労働時間、テレワークの実態は?地方の働き方改革

From: 働き方改革ラボ

2020年12月09日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革関連法施行の影響や感染症対策の必要性から、労働時間の削減や柔軟な働き方の浸透が進んでいます。都市部では通勤ラッシュやオフィスでの混雑を避ける目的でのテレワークも推進されていますが、全国的に見ると、働き方改革の実態や意識は変わっているのでしょうか。そこで今回は、地方の働き方の実態を、都市部との比較で解説。地方ならではの働き方に関する課題や、その解決策についてお伝えします。

地方で働き方改革は進んでいる?

まずは、労働時間やテレワークなど、働き方に関する各トピックから地方の労働環境の現状を解説します。

労働時間の実態

厚生労働省の「毎月勤労統計調査地方調査」は、全国の企業で働く人の労働時間や賃金に関するデータを公表しています。
2019年の調査結果によると、事業所規模30人以上の企業で働く人の1ヵ月の労働時間の全国平均は144.5時間。東京は143.2時間で大阪は141.9時間という結果で、全国平均に比べると低い水準です。一方、全国平均より労働時間が高いエリアは、岩手県(154.3時間)、山形県(153.6時間)、福井県(153.1時間)、佐賀県(152.8時間)、福島県(152.6時間)などで、150時間を超えています。全国的には、都市圏よりも労働時間の平均値が高いエリアがあることがわかっています。

テレワーク普及率

人が密集している都市部で推奨されているテレワーク。地方企業ではどの程度普及しているのでしょうか。
パーソル総合研究所の2020年4月の調査によると、テレワーク実施率が高いエリアは、東京(49.1%)、神奈川(42.7%)、千葉(38%)、埼玉(34.2%)などの関東の都道府県。大阪も29.1%と5番目に高い水準です。一方で、テレワーク実施率が最も低いのは、4.7%の山口県。岩手県(6.2%)、秋田県(6.2%)、長崎県(6.2%)、佐賀県(6.8%)などが、特に普及率が低いエリアです。

有給得率

有給休暇の取得率も、都道府県ごとに差があります。メディプラス研究所が2019年3月に行った調査によると、年間10日以上の有給休暇取得率が高い都道府県は、男性5位(35.9%)、女性1位(39.4%)の東京都や、男性1位(37.2%)、女性5位(35.5%)の神奈川県など。女性の5位以内に千葉県や埼玉県が入るなど、関東地方の都道府県で比較的高いという結果が出ています。取得率が低いのは、徳島県(男性22.6%)、岐阜県(男性23.4%)、鳥取県(男性24.3%)、鹿児島県(女性20.8%)、福井県(女性22.5%)など。調査によると、有給取得率が高い都道府県では、仕事を休まないことを美徳とする意識が低いことがわかっています。

働き方改革を遅らせる地方特有の課題

テレワーク導入や有給取得率など、エリアによって特性がある働き方の状況。では地方では、都市部にはない独自の働き方に関する課題はあるのでしょうか。地方特有の主な問題について解説します。

地方の労働人口の減少

地方企業にとっての課題のひとつが、労働力の確保です。労働人口の減少は日本全体の課題ですが、地方では特にその問題が顕在化しています。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局による調査によると、全国の生産年齢人口は、2014年から2017年にかけて189万人減少。そのうち、東京圏以外の地方圏の生産年齢人口の減少数が187万人を占めています。調査では、2015年から2045年にかけて地方では1720万人の生産年齢人口が減ると予測。今後、さらに減少が加速する見込みです。

人材不足が深刻化

人材不足の問題も、地方企業にとっての課題です。人事評価クラウドサービスを提供するあしたのチームは、2019年2月に、従業員5~300人未満の企業の経営者300人に働き方改革に関する調査を実施。その結果によると、地方の中小企業の76.6%が、働き方改革に取り組んでいる、または今後行うことを検討していると回答しています。一方で、23.3%の「取り組んでいない」という企業に理由を聞いたところ、38%が人材不足を理由に働き方改革に着手できていないと答えています。都市部の中小企業が同じ理由をあげた比率の27.6%と比べて10%以上高く?、地方のほうが人材の課題に対する意識が高いことがわかっています。

都市部との賃金の格差

地方における人材確保の面で課題なのが、都市部との賃金の違いです。厚生労働省の「毎月勤労統計調査地方調査」によると、全国平均より労働時間が長いエリアでも、東京より給与が大幅に低いのが現状です。東京の平均466,397円に対して宮崎は平均279,849円など、月給で最大18万円ほどの開きがあります。

