【成功事例で見る】働き方改革で業績拡大させる方法とは?

From: 働き方改革ラボ

2022年06月16日 07:00

この記事に書いてあること

新型コロナウイルスの感染拡大によって、急速に広がりを見せた働き方改革。テレワークなどを用いた柔軟な働き方を導入する企業が増えましたが、事業継続のためには働き方改革の推進とともに業績の拡大も進めていく必要があります。今回は、この“働き方改革”と“業績拡大”の2つを両立させる方法について、企業の事例を見ながら、成功のポイントについて解説していきます。

※2021年2月に公開した記事を更新しました

働き方改革が業績拡大につながる理由

働き方改革とは、社員一人ひとりを取り巻く環境に合わせて、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現させるための改革です。2019年の働き方改革関連法の施行から多くの企業が働き方改革に取り組んできていますが、実は働き方改革に成功することで、企業の業績拡大にもつながることがわかっています。働き方改革がもたらす職場への影響と、それに伴う企業の業績拡大につながる理由を4ステップで見ていきましょう。

多様な人材が働ける職場環境になる

働き方改革によるワークライフバランスの実現によって、子育てや介護、怪我や病気の治療といった様々な事情で退職せざるをえなかった方々の活躍の場をつくることができます。社員はやむを得ない事情で退職する必要もなくなったため、今まで通り安定した環境で働くことができます。

企業としても、時間をかけてスキルやノウハウを身につけた社員が働き続けてくれるため、リソース不足を心配することなく業務の続行が可能になります。

生産性が向上する

働き方改革が掲げるテーマの1つに「長時間労働の是正」があります。2019年の働き方改革関連法の施行からは残業時間を「月平均80時間以下・繁忙期では単月100時間未満・年間720時間未満」と規定され、違反する企業には罰則も設けられました。この規定により企業が時間内に従来までの業務量を完了させるためには、作業時間を短縮させるツールの導入や業務フローを今まで以上に効率化させる必要が出てきました。

このような取り組みによって、社員は業務時間内で仕事を終える意識の高まりや、労働時間が減ったことによる余暇と自分の健康の確保、公私の切り分けが確保されたことによる仕事に対するモチベーションの増加といった、職場環境の改善につながる好循環が生まれるようになります。結果として、業務全体の生産性が向上していくようになります。

働き方改革による「長時間労働の是正」については、こちらの記事をご覧ください。

働き方改革関連法で何が変わるの?長時間労働の是正について分かりやすく解説

企業イメージが向上する

業務の生産性が高く、働く人のモチベーションが高い企業は求職者にとって魅力的にうつります。特に多様性ある職場環境の構築によって、今まで獲得できなかった人材へのアプローチができるようになり、良い人材の確保や能力ある社員の定着率が高まっていきます。

良い人材の確保・定着は企業の生産性向上に直結するため、高品質な製品やサービスの提供ができるようになり、クライアントや消費者のイメージアップにもつながります。

企業の成長・業績の拡大が実現する

働き方改革によって多様な人材が働ける環境の構築、ツールの導入や社員のモチベーションの高まりによる生産性の向上、会社のイメージアップによる多様な人材の確保によって、企業規模の成長と業績の拡大が実現できるようになります。

また業績拡大による再投資のチャンスができることで、新たなクラウドツールの導入によるペーパーレス化やさらなる業務効率化、社内のコミュニケーションや人材教育に向けた取り組みができるようになります。

取り組み内容は社内のナレッジとして蓄積していくため、より効率的な職場環境の改善や、従業員がより主体的に経営目標に向けて意欲的な取り組みができる体制構築ができるようになります。このような循環によって、働き方改革は企業の業績拡大への近道となるのです。

業績拡大に向けた働き方改革の取り組み方

業績拡大に向けて、企業はどのような流れで働き方改革に取り組めばよいのか見ていきましょう。

経営トップの判断・発信

企業が働き方改革に取り組むにあたって最も重要なことは、経営トップによる「働き方改革」に取り組む姿勢の社内への発信や、経営や人事の方針として明文化することです。取り組みの目的や必要性は、具体性を持って社員に共有し、納得してもらうことが大切です。

自社の現状の把握・課題の整理

働き方改革に取り組む前に、労働基準法や「労働時間適正把握ガイドライン」、育児・介護休業法などの法令遵守状況についてチェックするようにしましょう。自社の現状把握には、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」や「女性の活躍・両立支援総合サイト」内にある自己診断ツールを利用して、自社の現状把握と課題の洗い出しをするとよいでしょう。

