【2022年版】IT導入補助金とは?IT導入補助金の補助対象・採択のポイントを解説

From: 働き方改革ラボ

2022年05月17日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革関連法の施行によって、有給休暇の取得や勤怠管理の義務化など企業は社内制度や体制の見直しが必要になってきています。加えて新型コロナウイルス流行以降は、非対面・低感染対策への強化を進めながら業務効率化が求められる様になっています。

会社全体で業務効率を向上させるためには、ツールやシステムの導入を検討しなければなりません。一方で、ツールやシステムの導入は多額の費用がかかるため、中小企業にとっては負担になってしまうという課題があります。

そこで活用したい制度が「IT導入補助金」です。この記事ではIT導入補助金に関する具体的な申請方法や最新情報を解説します。

※2019年3月に公開した記事を2022年5月時点の情報に更新しました

IT導入補助金とは?

IT導入補助金とは、正式な名称を「サービス等生産性向上IT導入支援制度」と言います。

中小企業や小規模事業者を対象として、生産性の向上や一手不足の解消といった企業それぞれの課題やニーズに合ったITツールを導入する際の経費の一部を補助することで、業務の効率化や売上アップをサポートすることを目的としています。

IT導入補助金には大きく2つの枠が用意されています。

通常枠(A・B類型)

通常枠は、ITツールの導入によって業務効率化や売上アップといった経営力の向上と強化を目的として用意されている補助金です。A類型とB類型の違いは補助金の上限と下限金額の違いです。

IT導入補助金 通常枠(A・B類型)の詳細
IT導入補助金 通常枠(A・B類型)

デジタル化基盤導入枠

デジタル化基盤導入類型は、会計ソフトやECソフトといった導入費用の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。デジタル化基盤導入類型には、「デジタル化基盤導入類型」と「デジタル化基盤導入類型(ハードウェア購入費用)」、「複数社連携IT導入類型」の3つ用意されています。

デジタル化基盤導入類型

デジタル化基盤導入類型では、通常枠で対象となるソフトウエアやクラウド利用料の中でも2023年施行のインボイス対応を見据えた企業間取引のデジタル化を推進することに特化した類型です。

IT導入補助金 デジタル化基盤導入類型の詳細
IT導入補助金 デジタル化基盤導入類型

デジタル化基盤導入類型(ハードウェア購入費用)

ハードウェア購入費用は、従来までのIT導入補助金では対象外だったハードウェアの導入費用を補助することを目的として新設された制度です。

IT導入補助金 デジタル化基盤導入類型(ハードウェア購入費用)の詳細
IT導入補助金 デジタル化基盤導入類型(ハードウェア購入費用)

複数社連携IT導入類型

複数社連携IT導入類型は、複数の中小企業や小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入することによって、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組みとして、ITツールの導入支援やコーディネート費、取り組みへの助言をする外部専門家に係る謝金を含めて補助する制度です。

複数社連携IT導入類型は、他のIT導入補助金の類型よりも対象事業者が狭いことに注意が必要です。対象事業者は下記の通りです。

●商工団体など
・商店街振興組合、商工会議所、商工会、事業共同組合
●当該地域のまちづくり、商業活性化、観光振興などの担い手として事業に取り組むことができる中小企業または団体
・まちづくり会社、観光地域づくり法人(DMO)など
●複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアム

IT導入補助金 複数社連携IT導入類型の詳細
IT導入補助金 複数社連携IT導入類型

2022年版のIT導入補助金の変更点とは?

