LGBTQフレンドリーとは?すべての人に働きやすい職場作りを進めよう

From: 働き方改革ラボ

2022年12月15日 07:00

この記事に書いてあること

世界的に重要性が高まっている「LGBTQフレンドリー」。その取り組みは今、一般社会だけでなく、ビジネスの世界や、働き方においても求められています。ただ日本では、企業にとってLGBTQに対する理解は必要ないと考えている人もいるかもしれません。そこでこのコラムでは、「LGBTQとは何か」という基本情報から、LGBTQフレンドリーが必要とされている背景やその具体策、先進的な企業の事例を解説。LGBTQフレンドリーを進めるための知識を幅広くお伝えします。

LGBTQとは?

「LGBTQ」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体的な性別と性自認が異なる人)、クエスチョニング/クィア(決めていない、分からない等)の頭文字をとった言葉です。性的マイノリティの総称のひとつとして使われています。

人の性は、「男性/女性」とはっきり分けられるのではなく、?身体的な性や法律上の性、?自分自身で自認している心の性、?言葉や服装など、社会的にどう性を表現するかという性表現、そして?自分が好きになる性という、4つの要素で決まると言われています。そして、これらのあり方が多数派と違う人が、性的マイノリティとされます。

性自認や性的指向にかかわらず、すべての人が前向きに生きられる社会の実現を目指す「特定非営利活動法人東京レインボープライド」によると、日本におけるLGBTQの割合は現在、約3%?10%と言われています。

企業にLGBTQフレンドリーが求められる背景

LGBTQフレンドリーとは、LGBTQを差別することなく、友好的な関係を築こうとする態度を指します。LGBTQフレンドリーな企業とは、LGBTQの当事者が利用しやすいサービスや商品を提供したり、社員や関係者向けにLGBTQに関する施策を行ったりすることで、LGBTQが自分らしく生き、活躍することを支援する企業です。

世界的なLGBTQ支援への意識の高まりを受け、日本でも、同性カップルを結婚した夫婦と同等に扱う制度を採用する自治体が増えるなど、LGBTQへの認知が広がっています。

また、一般社会だけでなく人々が働く場においても、LGBTQフレンドリーな環境の整備が求められています。制度や設備面で一般的な性別のみに対応している企業では、LGBTQ当事者は働きづらさを感じます。そのため、多様性を認め合い、さまざまな人の活躍を促す「ダイバーシティ&インクルージョン」の観点からも、LGBTQ支援の取り組みが企業に求められています。

なお、LGBTQにとって働きやすい環境作りを支援する団体work with Pride が発表している、企業の性的マイノリティへの取り組みを評価する「PRIDE指標」への応募数は、2016年の82企業・団体から、2020年の233企業・団体と4年で約3倍になるなど、年々増加。LGBTQフレンドリー実現に対する企業の関心が高まっていることがわかります。

パワハラ防止法で禁止されているSOGIハラスメント、アウティングとは

性的マイノリティへのハラスメントを防止するための法整備も、LGBTQフレンドリーを推進すべき理由のひとつです。2020年6月にパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が改正され、企業に対し「SOGIハラスメント」や、「アウティング」を含む、パワハラ防止対策が義務付けられました。

SOGIは、Sexual orientation and gender identityを略した言葉。SOGIハラスメントとは、性自認や性的指向に関する嫌がらせのことです。また、アウティングとは、その人の性的指向や性自認について、本人の同意なく他者に開示すること。この法改正で初めて、このような職場でのLGBTQに対する差別や、性自認や性的指向に関するハラスメントを防ぐ対応が、企業に義務化されました。

性的マイノリティに対する屈辱的な発言や、パートナーに関する執拗な質問などもハラスメントに含まれます。企業は、禁止するハラスメントの内容を周知する、相談窓口を設ける、ハラスメントが起きた時の迅速かつ的確な事後対応などの措置を講ずる義務があります。

企業のLGBTQフレンドリーを進める取り組み

では、企業では具体的にどのようなLGBTQフレンドリーな施策が行われているのでしょうか。主な取り組みをお伝えします。

結婚式、不動産、保険などビジネス上の取り組み

企業の間では、性的マイノリティに該当する人が利用しやすいサービスや、同性カップルを対象にした商品など、LGBTQ層に向けたビジネスが活性化しています。

同性パートナーを配偶者とみなし、保険金の受取人と認める保険サービスや、同性パートナーふたりの名義で借りられる不動産、同性結婚式プランといったブライダルサービスなど、多様な性のあり方に対応するビジネスも、企業のLGBTQフレンドリーな取り組みのひとつです。

同性パートナーシップを対象にした福利厚生の拡充

福利厚生制度の拡充によってLGBTQ当事者の社員にとって働きやすい環境を整備することも、企業が進めるべき取り組みです。

具体的には、配偶者がいる人が利用できる社宅制度や家賃補助、育児休暇・介護休暇などを、同性パートナーを持つ人にも利用できるように整備します。同性カップルで養育する子どもに対する家族手当や、同性カップルの事実婚に対する結婚祝い金などの福利厚生も、多様な性自認、性的指向を持つ従業員が、自分らしく私生活と仕事を両立させられる働き方を支援します。

