外国人材受け入れ拡大で介護業界はどう変わる? 雇用前の準備を解説
2019年07月26日 07:00
この記事に書いてあること
人材不足が叫ばれる介護業界。厚労省の推計によると、2025年までに34万人もの介護人材が不足するといわれています。
そんな中注目を集めるのが、今年4月1日の改正入管法によって創設された「特定技能」の在留資格。
一定の専門性や技能、また日本語能力を持った外国人材を即戦力として受け入れるこの制度は、介護業界にどのような影響をもたらすのでしょうか?実際に外国人材の受け入れにあたって準備しなければならないことについても合わせてご紹介します。
介護分野での外国人材受け入れが拡大する?
介護業界ではこれまでにも外国人材の受け入れを行ってきました。
現在介護業界で働いている外国人材
EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者
日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」を持つ外国人
技能実習制度を活用した外国人(技能実習生)
EPA職員は、平成31年1月1日時点で、677ヵ所の施設で3,165人が雇用されています。
介護福祉士養成校への留学生も年々増加し、平成30年度は1,142人が入学。
そのほか、介護職種の技能実習計画に申請した人のうち946人が認定され、技能実習生として順次入国しています。
2019年4月に新設された在留資格「特定技能」には、即戦力となる外国人材に与えられる「特定技能1号」と、さらに熟練した技能を有する人材に与えられる「特定技能2号」があります。介護業は「特定技能1号」の対象となっており、5年間で最大6万人の外国人材の受け入れを見込んでいます。今後は介護業界でも外国人材の活用が増えていくものと思われます。
外国人材受け入れで介護業に起きる変化
では、外国人材を新たに受け入れることで、介護の現場にはどのような変化が起こるのでしょうか。
外国人材の受け入れによって、介護の現場では人員が補強されます。人手不足が常態化している職場では働く人たちの負担軽減が見込めます。
厚生労働省が発表した外国人介護人材の受入れに関するアンケート調査によると、他の在留資格で働いてきた外国人福祉士の対応に、介護施設の利用者や家族の65.1%が満足していると回答。丁寧な対応や声かけを評価する意見が多く、外国人労働者が増えることで利用者へのサービスが行き届くことも期待されます。
外国人労働者受け入れの注意点は?
外国人材受け入れ拡大にはリスクやデメリットもあります。新在留資格によって新たに外国人材を雇い入れる事業者にとって、特に注意が必要なポイントは次のとおりです。
コミュニケーション上の課題
新在留資格を得るには日常会話や働く上で必要な日本語能力をチェックするテストがあるとはいえ、母国語が違う外国人とスタッフ、利用者との間では、コミュニケーションの問題が起こる可能性もあります。トラブルを防ぐために、受け入れ前に日本人スタッフへ十分な説明を行う、また日本語の教育体制を整えるなどの対策を進める必要があります。
OJTなどの丁寧な教育が必要
母国語や文化や宗教などが違う外国人材には、細やかな教育が必要であるという点も注意しましょう。スムーズな教育のためには、外国人材に適したOJTプログラムや研修マニュアルの整備が必要です。
外国人材との共生のために準備すべきこと
では、スムーズに外国人材を受け入れるためにはどのような準備が必要なのでしょうか。受け入れる側の日本人職員に対するケアと、外国人材に対する準備についてお伝えします。
日本人職員に対する準備
外国人材受け入れについての十分な説明
外国人材に活躍してもらうためには、共に働き、彼らへの教育を担当する日本人スタッフへの事前の十分な説明が必要です。不安なく受け入れてもらえるよう、採用活動を進める前に、外国人材を雇うにあたり変わることや新制度について伝えましょう。
宗教や文化の違いへの配慮
受け入れの前に、外国人材の宗教や文化の違いに対するスタッフの理解を深めておくことも大切です。宗教によっては、食事の制限やお祈りの時間が必要なこともあり、日本人には馴染みのない習慣を持っている場合もあります。多様な文化や宗教があることを理解し、彼らのスタイルや信仰を尊重する意識付けをしましょう。
外国人材に対する準備
日本語の教育体制の整備
利用者の生活や食事のケアをする介護の仕事で重要なのが、コミュニケーションです。介護を受ける利用者が不安を抱かないためにも、仕事をする上で必要な日本語をレクチャーする体制を整える必要があります。状況に応じて、日本語教室への通学支援も検討しましょう。教育を担当する職員が、外国人介護士に日本語を教えるためのセミナーを受講するのもおすすめです。
生活面の支援
外国人材には、仕事上のサポートだけでなく、生活面の支援が必要なケースも多くあります。行政手続きや住居の契約手続きなど生活基盤を整えるための支援、またメンタルヘルスや健康上のサポートなどによって、異国で働く不安を解消しましょう。外国人材が介護職に定着して長く働いてもらうためには、幅広い支援を行える体制が重要です。
申請や届出の準備
外国人材受け入れには、各所への申請や届出が必要です。新たに外国人材を受け入れるための事業所の条件や、受け入れ機関に課される義務についてもあらかじめ確認しましょう。
外国人材の雇用には、外国人材との雇用契約のほか、地方出入国在留管理局への在留資格認定証明書交付申請(国内在留者を採用する場合は在留資格変更許可申請)も必要。また、出入国在留管理庁に対して、「特定技能雇用契約の変更、終了、新たな契約の締結に関する届出」「支援計画の変更に関する届出」「特定技能外国人の受入れ状況に関する届出」などを届け出る必要があります。
制度全般や手続きについての詳細は、法務局入国管理局作成の受け入れ機関向けのリーフレット、もしくはリーフレットに記載された各地の入国管理局までお問い合わせください。
外国人材の採用活動を進める前に必要な手続きを確認して、スムーズに対応を進めるための人員的、時間的余裕を確保しておきましょう。
事前準備と丁寧なケアでスムーズな受け入れを!
新たな在留資格の設置により、介護業界では外国人の雇用がさらに広がることが見込まれます。外国人と働くことに慣れていない現場も多く、職員たちが迷うこともあるかもしれません。受け入れ体制作りや雇用する外国人への対応ばかりではなく、すでに働いている日本人職員のケアにも目を向けることが大切です。日本人と外国人材が共に働きやすい環境で活躍するための第一歩として、心理的な受け入れ体制を整えましょう。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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