働き方改革は人材確保の近道!人材定着と即戦力化を実現する研修のコツとは?

From: 働き方改革ラボ

2021年11月05日 07:00

この記事に書いてあること

生産人口の減少によって、人材不足が企業の将来を左右する大きな課題になっています。特に中小企業にとっては、新卒社員の大企業志向や、大手企業よりも離職率が高いことなどが、人手不足をより深刻化しています。

2019年に施行された働き方改革関連法案によって、働きやすく自分の能力が十分に発揮できる環境を求める傾向にあります。企業にとっては、社員の離職を防ぎ、新たな人材を確保するためには、社外広報や採用の方法を変えるだけでなく、社内の働く環境を見直すことが重要です。

今回は人材確保の近道である働き方改革の具体的な方法と新入社員を即戦力化するための研修のコツについてご紹介します。

※2018年12月の公開記事を更新しました

なぜ人材定着のために働き方改革が必要なのか?

「働き方改革」とは、少子高齢化による生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立など働く人のニーズの多様化を受けて、生産性の向上や就業機会の拡大のために、働き方を見直す取り組みです。具体的な取組内容としては、働く人のワークライフバランスを最適化するために、長時間労働の是正や、働く人それぞれの多様な働き方を可能にするための法律の施行や具体的な働き方のスタイルを国と企業が推進をしています。

労働政策研究所が行った新卒3年以内の離職原因調査によると、男女それぞれ退職者の30%以上が「労働時間が合わない」ことを理由に退職していることがわかります。

「新卒3年以内」に離職した理由(男性)
引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」
「新卒3年以内」に離職した理由(女性)
引用元:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」

この調査結果が意味することは、人材の定着には労働時間の是正を始めとする働き方改革の推進が必要だということです。

ところがHR総研の「働き方改革に関するアンケート結果」によると、実際に働き方改革に積極的に取り組めている企業は全体の30%ほど。ほとんどの企業は一部に取り入れているか、今後取り組みを検討している企業が大半です。

「働き方改革」への取り組み状況
引用元:HR総研:働き方改革に関するアンケート 結果報告

特に企業規模が小さくなるほど働き方改革の導入率は減少し、1,001名以上の大企業の働き方改革の積極的な取り組み割合は60%を超えているのに対し、300名以下の中小企業の取り組み割は22%と、その差は3倍あります。

企業規模別「働き方改革」への取り組み状況
引用元:HR総研:働き方改革に関するアンケート 結果報告

より働きやすい環境を求める人が増えていく一方で、企業は働き方改革への取り組みが不十分であることが課題としてあげられます。

より働きやすい環境を作ることで、就業中の社員のやりがいや意欲を向上させて離職を防ぐだけでなく、シルバー人材や、家庭や健康上の事情を抱える多様な人材も活用して、企業の生産性を上げることができます。さらには魅力ある職場環境を作ることで、新たな人材の採用も期待できることから、人材の確保と定着には働き方改革の推進が必要となるのです。

働き方改革は人材確保の近道!ワークスタイルを変える3つの方法

それでは実際に働き方改革によってどのようにして人材確保をすることができるのでしょうか?「長時間労働の是正」「ワークライフバランスの実現」「多様な働き方を可能にする制度」の3つの視点で、人材確保のためのワークスタイルをご紹介します。

長時間労働の是正

まず働き方改革で最初に取り組むべき課題は「長時間労働の是正」です。長時間労働による心身の疲弊を防ぐことで、仕事に取り組む姿勢も前向きになり、結果として離職を防ぐことができます。適正な時間で生産的に働く環境を作ることで、企業イメージが向上し、採用活動の成功も期待できます。時間外労働を削減するための具体策は以下の通りです。

時間外労働の見える化と目標設定

まずは時間外労働の時間を見える化し、労働時間数を正しく把握しましょう。実態に基づき部署ごとに目標設定を行い、毎月の目標と結果の振り返りを行うことで意識を高め、削減を目指します。

労働時間抑制を評価する人事制度の導入

長時間労働を評価するのではなく、適切に時間管理を行いながら成果を上げることを評価する人事制度を導入することも、有効な手段です。また、管理職の評価項目に部下の労働時間の管理を組み込むことで、部署全体の意識向上にもつながります。

