日本の労働生産性は、なぜOECDで21位と低迷しているのか?/田口佳孝氏

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日本の労働生産性が低いという報道を何度も聞いていることだと思う。これを聞いて、なぜそんなに低いのかという素朴な疑問を持たれている方が多いと推測する。

筆者もその一人であり、OECDが調査している労働生産性について、基本となるその計算式から調べてみた。

日本生産性本部が公開している、「日本の労働生産性の動向2017」に説明されているOECDの労働生産性の計算式をまずは理解した上で、日本の労働生産性を一緒に考えてみたい。

OECDの労働生産性の計算式

日本全体のGDPを分子として、そのGDPを創出した労働投入量または、労働者数x労働時間を分母として計算された指標が、労働生産性と定義されている。

ここですぐに分かることは、分母の(労働者数x労働時間)が大きければ労働生産性は低くなることは簡単にわかる。
単純に言うと、日本人の労働時間を半分にしたら、たちまちこの指標は2倍となり、2017年の日本の名目時間当たりの生産性の4,870円は、2倍の9,740円となって、アイルランド、ルクセンブルグに次いで、一気に3位に踊り出ることになる。

しかし、残業をなくして労働時間を短くし労働生産性を高めるという性急な対応は、本来の生産性向上にはならない。

2017年のOECDの結果を見て、コロンビア大学のヒュー教授は、「日米での働き方にそれほどの差はない、労働生産性格差も実態は数字ほど大きくない。日米の価格戦略の違いである」と指摘している。
私は、ヒュー教授の分析を受けて、根本の要因は、日本のデフレの長期化、労働分配率の長期低迷、給与所得の伸びの進展がないことで、経済全体のプラス・スパイラルが伸びていないことで、分子のGDPが伸びないことと総労働時間が長いことだと考えている。

ここでは、最初から日本の労働性はOECDで21位と低いという意識、ともすれば、“自虐的”に認識している面をまずは取り払った上で、本来の労働生産性を高めることについて考えてみたい。

ホワイトカラーの生産性は?

前述した、OECDの指標では、日本は21位。

これは、ブルーカラー+ホワイトカラー全体を含めて出されている指標。日本を代表する自動車産業に従事する方々の生産性がOECD中21位とはとても思えない。

ブルーカラー+ホワイトカラーを分離した指標がないので、簡単には言えないが、ブルーカラーの生産性は、世界的に見ても、高い指標であると推測される。ということは、ブルーカラーの人達の高い生産性で、ホワイトカラーを含めた全体の生産性が何とか、21位に保ってもらっているといえるのではないか?

本題の、ホワイトカラーの生産性はどうなのか?(ここからは、オフィスワーカーと現場ワーカーと呼ばせていただく)

労働生産性の指標をどのように設定するか、過去多くの研究がある。現場ワーカーの場合では、部品の製造数や、車の組み立数などのカウントしやすい指標を設定しやすい。昔から、テーラーが始めた作業者の手の動き、動作、工数までをしっかり管理して、無駄のない動きから、従事している作業からのアウトプットを高めて、生産性を向上させる方法論は今でも定着している。

一方オフィスワーカーの場合には、さまざまな職種があって、目に見える指標で測れるものは少ない。データの入力作業などでは、一日の総処理量(キーボードのストローク数、処理件数など)でカウントすることが可能である。

また、コールセンターなどでは、インバウンド、アウトバウンドの処理件数などはアウトプットとして数えやすいが、マーケテング、企画、会計、人事、総務、研究職などでは、労働生産性を指標化する上で難しい面がある。

オフィスワーカーの生産労働性は、営業職、それを支援しているバックオフィスの方々を例に取って考えてみることにする。

営業職では、伝統的なパイプラインに即して考えると、まずは見込み客への選定、見込み客への電話、メール、訪問、関心をもってくれた顧客数、その上で、提案、商談、受注などの一連の作業を通して、それぞれのステージでの獲得した見込み客数、提案数、商談、受注数、受注金額、失注数、などは比較的数値化して、投入した労働量(人数x時間)で、OECDの計算式に当てはめれば、指標を得られる。個々の営業マン・ウーマン毎での比較、担当する課での総和、事業部毎の総和などで、比較・分析も可能となる。

一連の商談は、営業の人ばかりではなく、資料を作成する際に、オフィスで支援してくれ方々も多数いる。契約の管理をしてくれる法務部なども存在する。何処まで粒度を細かくして生産性を測定するかは、それぞれの企業で取り組みが異なっていると考えるが、営業に関連する支援部隊の、営業間接費に相当する、支援部隊の人数x支援に要した時間の総和も加えないと正確な労働生産性の指標にはならない。

個人レベル、課レベル、部レベル、事業部レベル、更には、会社全体レベルのどこまでの粒度で、指標化、分析すべきかは、この作業自体に工数が発生するわけであるので、あまり粒度を細かくしても工数ばかり増えるので、まずは、部レベルあたりで、部単位で創出した付加価値(受注額など)と投入された人数x総労働時間で割り算をして、労働生産性、付加価値創出の指標としてみてはどうか。

もっと粒度を大きくする場合には、会社全体での売り上げ、営業利益を人数x総労働時間で割って指標化して、日々の活動の向上に活用してみてはどうか。

今回のまとめ

OECDの計算式では、日本の労働生産性は2017年、21位であるが、自虐的に受ける必要はない。GDPを上げる、総労働時間を削減することで、順位は向上する。現場ワーカーの労働生産性は、比較的指標化ができるが、オフィスワーカの場合には難しい面がある。

今回は、OECDでの労働生産性の計算式の紹介を行った。OECDの数値、日本国全体の労働生産性と、オフィスワーカーの労働生産性について若干触れた。
次回以降は、皆さんの属している企業全体の労働生産性について、また組織を支えている皆さん個々人の労働生産性について論じてみたい。タイムマネジメントが重要と考えている。

私自身のMDSI、EDS,シュルンベルジェ、ガートナーでの仕事を通して観た、米国のオフィスワーカーと日本のオフィスワーカーの働き方、生産性について大きな違いを実感している。

著者プロフィール

田口佳孝(たぐち よしたか)

経営・ITコンサルタント

元 EDSジャパンの立ち上げ、製造業のVP・自動車のGMアカウントマネージャーなど歴任
元 日本ガートナーグループ代表取締役
元 ERP研究推進フォーラム 常任理事
現 サイボウズ株式会社 シニアアドバイザー

経歴
大学卒業後、経産省管轄の(財)機械振興協会・技術研究所、研究員として入所。NC工作機械、工場の自動化などの研究、日本初の7軸同時5軸工作機械の開発などに従事。
1975年に、ミシガン州のNCソフトウェア企業、MDSI社に移籍。日本法人立上げにも従事し、日本MDSI社の代表取締役に就任。
1985年、石油探査の大手、シュルンベルジェ社がMDSI社を買収したことにより、シュルンベルジェ社に移籍。同社の会長に就任した通産省事務次官の両角良彦氏(当時)をサポート。
1986年、米国・システインテグレータ最大手EDS・日本法人EDSジャパンの製造業のVPとして移籍。
その後、自動車メーカーGMのアカウントマネジャーとしてGMアジアテクニカルセンター(後デルファイ)のLAN・WAN、基盤の設計、運用を担当。
1995年、日本ガートナーグループ(現・ガートナージャパン)の代表取締役に就任。同年、ガートナー社が買収した調査企業、データクエスト社の代表も兼務。
2000年、ERP研究推進フォーラムの常任理事に就任。ERPの普及度、課題などの調査実施。
2014年からは、サイボウズにてシニアアドバイザーとして従事。

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