働き方改革関連法への対応

あしたのチームの2019年2月の調査では、働き方改革関連法の対応に課題を抱えている地方企業が多いこともわかりました。地方企業が今後取り組みたい働き方改革の内容を聞いた項目の回答では、「休暇取得の促進」「女性・若者や高齢者の就業促進」「労働時間の短縮」が多数。
一方で、中小企業が働き方改革関連法のうち経営に影響が出ると思うものとしては、「有給休暇の取得義務化」や「時間外労働の上限規制」が多く挙げられています。時間外労働や安い人件費に頼ってきた地方の中小企業にとって、労働時間短縮への対応に関心が高まっています。

地方における働き方改革を成功させるポイント

では、地方ならではの課題を解決して、働き方改革を進めるためにはどのような取り組みが有効なのでしょうか。

人材の確保が難しい状況で労働時間削減や有給休暇取得を推進するためには、ITツールの活用による生産性向上が欠かせません。経理システムや作業管理ツール、またグループウェアの導入によって業務効率化を進めましょう。

社員に負担をかけている業務を適切にアウトソースすることも有効です。社員が価値を生み出す創造的な仕事に集中する時間を確保することが、会社全体の利益や社員のモチベーションアップにもつながります。

子育てや介護など私生活の事情を抱える人材の活用も、地方企業には必須です。私生活と仕事の両立をサポートする休暇制度や、テレワークなど柔軟な働き方を認める制度作りを行い、フルタイムでの出社が困難な人材を活用しましょう。私生活を理由にした社員の離職を防ぐだけでなく、新しい人材の獲得にもつながります。

働き方改革関連の補助金の活用や、都道府県労働局に配置された働き方・休み方コンサルタントにアドバイスや支援を依頼することも検討しましょう。

働き方改革を支援する助成金一覧【2020年度最新版】│働き方改革ラボ

地方ならではの先進的な取り組みも

働き方に関して地方特有の課題もある一方で、地方だからこそできる先進的な施策も進んでいます。その主な取り組みをご紹介します。

観光地で働くワーケーション

ワーケーションとは、休暇や旅行を楽しみながら仕事をすること。個人が休暇中の時間を使って仕事をすることを認める企業も増えています。また、会社やチーム全体でリゾート地に滞在して共にミーティングや仕事を行い、仕事外の時間で余暇を楽しむワーケーションも普及。最近では、リゾート地での勤務に特化した施設も登場して話題になっています。

国が費用を補助する「ふるさとテレワーク」

ふるさとテレワークとは、地方のサテライトオフィスなどで都市部の仕事を行う働き方を推奨する総務省の取り組みです。都市部から地方への人の流れを生み出し、地方創生を実現することを目指しています。2016年度からは、国が地方自治体や民間企業に対して、地方のサテライトオフィスなどのテレワーク環境を整備するための費用を補助する事業をスタート。ふるさとテレワークのホームページでは、ふるさとテレワーク事業の活用事例が紹介されています。

「おためしサテライトオフィス」で地方就労を体験

おためしサテライトオフィスも、総務省が進めるプロジェクトです。サテライトオフィス開設を検討している企業向けに、総務省が選定した地方公共団体が執務環境や生活環境を提供。地方での勤務を体験し、実際のサテライトオフィス開設につなげてもらうことを目的としています。

場所にとらわれず働くハイブリッドワーク

「ハイブリットワーク」とは、ハイブリッドワークライフ協会が推奨する働き方。場所や時間、職種を超えて、「都市圏×地方」、「オフィス×在宅」などの両立が難しいとされてきた要素を組み合わせる自由な働き方です。パソナグループなどが主導するハイブリッドワークライフ協会は、東京一極集中型の働き方を是正し、個人がライフスタイルに合わせて多様な働き方を選べる社会を実現するための取り組みを実施。エリアや職種を超えたハイブリットな働き方をサポートするプラットフォームを整備しています。

地方だからこそできる働き方改革を進めよう!

人口減少など、エリアならではの課題も多い地方の働き方改革。一方で、家族の都合で地方に住んでいる人を活用したり、空いた物件を活用してサテライトオフィスを誘致したりと、地方だからこそできる取り組みもあります。中小企業の働き方改革を支援する各種補助金や自治体によるサポートも活用すれば、自社の課題に合った働き方改革が進められます。人材がさらに限られる日本の将来のためにも、地方企業でも働き方改革を前に進めることが重要です。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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