仕事では褒め方が大切! 効果的なタイミングやメリットを紹介

From: 働き方改革ラボ

2022年11月24日 07:00

この記事に書いてあること

ビジネスにおいて、部下やメンバーのモチベーション管理は欠かせません。伝え方次第で相手のモチベーションを高められることもあれば、反対に、やる気を損ねてしまうこともあります。また、ハラスメントと取られてしまう危険性があることも事実です。

この記事では、チームの空気をよりよい方向へ導くための褒め方や効果的なタイミング、メリットについてお伝えします。

※2019年9月に公開した記事を更新しました

なぜ褒め言葉は大切なのか? 大きな2つのメリット

そもそも、なぜ部下やメンバーに褒め言葉をかけることが大切なのでしょうか。まず、褒めることで生まれる2つのメリットについてお伝えします。

雇用管理制度等と「働きやすさ・働き外」の関係に関する仮説モデル

平成26年に発表された厚生労働省の『働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書』では、雇用管理制度等と「働きやすさ・働きがい」の関係に関する仮説が発表されています。

資料によると、従業員にとって納得のある評価がされるなど良好な職場環境がつくられることで、従業員の働きやすさ・働きがいにつながり、意欲が向上する、定着率が向上するなどのメリットが生まれると書かれています。

1. 職場のコミュニケーションが活性化する

ひとつ目のメリットとして、褒め言葉が飛び交うことで職場のコミュニケーションが活性化することが挙げられます。コミュニケーションといっても、立場が違うと指示や注意に留まってしまいがちですが、褒め言葉を大切にすることで良好な関係性が生まれ、働きやすさや働きがいにつながるでしょう。

『働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書』では、「働きがい」や「働きやすさ」がある企業では、職場への定着率が高い傾向があることが発表されています。

働きがいや働きやすい環境が職場の定着率に影響することを表すためのグラフ

職場に対して「働きやすい」または「働きがいがある」と感じている従業員は、「働きやすくない」「働きがいがない」と感じている従業員よりも職場の定着率が30?40%ほど高いという結果が出ています。

コミュニケーション活性化のためにも、積極的に褒め言葉をかけていきましょう。

2. 仕事のモチベーションが向上する

従業員の仕事のモチベーションが向上することも大きなメリットと言えるでしょう。

先述した資料によると、「働きがい」や「働きやすさ」を感じる会社では、従業員の仕事に対するモチベーションが高く、会社の業績も高い傾向にあるとも発表されています。

働きがいや働きやすい環境が仕事への意欲に影響することを表すためのグラフ

図を見ると、とくに「働きがい」があると感じている従業員は84.2%と仕事への意欲がかなり高いことがわかります。

「働きやすさ」は企業の福利厚生や制度などで整えることもできますが、「働きがい」は、企業の体制や本人だけで作り上げられるものではありません。褒め言葉をかけることは、企業にとっても大きなメリットがあるのです。

モチベーションは2種類ある

「働きがい」につながるモチベーションには「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の2種類があり、それぞれを使い分けることで「働きがい」を感じやすくなります。

内発的モチベーションは興味や関心など個人の内側から生まれる動機なのに対し、外発的モチベーションは報酬や評価など外部から与えられるものによって生まれる動機を指します。

内発的モチベーションは、自主的な行動につながる、能動的な姿勢によって成長が期待できるなどのメリットがある一方、モチベーションの引き出し方に差が出る、仕事と関係しない分野に関心が強い場合は成果につながりにくいなどのデメリットがあります。

また、外発的モチベーションは、報酬や評価など明確な基準を設けやすいため属人化を防げる、目標達成の指標がわかりやすいというメリットがある一方、目標達成後のモチベーションが持続しにくいなどのデメリットがあります。

ビジネスには内発的モチベーションが必要

内発的モチベーションは個人の感情から生まれるものだからこそ、仕事には関係がないと思う方もいるかもしれません。しかし、上述したように、自主的かつ長期にわたって持続しやすい内発的モチベーションこそ、ビジネスに必要なのです。

後述する心理的法則などを踏まえて積極的に褒め言葉をかけることで内発的モチベーションを芽生えさせられます。外発的モチベーションとうまく使い分けながら、働きやすく、働きがいのある職場づくりをしていきましょう。

褒めるときに意識したい4つの心理的法則

ただ“褒める”といっても、褒め方がいまいちわからないといった方も多いのではないでしょうか。そんな方に向けて、部下やメンバーを褒めるときに意識したい4つの心理的法則についてご紹介します。

1. エンハウジング効果

まず、「エンハウジング効果」です。エンハウジング(enhancing)は「高める」ことを意味しており、称賛によって本人のモチベーションを高めることを意味します。

勉強や仕事に励む理由として「親や先生(上司)に褒められたい」と挙げる人たちは、このエンハウジング効果に基づいていると考えられます。後述する褒め方を意識することで、エンハウジング効果をより高められるでしょう。

2. 好意の返報性

返報性とは、人から何かをしてもらったときに、お返しをしなければ申し訳ないと感じる心理作用のことです。好意を寄せてくれた相手に対して、無意識に好意を返さなければいけないと思う原理が、「好意の返報性」です。

