労働衛生の基本をおさらい!企業に必要な感染症対策も

From: 働き方改革ラボ

2020年10月06日 07:00

この記事に書いてあること

新型コロナウイルスの感染拡大で、改めて働く人の安全や健康が注目されました。感染症や災害といったリスクが起こり得る中でも、従業員が安全に働ける環境を整備するために、企業は何をすべきなのでしょうか。そこで今回は、改めて「労働衛生」の基礎をおさらいした上で、職場で行うべき労働衛生の対応について解説。コロナ対策として特に意識すべきポイントについてもお伝えします。

労働衛生とは?

労働衛生とは、働く人の健康維持のために、職場の労働条件や作業環境を改善する取り組みを指します。その主な対策は、「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」という3つの管理です。「労働衛生管理体制の確立」と「労働衛生教育」を加えた5つの項目を基本とする考え方もあります。

作業環境管理

働く人にとって良好な労働環境を保つこと。労働者の体に悪影響を及ぼす原因を把握して、健康に働くために必要な措置を講じます。適正な明るさや気温の確保、安全に仕事ができる作業場の整備などが作業環境管理にあたります。

作業管理

作業時間や作業方法、作業姿勢、仕事量を適性化して、従業員の負担を少なくすること。パソコンを使った情報機器作業による心身の負担を軽減するために、PC業務に適した環境を整えたり、作業時間を制限したりすることも作業管理に含まれます。

健康管理

労働者の心身の異常の早期発見や健康状態の悪化防止のため、健康診断を実施。従業員の健康状態を定期的にチェックします。その結果に基づいて、健康を回復するための保健指導や労務管理などを実施します。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法とは、職場における労働者の健康と安全の確保、快適な職場環境の形成を目的に制定された法律です。企業は労働者のために、危険防止措置、安全衛生教育措置、健康増進のための措置などを講じる必要があると定めています。

なお、2019年4月の施行された働き方改革関連法の労働時間法制の見直しに伴って、労働安全衛生法が一部改正されました。自律的な働き方を希望する人のため、法整備で働き過ぎによる心身の不調を防ぐのが目的です。改正の主なポイントは、「面接指導等の強化」と「産業医・産業保健機能の強化」です。

研究開発に携わる人や高度プロフェッショナル制度の対象者で、時間外労働が月100時間を超える人は、医師による面接指導義務の対象になります。労働者の申し出による面接指導の要件である時間外労働の時間数も、月80時間超に引き下げられました。適正な面接指導のため、企業に労働時間の正確な把握が義務付けられるなど、長時間労働をする人への面接指導体制が強化。また、事業者が行うべき産業医への情報提供について定めるなど、産業医が働く人の健康維持のため、さらに効果的な活動を行うための環境も整備されました。

ウィズコロナ時代に求められる衛生管理とは?

労働災害防止のためだけでなく、従業員が自分に合った働き方で活躍するためにも重要な職場の衛生管理。今年は新型コロナウイルスの影響で、オフィスでの安全対策がより重視されています。そこで次からは、ウィズコロナ時代に必要な職場の衛生管理のポイントを解説します。

感染予防対策の徹底

従業員が出社するオフィスで欠かせないのが、感染予防対策です。まずは、職場の感染症対策の責任者や担当者を決めた上で、職場の感染防止対策について従業員に周知しましょう。また、感染防止のための基本的項目である?身体的距離の確保、?マスク着用、?手洗いを徹底します。人との距離を確保するための座席レイアウトの変更や、アクリル板による遮蔽も有効です。また、オフィスのこまめな換気や、複数の人が触れる可能性のある物品の消毒などの対策も実施しましょう。

日常的な健康管理を徹底

従業員に対して、自分の健康に対して意識を向けるように周知します。出勤前の体温確認をルール化するほか、だるさや風邪症状、味覚や嗅覚の異常の有無を毎日チェックする体制を整えましょう。従業員に対して、長時間労働を避ける、睡眠や栄養の確保に努めるなど、疲れをためずに健康状態を維持するための配慮を促すことも必要です。また、体調不良の申告や、休暇取得を遠慮なく行える空気を作ることも大切。風邪症状が出たら出勤しない、させないことを徹底しましょう。

感染防止のための柔軟な働き方の導入

感染のリスクを減らす働き方の導入を進めましょう。テレワークや交代制で出社するローテーション勤務は、通勤電車やオフィスへの密集といった人との接触の機会を減らすことができます。混雑時をさけて出社ができる時差出勤も有効です。会議や、取引先との打ち合わせはオンラインに切り替えるなどの取り組みも積極的に進めましょう。

労働者がコロナに感染したときの休ませ方は?

新型コロナウイルスに感染した場合は、会社にすみやかに電話やメールで報告するように周知しましょう。陽性者との濃厚接触があり自宅待機などの要請された場合も同様に報告が必要です。社内で感染者や濃厚接触者が発生した場合のルール整備や、職場の消毒が必要になった場合の対応についても定めておく必要があります。

新型コロナウイルス感染症が、感染症法の指定感染症として定められたため、都道府県知事は感染者に就業制限や入院の勧告等を行うことができます。そのため、入院の勧告を受けた労働者や、就業制限がかけられた労働者は、仕事を休ませる必要があります。休み中は、就業規則等に病気による保障を定めていない限り、賃金を支払う必要はありません。ただ、発熱などの症状があり感染が疑われる人を会社の判断で休ませる場合は、休業手当を支払う必要があります。なお、被用者保険に加入している労働者なら、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

新型コロナウイルスは労災にあたる?

新型コロナウイルス感染症は、他の病気と同様に、業務が原因で感染したものである場合は、労働災害として認められます。感染経路が判明して、仕事が原因とわかった場合は労災保険給付の対象です。感染経路が不明で、感染リスクが高いと考えられる業務に従事していた場合、潜伏期間内の業務や生活の状況を調べて、業務との関連性を判断します。

コロナ陽性者へのケアも必須

新型コロナウイルスが陽性であることがわかった従業員に対するケアも必須です。会社が、該当者に解雇や不利益な取扱いをすることはあってはいけません。また従業員に対しても、差別的な扱いをしないように周知徹底しましょう。陽性と判明した従業員や、家族の情報の取り扱いを定め、プライバシーを守るためのルールも整備する必要があります。

コロナ禍の健康診断の実施方法は?

労働安全衛生法で定められている従業員への健康診断は、「三密」をさけ、感染対策を十分に行った健康診断実施機関で行いましょう。厚生労働省は、感染防止や、健康診断実施機関の予約が取れないなどの理由で健康診断を延期している企業に対して、できる限り早期に計画を立てて実施することを勧めています。なお、公益社団法人全国労働衛生団体連合会等は、「健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について」の指針の中で、厚生労働省などの関係省庁や関連学会の見解を踏まえて、感染症対策を講じた上で健康診断の受診環境を確保すると発表しています。

今こそ働く人の健康に目を向けよう!

感染症拡大などの環境下においても働く人の健康を守ることが、企業活動を維持するために欠かせません。ウィズコロナ時代においては、新しい生活様式に従ったルールの整備や、感染防止のための備品確保のため、時間やコストを要することもあるでしょう。ただ、働く人の安全に目を向けることは、今後の働きやすい環境の整備につながります。この機会に改めて、会社の労働衛生を見直してみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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