リモートワークの活用で高齢者雇用の門戸はどこまで開かれるのか
2019年10月15日 07:00
この記事に書いてあること
日本では近年、少子高齢化が急速に進み、生産年齢人口の減少は避けられない状況です。働き手の確保が大きな問題となっている今、働き方改革でも推進されている取り組みの一つが、「リモートワーク(テレワーク)」。多様な働き方に応じた柔軟な雇用体系として、導入する企業も増え始めており、この「リモートワーク」が高齢者雇用の鍵になるという声も。
今回は、高齢者雇用の現状とリモートワークの活用についてみていきましょう。
高齢者雇用の現状
急速な高齢化の進行に対応するため、日本では2013年、一部の例外を除いた希望者全員に対して65歳までの継続雇用制度の導入を義務付ける改正法が成立しています。この改正は、定年の65歳への引上げを義務付けるものではなく、65歳までの雇用機会の確保を目的としたものです。
また最近では、定年の引上げや、定年制度そのものを廃止するなどの取組みを行った企業に対しては、国が広く助成を行っています。
2018年における65歳以上の人口の割合は28.1%と過去最高となり、今後もこういった傾向は続くとみられています。少子化の影響もあり現役世代の負担増加は避けられず、雇用制度の見直しは必須といえるでしょう。
テレワークとリモートワーク
テレワークとはICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の総称です。テレワーク(tele=離れた場所で/work=働く)はアメリカで生まれた言葉で、テレコミューティング(telecommuting)とも呼ばれます。
なお、アメリカではテレワークとリモートワークに以下のようなニュアンスの違いがあります。
テレワーク
あくまでもオフィスで働くことがメインで、オフィス以外でも働く場合があるときに使われる。必要に応じて出社する働き方。
リモートワーク
遠隔(remote)で働くことのニュアンスが強い。自宅やレンタルオフィスなど、出社せずにオフィス以外の場所で働くことが基本。
オフィスに出社する必要がなく、例えば自宅で働くことを主にする「リモートワーク」は高齢者雇用にマッチする働き方といえるかもしれません。
ちなみに日本では、テレワークもリモートワークも基本的には同じ意味の言葉として捉えられています。しかし、行政機関や自治体では「テレワーク」、エンジニアやデザイナーは「リモートワーク」をより使う傾向が強く、職種によって使い分けがされることもあるようです。
高齢者雇用とリモートワーク
それでは、リモートワークは高齢者雇用にどのようなメリットをもたらすのか、具体的にみていきましょう。
働き手のメリット
・通勤時の電車の混雑等による心理的、体力的な負担が軽減できる。
・自宅など、慣れた環境で仕事をすることができる。
・通勤時間がない(少ない)ため、その分の時間を個人の活動に活用できる。
雇用側のメリット
・オフィスの座席数や規模を拡大することなく人員を増員(採用)できる。
・交通費等の経費が削減できる。
・居住地等にとらわれずに、業務に熟練した経験豊富で優秀な人材の確保ができる。
こうしたメリットの一方で懸念されるのが、リモートワークに欠かせないITに関する高齢者のリテラシーです。
高齢者のインターネットの利用状況については、2016年の総務省「通信利用動向調査」によると、60代では75.7%、70代では53.6%の利用率となっています。また、MMD総研の「2016年シニアのスマートフォン利用に関する調査」では、スマートフォンを利用する60~79歳の男女で、Facebookを利用している人は86.6%にのぼるとのこと。こうしたデータからも、ITリテラシーはシルバー世代にも浸透してきていることがわかるでしょう。
さらに、30年ほど前にパソコンが普及し始めた当時に20代?30代の社員であった熟練の人材も今後は増えていくと予想されるため、こうした人材の確保にも高齢者雇用の見直しが必要となってきます。
高齢者を雇うことの大きなメリットは、経験豊富で優秀な人材を確保できるということ。リモートワークは、今後企業にとって見逃せない制度になるといえるかもしれません。
リモートワーク(テレワーク)の現状
国は、70代まで現役で仕事を続けられる社会環境を目指しており、高齢者採用を現実的にするテレワークへの関心は高まっています。しかし、総務省の「地方創生と企業におけるICT利活用に関する調査研究(平成27年)」によると、テレワークのための制度や仕組みの導入状況について「テレワーク導入済み」と回答している企業はわずか7.9%。「検討している・関心がある」と回答した企業を加えても2割程度にとどまる状況です。
導入に関する助成
リモートワーク(テレワーク)の導入にあたっては、ICT環境の整備や勤怠管理などの問題があり、乗り越えるべき課題が多いのが現状です。ここでは、導入の整備にも活用できる中小企業向けの「助成金」をいくつか紹介します。
IT導入補助金
企業の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助。企業の業務効率化・売上アップをサポート。
ふるさとテレワーク
テレワークにより都市部の仕事を行う場合に、地方のサテライトオフィス等のテレワーク環境を整備する費用を一部補助。(平成30年度予算)
雇用体系の多様化へ
働き手不足の現代社会において、人材確保の要となる「リモートワーク(テレワーク)」。高齢者の雇用においても、メリットを理解し上手に活用することで、採用の促進につなげることが期待できるでしょう。シフト勤務や週5日フルタイム勤務以外の一つの雇用体系として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
一部情報を更新いたしました(2020年5月)
出典:
■人口推計 2018年(平成30年)10月1日現在 概要 :総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2018np/pdf/gaiyou.pdf
■高年齢者雇用安定法の改正~「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止~:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1.html
■インターネット・リテラシー|平成30年版高齢社会白書(全体版) : 内閣府
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_3_2_3.html
■2016年シニアのスマートフォン利用に関する調査 :MMD研究所
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1575.html
■平成27年度版 情報通信白書 第2部 :総務省
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/n4300000.pdf
■事業概要 | IT導入補助金 : 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
https://www.it-hojo.jp/overview/
■ふるさとテレワークとは ? ふるさとテレワーク ポータルサイト :総務省
https://telework.soumu.go.jp/about
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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