相手のよいところを褒めることは相手に好意を示すことになります。その結果、褒めた相手も好意を感じることになり、よい人間関係やチームの雰囲気作りにつながるでしょう。

3. ピグマリオン効果

アメリカの教育心理学者が発表した「ピグマリオン効果」とは、他者からの期待によって成果が上がる心理的法則を意味します。

教師が期待をかけた生徒の成績が伸びたという実験結果から、人は期待をされることによって、より成果を出せる傾向があることが明らかになりました。これを仕事に置き換えると、上司が期待していることをきちんと言葉にする、本人にある程度の裁量を与えるなど期待を行動で示すことで部下が成果を発揮しやすくなると考えられます。

4. ラベリング効果

相手にあなたはこういう人だとラベリングすることで、その通りの行動をするという理論が「ラベリング効果」です。よいレッテル貼りをすることが、相手のよい行動や成果につながります。

しかし、「◯◯ができない人」などと決めつけることは、相手のやる気を失わせる結果にもなります。あくまでポジティブなラベリングをすることを意識しましょう。

効果的な3つの褒めるタイミング

褒めるにしても適切なタイミングを見計らうことが大切です。そこでこの章では、部下やメンバーを褒めるのに効果的なタイミングを3つご紹介します。

1. 結果を出してすぐのタイミング

まず、もっともおすすめしたいのが、部下やメンバーが結果や成果を出してすぐのタイミングです。

数日経って褒められたとしても、いつ、どんな内容について言われているのかわからないことも多いでしょう。すぐのタイミングであれば、本人の達成感に加えて「褒めてもらえた」といういい体験が身につくため、エンハウジング効果も高められます。

2. 会議など大勢の人がいるタイミング

次におすすめしたいのが、会議など大勢の人がいるタイミングです。大勢の人がいる前で褒めることは本人の自信にもつながる上に、他の従業員を鼓舞することもできます。さらに、周囲からの期待値があがることで「ピグマリオン効果」も期待できます。

ただし、従業員の性格・性質にもよるため、注意が必要です。部署の雰囲気によっては、妬みなどにつながる可能性もあります。日頃から「褒める」文化を育てることでそのようなリスクも減らせるため、いい職場づくりを心がけましょう。

3. 本人がいないタイミング

最後に、本人がいないタイミングです。本人がいる場所で褒めることももちろん大切ですが、間接的に伝わることでより信頼性が増します。

実験によると、本人に直接伝える情報よりも、利害関係のない他者からの情報のほうが信頼できると感じる「ウィンザー効果」の存在も証明されています。また、上司が積極的に部下やパートナーを褒めることで、褒める文化も浸透しやすくなるでしょう。

やる気を高める|部下を褒める6つの方法

続いて、社内でもとくに部下を褒めるときに実践したい、6つの褒め方についてご紹介します。

1. 肯定的・具体的な言い方で褒める

相手を評価したいときには、否定ではなく、肯定的な言い方を心がけましょう。脳科学において、脳は「~ない」という否定語は理解できないとされています。肯定的な言い方をすることで、相手はメッセージを受け入れやすくなります。

褒めるときは、「あなたは遅刻しないよね」や、「あなたはトラブルを起こすことがないよね」というような否定語ではなく、「あなたはいつも間に合うよね」「あなたはコミュニケーションが上手だよね」というような肯定的な表現を使いましょう。

2. 他人と比較しない

褒めるときは、他人と比較するのではなく、その人自身のやり方やスタイルを褒めることが大切です。

人との比較で評価をされても、相手はポジティブに受け取ることができません。比べた結果ではなく、その人独自のよい部分を褒めることで、仕事ぶりや成果をきちんと見てもらえているという信頼感にもつながります。

3. 「私」のメッセージを込める

褒めるときには、自分自身を主語にすることで、思いが伝わりやすくなります。

たとえば「あなたの行動で、私はこんなに嬉しかった」「私はこんなに助かった」というように自分の感情を伝えることで、相手は「自分が相手に影響を与えている」ということを実感します。そのことが、褒められた行動を繰り返したいという気持ちにもつながります。

4. プロセスを褒める

結果ではなくプロセスを評価するというのも、うまく相手を褒めるためのコツです。

相手によっては、わかりやすい結果をなかなか出せず、うまい褒め方が見つからないケースもあります。仕事を進めるプロセスのなかの評価できるポイントを見つけて声をかけることで、相手は上司が日ごろから仕事ぶりを見てくれているとわかり、仕事へのモチベーションが高まります。

5. 相手の明らかな長所と違うところを褒める

相手の明らかなよいところや、誰もが気づくよい仕事ぶりではなく、違うポイントを見つけることもいいでしょう。相手が自分でも気づいていないところを褒めることで、相手はより喜ばしい気持ちになり、新たな自信も身につきます。