2022年版のIT導入補助金の大きな変更点は、従来までのIT導入補助金の類型に加えて、「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」の2つの類型の追加です。

具体的な内容は下記の通りです。

「デジタル化基盤導入類型」

2023年より施行されるインボイス制度に対応するためのツール導入や、企業間取引のデジタル化を強力に推進するため、補助率を引き上げて優先的に支援するもの。

またデジタル化基盤導入類型の中に、従来までは補助金の対象になっていなかったハードウェア導入費も新設されました。

「複数社連携IT導入類型」

複数社が連携してITツールを導入するときに、コーディネート費や外部専門家に係る謝金などを含めて支援するもの。

2つの類型追加の背景として、2023年10月施行のインボイス制度への対応が迫られている点と、業務効率化に向けたITツールが複雑化するようになり、複数の企業が連携して支援する必要性が高まってきたことへの支援対象の拡大です。

2022年版のIT導入補助金は従来まで以上に支援対象が広がったことで、より自社の課題やニーズに合った支援類型を選択できるようになり、補助金の交付が受けやすくなったといえます。

補助対象

補助金の対象は、日本国内に本社および事業所を有する中小企業や小規模事業主に限られます。事業規模の定義は業種や組織形態によって異なるため、具体的には以下の表をご覧ください。

IT導入補助金 補助対象の詳細
IT導入補助金 補助対象

補助の対象となる「事業」については、日本国内で実施される事業であること、またIT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業であることが条件です。ただし、交付が決定する前に契約及び導入を行った場合、それに伴って発生した経費は補助対象とはならないので注意が必要です。

なお対象となる「ITツール」については、あらかじめIT導入支援事業者が事務局に登録し、認定を受けたものに限られます。2022年度版より「デジタル化基盤導入枠」のみハードウェア購入費用も補助対象に加わったため、PCやタブレット・プリター・スキャナーや複合機器・レジや券売機なども導入の際には補助金申請ができるようになりました。

IT導入補助金の申請から交付までの9ステップ

それでは、実際に補助金の交付までのステップを確認してみましょう。申請から交付までは9つのステップがあります。IT導入支援事業者との連携を取ることで、交付までの流れがスムーズになります。

1.IT導入補助金についての理解

IT 導入補助金の公式サイトや公募要領を読み、補助事業について理解します。
IT導入補助金の公式サイトはこちら

2.IT事業支援事業者の選定と導入するITツールの選択(事前準備)

補助金の交付申請を行う準備として、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。

事業者を選定する際には「IT導入支援事業者一覧」より、選定を行います。またITツールの検索や選定の際には「ITツール選定ナビ」を利用します。(※IT導入事業者・ITツール検索機能は後日公開予定です。)

3.「gBizIDプライム」アカウントの取得(申請要件)

IT導入補助金の申請の際には、「gBizIDプライム」のアカウントが必要になります。「gBizIDプライム」とは、法人や個人事業主向けの共通認証システムのことで、このアカウントを取得することで、行政サービスをWeb申請のみで利用できるようになります。

「gBizIDプライム」のアカウント発行には2週間程度の時間がかかるため、あらかじめアカウント発行申請をしておくようにしましょう。

4.Security Action宣言 (申請要件)

IT導入補助金の申請の際には「gBizIDプライム」に加えて、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「Security Action宣言(セキュリティ対策自己宣言)」が必要になります。

この宣言は中小企業・小規模事業者など自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度のことで、IT導入補助金の申請の際には、「一つ星」または「二つ星」を宣言することを要件としています。

5.交付申請 (IT導入支援事業者と共同作成・提出)

1~4までが済んだらIT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。事業計画が完成したら、下記の流れで申請をしましょう。

  1. 1.

    IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待を受け、代表者指名などの申請者基本情報を入力する。

  2. 2.

    交付申請に必要となる情報入力・書類添付を行う。

  3. 3.

    IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する。

  4. 4.

    申請マイページ」上で入力内容の最終確認後、申請に対する宣言を行い事務局へ提出する。

6.ITツールの発注・契約・支払い(補助事業者の実施)

IT導入補助金の交付申請が完了し、事務局から「交付決定」を受けた後にITツールの発注・契約・支払いなどを進めます。

交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けられないため、注意が必要です。

7.事業実績報告

補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約・納品・支払いなどを行ったことがわかる証憑を事務局へ提出します。証憑の提出は以下のフローで行いましょう。

  1. 1.

    IT導入支援事業者より交付を受けた「申請マイページ」から事業実績報告に必要な情報及び証憑の添付を行い、事業実績報告を作成する。

  2. 2.

    事業実績報告が作成された後、IT導入事業者が内容の確認と必要事項の入力を行う。

  3. 3.

