働き方改革は第二章。生産性向上の考え方/豊田健一氏

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生産性の向上とは、効率性の向上と創造性の向上

働き方改革は第二章、そのように言われます。テーマは生産性の向上です。生産性の向上をさらにブレイクダウンするとどうなるのか。立正大学の吉川教授の秀逸な言葉があります。

「1時間あたりに作れるまんじゅうの数を増やすのが技術的な意味での生産性上昇。世の中の変化に合わせて売れるまんじゅうを新たに作り出すという生産性の上昇もある」。前者が、「効率性」の向上、後者が、「創造性」の向上となります。既存業務を徹底的に効率化し、時間を作り、新たな取り組みにチャレンジする。新たなチャレンジとは、まさにイノベーションの創出です。

このイノベーションとは、新たな組み合わせと言われます。何も全く新しいことを生み出すことでもありません。既にある技術や考え方、ナレッジの組み合わせによりイノベーションが生じるのです。ということは、多種多様な技術や考え方、ナレッジが存在すれば、その分、イノベーション創出の可能性が高まるわけです。先の生産性の向上、その中でも、創造性の向上については、この多様性が必要となるのです。

創造性の向上を目指す意味での多様性の向上

日本での人口減少、労働力の減少。まさにこれこそが、働き方改革を進める最大の要因です。どのような状況、環境、バックグラウンドを持っていたとしても働ける、そのような働き方の多様性を組織が持っていないと、組織が回らなくなります。また、いつ何時、大きなライフイベントにより、現状の条件では働き続けられなくなる、という事態も発生しえます。人材採用の面、人材の囲い込みという点で、働き方の多様性が必要となるのです。

働き方の多様性により、人材の多様性も確保されることになります。さまざまな価値観を持つ人材、さまざまなナレッジを持つ人材が組織に存在することになります。そして、これは、イノベーション創出の条件である、人材の多様性をもたらしてくれます。この働き方の多様性により、多様な人材が存在し、イノベーションに結び付く。働き方改革をどのように定義づけようと、最後は業績貢献に結び付かなければ、企業としては意味がありません。働き方改革は、本質的な意味で、多様性の向上を目指すことになるのです。

生産性の向上のための人づくり革命

一方で、生産性の向上には、実際に仕事を行うワーカーのスキルアップも必要です。そのために「人づくり革命」というキーワードが発信されました。しかし、実はそれだけではない、危機感が国を動かしているのです。

シンギュラリティという言葉をご存知でしょうか?コンピューターが人間を超える日。それが2045年に来るといわれています。賛否両論ありますが、日本のメガバンクが、大規模な人員削減を予定したり、変なホテルが登場したり、着実にその世界が近づいていることが体感できるでしょう。

第四次産業革命と言われるよう、AI、IoT、ビックデータ、ロボット、そして私たち間接部門での関心事、RPA。今まで人が対応していた仕事がどんどんとシステムに置き換えられています。つまり、いままでのスキルだけでは、いつシステムに取って代わられるかが分からず、食べていけないのではないかという危機感です。

リンダ・グラッドンさんのベストセラー『ライフ・シフト』により火がついた、「人生100年時代」。国も「人生100年時代構想会議」を立ち上げて議論しています。国の働き方改革の推進者、経済産業省の産業人材政策室の室長(※当時)、伊藤禎則さんを取材した際は、「一億総学び」という言葉を使っていました。

人生が100年あるとしたら、どうなるのでしょうか?65歳で定年を迎えてもまだ、35年。80歳まで働き続けることになるでしよう。その場合、先に記したシンギュラリティがまた影響してきます。いまのスキルが、そのままずっと、使えるかどうか、という問題です。 

経産省の伊藤さんはお話されました、「複数のプロフェッショナル性を持たないと、食べていけない」。技術の進展により、スキルの陳腐化が早まる現在、いくつもの使えるスキル、プロフェッショナルな技術や知識を保持していないと、80歳まで仕事がし続けられない可能性があります。この多様なスキルを身につけることを、リンダ・グラッドンさんは、「変身資産」と呼んでいます。変わり続ける能力のことです。

さらに、伊藤さんは「人生はすごろくから、ポケモンGOの時代」、そのように表現されました。すごろくは、サイコロを振り続けていれば、いつかはゴールに到達します。しかし、現在は、人生すごろくの途中で道がなくなっている場合、そもそもゴールがなくなってる場合もあります。誰でもが最後のゴールまで到達できるとは限らないのです。

そこで、ポケモンGOのように、いろいろなところに出ていって、多様な出会いの中で、自らのスキルを、まさに「ゲット」していく。いくつものスキルをゲット(習得)して、場面場面に応じてそのポケモン(スキル)で勝負(仕事)をしていくことが大事となるのです。

働き方改革は、生産性、多様性、自律性の向上

一方で、働き方の多様性は、従業員に自律性を求めることになります。なぜなら、自由に働き方を選べるわけですから、主体的に、自律的に動かないと、働き方改革の意味がありません。ある意味、「自由に選べ」は、何も考えていない者にとっては酷な制度かもしれません。

副業が多くの企業で進む理由として、この自律性の向上があります。副業制度を活用して、起業しようものなら、通常の会社の仕事では体験できないような修羅場を経験することができます。結果、ビジネスパーソンとして大きな成長が期待できます。また、多くの社外人脈や、ナレッジを獲得し、それを会社の本業に還元してくれる可能性もあります。この副次的効果にを求め、副業を容認する企業は多いはずです。

つまり、働き方改革は、そのベースとして、従業員の自律性がないと、多様な働き方は効果がでませんし、さらに、自律性が高まることにより、その従業員を基点として、社外につながる、いわゆる、オープン・イノベーションの可能性があるのです。

働き方改革は生産性の向上を目指すものであり、日本の社会状況により、働き方の多様性が必須であり、その効果を上げるには従業員の自律性が求められる、という流れになるのです。そして、生産性、多様性、その結果の自律性の向上により、イノベーションの創出の可能性が高まり、企業業績の向上に繋がる、ということになります。

いま多くの企業で進みつつある働き方改革。この三つのキーワード、生産性、多様性、自律性を念頭に進められると良いでしょう。

>第2回 テレワーク。そもそもの意味合いと、導入のポイント(11月予定)

著者プロフィール

豊田健一(とよだ けんいち)

現職
株式会社月刊総務 取締役
『月刊総務』 編集長

経歴
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験後、ウィズワークス株式会社入社。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』の取締役、事業部長兼編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの理事や、総務育成大学校の主席講師、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著作物
『マンガでやさしくわかる総務の仕事』
『経営を強くする戦略総務』

関連サイト
『月刊総務』 編集長Twitter
月刊総務オンライン

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