6. 3つの承認を行う

褒めるときには、存在を認める「存在承認」、成長を認める「成長承認」、成果を認める「成果承認」の3つの承認を使い分けることもおすすめです。

個人の承認欲求をレベルごとに分けた3つの承認の根本にあるのが「存在承認」であり、それが土台となって「成長承認」「成果承認」が積み重なります。

3つの承認の図

存在承認

先述したように、「存在承認」は承認欲求の土台となるものです。職場に置き換えると、挨拶をすることや、従業員の名前を覚えることが挙げられます。

服装などいつもと違う部分を褒めることも「存在承認」に含まれますが、現在は容姿などに触れることはセクシャルハラスメント(セクハラ)にも取られかねないので、注意しましょう。

成長承認

「存在承認」が満たされて積み上げられるのが、以前と比べてどれくらい成長したかを承認する「成長承認」です。

「成果承認」と異なるのは、目標達成具合など具体的な指標ではなく、これまでと比べてどのくらい成長できたかという個人のプロセスを承認するところです。プロセスを褒めることで本人のモチベーションが上がり、成果にもつながります。

成果承認

最後に「成果承認」です。具体的な方法としては、仕事の成果を通して本人を認める、成果に見合った報酬を与えるなどが挙げられます。

成果や結果は数値的な目標として設定しやすいため、褒める側も褒めるべきタイミングを認識しやすいというメリットがあります。しかし、目標達成のハードルが高すぎるとなかなか達成できず、達成までにモチベーションが下がってしまうことも考えられます。存在承認、成長承認と段階を踏みながら、モチベーション管理するようにしましょう。

逆効果になるかも? 気をつけたい褒め方3つ

一方で、相手を褒めようとかけた言葉が、逆効果になってしまうこともあります。これから紹介する3つの褒め方についてはとくに気をつけましょう。

1. 大袈裟に褒める

まず気をつけたい褒め方が、大袈裟に褒めることです。褒めるときに大切なのが、本人にきちんと気持ちが伝わること。感情を込めすぎてしまうと、大袈裟だと思われてしまい、お世辞のように聞こえることもあるので、注意しましょう。

2. 上から目線で評価する

褒めるという行為は上司から部下など、上の立場から行われることが多いです。だからこそ、評価するときに上から目線になってしまうと、本人も素直に受け止められなくなります。感動の気持ちを伝えられるよう、丁寧な言葉を意識しましょう。

3. 見た目や性格に触れる

先述したように見た目や性格について触れることについても細心の注意を払いましょう。とくに容姿に関しては、セクハラにあたる可能性があるため、注意が必要です。成長承認、成果承認にもある通り、外見よりも中身や行動について褒めることがおすすめです。

褒め上手になるために必要な3つの習慣

これまでご紹介したように、ただ褒めるといっても伝えるタイミングや褒め方には気をつけなければなりません。一朝一夕でできるものではないため、日頃から褒め上手になるための習慣を身につけるといいでしょう。

1. 日頃からいい人間関係を築く

はじめに、部下やメンバーと日頃からいい人間関係を築くことが大切です。よく知っている相手からの言葉のほうが信頼性も増し、素直に受け取りやすいと考えられます。まずは名前を覚える、積極的に挨拶をするなど、少しずつ距離を縮めることが良好な人間関係につながるため、意識するといいでしょう。

2. 部下のことをよく観察する

褒めるポイントを見つけるためにも、部下のことをよく観察することも習慣にしたいことです。これは仕事の成果だけでなく、成長などのプロセスに着目するのもいいでしょう。その積み重ねによって、相手の明らかな長所とは違ういいところを見つけられるかもしれません。

3. 注意が必要なときはする

また、ただ褒めるだけでなく注意が必要なときはしましょう。信頼関係を損ねることを意識するあまり、遅刻やミスなど、注意しなければならない場面に放置してしまうと本人の成長が止まってしまいます。次章で紹介する点を踏まえながら注意をしつつ、メリハリをつけていきましょう。

注意をするときの言い回しのコツ3つ

最後に、部下やメンバーに注意をするときの言い回しのコツを3つご紹介します。

1. 感情をぶつけない

相手の行動や態度に対して注意をするときに大切なことは、感情的にならないことです。感情をぶつけることで、言いたいことが伝わりにくくなります。直すべきところや、アドバイスについてきちんと納得させるためにも、感情的になることは避けましょう。

2. 理由を具体的に説明する

相手の行動に対して注意するときは、「それはやってはいけなかった」という事実だけではなく、そのことで周りにどんな影響があったのかということも含めて、理由を具体的に説明しましょう。

3. 拒否される場合はその理由を聞く

部下やメンバーが拒絶するような態度や、不満を持っている様子があるときは、その理由を聞いて発散させることも必要です。不満を感じる理由や上司に従わない理由に加えて、「そうではなくて何がしたいのか」という内容もじっくり聞いて、解決策をともに考えていくという方法も有効といえます。

まとめ

褒める文化が浸透することで、社内のコミュニケーションが活性化し、職場の定着率向上や業績アップなどの効果も期待できます。「評価されていない」と感じることは、職場への不満が募るきっかけになりえます。日常的にメンバーを褒める習慣を持つことが、チームの仕事を成功へ導く近道といえるでしょう。この記事を参考に、褒めることを心がけてみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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