ジャストインタイムの弱点│アフターコロナに求められる新しいジャストインタイムとは?

From: 働き方改革ラボ

2022年02月18日 07:00

この記事に書いてあること

新型コロナウイルスの影響で、それまで製造業で主流だった生産方式「ジャストインタイム」の弱点が指摘されはじめました。

そして、世界で新型コロナウイルスの感染が広がってから1年以上が経過し、今、製造業では新しい「ジャストインタイム生産方式」の導入が検討されつつあります。そこでこのコラムでは、「ジャストインタイム」をめぐる状況を中心に、変わりつつある製造業の生産方式や調達について解説します。

ジャストインタイムとは?

製造業の生産現場で長く採用されてきた「ジャストインタイム」とは、トヨタ自動車が開発した生産管理システムです。部品や材料を大量生産して在庫を多く抱えるのではなく、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」作り、調達する仕組みです。

部品を効率よく仕入れることができるため、コストを抑えながら、注文された商品を無駄なく、スピーディに生産することができます。ムダを削減し合理的に製造ができる方法として、世界中の企業で採用されてきました。

合理性が高い方式である一方で、材料や部品の供給が止まると、その影響が生産現場に直結する仕組みでもあります。震災や洪水などの災害が起きた際には、部品工場の稼働がストップし、メーカーの減産や消費者への商品供給が滞るというリスクも指摘されてきました。

コロナで見つかったジャストインタイムの弱点

そんなジャストインタイム生産方式は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の混乱を受けて、次のような弱点が注目されるようになりました。

自動車業界での調達危機が発生?????

コロナ禍の経済混乱の影響を大きく受けた業界のひとつが、日本の自動車メーカーです。世界的な半導体不足と、海外で製造する部品の調達の停滞によって、日本の主要自動車メーカーは大幅な減産を強いられました。

世界的に自動車の生産が需要に追い付かず、新車の納入まで長期間を要するという事態や、中古車の値段が高騰するという事態も発生。自動車を買いたい消費者にも影響が及びました。

在庫やコストを減らす調達方法のリスク

新型コロナウイルス感染拡大によって、世界中の工場で操業停止や減産が発生。世界の物流や、調達が混乱する事態につながっています。

自動車の部品や電子機器、木材など、さまざまな物が世界的に不足。ジャストインタイムへの過度な依存が、世界的な調達の危機を招いたと言われています。効率化を追求するジャストインタイムは、自然災害や感染症などのリスクの影響を受けやすいことが指摘されるようになりました。

慢性的な物不足を招いたジャストインタイム

消費者に供給する製品など、慢性的な物不足や価格の高騰も、在庫を持たないジャストインタイムが原因と言われています。感染拡大が本格化した頃、日本でも、医療現場や個人が使用するマスクやアルコールなどが不足し、入手しにくい状況が発生しました。輸入材の供給不足も、建設業界や住宅メーカーへの影響や工期の遅れ、また住宅価格の値上げにつながっています。

アフターコロナに求められる製造業の変化とは?

コロナをきっかけに、その弱点やリスクが指摘されたジャストインタイム。では、経済の専門家の間では、製造業にはどのような変化が必要と言われているのでしょうか。

ジャストインケースへの移行

アメリカやアジアなど各国では、これまで製造業で主流だったジャストインタイム生産方式を、この機会に見直すべきという主張もあります。必要なぶんだけ材料を調達するジャストインタイムに代わるものとして注目されているのが、「ジャストインケース」の方式です。

ジャストインケースとは、「万が一の備えを持つ」という考え方です。調達の停滞でダメージを受けた製造業の中には、在庫をこれまでより多く確保したり、生産・調達を分散化したりといった、非常時に備える「ジャストインケース」の仕組みを取り入れる企業もあります。

ローカル・サプライチェーンへの切り替え

原料を海外から調達する「グローバル・サプライチェーン」から、国内中心に調達する「ローカル・サプライチェーン」へ切り替えることも、製造業の新しい選択肢として注目されています。世界的な危機の影響で供給が途絶える可能性がある海外工場ではなく、リスクの少ない国内工場からの部品・材料供給を行う方法です。 

国内生産の必要性が注目される一方で、競争力確保のためには、ローカル・サプライチェーンへの依存を避けるべきという主張もあります。平時では競争力を重視して海外から調達し、緊急性の高いケースや、輸送コストがかかる原料は国内で生産するなど、グローバルとローカルを柔軟に切り替えられる「グローバル/ローカル・サプライチェーン」体制の構築も求められています

アフターコロナに必要な新しいジャストインタイムとは

コロナ禍に、ジャストインタイムの弱点が浮き彫りになった一方で、ジャストインタイムをただちに廃止することのリスクも懸念されています。その理由は、在庫を増やすことでコストが上がり、物価が上昇する可能性があるためです。単に、ジャストインタイムから有事に備えて在庫を増やすジャストインケースへ移行するだけでなく、在庫や供給を柔軟に調整できる新しい仕組み作りも求められています。

アフターコロナの製造業には、自社の生産能力に見合った機能的な在庫を持ちながら、冷静に状況を見極めて効率的に調達を行う、新しいジャストインタイムが必要と言われています。

【まとめ】新しい時代のジャストインタイムを取り入れよう

新型コロナウイルスによってものづくりの現場に起きた変化は、日本の製造業の生産や働き方だけでなく、一般消費者にも影響を与えました。長く製造業で手本とされてきた生産方式のメリットが見直されたことは、社会の状況に応じて働き方や考え方を柔軟に変える上でのヒントを与えてくれたと言えるでしょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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