また社内にプロジェクトチームを設置したり、労働組合の話し合いの機会の設定など、社内の意見を広く集める取り組みの推進と体制づくりも重要です。

段階を追って働き方改革に取り組む

社員の理解と自社の課題の整理ができたら、実際に働き方改革への取り組みに着手していきましょう。働き方改革には自社内の状況を把握しながら、段階的に2つの軸に分けて取り組んでいきます。

自社の課題に合わせた取組みに着手

働き方改革の推進にあたって取り組むべき代表例は4つです。

1.長時間労働の見直し

残業を減らす効率的な働き方を推進する取り組みとして、まずは残業が前提となった働き方をしていないかの点検をする。

2.休暇の取得促進、制度の見直し

業務時間内で終わらなかった仕事が休日に皺寄せとなっていないか点検し、社員が休みやすい体制や雰囲気の醸成、社員の意識を変える取り組みを実施する。

3.仕事と生活の両面を支援

社員のプライベートにも企業に柔軟に対応できるように社員のニーズや企業の実態に即した制度や、きめ細かなルールの周知、相談しやすい環境づくりを推進する。

4.女性の活躍促進

女性社員が活躍できるキャリア形成イメージや、意欲を持てるようにする取り組み、女性が管理職として働けるようになるための教育制度やキャリアパスを明示する。

多様な働き方を認める社内の意識・雰囲気の醸成

働き方改革の推進には、制度の見直しだけでなく、社員や管理職を含めた一人一人の意識を変えていきましょう。

具体的には経営トップによるメッセージの継続的な発信や、社員や管理職向けの研修の実施、社内への呼びかけによる周知広報、人事評価の1つに年休取得状況に関する項目の追加などです。社内全体への働き方改革に対する意識の変化と雰囲気の醸成が重要になります。

PCDAを回して継続的に取り組む

働き方改革は導入して完了ではなく、進捗状況を定期的に確認し、問題点があれば見直し改善を繰り返す必要があります。

例えば、社員の労働時間や休暇取得率のデータを毎月把握して、残業が多い社員の管理者からヒアリングを実施したり、逆に残業が少ない社員の管理者からのヒアリングによって、業務効率化によるナレッジの収集が大切です。収集したナレッジを社内全体で共有し、より効率化するためのツール導入や制度の再構築につなげていくとよいでしょう。

働き方改革で業績拡大を後押しする公的支援制度

働き方改革を成功させるためには専門家の力をかりることもできます。ここでは企業の働き方改革を後押しする国の公的支援制度と助成金の2つに分けて解説します。

働き方改革を後押しする主な公的支援制度

働き方改革を後押しする主な支援制度は、「働き方・休み方改善コンサルタント」と「働き方改革推進支援センター」の2つあります。

働き方・休み方改善コンサルタント

ワークライフバランスの実現のため、働き方や休み方の見直しに取り組む企業に対して、各都道府県の労働局では専門家が無料でアドバイスや資料提供などの支援をする「働き方・休み方改善コンサルタント」制度を用意しています。

働き方・休み方改善コンサルタントは、社会保険労務士の資格など企業の働き方改革に関する専門的な知識を持った非常勤の国家公務員です。働き方改革に関する訪問コンサルティングや、社内説明会への講師派遣、社内研修の開催を無料で利用することができます。

働き方改革推進支援センター

中小企業・小規模事業者向けの相談窓口として、厚生労働省が設置している「働き方改革支援センター」も無料で利用することができます。「働き方・休み方改善コンサルタント」と同様に社会保険労務士などの専門家が就業規則の作成方法や、賃金規定の見直し、労働関係助成金の活用などのアドバイスを行っています。

働き方改革を後押しする主な助成金

働き方改革を推進する代表的な助成金は、「両立支援助成金」「時間外労働等改善助成金」「業務改善助成金」の3つです。

両立支援等助成金

育児や介護と仕事の両立や、女性の活躍推進に取り組む企業向けの助成金です。助成金の内容は「育児休業等支援コース」「介護離職防止支援コース」「女性活躍加速化コース」に分かれます。

詳細は「両立支援等助成金ページ」をご覧ください。

働き方改革推進支援助成金

時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業向けの助成金です。

詳細は「働き方改革推進支援助成金ページ」をご覧ください。

業務改善助成金

設備投資などを行って事業場内最低賃金を引き上げる企業向けの助成金です。賃金引き上げ前に地域最低賃金よりも30円以内低い賃金を設定しており、事業場規模が100人以下の中小企業・小規模事業者が設備投資などを行って最低賃金を30円以上引き上げた企業に対して設備投資の一部を助成する制度です。

