高年齢者雇用安定法の改正で何が変わった?企業に必要な対応を解説

mail_hatarabo_archives_8.jpg

高年齢者雇用安定法の改正で何が変わった?企業に必要な対応を解説

▼資料の無料ダウンロードはこちらから▼

2020年3月に改正された高年齢者雇用安定法が、2021年4月に施行されました。

高齢の労働者が活躍し続ける環境を整備する法律の改正により、企業には、どのような対応が求められるのでしょうか。このコラムでは、高年齢者雇用安定法の概要と、改正内容を解説。高年齢社員が働く企業がおさえておきたいポイントをお伝えします。

高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法とは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」のこと。1971年に、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、1986年に現行の名前に改称されました。高齢者の安定した雇用を確保し、働く意欲のある高年齢者たちが、企業で能力を十分に発揮できる環境を整備する目的で定められました。

2021年4月に改正法が施行される前は、「60歳未満の定年禁止」「65歳までの雇用確保」が、企業に義務付けられていました。そして今回の改正では、社員の雇用を確保するべき年齢が65歳から70歳に引き上げられています

高年齢者雇用安定法改正の背景

今回の法改正の背景にあるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。内閣府がまとめた平成29年版高齢社会白書によると、2016年時点で、労働力人口のうち65~69歳の者は450万人、70歳以上の者は336万人。労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は年々増え続け、11.8%に至っています。企業にとって高齢の労働者を活用することが、雇用確保の有効な手段のひとつと言える状況です。

また同白書は、高年齢者の高い労働意欲もデータで示しています。現在仕事をしている高年齢者に、「何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか」と聞いたところ、約4割が、「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答。「65歳ぐらいまで」「70歳ぐらいまで」「75歳ぐらいまで」「80歳ぐらいまで」と回答した人を合わせると8割にのぼり、多くの人が、高年齢期にも働き続けたいという意欲を持っていることがわかっています。

また、高年齢者の雇用に関する法整備には、厚生年金の受給年齢の段階別引き上げという背景もあります。60歳で定年を迎えると、年金を受け取るまで無収入の期間が生じてしまうという課題があり、働く人が、60歳を超えても収入を得られる仕事を確保するための法律が整備されました。

高年齢者雇用安定法の主な改正のポイント

2021年4月1日に施行された改正・高年齢者雇用安定法の主な変更内容について、ポイントをお伝えします。

70歳までの就労機会の確保が努力義務に

今回の法改正の目的は、70歳までの労働者の雇用の確保です。これまで同法では、65歳までの定年引上げや定年制の廃止、65歳までの雇用継続制度の導入など、65歳までの雇用確保措置が義務付けられていました。改正法では、65歳までの雇用確保に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保する措置が、努力義務として新設されました

努力義務のため措置を行わないことへの罰則はありませんが、高年齢者雇用確保措置の実施について公共職業安定所から指導を繰り返し受けても具体的な取り組みを行わない企業は、社名の公表が行われることもあるので、注意が必要です。

70歳までの就業確保措置の具体的内容

法律が定める65歳から70歳までの就労機会確保のための措置とは、次の5つです。

①70歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③70歳まで雇用を継続する制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入
⑤高年齢者が希望するときは70歳まで継続的に、次の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が実施する社会貢献事業
b.事業主が委託・出資等をする団体が行う社会貢献事業

65歳を超えても会社が雇用を続ける措置のほか、業務委託契約や社会貢献事業への従事など、労働者の創業支援等を行う措置の導入が求められています。

高年齢者就業確保措置が必要な対象は?

高年齢者就業確保措置の努力義務を負う企業は、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主です。対象企業は、法律が定める70歳までの就業確保措置のいずれかを行う努力をする必要があります。

対象者の基準を設けることは可能

高年齢者就業確保措置は努力義務のため、定年引上げと定年制の廃止を除いて、企業が対象者を限定する基準を作ることができます。ただし、基準の設定には労使間の合意が必要です。事業主と、過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。

また、労使の合意があっても、事業主の恣意性や、男女差別など、他の労働関係法令や公序良俗に反する基準を設けることはできません。

改正にあたり企業に必要な対応

では、高年齢者雇用安定法の改正にあたり、企業にはどんな取り組みが求められるのでしょうか。

高齢者のニーズの聞き取り

70歳までの就業確保の取り組みを行うにあたり、労使間での協議を進めるとともに、該当する高齢労働者のニーズのヒアリングを行うことが必要です。求められる5つの措置のうち自社がどれを採用するかは、高年齢労働者のニーズに応じて決定しましょう。また、個々の高年齢労働者にどの措置を適用するかについても、該当者の希望を聞き、それを尊重して決定することが大切です。

就業確保措置の選定

対象となる高年齢労働者からのヒアリングを反映して、5つの措置の中から自社が実施するものを選択します。法律上では、いずれかひとつの取り組みで就業機会を確保する努力をする必要がありますが、複数の措置によって70歳までの就業機会を確保することも可能です。対象者を限定する基準を設ける場合も、労使間の合意を得るために協議を進めましょう。

違う仕事に就く場合は研修や訓練を実施

定年を迎えた高年齢者を再雇用する際に、対象者が定年前と違う仕事に就く場合は、新しい業務に関する研修や教育を行いましょう。仕事中の事故などを防ぐために、安全や衛生に関する教育も必須です。

また厚生労働省は、高年齢者就業確保措置によって働き続ける高齢者の安全・健康の確保のため、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を定めています。ガイドラインを参考に、職場環境の改善や、対象者の健康・体力の状況を把握してそれに応じた対策を行うなど、高年齢者が安全に働くための施策を進めましょう。

就業規則の変更が必要か確認

定年の引き上げや継続雇用制度の延長、また、業務委託契約や社会貢献事業への従事といった創業支援等措置にかかわる制度を新設する場合は、就業規則の変更が必要です。就業規則の変更や作成を行い、労働基準監督署に届け出ましょう。

企業と働く高齢者をサポートする高年齢雇用継続給付金とは?

60歳を過ぎて働く人の収入をサポートする制度が、高齢者雇用継続給付金です。60歳到達時点に比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者が対象です。高年齢者の就業意欲を維持し、企業の65歳までの雇用継続を促すことを目的としています。

高年齢雇用継続給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」があります。高年齢雇用継続基本給付金は、退職後に雇用保険の基本手当を受けていない人を対象とする給付です。高年齢再就職給付金は、基本手当を受け取った後、60歳以後に再就職した人が対象。再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満になることが条件です。

給付を受けるには、被保険者であった期間が5年以上ある等の条件があります。また、支給額には上限があるので注意しましょう。申請は、賃金台帳や本人確認書類などの必要書類とともに、企業経由で公共職業安定所に書類を提出します。詳しくは、高年齢雇用継続給付についてのリーフレットをご確認ください。

【まとめ】法改正は人材確保のチャンス!就業機会の拡大を進めよう

働き続けたい高年齢者だけでなく、人材不足に悩む企業にとっても有効な高年齢労働者の雇用継続。高年齢労働者の雇用継続を積極的に進める企業が申請できる助成金や、高齢者雇用継続給付金などのサポート制度を利用して、貴重な人材が長く、安心して働き続けられる環境の整備を進めましょう。

働き方改革ラボでは、シニア人材活躍のために会社がやるべきことをチェックリストでまとめました。主に建設業を対象としたないようですが、共通する部分も多いので他業種でもご利用いただけます。自社の現状チェックにぜひお役立てください。

参考・出典

関連ページ

mail_hatarabo_archives_8.jpg

この記事に関連するタグ