中小企業の採用を成功させるインナーブランディングとは?施策や事例を解説

From: 働き方改革ラボ

2021年07月07日 07:00

この記事に書いてあること

社内に対して行われるブランディングである「インナーブランディング」。社外へ向けたブランディングだけでなく、社内に向けたこの取り組みを進める企業が増え始めています。

そこで今回は、インナーブランディングの意味や具体的な取り組みについて、採用面の効果も含めて解説。新卒・中途採用を行う中小企業にとってインナーブランディングで生まれるメリットや、企業の成功事例もお伝えします。

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、企業が自社の従業員に向けて行うブランディングのこと。

インターナルブランディングとも呼ばれます。ブランディングは、一般的には、広告やPRなど、外部の消費者に対して行われるアウターブランディングを指します。
これに対してインナーブランディングは、企業の価値観や理念に対する社員の理解を深めることで、ブランドの一貫性や、ブランド価値の向上を目指す活動です。

インナーブランディングは取り組みの効果が目に見えにくいため、売上や反響に直結するアウターブランディングと比べて注力されてきませんでした。

ただ最近では、社員のブランド理解や会社へのエンゲージメントを高めることが、ブランド力の強化や採用活動の成功につながることが知られ、インナーブランディングに取り組む企業が増えています。

インナーブランディングのメリット

では、インナーブランディングを進めると、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。

社員満足度の向上

ブランドや理念に対する理解が深まり愛着が生まれることで、社員の会社に対するエンゲージメントが高まります。

良いビジネスに従事できているという思いから、仕事に対する満足度やモチベーションが向上。会社やチームの一体感が生まれることで、風通しがよく、働きやすい環境が実現します。

社外に向けたアウターブランディングの強化

インナーブランディングの活動によって、ブランドを作っている社員自身の、会社のブランドに対する理解が深まります。

ブランドの価値を仕事や接客態度で体現することで、顧客に対するサービスや、製品作りの質が向上し、結果的に社外に対するブランディングにも繋がります。

社員によるブランド価値の発信につながる

インナーブランディングの取り組みは、社員による積極的な情報発信につながります。

営業活動や広報活動などの業務上でのポジティブな発信のほか、SNSなどでもブランドや理念に即した好意的な発信が期待できるため、ブランド力が強化されます。

生産性や売上の向上

社員たちのモチベーションやチームワークの質が上がることで、仕事の効率化も実現します。

積極的な姿勢が顧客サービスの向上や売上拡大につながるほか、業務上のコミュニケーションが円滑になることで、仕事のムダが減り生産性が上がります。また活発な議論によって新しいアイデアが生まれることも期待できます。

インナーブランディングが採用にも効果的な理由

ブランド力強化や、生産性の面でも効果が見込めるインナーブランディング。その一方で、人材不足という課題を抱えている企業にとっては、採用面にも効果があります。その主な理由を解説します。

理念に共感する人材を採用しやすい

ブランドや理念を理解した社員が採用活動を行えば、自社に合った人材を採用しやすくなります。

新卒採用と中途採用、いずれのケースにおいても、自社ブランドをよく理解している社員が会社の情報を発信することで、自社の魅力を候補者に的確に伝えることができます。

また、採用スタッフ自身が、候補者と接する際に正しく理念を伝えることができるため、理念に共感する人材を集めやすくなります。

定着率が上がり人材が集まりやすくなる

会社の理念やブランドに対する愛着を育てることで、社員が離職しにくく、定着率の高い会社になります。

離職率が低くなると、働きやすい会社としてのイメージが高まるため、応募者数の増加も見込めます。定着率の向上で人手不足が軽減され、採用力強化によって人員の補強もスムーズになります。

ミスマッチが減るため採用コストが下がる

理念に共感する人材を集められる採用体制と、応募者数の増加によって、自社に合った人材を採用しやすくなります。

採用の確度が上がり、入社後のミスマッチによる早期退職も防げるため、採用コストが下がるという点もメリットです。

リファラル採用が成功しやすくなる

満足度やエンゲージメントが高い社員を育てることは、リファラル採用の成功にもつながります。

リファラル採用とは、社員が自社に合うと思う知人や友人を人事に紹介して入社に至る採用手法。会社と候補者をどちらもよく理解している社員が紹介するため、いい人材に出会えるという採用スタイルです。

