健康経営促進のためにオフィスの力を最大限活用する/豊田健一氏

From: 働き方改革ラボ

2019年02月22日 07:00

この記事に書いてあること

Well-Beingとバイオフィリアの広まり

Well-Beingという考え方が広まっています。定義としては、「身体的、精神的、社会的に良好な状態」となります。社会的に良好というのは、人間関係的にも落ち着いている、社内コミュニケーションが活性化している状態と考えて良いでしょう。

このWell-Beingを維持促進するために、日本流の健康経営が進められています。それが経済産業省が進めている健康経営銘柄やホワイト500と言われるものです。健康診断をしっかりと受けさせて、そのデータに基づく個別の健康指導や、健康に関する福利厚生制度を備えた企業を評価する取り組みです。

それらがソフト的な健康経営だとしたら、いま総務業界的に取り組み始められているのが、オフィスによる健康経営の促進です。バイオフィリアという言葉を聞いたことがあるでしょうか。言葉は知らなくても、いま、オフィスに観葉植物、グリーンがたくさん配置されているのを見かけるでしょう。ハードとしての健康経営が進み始めているのです。

バイオフィリア、これは「自然への愛」と言われます。そもそも人間の生息地は自然です。私たち現生人類、ホモサピエンスが誕生したのが20万年前。人口の建造物に住み始めたのは、たかだか2万年前。18万年の間、人類は、岩陰、木陰、洞穴で暮らしていました。

つまり、人間はそもそも自然の中で暮らしてきており、自然の中の方が生産性が高まる、そのように考えることがバイオフィリアという考えです。ですから、観葉植物をたくさん設置したりしているのです。さらに、自然の香り(アロマ)を噴霧したり、ハイレゾの自然音をオフィスの中に流したりするのです。

実際、バイオフィリアオフィスの方が生産性が高まった、そのようなデータがアメリカでは公表されていたりします。自然で健康的なオフィスが仕事の能率を高めている、そのよう事実があるのです。これがハードとしての健康経営の促進の意味するところです。

オフィスのパワーを再認すべき

働き方改革や健康経営。ともすると人事部主導で人事的な施策から入ることが多いものです。今回の働き方改革では、総労働時間の抑制から入っているので、それが自然の流れです。しかし、一方で、人事制度は該当者でないと適用しないですし、福利厚生的な制度は、その制度そもそもを知らないと活用することもありません。

ところが、オフィスとなると別です。そのオフィスで働いている人は、必ず、そのオフィスを使わないといけません。つまり、オフィスには強制力があるのです。オフィスを舞台装置と捉える人もいます。従業員はその舞台で演じる役者。舞台が変われば演じ方も変えざるを得ず、オフィスが変われば働き方も変わるわけです。このように、オフィスには大きな力があり、さらに、ホワイトカラーであれば、平日の一日の大半をこのオフィスで過ごすということになります。

その一日の大半を過ごすオフィスが健康的でないと、そこで働く人の健康が保てない、そのような考えで、新たな認証制度がアメリカでできました。

健康的なオフィスの新基準、WELL Building Standard

それが、健康的なオフィスの新基準、WELL Building Standardです。WELL認証といわれる認証制度は、入居者の「健康」に焦点を当てた、建築デザインの新たな評価基準です。日本では一般社団法人グリーンビルディングジャパンが旗振り役となり進めています。

ただ、全世界では既に1000件認証取得がされていますが、日本では正式認証はまだ一件、プレ認証を含めても10件ちょっとです。認証は、プラチナ、ゴールド、シルバーとなり、ビルを建築するゼネコンだけでなく、テナントとして入居する企業も取得可能です。

すでにバージョン2に更新されており、そのバージョン2では、①空気、②水、③食物、④光、⑤活動、⑥温熱快適性、⑦音、⑧材料、⑨こころ、⑩Well-Beingとバイオフィリアの広まり Well-Beingという考え方が広まっています。定義としては、「身体的、コミュニティの10カテゴリー、117項目のチェック項目があり、このチェック項目の数により、先のプラチナ、ゴールド、シルバーの認証がおります。

先に記した、健康経営銘柄が健康経営のソフト的な側面の認証だとしたら、このWELL認証は、ハード的な側面での認証となります。両方を取得でき、それをアピールできれば、新卒採用はさることながら、人手不足時代の大きな差別化要因となるでしょう。

人よりの施策。人事と総務の融合化

以上のように、会社としては、常に「人よりの施策」を考える必要性が求められる時代となってきています。結局、組織は人の集合体であり、その人への配慮がない企業には人材は集まってきません。人事は人、総務は物、という枠組みではなく、どちらも人を意識した施策を考えるべきなのです。

そうなると、今後はもっと、人事と総務双方が協力しあって、人を中心とした施策を一緒に考えることが求められます。人事制度とオフィス施策がリンクしている、双方合わせて効果を発揮するような施策の立案が欲しいところです。

そのためには、お互いが何を考え、何をしようとしているか、情報共有しながら、それぞれの強みを結び付けていくべきでしょう。人事部、総務部ではなく、人事総務部、あるいは、コーポレート部門という名称が多くなっているのは、その表れではないでしょうか。

< 第4回 働く場(オフィス)の仕掛けによる生産性向上

>  第6回 人手不足の解消のための福利厚生施策とそのPR

記事執筆

豊田健一(とよだ けんいち)

現職
株式会社月刊総務 取締役
『月刊総務』 編集長

経歴
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験後、ウィズワークス株式会社入社。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』の取締役、事業部長兼編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの理事や、総務育成大学校の主席講師、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著作物
『マンガでやさしくわかる総務の仕事』
『経営を強くする戦略総務』

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