ノー残業デー、ノー残業ウィークの設定

時間外労働が常態化している環境には特に、ノー残業デーやノー残業ウィークを設定することもおすすめです。労働時間の削減だけでなく、社員の集中力や生産性の向上も期待できます。

業務のアウトソージング

業務量過多による時間外労働が発生している企業は、業務のアウトソーシングも検討しましょう。サポート的な業務や、外部に依頼しやすい業務を選定し外注することで、ひとりひとりの社員の業務負担を減らすことができます。

ITツール活用による業務効率化

労働時間を削減するためにはITツールの活用も有効です。TV会議やチャットなどのコミュニケーションツールやグループウェア、また、複数のアプリケーションを使う業務をロボットが行うRPAツールなどによって業務を効率化し、労働時間を削減しましょう。

ワークライフバランスの実現

次に「ワークライフバランスの実現」という視点で見ていきましょう。ワークライフバランスとは、私生活と仕事のバランスがとれた働き方を実現すること。プライベートの時間が確保されることによって、今いる社員の満足度を高め、離職を防ぐことができます。また企業イメージのアップにより、プライベートの充実を重視する若手社員や新卒の応募数増加にもつながります。

有給消化取得促進

有給休暇の取得率を高めることで、私生活と仕事の調和がとれた働き方が実現できます。上司が部下の有給消化の状況を把握し取得を促す、また有給休暇を計画的に取得することができる「計画的付与制度」を導入するなどして、取得率を高めましょう。

育児休業取得支援

出産した女性社員だけでなく、子どもを持つ男性社員も育児休業が取得できる環境を整えましょう。出産後は休業し、その後は復帰できる環境を作ることで、女性の離職を防ぐことができます。男性社員にとっても、家族との生活と仕事を両立できる魅力ある会社を目指すことが重要です。

子育て支援制度の充実

子育て中の社員を支援する制度を充実させることも、社員の満足度アップにつながります。事業所内保育所の設置や、保育料やベビーシッター費用の補助、また育児休業中のコミュニケーションによる復職支援などの取り組みによって、子育て世代にとって働きやすい環境を作りましょう。

介護をしながら働く社員を支援

介護を行いながら働く人を支援する取り組みも、ワークライフバランスの実現には重要です。介護休業や短時間勤務などの制度を整えるほか、介護と仕事を両立しやすい職場環境を作り、介護による離職を防ぎましょう。

多様な働き方を可能にする制度

最後に「多様な働き方を可能にする制度」という視点で見ていきましょう。人材確保のためには、育児や介護などの事情を抱える社員も活躍できるよう、多様な働き方ができる環境を整える必要があります。具体的な制度は以下の通りです。

テレワークの導入

在宅やサテライトオフィスなど、事業所とは違う場所で仕事ができるテレワークも多様な働き方を実現する方法のひとつです。育児や介護などを理由にオフィスへの通勤が困難な人や、在宅での仕事を希望する人もテレワークの導入により働きやすくなり能力を発揮できます。

裁量労働制

裁量労働制とは働く人の裁量によって仕事を進めることができる制度です。労働者と使用者で定めた「みなし労働時間」に応じて賃金が支払われ、働く時間の長さも個人が決めることができるため、自由な働き方が実現できます。ただし、こちらは対象となる業種が決められていますので、すべての社員に適用できるわけではないことに注意してください。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、1ヵ月に定められた総労働時間数を満たせば、自由に出勤時間や退勤時間を決めることができる制度です。勤務しているべき「コアタイム」を定める場合と、コアタイムを定めない完全フレックスタイム制を採用する場合もあります。フレックスタイム制によって、ひとりひとりの事情や希望に応じた柔軟な働き方が可能になります。

副業の解禁

人材確保のために副業を認める企業もあります。社員の柔軟な働き方を実現することで満足度が高まる、また、副業を希望するモチベーションの高い人材を雇用できるというメリットがあります。

人材定着には新人研修が重要!新人研修のトレンドと即戦力化のコツとは?

