業務改善につながる業務棚卸とは?取り組みの6ステップを解説
2022年07月27日 07:00
この記事に書いてあること
2019年から施行された働き方改革関連法や新型コロナウイルスの流行をうけ多くの企業で進んでいる業務改善。DXの推進によって業務改善に向けた選択肢は、チャットツール・グループウェアの導入やペーパーレス化、会議のICT化、アウトソーシングやRPAの活用など、さまざまです。
このように多くの選択肢の中から、本当に必要なソリューションを選び実施するためには、現在の日常業務がどのように行われているのか整理して、課題を見つけることが必要です。
今回は業務改善に向けた課題を抽出するために欠かせない「業務棚卸」のポイントを解説いたします。
※2019年3月に公開した記事を更新しました
業務棚卸とは何か
業務棚卸とはなんでしょうか?まずは業務棚卸が注目されている背景をご紹介します。
業務棚卸とは?
業務棚卸とは、社内の業務を洗い出して整理する取り組みのことです。
整理をする業務内容は様々で、企業全体や部署ごと、社員一人ひとりの粒度で業務内容や作業時間、コストといった軸で洗い出していきます。このように業務内容とコストの両面で整理をしていく中で、仕事上の非効率的なポイントを可視化していきます。
業務棚卸が注目される背景
業務棚卸は業務改善の際に行う重要な取り組みですが、ここ数年で業務棚卸が注目されはじめています。そこでここでは業務棚卸が社会的に注目されている背景を見ていきましょう。
ニューノーマルな働き方の浸透
業務棚卸が注目される背景に「ニューノーマルな働き方の浸透」があります。
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、日常生活だけでなく業務上でも「新しい生活様式(ニューノーマルな働き方)」を求められるようになり、多くの企業でテレワークなどを利用した一つの拠点にこだわらない働き方が広がりました。
従業員が遠隔地で作業をするテレワークでは、業務状況を把握しにくいこともあり、従業員それぞれの担当業務を明確にした管理体制を整える必要が出てきました。そこで業務棚卸の必要性が急激に高まってきたのです。
働き方改革の推進
次に挙げられる背景が「働き方改革の推進」です。
2019年に施行された働き方改革の推進による残業時間の上限規制によって、今まで以上に業務の効率性を高める必要が出てきました。
そこで少ない労働時間の中で効率的に作業をしていくために、無駄な業務内容や労働時間が伸びてしまうボトルネックを突き止めるために業務の棚卸が注目されるようになりました。
DXの推進
IT技術をビジネスに活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も、業務棚卸の注目度を高めるきっかけになりました。
業務のDX化は作業内容の自動化・デジタル化・ペーパーレス化を意味するため、成功することで作業効率の飛躍的な向上が期待できます。しかしDX化をするためには、それまで各従業員に属人化していた作業内容をデジタル化する必要があり、取り組み内容の優先順位を判断するために業務の棚卸が欠かせなくなったのです。
業務棚卸のメリット
業務の棚卸をすることで得られる様々なメリットがあります。ここでは3つの観点でメリットを解説します。
業務改善につながるポイントの洗い出し
棚卸で得られる大きなメリットは、業務改善につながるポイントを洗い出せるという点です。
業務の棚卸を行う中で、下記のような改善ポイントが見えてきます。
- ・
そもそもの業務量が多く、従業員に無理が生じている業務
- ・
これまで気づかなかった無駄な作業
- ・
業務品質のムラが生じていた箇所
こういった業務改善のポイントを棚卸の際に洗い出していくことで、業務の効率を高め、改善に向けた取り組みを進めていくことができます。
また業務棚卸の際に見つけた無駄な部分を省くことで、コスト削減や生産性の向上による収益の拡大にも繋げることができます。
リソースの有効活用
棚卸を通して業務の効率化が進めば、社内のリソースを有効活用できるようになります。限られた従業員数でも生産性を高められるようになり、従業員満足度の向上や業績拡大も期待できます。
また棚卸によって担当者ごとに業務量の可視化ができるため、リソースを新規補充するべきポイントが明確になり、より的確な採用戦略を立てることができます。課題が明確化しているため、採用者のミスマッチも起こりにくくなり、採用コストの削減にも繋がります。
属人化によるリスクの解消
業務棚卸を通して業務フローの可視化ができるため、特定の従業員しか把握していない業務の属人化や業務量の偏りを確認することができます。
属人化していた業務はマニュアルを作成し、社内で標準化することで、担当者が不在の状況でも代わりの社員が業務に取り組むことができるようになります。
従業員ごとに作業量の偏りがあった場合には、担当領域の見直しや業務の自動化、リソースの補充を検討することで、継続的な事業展開ができる体制を整えることができます。
業務棚卸の6ステップ
ここからは業務棚卸に必要な6つのステップをご紹介します。
1.業務棚卸の実施範囲を決定する
業務棚卸をする上で必要なことは、棚卸の実施範囲の決定です。
業務棚卸の範囲の決め方として、下記の3つの観点で範囲を決定していくとよいでしょう。
- 1.
業務内容や部署部門といった組織軸での棚卸
- 2.
