長時間労働削減。仕事の見直しが必須/豊田健一氏

From: 働き方改革ラボ

2018年12月14日 07:00

この記事に書いてあること

労働時間が短くなるのは、結果である

法律も制定され、いよいよ長時間労働削減は待ったなしの状況となってきました。さまざまな長時間労働削減の施策が行われていますが、労働時間削減は目的ではありません。それはあくまでも結果なのです。処理すべき業務量が変わらないまま、やみくもに労働時間を削減しても、企業活動が縮小してしまうだけ。

これは、ある著名投資銀行のアナリストの言葉。

労働時間を減らせば生産性が上がるという、短絡的な考え方が目立つ。これは逆。生産性が上がったときに労働時間が減るのだ

つまり、長時間労働削減を行うには、いま行っている業務の生産性を向上させることが、本質的な解決手段なのです。そこに手を付けないと、溢れた仕事を、いつやるか、どこでやるか、という問題になってしまい、結果、従業員を追い込んでしまう結果となるのです。

さらに、多くの企業で行われている、長時間労働削減の施策。往々にしてあるのが、その施策を行うことが目的となってしまい、それによるしわ寄せを考慮しないことです。特に、管理部門である人事部の志向として、施策の実施が目的化してしまうことがあります。

長時間労働削減の施策が悪いということではありません。考えたいのは、それを実施することで、自らの業務を見直す、そのきっかけとして捉えることだと思います。ノー残業デイがあるのであれば、それに向けて、業務の進捗を厳しく見ていく。テレワークを実施するのであれば、外でできる仕事を切り出しておく。そのように、施策により、業務改善を行う。改めて業務の意味と目的を才覚にしてみる。そのような見直す姿勢、取り組みが最も大事となるのです。

長時間労働削減にはトップの関与が必要

先に記した業務の見直し、それによる生産性の向上が実現したとしても、次に立ちはだかる障害は、社風や職場の風土です。「長時間働くことが美徳」という風土はまだまだあるものです。特に、意思決定者、管理監督者クラスには、「24時間働く」リゲイン世代が多いものです。このような風土を払拭していかないと、時短施策は進めていきにくいものです。

ここは経営トップが率先して進めていく必要があります。「早く帰ることはいいことだ」、「早く帰る社員は優秀である」、そのような発言をし続けていく。さらに、トップ自らが、定時に消灯、帰路につく。ある企業では、就業時間後に働いている従業員に、「なぜ残業しているのか」を一人一人訪ね歩いている、という事例もある。

このような活動を地道に、そして継続的に続けていくことが、まずは大事なのです。いつまでもダラダラと仕事をしていることは「悪」である、という雰囲気づくりがまずは必要でしょう。

ある企業では、10時間残業してしまうと、その理由と今後の対策をメンバーが課長に説明する、20時間超えると、課長が部長に説明する。40時間を超えると、部長が役員に説明する。それ以上超えてしまうと、役員が社長に、そのメンバーがなぜそんなに残業したかの理由、それと今後の対策について社長に説明する、そのようなルールとなっています。

やってしまった残業のお叱りよりも、今後どのようにしていくかが重点的に話し合われるそうです。さらに重要なことは、それだけ残業したメンバーの仕事の中身を上層部が把握することです。知らなかったと過労死を招くこともなく、しっかりと対策が打てることにポイントがあります。

長時間労働削減の施策

有給休暇の計画的取得も効果があります。年間の有給日20日間を一挙に利用しようとするから、なかなか取り切れませんが、月に2日程度であれば、事前に予定しておけば、そう難しいものではありません。ある企業では、年度初めに取得予定日を確定し、部内にも共有します。

?しかし、計画的に取得し続け、年度末に全て利用できるペースだったときに、インフルエンザにり患してしまうような懸念があると、なかなか順調に利用し続けるのは、正直怖いものです。そこである企業では、バックアップ休暇として、通常の有給休暇とは別に、病気欠勤のため5日間、足りない場合はバックアップしてくれる制度があります。これにより、安心して、20日間フルに計画的に有給休暇を利用しているようです。

その他、少し強引な施策としては、時間を定めての強制消灯や、パソコンの強制シャットダウンを取り入れている企業もあります。17時に終業時間だとした場合に、16時にアラーム、16:30、16:40、16:50、以降一分おきにアラームがパソコン上に現れるとか。慌ただしいですが、効果はあるようです。

よくあるノー残業デーも、特定の日に全員ではなく、部署ごとに曜日をばらしているところもあります。また、月間で何日ノー残業デーを実施するとか、それぞれの実情にあったように運用しているところもあります。国が進めているプレミアムフライデーも、企画担当者によれば、なにも月末の金曜日に実施してもらう必要はなく、どこでもいいので、そのような日を設定しては、という意図のようです。

このように長時間労働削減の施策は、いろいろとありますが、大事なのは、その実施が目的ではないことです。それをすることで、自らの仕事を見直し、生産性を向上させ、結果、労働時間の削減に結び付く。その流れであることを意識することが大事となります。

< 第2回 テレワーク。その導入でのポイントとは

> 第4回 働く場(オフィス)の仕掛けによる生産性向上

記事執筆

豊田健一(とよだ けんいち)

現職
株式会社月刊総務 取締役
『月刊総務』 編集長

経歴
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験後、ウィズワークス株式会社入社。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』の取締役、事業部長兼編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの理事や、総務育成大学校の主席講師、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著作物
『マンガでやさしくわかる総務の仕事』
『経営を強くする戦略総務』

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