次は新人研修の目線で人材定着について見ていきましょう。

優秀な人材ややる気のある若手社員を採用したものの、入社後の良い教育方法がわからないという採用担当者もいるのではないでしょうか。

新入社員研修は、社員の育成だけでなく定着率も左右する重要な課題です。人材定着を目指す上で不可欠な研修の考え方のコツと、新人研修のトレンドであるオンボーディングについても紹介します。

社員の育成における課題

人材確保のために採用活動を行っても、育成面で課題を抱えている企業が多くあります。厚生労働省が発表した「令和2年度版能力開発基本調査」によると、能力開発や人材育成に関する問題があると答えた事業所は全体の約75%にのぼりました。

能力開発や人材育成に関する問題がある事業所
引用元:厚生労働省「能力開発基本調査」

問題点の内訳としては「指導人材の不足」「時間がない」「育成しても辞めてしまう」「人材が集まらない」という結果が出ました。

能力開発や人材育成に関する問題点のうち内訳(複数回答)
引用元:厚生労働省「能力開発基本調査」

中でも「育成しても辞めてしまう」という問題点は、採用した人材を時間やコストをかけて育成していることからも、戦力化した社員が辞めてしまうことは企業にとっても大きなデメリットです。

そのためにも新入社員をはじめとする若手社員のモチベーションを保ち、会社で働き続けてもらうためには、社風や仕事内容とマッチングさせるための研修プログラムを整備する必要があります。

人材育成に有効な研修を行うポイント

研修プログラムを作成する際は、目的を見据えたプロセスが重要です。研修で定着率をアップさせるためのポイントを紹介します。

ゴールを明確にして体系的に進める

まずは研修のゴールを設定しましょう。「離職率を下げる」「即戦力を短期間で育成する」などの目的を定めます。また、研修を単発のものとしてとらえるのではなく、一連の育成計画の中に組み込み、内定者研修、導入研修、OJT、フォローアップといったプロセスを定めてプログラムを作成しましょう。

継続的に行う

研修は継続して行いましょう。途中から実務を開始する場合も、内定期間、入社当日、1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後といったタームごとに適切な研修やフォローを行うことが重要です。

会社や仕事内容の理解を深める

早い段階で社風や仕事内容への理解を深めることも大切です。仕事をする上での基礎を学ぶだけでなく、配属されてから仕事内容や会社の実情が想像と違ったという理由で、新入社員が退職することを防ぎます。

上司や同期と関係性を構築する

研修にグループワークや演習を取り入れることで、同期入社の社員間のつながりを深めることも有効です。同期と共に研修に積極的に参加できるほか、会社への愛着を高めることで離職率の低下も期待できます。合宿研修も、社員間の一体感を生むことができます。

また、意見交換会やランチ会など、先輩社員や上司と交流できる場を設けましょう。実際に働いている社員と会って話をすることで、会社の姿や仕事内容に触れ、会社への理解を深めることができます。

特にコロナ渦中以降は、オンライン会議のツールを利用して社内交流の場を設けている企業も増えてます。対面の交流だけでなく、オンラインを利用した遠隔地で仕事をしている社員との交流も盛んになってきました。

人材定着に有効な新人研修プログラムとは?

では、新入社員の定着のために有効なプログラムとは、具体的にどんな内容なのでしょうか。ベーシックな研修からトレンドまで紹介します。

内定者研修

内定辞退を防ぐためにも、入社前の研修は重要です。また、学生に働くことの意味や、会社の情報を伝えることで、入社前の不安を取り除くという意義もあります。社会人としての心得や仕事の意味について学ぶ研修のほか、職場見学や社員紹介といった会社への理解を深めるプログラムがおすすめです。

ビジネスマナー研修

実務をスタートする前に身につけておきたいのが、社会人としてのビジネスマナー。挨拶や敬語、身だしなみといった基本的なマナーのほか、ビジネス文書やビジネスメール、電話対応などを学びます。「報告・連絡・相談」など、社会人として知るべき振る舞いも含みます。

ITリテラシー研修

デジタル化が進む今、欠かせないITリテラシー。ビジネスソフトやメール、社内イントラネットの使用方法などの基礎的な研修のほか、インターネットでの情報収集方法や活用法も学びます。また、情報漏洩に対する意識を高めるため、個人情報や機密情報の取り扱いやITモラルに関するレクチャーも必須です。

コミュニケーションスキル研修

職種に関わらず重要なのが、コミュニケーションスキルです。社員間の情報共有や、顧客に対する上で重要な話す力や聴く力、またビジネスチャンスを活かすプレゼン力、文章力などを学びます。

