看護師の働き方改革の取り組みとは?具体的な施策や医療業界における注意点を解説

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看護師の働き方改革の取り組みとは?具体的な施策や医療業界における注意点を解説

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働き方改革とは、「働く人々が個々の状況に合わせた柔軟な働き方を自分で選択できる働き方」を推進する取り組みです。2019年4月より施行されました。看護師も働き方改革の例外ではなく、雇用する病院側の具体的な取り組みが求められています。
この記事では病院の経営層向けに、看護師の労働環境の実態や求められる変化、業務改善の事例、働き方改革を行う際の注意点について解説します。ぜひ参考にしてください。

看護師の労働環境の実態

まずは看護師の労働環境の実態について詳しく解説します。

人材不足が深刻化している

看護師の人材不足は深刻な問題になっています。看護師の就労数は増えているにも関わらず、現状はニーズに対して需要が追いついていない状況です。人材不足はひとり当たりの業務負担を増やし、長時間労働を招くため、今後も続く課題といえるでしょう。

離職が後を絶たない

看護師の離職が後を絶たないという現状があります。公益社団法人日本看護協会が2018年に行った調査では、正規雇用看護職員の離職率は10.9%と高い数字を示しています。また、日本医療労働組合連合会の2017年看護職員労働実態調査によると、75%が仕事を辞めたいと回答し、「人手不足で仕事がきつい」「賃金が安い」などが離職の原因となっています。

離職率だけ見ると他にもっと高い業種はありますが、看護師のニーズが高まった状態でこの離職率が続けば、人手不足の問題は解決しません。

看護師に働き方改革が必要な理由

ここまでで看護師の労働環境の実態がお分かりいただけたでしょう。では、看護師に働き方改革が必要な理由は具体的にどこにあるのでしょうか。

医療ミスが発生しやすくなる

看護師に働き方改革が必要な理由のひとつとして、人手不足により医療ミスが発生しやすくなることがあげられます。2017年看護職員の労働実態調査によると、医療事故の原因として82%もの人が「人手不足による忙しさ」をあげています。人手不足になるとひとり当たりの業務量が増え、患者のケアや新人教育に少人数で対応しなければなりません。

そのため、ひとり当たりの負荷が上昇し、医療事故への不安・疲労・ストレスを抱えながら仕事を続けた結果、離職につながることもあります。

ワークライフバランスが実現しづらい

ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」という意味です。看護師の場合、不規則な勤務形態でプライベートと仕事の両立が難しく、ワークライフバランスが実現しにくいという問題があります。

結婚して子どもができたら同じように働き続けることに不安を感じ、結婚・出産などライフステージが変化するタイミングで退職する人が多い傾向があります。 そのため、ライフステージが変化しても柔軟な働き方ができて、ワークライフバランスの取れた働き方改革を実現することが必要とされます。

働き方改革で変わる点

働き方改革とは、働く人が多様で柔軟な働き方を選択するための政府の改革です。制度自体は2019年4月から施行され、病院で働く看護師においても労働環境の変化が求められています。以下では、労働時間や有休取得制度など、働き方改革で看護師の働き方が変わるポイントについて具体的に解説します。

時間外労働の上限の設定

働き方改革により時間外労働に上限が定められ、原則45時間、年360時間以内に時間外労働を抑える必要があります。36協定を結ぶことで原則を超える労働も可能ですが、年720時間以内などの要件があります。36協定とは労働基準法36条に基づく労使協定のことで、企業が1日8時間、1週間に40時間を超える労働を命じる場合に必要となる手続きです。
もしも36協定の届出をせずに上限以上の時間労働させると、労働基準法違反となるので注意してください。

有給休暇の取得の義務化

人手不足の問題を解決し需要と供給のバランスを整えるためには、看護師の有給休暇の取得を義務づけましょう。たとえば年10日以上の有給休暇が付与される人は、年5日以上の有給休暇の取得が義務付けられています。有給休暇の取得は看護師側からの申出だけでなく、病院側が時期を指定して取得してもらう方法もあります。

同一労働同一賃金の導入

常勤看護師とパート看護師の待遇差が不満を生み、離職率を高めている問題点もあります。そのため同一労働同一賃金の導入が行われることで、常勤看護師とパート看護師の待遇差が禁止されます。そもそも同じ仕事をしていれば、同じ賃金を与えることが本来の在り方です。同一労働同一賃金の導入により、待遇差による不満を無くすることで、チームワークの向上も期待できます。

勤務間インターバルは努力義務

勤務時間インターバルとは次の勤務までの時間のことです。たとえば夜勤が終わり、次の出勤までの空いた時間が勤務間インターバルに該当します。働き方改革により、11時間以上の勤務間インターバルを設けるよう、制度導入を努めることが求められます。看護師の健康と、医療ミス削減による患者の安全確保のためにも、必須の取り組みといえるでしょう。

