日本は本当に働きすぎ?海外からみる日本ならではの働き方改革とは

From: 働き方改革ラボ

2020年03月31日 07:00

この記事に書いてあること

少子高齢化の加速に伴う労働者人口の減少を受け、一億総活躍社会の実現に向けて政府が主導で推進する「働き方改革」。しかし、まだその実現には程遠い企業も少なくないのが現状です。その原因には、社内風土や日本人特有の意識が根底にあることも。今回は、日本における「働き方改革」を、海外の事例を見ながら考えていきましょう。

働き方改革の目的と日本の現状

2019年度に政府が掲げた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」によると、「働き方改革」とは、働く人々が育児や介護といったような個々を取り巻く環境に応じ、多様で、かつ柔軟な働き方を自分で選択できるための取り組みのこと。これ以降、大企業を皮切りに「長時間労働の抑制」や「非正規と正社員の格差是正」、「高齢者の就労促進」など、昨今の労働問題を改善するための具体的な取り組みがスタートしました。

最近では、残業時間の上限を「原則として月45時間、年360時間」に定めた「時間外労働の罰則化」が施行され、違反すると「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される場合もあり、企業は対応に追われています。

日本で行われている取り組み

この「働き方改革」のもと、実際に行われている取り組みの一例をみてみましょう。

リモートワーク(テレワーク)

リモートワークは、オフィスに出社せずに、自宅やカフェなどで仕事をするワークスタイルのこと。2019年の総務省による通信利用動向調査では、日本の企業の19.1%がリモートワークを導入しているという結果でした。この数値は引き続き増加傾向にあるようです。

一方、アメリカや多くのヨーロッパ諸国では、約半数の企業がリモートワークを導入。こうした企業に勤める約20%の従業員がリモートワークを活用しているようです。また、フランスでは、パリへの人口集中を回避する目的で、国主導でリモートワーク推進のプロジェクトを実施しています。日本においても、パリ同様の人口一極集中が東京に起きており、それを避ける政策としてリモートワークの導入が推進されています。

フレックスタイム

出社および退社時間を自由に設定できる「フレックスタイム制」。ドイツでは、フレックスタイム勤務が認められている人は2011年の調べで全体の31%である一方、日本ではこの制度を導入している大企業は26.6%に過ぎず、実際利用している従業員は15.4%にとどまるといいます。

フレックスタイムの利点として挙げられるのが、始業時間が各自異なることで通勤ラッシュを回避できること。また、各従業員の生活に合わせた働き方を実現することで、ライフワークバランスを実現し、生産性の向上につながるということもあるでしょう。

有給休暇の取得

2019年4月から、日本の企業で年5日の有給休暇の取得が義務化されました。しかし、実際のところ取得率が上がったという実感は少なく、改善されているとは言い難い印象です。

海外では有給休暇取得率が70%を超えるのが大半であるのに対し、日本では取得率50%程度と低め。しかし、一見働きすぎのように感じる日本人ですが、実は国民の祝日が諸外国に比べて多い日本は、休暇日数自体は「少ない」とは言い難いかもしれません。

実際に有給休暇取得ができない大きな理由の一つとして、休暇をとることで、仕事が時間内に終わらないことが挙げられます。まずは業務体制の見直しを行わないことには、有給休暇取得率の改善に踏み切れないのは言うまでもありませんね。

海外の働き方

このように改革の真っただ中にいる日本ですが、ここでは、諸外国と比較しながら日本人の働き方について見ていきましょう。

たとえば、アメリカ人の働き方について。社会全体として、完全実力競争という文化が定着していることから、定時退社する、休日を大切にするといったイメージを持つ人も多いかもしれません。一方で、2017年のOECD(経済協力開発機構)の調査によると、実はアメリカ人の労働時間の方が日本人のそれよりも長いというデータもあります。

それではなぜ、日本人はアメリカ人に比べて「働きすぎ」という印象があるのでしょうか。そこには、国や企業の風土や文化の違いがありそうです。

アメリカでは、リモートワークの導入はもちろん、子どもを連れて出勤できたり、リフレッシュのためのパワーナップ(昼寝)を推奨していたりする企業もあり、働くスタイルは従業員にゆだねられているという文化があるようです。

次にドイツ人の働き方を見ていきましょう。ドイツは「成果主義」、「実力主義」社会であり、フレックスタイム制が導入され、労働時間も少ないのが特徴です。また、入社後の新人研修の制度がほとんどないため、学生のうちにインターンで仕事の基礎を覚えるのが一般的。卒業してすぐに「即戦力」として扱われますが、この時期から「短時間で成果を出す」という文化が刷り込まれているようです。

こうした2つの国の例から見ても、日本と労働環境や企業文化が大きく異なることがわかりますね。

日本ならではの働き方改革を

世界的にも「働きすぎ」というイメージが先行している日本。それに対し、日本政府や企業はライフワークバランスの実現に向けたさまざまな取り組みを実施してきました。

前述の通り、日本人の労働時間は極端に長いというわけではありません。それでも働きすぎという印象があるのは、「長時間労働し会社に貢献した人が評価される」といった文化や風土が根付いていることも一つ。こうした背景が、働き方改革の実現の大きなハードルになっているといえるでしょう。

企業は、時短勤務やノー残業デーなど表面的な制度導入だけで満足せず、社内風土や従業員の根本的な意識改革を含めた働き方改革が必要ですね。

記事執筆

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