    最終確認後、事務局に事業実績報告を提出する。

8.補助金交付手続き

事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると「申請マイページ」で補助金額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。

9.事業実施効果報告

事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」より代理提出します。

採択率を上げるために重要なポイント

IT導入補助金は採択されることで、ITツール導入費用のうち上限450万円まで補助金が交付される非常にメリットが大きい制度です。しかし手続きの際に不備があると採択されなくなってしまうため、注意が必要です。そこでIT導入補助金の採択率をあげるために重要なポイントを4つ解説します。

1.申請書類に不備がないか確認する

IT導入補助金で採択されないケースとして最も多いものが申請書類の不備です。よくある不備としては、下記の3つがあげられます

  • 履歴事項全部証明書の全てのページが揃っていない。

  • 履歴事項全部証明書の内容と申請の際に入力した企業情報が異なっている。

  • 法人税の納税証明書ではないものを申請書類に入れてしまっている。

申請書類の不備は事前の入念なチェックによって回避できるものです。申請の際には、ダブルチェック体制を整えるなど、ミスのない状態で申請ができるようにしましょう。

2.申請内容に一貫性をもたせる

申請書類の不備の次に多い採択されない理由として、申請内容に一貫性がないという点です。IT導入補助金の審査の際には、「経営課題に沿ったITツールを選んでいるか」という点が重視されます。入力した自社の企業情報をもとに「どこに経営課題があると判断されそうか」という仮説を事前に立てて、「課題解決に向けた最適なITツールである」ことがわかる申請内容にしましょう。

3.応募回数は年度ごとに「1法人につき1回のみ」

IT導入補助金を申請する際には、応募できる「回数」に気を付けましょう。年度ごとに募集は複数回ありますが、応募は年度ごとに「1法人につき1回のみ」です。

ただし、同じ年度内の募集期ですでに不採用となっている場合や、辞退等で交付申請の取り下げを行っている場合は再度応募が可能です。

4.日程に余裕をもって申請する

「IT導入補助金の申請から交付までの9ステップ」の通りIT導入補助金の申請の際にはいくつかのステップが必要になります。ステップの中には「gBizIDアカウント」の取得やマイページに入力する情報の収集のために時間がかかる場合があります。

またITツールの導入には、申請する企業とベンダー側に連携が必要な場合があるため、申請期限に間に合うように計画的に申請の準備を進めるようにしましょう。

公募スケジュール

2022年度版IT導入補助金は、「通常枠(A・B類型)」と「デジタル化基盤導入枠」、「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」の3つの類型でスケジュールが異なります。

通常枠(A・B類型)

通常枠(A・B類型)では、1次締切と2次締切まで予定されています。

●1次締切
・締切日:5/16
・交付決定日:6/16

●2次締切
・締切日:6/13
・交付決定日:後日案内予定

デジタル化基盤導入枠

デジタル化基盤導入枠では、1次締切から4次締切まで予定されています。

●1次締切
・締切日:4/20
・交付決定日:5/27

●2次締切
・締切日:5/16
・交付決定日:6/16

●3次締切
・締切日:5/30
・交付決定日:6/30

●4次締切
・締切日:6/13
・交付決定日:後日案内予定

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)では、1次締切から3次締切まで予定されています。

●1次締切
・締切日:6/10
・交付決定日:7月中旬を予定

●2次締切
・締切日:8/19
・交付決定日:9月下旬を予定

●3次締切
・締切日:10月31日
・交付決定日:12月上旬を予定

各種詳細の公募スケジュールは「IT導入補助金2022公式サイト」をご確認ください。

まとめ 正しく申請して業務のIT化を進めよう

IT導入補助金を申請する際には、IT支援事業者と連携しながら複数のステップを踏んでいく必要があります。スムーズに申請を進めて補助金を受け取るためにも、流れをしっかりと押さえておくとよいでしょう。

IT導入補助金の申請には難しい手続きはありませんし、必要書類も多くはありません。ぜひこの機会にIT導入補助金を活用し、業務のIT化を進めてみてください。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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