社員のやる気を引き出すモチベーション3.0とは

From: 働き方改革ラボ

2020年02月12日 07:00

この記事に書いてあること

経営層や管理職の思いやビジョンに反して、社員がやる気を持って取り組んでくれないことに悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。教育制度やコーチングの理論を試しても、部下がなかなかついてきてくれないときに取り入れたい概念が、「モチベーション3.0」です。今回は、モチベーション3.0の基礎知識について、モチベーション1.0、モチベーション2.0との違いを含めて解説。モチベーション3.0が有効な場面や、実際に職場で取り入れるときのポイントについてもお伝えします。

モチベーション3.0とは?

「モチベーション3.0」とは、アメリカの作家・文筆家で、アル・ゴア元アメリカ副大統領の首席スピーチライターを務めたこともあるダニエル・ピンクが提示した概念です。書籍『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』で、モチベーション3.0が人を動かす動機付けの最新バージョンであると提唱しました。

ダニエル・ピンクは、人の動機にも、コンピューターと同じように基本ソフトがあると解説しています。
生存(サバイバル)を目的とする、生理的なモチベーションが「モチベーション1.0」。
功績をあげれば報酬を得て、できなければ罰を受ける「信賞必罰」的な考えに従ったモチベーションが「モチベーション2.0」。これは、人が外から与えられる外発的な動機です。

そして、最新の「モチベーション3.0」は、自らの内側から湧き出るやる気に基づいた仕組み。今、人を動かし、組織を強くするために必要な概念だと、ダニエル・ピンクは説明しています。

なぜ今、モチベーション3.0が必要なのか?

これまで、多くの企業や団体で取り入れられてきたのが、成果に対してお金や物を与えるという条件を提示してやる気を引き出す「モチベーション2.0」の考え方です。この仕組みには一定の効果はありますが、お金や物といった報酬だけでやる気を引き出そうとすることには、限界やリスクもあります。

報酬という条件を提示されて得られる動機は、自分の外から与えられるものであり、自律的に発生したものではありません。金銭などの報酬だけが仕事の目的になることは、仕事の質よりも目に見える成果を短絡的に求めるという事態にもつながりかねません。

また、業務や会社の将来に対する長期的なビジョンを持てなかったり、一見遠回りに見える施策やアイデアなど、創造性の高い発想が生まれないというリスクもあります。自律的な仕事への姿勢や、成長ややりがいという目に見えない報酬に対する意欲を失わせることも。

とはいえ、当然ながら仕事は多くの人にとって収入を得るためのもの。社員のやる気を高める上で、金銭的な報酬が保証されていることは大前提です。

社員を育て、自律的に動く組織を作るためには、十分な賃金を保証した上で、やりがい、自身の成長、社会への貢献といった目標に対する本質的なモチベーションを高める環境を作ることが求められているのです。

モチベーション3.0のメリット

人間の生理的な動機付け、そして外から与えられる動機付けとも異なるまったく新しい概念であるモチベーション3.0。では、モチベーション3.0を職場に取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

達成したい目標の本質にフォーカスできる

給与などの外発的モチベーションだけで動いていると、仕事の目的よりも、個人としての損得に目が向いてしまいます。わかりやすい成果を求めるあまり、仕事の本質から外れた判断をしてしまうことも。

人の役に立ちたい、本当にいいサービスを届けたいといった内発的なモチベーションに従うことで、達成すべき本来の目的に、純粋にフォーカスすることができます。組織の利益や長い目で見た成功につながる働き方ができるのが、モチベーション3.0のメリットです。

長期的に成果を上げられる組織になる

モチベーション3.0の動機付けは、組織やチームの力を長期的に引き出し続けます。報酬や罰則だけを理由にした動機は、報酬を与えられた後でやる気が失われるため、持続しません。「やりたい」という意欲に従って仕事を行うことが、個人や組織の長い活躍や成長を促します。

クリエイティビティを引き出す

モチベーション3.0は、クリエイティビティも引き出します。ダニエル・ピンクは、報酬によるモチベーションによって、創意工夫が失われると説明しています。仕事の本来の目的を理解し、自律的な姿勢で取り組むことが、斬新なアイデアや新しい価値の創造につながります。

モチベーション3.0が有効なシーンとは?

モチベーション3.0は、単純作業ではない、クリエイティブな仕事でより効果を発揮します。

仕事をしたらその分の目に見える報酬が得られるという仕組みは、単純作業の仕事でやる気を引き出すことには向いています。一方で、新しい製品を作ったり、世の中にない価値を生み出したりといったクリエイティブな仕事で成果を出すには、個人の内から湧き出るモチベーションが必要です。短期的な数字としては成果が見えない仕事だからこそ、価値を生むことに喜びを感じる姿勢が求められます。

モチベーション3.0を取り入れるポイント

では、実際に職場で、内発的な動機を引き出すためには何をすればいいのでしょうか。部下のやる気を引き出したい管理職が今すぐ使える、チームや個人の自立性を高めるポイントをお伝えします。

好きな仕事に割く時間を与える

毎日の業務の中で、部下に自分がやりたい仕事をしてもよい時間を与えましょう。上から指示される仕事ばかりでは、自律的なモチベーションは高まりません。本人の発案による仕事や企画に集中できる時間を与えることで意欲を引き出せます。好きなことに割く時間が、仕事に主体的に、面白さを感じて取り組んでもらうきっかけになります。

自分で仕事の目標を決めさせる

目標を上から与えられているという感覚が仕事へのモチベーションを下げてしまうことも。達成したい目標を自ら決めてもらい、なりたい自分の姿をイメージさせましょう。自ら決めた目標であれば、達成のために何が必要なのか、自律的に考えて動けるようになります。

仕事の判断を任せる

仕事に対する裁量を与えることも、モチベーションを高める方法です。上司から細かく管理されている状態では自律性は育ちません。部下にできるだけ判断を任せて、仕事を自分ごとという意識で取り組ませることがポイントです。自分の裁量で進めた仕事が成功すれば、自信ややりがい、さらなる成長意欲といった新しい内発的モチベーションも生まれます。

仕事を楽しめる環境作り

「楽しい」という感覚が、もっとやりたいという内発的モチベーションにつながります。個人の損得や、報酬や懲罰にとらわれる職場には、楽しさは生まれません。仕事に若手の意見を反映する余地や遊びを取り入れる、コミュニケーションを活性化させてチームの雰囲気を良好に保つなどして、管理職が率先して仕事を楽しめる環境を作りましょう。

モチベーション3.0を取り入れて成長する組織へ

給与やボーナスといった報酬だけで成果に報いる仕組みでは、個人やチームのパフォーマンスを向上するには限界があります。個人から湧き出る内発的モチベーションが、社員の成長も、組織の生産性向上も実現するのです。ただ、人は目に見える報酬でしか動かないという価値観がまだ浸透しているのが現実。モチベーションに対する考え方を改めて、成長を続ける組織へと一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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