人が育つ環境作りで生産性を向上しよう

From: 働き方改革ラボ

2021年02月02日 07:00

この記事に書いてあること

働き方改革を進めるために不可欠なのが、社内の業務効率化です。特に中小企業にとって人材難の状況が続く中、限られた人員での生産性向上に苦慮している企業も多いのではないでしょうか。そこで今回は、働き方改革の取り組みとして有効な社員育成のポイントについて解説。中小企業も取り入れやすい人材育成の施策の具体例や、企業の成功事例をご紹介します。

人材育成が働き方改革につながる理由

働き方改革関連法の施行に伴って、中小企業にとっても労働時間の削減や有給取得率の向上が課題に。時間外労働を制限するルールを設けるなど対策を進めてはいるものの、社員の能力向上の面には目を向けられていない企業もあるでしょう。しかし、社員の能力こそが業務効率や業績に大きく関わります。社員の仕事の効率が上がれば労働時間の短縮につながり、有効に使える時間が増えます。仕事の創造性が高まることで、会社の業績を上げるアイデアが生まれることも期待できます。

中小企業庁が発表している2018年版「中小企業白書 人手不足を乗り越える力 生産性向上のカギ」の調査によると、「人材育成・能力開発について特に方針を定めていない」という企業で、過去3年間に営業利益が増加した会社は18.2%。対して何らかの能力開発を行っている企業は利益が上がる傾向が高く、「数年先の事業展開を考慮して、その時必要となる人材を想定しながら能力開発を行っている」という企業では、38.4%が過去3年間の営業利益が増加しています。能力開発に積極的に取り組む会社ほど、業績が伸びる傾向があることがわかっています。

中小企業に有効な人材育成の取り組みは?

次に、中小企業が実現しやすく、生産性向上につながる人材育成の取り組みをご紹介します。

業務のマニュアルを整備

社員のスキルアップを図る第一の施策が、マニュアルの整備です。仕事の進め方や業務に必要な知識を文書にまとめることで、新人や若手社員にスムーズにノウハウを共有できます。先輩の仕事に同行して業務を学ぶだけでは、社員によって教えるスキルに差があるためノウハウの伝達レベルにムラが生じます。マニュアルを活用すれば若手社員の知識の平準化が図れるほか、若手を指導する社員がそれぞれ教育に必要な資料を作る非効率を防げます。

マニュアル化されることで業務の見える化につながり口頭で伝えにくい仕事の手順も整理できるため、効率的に教育ができます。

OJTに加えOff-JTを強化

中小企業では、育成は実務の中で新人や若手社員を訓練するOJT(On-The-Job Training)がメインになるケースが多いでしょう。生産性向上につながる人材育成のためには、OJTに加えて、実務以外の場で教育を行うOff-JTも取り入れることがおすすめです。OJTは、コスト削減や指導者側のスキルアップの面で有効ですが、OJTだけでは十分に伝えきれない知識もあります。

またOff-JTは、育成担当者の教育スキルにムラがないため、参加者全員が同じ質の教育を受けられます。機器やオフィスソフトの操作、業界の専門知識など、集中して学習すべきテーマは、現場から離れた場で研修を行いましょう。

若手を指導者に登用する

ベテラン社員だけでなく若手社員を指導担当者として登用することも、有効な人材育成施策です。新人のOJT担当者に入社数年目の社員を起用すれば、若手社員が教育の経験を積むことができます。若手社員は、数年前に自らが研修やOJTを受けた経験をもとに、的確に指導をすることが可能です。自らの経験や知識を体系立てて新人に伝えることが、自分自身の学びやスキルアップにつながります。育成を受ける側の新人には、感覚や年齢が近い若手社員からの助言は伝わりやすいというメリットもあります。

女性社員育成の強化

女性社員の活用も、人材不足解消や人材育成に有効です。中小企業庁の先述の資料によると、日本の労働力人口が減少傾向にある中、女性の労働参加率は増加し、全体の労働力人口減少を緩和しています。その一方、結婚や出産を機に退職した女性のうち、復職の意思があるにも関わらず仕事に復帰できていない女性も多くいることがわかっています。子育て等の事情で退職した女性は社会経験があるため、一定の業務遂行スキルを持つ貴重な人材です。フルタイム勤務が難しい女性社員の育成と働く時間の有効活用が、企業の生産性向上のカギを握ります。

人材開発サービスを利用

OJTを活用しても能力開発が進まない、または研修のノウハウがない等の課題を持つ企業にとっては、人材育成支援サービスを活用することもひとつの方法です。サービスの料金はかかるものの、社内での指導者育成コストや時間を省くことができます。研修の企画・運営や講師派遣サービス、オンライン学習サービスなど、自社の課題に合ったサービスを選びましょう。

助成金の活用

政府の助成金で、人材育成の費用を補填することも検討しましょう。中小企業が利用できるのは、人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金など。人材開発支援助成金は、社員に仕事に必要な専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施する企業に、費用を助成する制度です。また、キャリアアップ助成金は、非正規雇用社員の企業内でのキャリアアップを推進する制度。正社員化や賃金規定の改正などを実施した場合に助成されます。人材育成の新しい取り組みや、非正規雇用社員の登用を進める際に活用しましょう。

働き方改革を支援する助成金一覧 | 働き方改革ラボ

人材育成に成功した企業の具体例

では、実際に人材育成に積極的な中小企業では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。社員の育成が生産性の向上につながった事例をご紹介します。

丸井織物株式会社

合繊織物やスポーツウェア素材を製造する石川県の丸井織物株式会社は、人材育成を経営課題ととらえ注力しています。入社3年間は先輩社員がメンター役としてつく「おにいさん・おねえさん制度」や、メンター役の報告会の実施などの取り組みで、若手社員の離職率低下を実現。また、階層別研修や女性社員向け研修、「技術教育センター」での技術指導などの多様なプログラム、石川県の若手人材海外派遣研修等に社員を送り出すなどの取り組みで、社員の育成を進めています。

株式会社サニカ

駐車場システム機器などの開発・生産を行う山梨県の株式会社サニカは、外部機関も活用しながら社員の育成を積極的に進めています。以前から注力していた階層別研修やOJTに加えて、74の資格取得に必要な費用を会社が負担する「社内認定資格制度」を新設。階層別研修やOJT、自己啓発支援、社内認定資格制度に基づいた職能別研修の4本柱で社員の成長を実現しています。今後は部門をまたいだ研修を通じて、複数部署で活躍できる人材を育成していく見込みです。

札幌高級鋳物株式会社

特殊鋼の鋳造を手がける北海道の札幌高級鋳物株式会社。重量のある製品を扱う力作業が必要なため技術職は男性の採用が中心でしたが、人材不足の影響から未経験の女性を技術職として採用する取り組みを始めました。未経験の女性社員は、溶接作業は専門学院で約 4ヶ月、CADオペレーターは専門学校へ 7日間通い、基本的技術を習得。女性社員の即戦力化に成功しました。また、工場への新設備導入によって、社員の肉体的負担を軽減。女性の活躍が進み、人材不足が解消されました。

人材育成が生産性向上への近道!

人材育成は成果が出るまでに一定の時間やコストがかかるため、対応を先送りにしている企業もあるでしょう。ただ、従業員の意欲やスキルの向上を実現することなく、労働時間削減や効率化を目指すだけでは状況は改善しません。業務をサポートするツールの導入や採用という選択肢だけでなく、既存社員の成長に目を向けることが、働き方改革を前進させます。人材育成が会社の未来を決めると認識して、自社にできる取り組みを進めましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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