多様な性自認に配慮した職場環境整備

社内制度に加えて、LGBTQフレンドリーな職場を実現する設備面の整備も重要です。男性/女性に分かれて利用するという前提で作られた社内設備を、性的マイノリティ当事者の立場での使いやすさの観点からチェックしましょう。

たとえば、個室の「だれでもトイレ」や、男女別ではない個別更衣室を設置することで、自らの性自認や性的指向に関して遠慮することなく、トイレや更衣室を利用することができます。着る人の性別を左右しない制服やユニフォームの新設も、LGBTQフレンドリーな職場環境を目指す上で有効です。

社内コミュニケーション習慣の見直し

すべての人が自分らしく働ける環境を作るために、社内コミュニケーションも見直す必要があります。性的マイノリティを侮辱する差別的な言葉や、中傷や陰口はハラスメントに当たります。また、LGBTQ当事者であることを理由に、仕事で不利益な扱いを行うことも許されません。これらを禁止することを明記した指針を作り、社内に周知しましょう。

また、「旦那さん」「奥さん」などの配偶者の呼称を「パートナー」や「家族の方」という言葉にするなど、日頃のコミュニケーションも見直す必要があります。身体的な性別を理由に、社員の振る舞いや働き方に「男らしさ」や「女らしさ」を求めることもNGです。

ハラスメント防止施策

LGBTQ フレンドリーな企業になるためには、SOGIハラスメントを防ぐための具体的取り組みも欠かせません。SOGIハラスメントに該当する言動を指針にまとめ、社内への周知・啓発を定期的に行いましょう。また、LGBTQ フレンドリーな意識の醸成には、LGBTQへの理解促進を目的とした研修も必須です。

SOGIハラスメントが起きてしまった際に迅速に対応するための相談窓口の設置や、事後対応や再発防止策を講じる際のプライバシー保護といった施策も、あわせて準備しましょう。

LGBTQフレンドリーを推進する企業の事例

LGBTQフレンドリーな企業は、実際にどのような施策を採用しているのでしょうか。先進的な企業事例をご紹介します。

顧客向けサービスと社内でのLGBTQフレンドリーを推進

第一生命保険株式会社はダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、LGBTQフレンドリーを実現する施策を行っています。

そのひとつが、同性パートナーを保険金の受取人にすることを希望した場合、「パートナーシップ証明書」の写しを提出することで手続きができるサービスです。また社内向けには、性自認や性的指向を理由とした差別をしないというLGBTQに関する指針を策定するとともに、LGBTQへの理解促進のための研修を全社員向けに実施。また、社宅付与基準や、結婚・出産時等に取得できる休暇制度を同性パートナーを家族に持つ人向けにも拡大するなど、LGBTQフレンドリーな企業を目指す取り組みを進めています。

イギリスの調査でLGBT平等度において世界34位に

富士通グループは、誰もが働きやすく能力を発揮できる環境作りを目指し、2016年に、グループ全社員に対して、LGBTQの人に働きやすい職場環境を整備していく方針についてトップメッセージを発信。人権研修や幹部向け講演、イントラネットでのメッセージ発信などで全社の認知を進めながら、当事者と対話するミーティングや、LGBTQをテーマとした映画上映会を開催するなどのLGBTQ支援活動を行ってきました。

社内向けには、同性パートナーについても慶弔見舞金の支給、休暇、休職などの社内制度の適用範囲を拡大するなどの環境整備を実施。それらの取り組みが評価され、イギリスのLGBTQ権利擁護団体・StonewallによるLGBTQ社員に対する平等性に関する調査で、34位にランクインしました。

LGBTQ当事者も含む多様な人材の活躍を推進

愛知県で運送業や個人向けサービスを手がける大橋運輸株式会社は、ダイバーシティ推進の一環として、LGBTQ当事者を含む、多様な背景を持つ社員にとって働きやすい職場作りを推進しています。

LGBTQ研修を実施して社員の理解を促進するほか、性別に関わらず利用できるトイレの設置など、設備面の整備も行っています。また、応募時のエントリーシートの性別欄廃止、トランスジェンダーの社員が通称名で勤務できる制度、同性パートナー対象の福利厚生制度などの施策を実施。LGBTフレンドリーな企業に発行される「on the Ground Project」の認定証や、work with Prideによる「PRIDE指標」のゴールドを取得するなど、その取り組みが評価されています。

LGBTQフレンドリーが実現する働き方改革

ダイバーシティ推進に積極的な大企業だけでなく、中小企業の間でも広がっているLGBTQフレンドリーな取り組み。LGBTQ当事者にとって働きやすい会社になることで、多様な人々が自分らしく活躍できる環境を作ることができます。すべての働く人を尊重するLGBTQフレンドリーな取り組みを、今こそ進めてみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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