具体的な働き方改革の取り組み

ここからは、看護師における働き方改革で有効な取り組みについて具体的に解説します。

ICTを導入する

ICTとは情報通信技術のことです。ICTを医療現場に導入することで、業務効率化や生産性の向上が期待できます。たとえば音声入力アプリ、スマートフォンやタブレットを活用した電子カルテの運用、業務用SNS、院内マニュアルの電子化などがICTの例としてあげられます。それ以外にも、医師、薬剤師、ケアマネージャーなどが保有する患者データを自動収集し、統合できる総合医療介護連携システムもあります。

時間外労働を見直す

働き方改革では時間外労働の見直しも必要です。たとえば時間外労働が多い病院の場合なら、時間外労働の上限を超えないような見直しが求められます。時間外労働を減らすためには業務の効率化が効果的です。医療ロボットやAIの活用、電子カルテ・タイムカードの導入など、看護師の負担を減らし、業務効率化していきましょう。

多様な勤務形態を整える

働き方改革では多様な勤務形態を整え、受け入れることも必要になります。短時間正社員制、フレックスタイム制、時差出勤、夜勤免除など、多様な勤務形態を整えましょう。その他にも例として、子どものイベントに合わせた「スクールイベント休暇」やボランティア活動の参加を尊重する「ボランティア休暇」などの制度もあります。 看護師それぞれのワークスタイルを尊重し、個々のワークライフバランスを実現しやすい勤務形態を用意することで、離職率減少を目指しましょう。

看護補助者を活用する

看護補助者とは、看護師の補助や患者の世話をする仕事を行う人のことです。看護師とは異なるため医療行為を行うことはできませんが、看護師の助手としてサポート業務を依頼することができます。 看護補助者を活用し、手間がかかる事務仕事や雑務など専門性の低い業務を減らすことで、看護師の負担軽減につながります。その結果、人材不足の解決も期待できるでしょう。

看護師の業務改善の事例

ここでは看護師の業務改善の事例を紹介します。

医療法人社団 札幌道都病院

医療法人社団 札幌道都病院では、入院病棟で看護師が認知症によって徘徊してしまう患者を探すことが業務負担となり課題でした。しかし、屋内位置情報サービスを導入したことにより、業務負担が軽減されました。 具体的には、患者の在室状態がわかることで、訪問や回診が効率的に行え、担当の看護師に適切なタイミングで連絡できるようになったのです。また夜間でもスタッフの居場所がわかるため、応援を呼びやすい環境が整いました。

看護師の働き方改革を行う際の注意点

看護師の働き方改革を行う際の注意点をそれぞれ解説します。

病院の規模に関わらず改革が求められる

働き方改革は、病院の大小に関わらず適用されます。そのため病院の規模は関係なく、業界に改革が求められているのです。個人の病院も例外ではなく、雇用者がいれば働き方改革をする必要があります。
また、現在適用が猶予されている月60時間を超える時間外労働に係る「割増賃金率」は、2023年4月に猶予期間が終了しますので注意してください。

組織全体で推進する

働き方改革を無理に進めようとしても、現場ですぐに機能することは難しいでしょう。そのため、個々が取り組むというよりも、組織全体で推進していく姿勢が重要になります。病院の経営層から医師、看護師などすべての職員を巻き込み、組織の風土を変えていきましょう。
たとえば、労働時間の把握や各診療科の業務負担、看護師の声など、実態を把握してから問題改善に努めると、組織全体に浸透しやすくなります。

院内研修・始業前の申し送りも労働時間にカウントされる

賃金の支払いにおいて、院内研修は労働時間とみなされるため、支給が必要になる点に注意しましょう。始業前の申し送りやケアについても、時間外勤務手当として支給するのが妥当でしょう。 また、以下の項目で超過勤務や時間外労働があった際に手当を支給しなかった場合、賃金未払いとしてカウントされます。

  • 時間外の院内研修
  • 申し送り
  • 看護記録
  • 持ち帰り残業
  • 「管理監督者」に該当しない管理職の時間外勤務手当

賃金の未払いは、看護師との信頼関係を損なう要因ともなるので注意してください。

まとめ

厚生労働省が推進している働き方改革では看護師も対象とされています。すべての人が働きやすい環境を実現するための取り組みが推進されており、働き方のスタイルや時間外労働、労働環境の整備が進められています。

また、看護業界は需要と供給のバランスが崩れており、慢性的な人手不足に陥っています。この問題を解決するためにも、働き方改革の浸透は必須といえるでしょう。

働き方改革ラボでは、働き方改革に関する情報を幅広く発信しています。働き方改革を進めるための取り組みを診断できるチャートも配布しています。ダウンロードできる資料の裏面には、具体的に参考になる記事のリンクも掲載しているため、ぜひチェックしてください。

参考・出典

この記事を書いた人

リコージャパン株式会社
リコージャパンは、SDGsを経営の中心に据え、事業活動を通じた社会課題解決を目指しています。
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