2023年4月から!月60時間超残業の割増賃金率引き上げに備えよう

From: 働き方改革ラボ

2023年06月06日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革推進の取り組みのひとつとして国が進めている、時間外労働に関する法改正。2023年4月1日からは、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、中小企業に対しても引き上げられました。そこでこのコラムでは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率に関する改正の概要と、引き上げに対し中小企業が対応するべきことについて、企業事例も交えてお伝えします。

「月60時間超残業の割増賃金率」に関する改正内容

1週間40時間、1日8時間の法定労働時間を超える時間外労働をした場合に、給与に上乗せされる割増賃金。法律上、2010年3月までは、時間数に関わらず、法定労働時間を超えた労働には、25%以上の割増賃金を支払うことが企業に義務付けられていました。

2010年4月1日からは、月60時間を超えた時間外労働に対しては50%以上の割増賃金を支払うよう、法律が改正されました。ただし、中小企業に対しては、この引き上げが2023年3月まで猶予されていました。

いよいよ2023年4月1日からは中小企業に対しても、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が、25%以上から50%以上に引き上げられました。中小企業にも、この法改正における具体的な対策が求められています。

改正に対し注意したいポイントは?

月60時間超の時間外労働の割増賃金率引き上げについて、中小企業が特に注意しなければならないポイントは、次のとおりです。

深夜・休日労働と重なるとどうなる?

月60時間を超えた時間外労働が、深夜労働や休日労働と重なった場合、賃金はどのように計算すればよいのでしょうか。

夜の22時から早朝の5時までの時間帯に行った労働に対しては、会社は、25%以上の割増率で賃金を支払う必要があります。

また、週1日の法定休日に社員を勤務させた場合は、35%以上割増した休日手当が発生します。そのため、月60時間を超える時間外労働を22時~5時の時間帯に行わせた場合には、深夜割増賃金率25%と時間外割増賃金率50%を足した75%の割増賃金を支払う必要があります。

なお、月60時間の時間外労働時間の計算には、4週間に4回または1週間に1回の付与が義務付けられた法定休日に行う労働時間は含まれません。

ただ、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。たとえば、日曜日に行った労働は法定時間外労働の対象ではなく、土曜日に働いた分は、法定時間外労働にカウントされます。

法定休日とそれ以外の休日の割増率の計算には、注意しましょう。

契約社員・アルバイトやみなし残業・歩合給でも割増賃金は必要

正社員以外の雇用形態で働く従業員にも、割増賃金が発生します。労働基準法の規定は雇用形態に関わらず適用されるため、契約社員やアルバイトにも、割増賃金を支払う必要があります。

また、残業代が固定で支払われる「みなし残業制度」を導入している場合も、割増賃金が生じます。みなし残業として定められている時間を超えた分は、時間外手当(残業代)を支払わなければいけません。

1日8時間、週40時間の法定外労働を超えた労働時間には25%以上、時間外労働が月60時間を超えた場合は50%以上という割増率に従い、時間外手当を支払いましょう。

また、仕事の成果に対して給与が支払われる「歩合給制」の場合も、法定労働時間を超えた場合は割増賃金が発生します。歩合制の割増賃金は、その月の実績給を総労働時間で割った1時間あたりの賃金をベースに計算します。法定内労働を超えた時間数に、1時間あたり25%、もしくは50%を掛けた額を、その月の割増賃金額として支払います。

割増賃金の代わりに休暇を付与することも可能

月60時間を超える法定時間労働に対して、割増賃金の代わりに有給休暇を付与することも可能です。25%の割り増し分までは必ず金銭で支払う必要がありますが、それを超えた分は、労使協定に基づいて、休暇に振り替えることができます。

労使協定では、

代替休暇の時間数の具体的な算定方法
代替休暇の単位
代替休暇を与えることができる期間
代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

の4項目を定める必要があります。

また代替休暇は、取得者の十分な休息を確保するため、1日や半日というまとまった単位で与えることが推奨されています。

法改正に対し企業がとるべき対策は?

