日本の長時間労働を海外諸国と比較!その原因と新型コロナによる影響

From: 働き方改革ラボ

2020年11月04日 07:00

この記事に書いてあること

日本は諸外国と比較し労働時間が長いというイメージがありますが、その実態はどのようなものなのでしょうか。今回は、日本の労働時間の現状を知り、さらに新型コロナウイルス感染症の影響で、今後対策すべき課題や企業が求められることがどのように変化していくのかを考えていきましょう。

労働基準法改正と、日本人の労働時間

日本の就業者の労働時間は、1988年の改正労働基準法の施行を機に減少しています。就業者の一人当たり平均年間総実労働時間を比較すると、1990年ごろまでは最も長時間であったのが、2016年の平均年間総実労働時間ではイタリア(1,730時間)と同程度の1,713時間となっています。このように労働時間は減少しつつあるものの、その他の主要国と比較すると未だ労働時間が長い傾向にあります。

また、週の労働時間が49時間以上の労働者の割合を見てみると、日本は韓国、アメリカに次いで3番目に割合が高く、男性に限ってみれば韓国の次に高い結果となっています。一方で、年間休日数の比較では、いずれの国も休日日数にはほとんど差はみられませんでした。

なお、2019年の労働基準法改正から、時間外労働の上限規制(原則月45時間、年360時間)が導入され、中小企業では2020年4月より施行されました。今後は、これらの法改正に伴う日本の労働時間の変化が注目されます。

長時間労働による影響

厚生労働省によると、長時間にわたる過重労働は疲労の蓄積をもたらす最大の要因であり、さらには脳や心臓疾患との関連性が強いという医学的知見が得られています。具体的には、時間外・休日労働時間が月45時間を超えると健康障害のリスクが徐々に高まり、月100時間超もしくは2~6か月平均で80時間を超えると、健康障害のリスクがより高くなることが指摘されています。

また、令和元年版過労死等防止対策白書によると、日本の自殺者総数は2010年以降減少が続いていますが、勤務問題を動機の一つとする自殺者の割合は2007年以降増加傾向にあり、2018年には9.7%となっています。

さらに、過労死や脳・心臓疾患、精神障害などで労災認定される事案は近年横ばい傾向にあり、2018年は465件でした。その発症のきっかけとして、長時間労働や人間関係、仕事の量・質の変化などによるストレスが挙げられています。

長時間労働の原因は?

経済産業省の「働き方改革に関する企業の実態調査(2016)」によると、長時間労働の原因に対する意識として最も多かった回答は「管理職の意識・マネジメント不足」で、44.2%でした。次に「人手不足(業務過多)」が41.7%、「従業員の意識・取り組み不足」が31.6%となっています。そして、「長時間労働は行っていない」と回答したのはわずか18%であったことから、多くの企業は自社が長時間労働を行っていると認識していると考えられます。

また、厚生労働省の「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業(2015)」によると、所定外労働が必要となる理由として最も多かった回答が「顧客(消費者)」からの不規則な要望に対応する必要があるため」で、44.5%でした。次に「業務量が多いため」が43.3%、「仕事の繁閑の差が大きいため」が39.6%となっています。

また、厚生労働省の「過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業(2015)」によると、所定外労働が必要となる理由として最も多かった回答が「顧客(消費者)」からの不規則な要望に対応する必要があるため」で、44.5%でした。次に「業務量が多いため」が43.3%、「仕事の繁閑の差が大きいため」が39.6%となっています。

コロナ禍の労働時間への影響

新型コロナウイルス感染症による労働時間の変化は、業界によって大きく分かれます。緊急事態宣言下で営業自粛を要請された生活関連サービスや飲食サービス、製造業の業界では労働時間が大幅に減少した一方で、電気・ガス業や金融・保険業、情報・通信業では大きな変化はみられませんでした。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少したという話もよく聞かれます。ただ、かねてより働き方改革では、業務効率を上げて労働時間を減らすことを目標としており、収入の減少が「残業の減少」に伴うものであれば、必ずしもマイナスとはいえないかもしれません。先のアンケート結果で、若年正社員の転職希望理由に「労働時間・休日・休暇の条件がよい会社にかわりたい」とあったことからも、残業時間の減少は良い変化と捉えることができるでしょう。

一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で解雇や雇い止めにあい、仕事を失った人も少なくないようです。急激かつ大幅な収入の減少によって、仕事や生活に困窮してしまうケースも。企業は、休業等による収入減への対処として、雇用調整助成金や休業手当の直接給付などの救済措置をよく理解し、労働者の不利益を回避する努力が求められます。

そして、コロナ禍で急速に広まったテレワークについては、仕事のオン・オフの切り分けが難しく、結局長時間労働になりやすいといった問題が発生しています。さらに企業側にとっても、残業時間の把握が難しいという問題もあり、適切な労務管理の実施には課題が多く残されています。

アフターコロナに企業が求められていること

2019年の労働基準法改正により時間外労働の上限規制が適用され、「さあこれから長時間労働の対策を行っていこう」というタイミングで流行した新型コロナウイルス感染症。避けられない変化の中でニューノーマルへ移行するにあたり、多くの課題が改めて浮き彫りになっています。時間外労働の削減につながると期待されたテレワークも、労務管理を徹底しなければ長時間労働を招く恐れがあります。アフターコロナでは、働く場所を問わず、長時間労働を防ぐ具体的な対策を取り入れる必要がありそうです。そして、それが業務効率化につながり、働き方改革をさらに推し進めることが期待できるでしょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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