会社の求める人材像をよく理解した社員が、優秀な人材やその社員と相性のいい人材を紹介してくれることが期待できます。

採用を成功させるインナーブランディングの具体策

では、採用につながるインナーブランディングを行う上では、どのような施策が有効なのでしょうか。その具体策をご紹介します。

社内向けウェブサイト/社内報

従業員向けのウェブサイトや、紙で掲示・配布する社内報の発行は、実施する企業が多いインナーブランディング施策です。

必要な情報共有ができるほか、経営層のインタビューなどで理念や現状に対する理解を深めることが可能です。また、社員の働き方や顧客の声を紹介するインタビューも、ブランドや会社への愛着を高める上で有効です。

研修やワークショップの強化

理念や事業の意義について理解を深める施策として、研修やワークショップも有効です。

講義型の研修だけでなく、さまざまな立場の社員が共に課題解決を目指すワークショップを行うと、より社内の仕事や社員の思いを共有できます。議論の中で自分の意見を言うことも、会社で働く意義や、理念に対する理解度の確認につながります。

クレドカード

クレドとは「信条」を意味するラテン語。クレドカードとは、会社の企業の理念やビジョン、行動指針などを記載したカードのことです。

ネックストラップなどに入れて携帯して日常的に目にしてもらうことで、会社の考え方に対する愛着が深まります。また、仕事で迷ったときに判断をするための行動指針としても活用できます。

採用サイト用動画の作成

新卒、中途採用を目的とした採用サイトで配信する企業動画を作成することも、インナーブランディングにつながります。

応募者向けの動画には、自社の理念のほか、社会における自社の役割や、働く人の声を伝えるという目的があります。採用動画を社員が目にすることで、事業を行う理由など、会社の原点を改めて確認できるため、社員が自社の企業としての価値を知る上で有効です。

採用強化につながるインナーブランディングのポイントとは?

インナーブランディングの採用活動における効果を高めるためには、大前提として、自社やブランドのビジョンの明確化が必要です。

インナーブランディングを機に、社員に浸透させるべき理念や行動指針を整理し、社内向けに発信の準備をしましょう。

また、社会における意義やブランドの価値など、社内に伝えるべき内容は社会の変化やビジネスの状況によって変化することもあります。社内へのビジョンの共有は一度行って終わりにするのではなく、社内報やセミナーによって、定期的にインナーブランディングの活動を続けることが大切です。

また、社内に理念の共有ができているかどうか見直す機会を設けましょう。インナーブランディングの取り組み内容も定期的に見直して、会社の実情に合った浸透の方法を目指すことが大切です。

インナーブランディングの成功事例

では次に、実際に企業で行われて成功しているインナーブランディングの取り組み事例をご紹介します。

自社の約束を明文化したカルチャーブック

経済情報プラットフォームやウェブメディアを展開する株式会社ユーザベースは、企業規模の拡大に応じて、自社のバリューを社内で伝える取り組みを進めました。

社員が30名を超えた2012年には、「自由主義で行こう」「創造性がなければ意味がない」など、社内の共通の価値観を示す「7つのルール」を規定しました。

さらに2016年には、7つのルールをさらにかみ砕いた「31の約束」作成し、手のひらサイズのカルチャーブックにまとめました。この冊子は、採用面接や、チームの振り返りや合宿で活用されています。

キャラクターを活用したインナーブランディング

京都で電設工事や通信・電気設備システム開発設計を手がける井上株式会社では、「BE(Beyond Expectation)」(期待を超える)という中長期経営計画のコーポレートスローガンを策定しました。

スローガンの浸透のため、スローガンや自社の事業や社風を反映したキャラクター「伝説の電設マン」を使ったシンボルマークも作られました。

キャラクターをデザインしたノベルティグッズや新たなコーポレートサイト、採用パンフレットなども作られ、「優しさ」を大事にする風土の定着や、社外への発信に役立っています。

全社員が参加する日報と社内報

印刷や出版事業を行う北海道の株式会社アイワードは、「民主的な運営」を経営方針のひとつに掲げる会社です。1983年から、この方針の実現と情報の共有化を目的にした日報と社内報「フォーラム」を組み合わせた施策を行っています。

全社員が、業務などでの気付きや提案について書いた日報を毎日提出し、その内容を「フォーラム」を活用してフィードバックをします。業務が可視化されることで社員と経営層の間の相互理解が深まっているほか、社員の主体的な姿勢を生むことにもつながっています。

人材獲得のために社内に目を向けよう!

採用活動を成功させようと、社外へのブランディングに注力し、社員の自社に対する理解促進が後回しになっているケースもあるでしょう。

ただ、自社に合う人材を獲得するためには、社外にばかり目を向けるのではなく、社内に向けたブランディングが欠かせません。改めて、インナーブランディングの採用面でのメリットを理解した上で、社員が自社のことをどのくらい知っているのか、チェックしてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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