では、2023年4月の法改正適用に対してどのような対応をする必要があるのでしょうか。事例も交えて解説します。

勤怠管理システムの整備による労働時間の正確な管理

法律で定められた正しい割増賃金を支払うためには、労働時間を正確に管理することが不可欠です。勤怠状況を効率的に、正しく記録できる勤怠管理システムの導入を検討しましょう。時間外労働を減らしてワークライフバランスを整えるという働き方改革の観点からも、システムを使って社員の労働状況を可視化、改善することが有効です。

また、給与計算システムと連動した勤怠管理システムを使えば、給与計算システムへ時間数を入力する手間や、ミスを減らすことができます。

香川県でホンダの特約自動車販売店を運営するサカイ自動車販売株式会社では、タイムレコーダーと給与計算システムを連動させる勤怠管理システムを導入。自動の給与計算によって省力化が実現したほか、社員の労働時間や有給消化状況をリアルタイムで管理できるようになり、働き方に関する適切なコミュニケーションが社内に浸透。また、データから把握した繁忙期・閑散期に従って勤務体制を組み立てることができるようになり、業務の効率化が実現しました。

勤怠管理システムで勤務状況を可視化 働きやすい職場実現 サカイ自動車販売(香川県) │中小企業応援サイト

業務効率化による労働時間の削減

割増賃金率引き上げに対し、時間外労働を削減するための取り組みも進める必要があります。法改正を機に、業務フローの見直しによるムダの削減や、ICTや新しい機械の導入による生産性向上を実現し、働き方改革を前進させましょう。

新潟県の建設会社・豊和建設株式会社は、ICTによる業務効率化を目的に、2018年にクラウドシステムを導入。2020年からは、原価管理や給与、勤怠管理などのシステムを一新しました。原価管理や勤怠管理、年末調整などの法定調書に関する業務もクラウド上で行えるようになり、総務・経理担当者の負担が軽減。コロナ禍では在宅勤務にもスムーズに移行することができ、業務効率化に加えて、働き方の多様化も実現しています。

クラウド導入を機に総務・経理系ソフトを一新 毎月の“決算残業”の大幅削減が可能に 豊和建設(新潟県) │中小企業応援サイト

研修の活性化によるスキルアップ

効果的な研修によって優秀な人材を育てることも、業務効率化や時間外労働削減対策として有効です。社員ひとりひとりのスキルアップを図ることで生産性が上がるほか、教育に力を入れる企業になることで、優秀な人材が集まりやすくなります。また、オンライン研修や空いた時間を使って視聴できる動画研修など、社員が受けやすい研修を充実させることで、時間を有効活用した教育が行えます。

地域の老健施設の質の向上や機能強化に取り組む業界団体のひとつ、愛媛県老人保健施設協議会は、感染症のまん延をきっかけに、介護施設向けの研修をデジタル化。組織内動画配信プラットフォームなどをパッケージ化したサービスを活用し、研修動画を施設向けに配信しています。パッケージサービスを使えば、ICTの知識がなくても動画を簡単にアップロードでき、受講対象者の視聴状況も把握可能。参加が積極的ではない施設に視聴を勧めるなど、研修の活性化につなげています。協議会は今後も、DX化した効率的・効果的な研修を充実させ、介護スタッフのスキルアップを実現していく見込みです。

コロナ禍をバネに介護研修をデジタル化、見え始めた様々な効果。DXで介護業界を変えていく愛媛県老人保健施設協議会(愛媛県) │中小企業応援サイト

アウトソーシングの活用

アウトソースを活用し、社内でしかできない重要な業務に社員が集中できる環境を整えることも、労働環境の改善につながります。まずは、会社の売上や将来に関わる重要なコア業務と、それ以外のノンコア業務を判断し、アウトソースの対象を選定しましょう。データ処理や入力など、時間を要していたノンコア業務を専門家に依頼することで、従業員の労働時間を大幅に削減できます。

戦略の立案や創造性の高い仕事に従事できるようになるため、社員のモチベーションアップも見込めます。社員満足度向上のためにも、アウトソースの活用を検討しましょう。

就業規則の変更・代替休暇制度の新設

割増賃金率引き上げに伴い、就業規則の変更が必要になるケースがあります。月60時間を超える時間外労働には賃金を50%の割り増しで支給する旨、就業規則に明記しましょう。

また、月60時間超の法定時間労働の引き上げ分の代わりに休暇を付与することを検討している場合は、代替休暇制度を導入しましょう。代替休暇の時間数の算出方法、休暇の単位などを決めるため、労使間での話し合いを進める必要があります。

代替休暇制度は、月60時間を超えて働く社員の休息時間を確保する目的で定められています。社員に健康に長く働き続けてもらうために、代替休暇の導入を検討しましょう。

社員の健康を守るために時間外労働対策を進めよう!

中小企業に対する月60時間超の時間外労働の割増賃金率引き上げは、自社の労働時間の課題を見直すチャンスです。社員の健康や、働きやすい職場環境の実現のためにも、時間外労働を減らす取り組みを進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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