詳細は「業務改善助成金ページ」をご覧ください。

業績拡大へとつながる働き方改革の成功事例

2019年の働き方改革関連法が施行されてから、多くの企業が働き方改革に取り組んできました。ここからは働き方改革によって業績が拡大した企業の成功例を紹介します。

信幸プロテック株式会社

空間設備を手がける信幸プロテック株式会社では、働き方を見直すための会議を設けました。その中で、業務が属人化していることや、技術的な知識の少なさなどの課題を見つけていき、ゴールイメージを「一人一人が最大限の価値を提供し、頼られながら成長していくチーム」と設定。特に情報共有と業務効率化に焦点を当てて取り組んでいます。

具体的には、まず業務の洗い出しとスキルマップの作成を行い、だれがどの業務をどのレベルで行うことができるのかを『見える化』。次に、属人化している業務を改善するため、業務担当を増やしたり、手順書を作成したりといった対応を決め、チームメンバー同士が助け合える体制を整えました。

最終的に54項目もの業務体制を見直すこととなり、全社的な取り組みに発展し、修理の依頼受付件数は前年度比180件増加、残業時間は前年比13.2%削減と、働き方改革の推進によって業績拡大と職場環境の改善に成功しました。

ソフトバンク株式会社

大手情報通信企業のソフトバンク株式会社では、働き方改革の指針のひとつである長時間労働の是正に着目。ただ単純に残業時間を減らすことをゴールにするのではなく、創出された時間で、新しいことに取り組めているかを改革達成の基準としました。

そして、「Smart & Fun!(ITでスマートに楽しく!)」をスローガンとし、「業務効率化によって生まれた時間を、個人が新しい何かに挑戦する時間やスキルアップのための時間にあてて、イノベーティブでクリエイティブな活動を増やしていく」ことを目的とした働き方改革を進めています。

社内アンケートの結果、約7割の社員が生産性向上を実感しているという結果に。個人が自己成長を遂げることで組織の可能性を広げ、世の中にインパクトを与えるビジネスへとつなげています。

株式会社シップス

セレクトショップを運営する株式会社シップスでは、残業時間の削減や働きやすい職場づくり、離職率の低下を目標に、働き方改革をスタートしました。

実行にあたっては、全国80店舗の改革を一気に進めるために、店長研修を実施。各店長は、そこで学んだ内容を各店舗に持ち帰って実践し、その内容をまた次の店長研修で共有していった結果、残業の理由がコミュニケーション不足や、店長のマネジメント力不足であることが判明。社員間のコミュニケーション方法の見直しを図ることで現場スタッフのモチベーションが向上し、残業時間の削減に繋がりました。

また、これまで当たり前だと思っていたルールについて、それが本当に正しいのか試行錯誤し、より効率的な方法に変更する「パラダイムシフト」が起きることも。こうした取り組みにより、2016年は前年比で深夜残業が38%減、残業は25%減としながらも、売り上げは前年比で102%という、アパレル業界では画期的な数字を記録しました。

株式会社メンバーズ

デジタルマーケティング事業を手がける株式会社メンバーズでは、社員のキャリア支援と働き方改革を推進すべく、2016年4月から「みんなのキャリアと働き方改革」と銘打った3年間のプロジェクトを実施。具体的な数値目標として、「残業時間50%削減(月平均15時間)」、「年収20%アップ」、「女性管理職比率30%」を掲げました。

残業時間の削減は、給与(時間外手当)の減少にもつながってしまうため、年間の残業時間削減目標分以上の賃上げを事前に実施し、給与を保証しました。また、在宅勤務制度や託児サービス経費サポート制度、看護休暇制度など、女性活躍推進のための施策も実行。ライフステージに応じた多様な働き方を可能にし、プロジェクト発足から3年後の2019年4月には、上記全ての数値目標を達成したといいます。同時に、2019年3月期の通期業績においても、売上・利益とも過去最高を更新しました。

働き方改革と業績拡大を両立させるポイント

働き方に多様性を持たせるということは、業務の形もそれに伴って変えていく必要があります。多様な働き方を確立するためには、業務内容や社員のスキルをチーム内で共有することが大切です。

また、働き方改革を達成することをゴールにせず、働き方改革はあくまでも目的達成の手段とし、段階的に業績拡大を目指していくことが大事です。業務効率化によって得たものを、生産性の向上に繋げるような仕組みを作ることも重要でしょう。

そして、売上拡大や生産性の向上には、何よりも社員一人一人のモチベーションやスキルの向上が欠かせません。ダイバーシティ推進の取り組みが必須となった今、自社の業務の在り方や人材マネジメントの方法について、一度見直してみてはいかがでしょうか。

参考・出典

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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