で使いやすいトイレ、広さが十分に確保された更衣室、快適な休憩場所など、社員が安心して利用できる衛生設備や福利厚生設備も、ストレス対策に不可欠です。

セルフケア研修の実施

ストレスを生まない職場作りには、社員が自分で心と体の健康を維持するための自己健康管理も欠かせません。社員がセルフケアに役立つ知識を身につけて活用できるように、情報発信や研修を行いましょう。ストレスに気付くセルフチェックポイント、ストレスへの対処法、社員が利用できる保健指導など、定期的に社員が学べる機会を設けることが大切です。

心の悩みを受け付ける相談窓口の設置

メンタルヘルス不調や、社員の休職、退職を防ぐためには、心の悩みや、抱えるストレスについて社員が相談できる体制を確保することも有効です。社内のメンタルヘルス相談窓口を設けるなどして、上司や先輩、同僚などに言いづらい問題や、人間関係などの悩みを相談できる環境を整えましょう。窓口の運用は、社員のプライバシーを保護し、不当な配置転換などの不利益な取り扱いがないように行うことが必須です。社員が困ったときにいつでも、安心して相談できる環境を設けましょう。

小規模事業者のストレスチェック導入時の注意点

社員数が50人に満たない会社には、ストレスチェックは努力義務とされていますが、政府は小規模事業者のストレスチェックを促進するため、公的援助制度や負担軽減措置を準備しています。社員が安心して長く働ける職場作りのために、小規模事業者も支援制度を活用してストレスチェックを進めましょう。

厚生労働省は、産業医をはじめとした産業保健スタッフがいないなど、ストレスチェックの体制が整っていない企業は、検査から職場環境改善までを一度に実施するのではなく、段階的に行うことを勧めています。1年目は制度導入、2年目はストレスチェックの実施+集団分析、3年目は職場環境改善に着手というように、1年ごとに規模を広げていくことで着実に実施ができます。

ストレスチェックの具体的な進め方がわからない場合は、産業保健に関する研修や助言などを無料で受けられる産業保健総合支援センター・地域産業保健センターへの相談や、労働者健康安全機構の各種助成金を活用するのがおすすめです。

健康な心で働くための職場環境改善を進めよう!

ストレス要因を見つけて対処することで、働きやすい職場を目指すストレスチェック。職場環境改善を続けるためには、ご紹介したストレスチェックに加えて、メンタルヘルス以外の角度からの職場環境見直しも欠かせません。心の健康を守る取り組みと、社内の仕組みやルールという両方の観点から、働き方改革を進めていくことが大切です。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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