作業の種類や業務フロー軸での棚卸
- 3.
業務の優先度やリスク、難易度軸での棚卸
特に初めて業務棚卸をする際には、一度に全ての棚卸を実施するのではなく、まずはリスクの少ないと思われるポイントから進めていくとよいでしょう。
2.業務棚卸のフォーマットとルールを作成する
棚卸の範囲が決定した次は、実務担当者に実際の業務内容を記載してもらうための棚卸表のフォーマットとルールを作成していきます。
棚卸表のフォーマットは下記の観点で項目を作成するとよいでしょう。
- ・業務の分類と業務名(大項目・中項目・小項目)
・業務の発生頻度
・業務工数
・コスト(発生する場合)
棚卸のフォーマットの形式はエクセルで作成することで、その後の管理や各部門への展開と追加編集に便利です。
3.業務棚卸の実施
棚卸リストの作成が完了したら、実務担当者へ配布をし、担当している実際の業務を記入してもらいます。
実務担当者は業務とは別に棚卸作業に協力するかたちになるため、時間に余裕を持って、記入方法や棚卸をする目的の周知を事前にしておくことも大切です。
4.棚卸した業務のリスト化
実務担当者に記入してもらった棚卸表を改修し、業務一覧表に整理していきます。この際に内容に抜け漏れがないか、粒度が異なる業務が横並びになっていないか、といった観点で確認していきましょう。
5.担当者へのヒアリングと業務一覧表の最終化
回収した棚卸フォーマットの中で疑問点や抜け漏れが発生している場合は、実務担当者へヒアリングしていきます。ヒアリングの中でフォーマットだけでは見えてこなかった業務上の課題や、属人化している業務内容を担当者と一緒に洗い出していくとよいでしょう。
6.定期的にアップデートを実施
業務棚卸は一回で完了するものではなく、定期的に棚卸を実施して、その時々の課題の抽出と、より生産性の高い改善方法の策定が大切です。
業務改善のためのチェックポイント
業務を書き出してリストを作成した後は、効率化を目指す観点からそれぞれの業務内容をチェックしましょう。有効な業務効率化につなげるために押さえるべきポイントを解説していきます。
本当に必要な業務か確認する
まず初めに、洗い出した業務の中から不要な仕事がないかチェックしていきます。
有効活用されていない資料や、異なる担当者で重複している作業、属人化している業務がないか確認していきます。削減できる業務内容を発見した際には、関係者と連携して業務内容の必要性を議論していきましょう。
誰がやるべき内容か確認する
次に洗い出した作業内容そのものは、誰がやるべき内容かを確認していきましょう。本来であればアシスタントや部下ができる仕事を責任者が担当になっているため、マネジメントリソースが逼迫して現場の生産性が落ちている可能性もあります。
そのため業務内容を誰がやるべき内容かを確認し、担当者の割り振りやアウトソーシングの利用を検討していくのもよいでしょう。
作業工数は成果に見合っているのか確認する
それぞれの業務内容の作業工数が適正かどうかもチェックしていく必要があります。特に成果の大きさに対して、必要以上に作業工数がかかっている業務は、業務改善を検討する余地があります。
また現場の担当者では見えていなかった部分に作業効率を悪化させるボトルネックが潜んでいる可能性もあります。そういったケースは棚卸の際にボトルネック箇所を洗い出し、現場担当者と一緒に業務効率化へ向けた議論をしていくようにしましょう。
制度変更に関わる非効率はないか
社内制度が原因となって業務プロセスがストップしていたり、煩雑な手続きのせいで作業効率が落ちている箇所がないのかを確認していくことも大切です。
社内制度が原因となって作業効率が落ちていると判断した際には、全社的な改善に向けた取り組みが必要です。計画的な業務改善に向けて、棚卸の段階で注意深く確認していくとよいでしょう。
コミュニケーションの問題はないか
従業員同士のコミュニケーションにおける課題を見つけることも重要なポイントです。特に上司や同僚、複数の部門が関わる業務に関しては、コミュニケーションや承認プロセスの問題で業務が滞っている作業がないかを見ていきましょう。
解決に有効な業務改善ツールを検討
棚卸によって業務上の課題や非効率な部分を発見したら、解決に向けた方針を検討していきます。
それぞれの課題に応じて、社内規定の変更や、コミュニケーションを円滑にするためのルールの設定、業務効率を高めるツールの導入などを洗い出していきます。
またリソースが逼迫している部分に関しては、アウトソーシングの利用や新規採用といった解決策も検討する必要があります。より効果的な解決策を見つけ出すために、棚卸の段階で多くの課題を抽出できるようにしましょう。
業務棚卸でまずは働き方の課題を見つけよう
業務棚卸によって、業務プロセス上の具体的な問題が可視化され、業務効率化のスタートラインに立つことができます。労働時間が長すぎる、または、仕事に時間を費やしてもなかなか成果が上がらないという場合は、まずは業務をシンプルにリストアップすることから始めましょう。
働き方改革を行いたいけれども何から手を付けていいのかわからないという方にも、業務棚卸はおすすめです。
記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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