タイムマネジメント研修

時間を有効活用して効率的に仕事を行うためのタイムマネジメント研修。働き方改革が進み労働時間の削減が必要な中、特に重要視されています。仕事の優先順位のつけ方や進捗管理の方法を学びます。新入社員のタイムマネジメントスキルが上れば、会社全体の業務効率化も期待できます。

ロジカルシンキング研修

論理的思考力を育てる研修も今のトレンドです。物事を整理して結論を出す道筋を学ぶことで、自分で考えて行動する力が身につきます。問題解決のための枠組みであるフレームワークについて取り入れることもおすすめです。

チームビルディング研修

チームビルディング研修とは、目標を達成できるチームを作る方法を学ぶ研修です。周囲と目標を共有することや、自分と異なる意見や人格を尊重するといった、チームでの仕事を行う上で欠かせない考え方を学びます。また、体や頭を使ったグループワークを通して、社会人としての意識やコミュニケーションスキルを高め、社員間の絆を深めます。

新人研修のトレンド「オンボーディング」とは

近年の新人研修では、定番だった「OJT」と並び「オンボーディング」というスタイルの研修を導入する企業が増えてきています。オンボーディングとは一体何なのでしょうか?オンボーディングの概要からOJTとの違い、効果についてご紹介します。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、船や飛行機に乗り込んでいる状態を指す「on-board」から生まれた言葉です。新しいクルーに対して、環境に慣れて仕事ができるようになるまでサポートを行いながら育成するという人事の考え方です。また、仕事の進め方や会社のルールに早く馴染んでもらい、短時間で新人を戦力化するための教育プログラムをオンボーディング・プログラムと呼びます。

一斉に同じ内容を実施する研修とは異なり、個々の能力や進む道に応じてカスタマイズしたプログラムを作成するのが、オンボーディングの特徴です。

OJTとオンボーディングの違い

OJTとオンボーディングの違いは、仕事の実地訓練か職場環境になれるかになります。

OJTとは「On The Job Training」という言葉の通り、主に仕事の実地訓練のことで、先輩社員の指導の元に新入社員が仕事を行うことを指します。

対してオンボーディングは、職場環境に慣れる訓練を意味し、職場の同じチームメンバーとのランチミーティングや人事部門から社内ルールの説明などを受けることを意味します。

特にオンボーディングで重きを置かれる点は、「社内情報」と「価値観」の共有です。事業や業務内容の共有はもちろん、社内制度や評価制度、企業のミッションやビジョン、経営層やマネジメント層の仕事のやり方や人となり、部署やプロジェクトチーム内の人間関係の構築まで幅広く共有することが狙いです。

オンボーディングの効果

オンボーディングが多くの企業に採用される理由は、その効果にあります。オンボーディングによってもたらされる効果を3つご紹介します。

新入社員の成長スピードをあげる

新入社員は組織のルールや職場のシステムなど、知るべきことが多くあります。また、人間関係や社風など、適応しなければならないことも少なくありません。オンボーディングで社内情報と価値観を共有されることによって、組織への順応をスムーズにするためにサポートすることができます。

部署によって教育格差を生じさせない

オンボーディングには、新入社員に目標を与えてモチベーションを高めたり、面談やミーティングなどの場を設けたりすることで、理想と現実のギャップを調整する目的もあります。そのため、仕事内容や人間関係のミスマッチも早い段階で把握することができ、コミュニケーション不足による離職を事前に防ぐ効果が期待できます。

離職防止

トレーナーや部署の違いによる人材育成のバラツキ、格差がなるべく生じないようにするのもオンボーディングの大切な目的です。

OJTや実習にはトレーナーの能力や資質が大きく関係するため、人事部が体系立ったオンボーディングを行うことも重要です。コンプライアンスや企業倫理などの全社員向けの教育は、外部研修機関に任せる方法もあります。

新入社員が会社の未来を決める

将来の会社を支えていくのが新入社員です。彼らの能力を最大限に発揮させるためには、良質な研修プログラムが必須です。また、彼らが研修で身につけたことは、他の社員たちにも影響を及ぼします。

新人研修は、時代に必要とされる新しいビジネススキルを、新人から全社に広げるチャンスでもあります。以前からの研修のままでいいの?と不安な方や、社内に新しい働き方を浸透させたいという方も、新入社員研修の見直しや、新しいプログラムの導入を進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
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