医療の2024年問題とは|働き方改革への課題や解決方法について詳しく解説

From: 働き方改革ラボ

2023年03月09日 07:00

この記事に書いてあること

医療の2024年問題とは、医療業界の働き方改革を2024年4月までに実施しなければならないことです。政府は、2019年より働き方改革を進めていますが、医療業界の働き方には長期的な見直しが必要であるため、猶予期間が与えられています。

この記事では、医療の働き方改革について解説します。2024年4月から何が変わるのか、今ある課題や解決方法についても解説するので、参考にしてください。

医療の2024年問題とは

医療の2024年問題とは、2024年4月までに医師や看護師など医療業界の労働環境や働き方を見直すことです。政府は、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行しましたが、医療業界は過重労働が定着していたため、すぐには実施できませんでした。労働環境や働き方の見直しを整備するには時間がかかると推測し、5年間の猶予が与えられています。

働き方改革関連法適用による変更点

働き方改革関連法の適用によって、これまでの状態や制度などから変更になる点があります。ここでは、3つの変更点について解説します。

労働時間の上限規制

医療の2024年問題では、過剰な時間外労働を抑止するために、医師の時間外労働時間に上限が規制されます。労働時間の上限規制は、医療の働き方改革の最も大きな改革です。今まで、医師の勤務時間や休憩時間の不明確さや、勤務時間の管理不足が多かったことが実施の理由といえます。

労働時間の上限規制は、医師の経験年数や医療機関の特性により、3つの水準に分けられて、それぞれ上限が異なります。各水準については、下記の通りです。

【A水準】すべての医師

A水準の対象は、一般の診療従事勤務医であるすべての医師です。時間外労働の上限は、年間で960時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含まれます。

【B水準】地域医療確保暫定特例水準

B水準の対象は、救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関で、地域医療を確保するために長時間労働が必要な医師です。時間外労働の上限は休日労働を含めて、年間1,860時間以下、月間100時間未満になります。

【C水準】集中的技能向上水準

C水準の対象は、初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師です。時間外労働の上限は、年間1,860時間以下、月間では100時間未満になり、休日労働も含みます。

引用:時間外労働規制のあり方について③ ? 厚生労働省

時間外割増賃金率の引き上げ

医療の働き方改革では、月60時間を超える法定時間外労働に対して、50%以上の割増賃金の支払いが求められます。今までの医師は、過剰な時間外労働に見合う賃金が支払われず、問題になっていました。

法定割増賃金率の引き上げは既に大企業では適用されていますが、中小企業や医療業界にも、2023年4月から適用されます。医療法人や個人開業医も、常時使用する労働人数によって大企業や中小企業に区分され、時間外割増賃金率の引き上げが求められます。

追加的健康確保措置の実施

医師の健康や医療の質を確保するために、追加的健康確保措置も実施されます。常勤先から派遣されるアルバイトや複数の医療機関で勤務する医師も該当します。

労働時間の月間上限を超える医師には、28時間の連続勤務時間制限を行い、勤務間インターバルの確保、または代償休息を付与します。また、月に100時間以上の時間外労働が予測される医師には面接指導を行い、指導結果を踏まえて就業上の措置を実施して、医師の健康確保を目指します。

引用:時間外労働規制のあり方について③ ? 厚生労働省

法令適用への問題

2024年の法令適用への対応には問題があります。ここでは、働き方改革が先送りとなっている理由について解説します。

人材不足

医療業界の抱える課題として最も深刻なのが人手不足です。人手不足の原因は、少子高齢化による労働力の減少や、育児や介護によるキャリアの中断などといわれています。

人手不足が慢性的に続くと、医師や看護師1人当たりの負担が増えて過重労働になり、退職者の増加につながる恐れがあります。人材不足による労働環境の悪化を防ぐためにも、できるだけ早い人材確保が必要です。

勤務環境整備が不十分

勤務環境整備が不十分なことも、医療業界の課題の1つです。医師は、患者の緊急輸送や看取りなど昼夜問わずに対応するため、他職種よりも長時間労働です。また、医師によっては担当の患者に対して責任を持って対応するケースもあり、チーム医療が機能していない場合もあります。

現在の医療業界は、女性の医療従事者にとって出産・育児をすると就業を継続しにくい環境でもあります。患者対応に伴う事務作業が、タスクシフティングできていないことも問題です。タスクシフティングについては、後程解説します。

医療の2024年問題を解決する方法

それでは、医療の2024年問題を解決するにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、5つの解決策について解説します。

ICTツールの導入

医療の2024年問題を解決する方法として、ICTツールの導入・活用があります。ICTツールとは、人同士や人とコンピューターが通信する応用技術を便利にツール化したものです。Information and Communication Technologyの略で、情報通信技術を表します。

医療業界向けのICTツールには、患者の状態がみられるモニターシステムや電子カルテ管理システムなどがあります。ICTツールの導入は、長時間労働の改善が期待できるだけでなく、教育にも適しています。

タスクシフティングの実行

タスクシフティングとは、医師が担当する業務の一部を、看護師や薬剤師へ業務移管させて、医師の負担を軽減させることです。タスクシフティングを行うと、医師の時間外勤務の改善につながります。タスクシフティングを実行する際には、医師以外の医療従事者の負担が増加しないように、PDCAを回しながら管理しましょう。

勤務管理の整備

医師の不規則な勤務状況を改善するには、勤務管理の整備も必要です。医師を含む医療従事者の勤務時間を把握するには、ICカードやタイムカード、ビーコンなどで出退勤時間を確認する対策を行いましょう。また、勤怠管理システムの導入は、出退勤時刻の記録、残業時間、休暇の取得やシフトなどを一括管理できるためおすすめです。

36協定の自己点検

36協定とは、「時間外労働・休日労働に関する協定」のことです。病院側は、36協定に定められている時間以上の時間外労働をさせていないかを確認してください。また、医療従事者自身が、36協定で定める時間外労働時間数について自己点検を行い、長時間労働とならないように業務の見直しをすることも大切です。

女性医師への支援

近年、医療の分野でも多くの女性医師が活躍しています。しかし、妊娠や出産、育児などでキャリアを中断してしまい、復帰をためらう女性医師は少なくなりません。妊娠や出産などがキャリアの形成の妨げにならないように、病院側は短時間勤務のような多様で柔軟な働き方を推進して、女性医師を支援することが大切です。

医療の2024年問題解決に向けた働き方改革の事例

実際に、ICTツールを導入して、働き方改革を行った医療現場の成功事例を2例紹介します。

日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター

360度カメラを活用した救急診療のトレーニングを導入しています。以前の研修医や医学生は、診察や手術に参加できず、スキルアップがしにくい環境でした。また、手術を撮影する固定カメラは、手術の流れやスタッフの役割把握が難しいことも課題でした。ICTツールの導入により、処置や手術の手技、医療スタッフ全員の動きが把握しやすくなりました。

新潟県庁・新潟大学医学部災害医療教育センター

双方向で書き込みができる電子黒板(IWB)を導入し活用しています。その背景には、新型コロナウイルス 感染症の大流行により業務が逼迫して、県庁と保健所の電話などでの情報連携が厳しくなったことがあります。そこで、県庁の医療調整本部と県内6カ所の保健所をIWBでつなぎ、常に最新の情報を共有できるようにして、迅速なトリアージの実現と業務全体の効率を向上させました。

まとめ

2024年の4月までに、医療業界の働き改革を進めるには、早急な対応が必要です。労働勤務環境や女性医師への支援が改善されないと、医療の安全性の確保は厳しくなるでしょう。医療業界の2024年問題にむけて、経営側や医療従事者も意識改革を行い、しっかりと準備していきましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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