コロナで変わった働き方の常識 昔と今を徹底比較

From: 働き方改革ラボ

2023年05月17日 10:26

この記事に書いてあること

あなたにとって、働き方の「当たり前」はなんですか? 長年の習慣が根付く歴史ある会社と、新しいスタイルを取り入れている若い会社、またベテランと若手社員では、働き方の常識はまったく違うこともあるでしょう。

そこで今回は、終身雇用、週休2日、8時間勤務といったワークスタイルはいつ頃日本に根付いたのか、その歴史を振り返っていきます。さらにコロナ禍を経てどのように変わったのか調査結果も解説するので、参考にしてみてください。

働き方の当たり前はいつから変化した? 昔を振り返る

はじめに、今ある働き方の「当たり前」がいつから、どのように変化したのか、歴史を振り返っていきます。

「1日8時間勤務」導入は1919年

日本で8時間労働が初めて法律で規定されたのは1947年の労働基準法ですが、実はそれよりも前の1919年には川崎造船所(現川崎重工業)が8時間労働制を導入していたと言われています。

神戸市には「八時間労働発祥之地」の碑があり、同社が日本で初めて8時間労働を採用したとされています。1916年施行の工場法を経て、1947年の労働基準法で1日8時間労働が規定され、「当たり前」として浸透しました。

サラリーマンの誕生は1920年代

今では当たり前のように馴染んでいる「サラリーマン」の登場は1920年代。

早稲田大学の原克教授によると、会社や団体に勤めて賃金を得る「サラリーマン」の誕生は1920年代といわれています。1914~1919年の第一次世界大戦の後に日本の産業構造が変わり、事務職として働く人が増加。オフィスに出勤して、体ではなく頭脳を中心に使い働く、現在のサラリーマンの原型ができあがったそうです。

有給休暇の取得が義務化

有給休暇は、1936年の国際労働機関第52号条約で「取得しても賃金が支払われる休暇」として定められました。日本では、1947年の労働基準法で有給休暇が初めて導入され、所定労働日が週5日以上の者に年次有給休暇を付与することが規定されました。

当時の最低付与日数は6日と定められましたが、1988年の国際条約などの日数引き上げに応じて、最低付与日数が10日に増加しました。

終身雇用は1954年ごろから開始

長い期間社員を雇い続ける「終身雇用」の習慣は、第二次世界大戦が終わったあと、1954年ごろからの高度経済成長期に定着したと言われています。

戦前は長期間同じ会社に務める人は多くなく、1940年前後の戦時経済下に、国の労働統制で職場の固定化が進みました。そして高度経済成長期に突入し、企業が競争力を高めるため安定して仕事をする画一的な人材を雇う仕組みを採用。定期的な新卒者の採用と、長期的な労働を見越した人材育成を行うようになり、終身雇用が定着したと言われています。

しかし、現在ではそのような考え方は古いものとなっており、20代、30代の若い年代を中心に、転職を選択肢のひとつととらえ、キャリアアップの手段として希望する人が増加しています。

内閣府が16歳から29歳までの男女を対象に2017年に行った意識調査では、転職に前向きではない回答をした人が17.3%。一方、72.1%が、「自分の能力や適性に合う職場を求めて、積極的に転職すべきである」「自分の能力や適性に合わない職場であれば、転職することもやむをえない」など、転職を受け入れる反応をしています。

週休2日制の導入はパナソニックが初

日本で最初に週休2日を導入したのは松下電器産業(現パナソニック)といわれています。松下電器産業は、仕事の生産性アップや「一日休養、一日教養」という目的のため、1965年に週休2日制を採用しました。

他の企業でも週休2日制の導入が本格的に始まったのが、1980年頃です。厚生労働省の調査によると、1984年に完全週休2日制を導入していた企業は6.7%、完全週休2日が適用されていた労働者の割合は27%でした。2023年時点では導入企業が48.7%にまで上がっており、「当たり前」として浸透していることが伺えます。

時間外労働の規制

働き方改革推進法が策定されるまで、行政指導はあったものの、長時間労働を制限する法律はありませんでした。それが、2019年4月から(中小企業は2020年4月から)、初めて時間外労働の上限が規定。臨時的な事情がない限り、時間外労働時間は、月45時間、年間360時間を超えることができなくなりました。

特別な事情があっても、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満を守るべきだと法律で定められています。

コロナ禍における労働環境で変化したこと

新型コロナウイルスの影響により、テレワークや時差出勤制を取り入れざるを得ない企業が多くありました。この章では、コロナ禍における労働環境で変化したことを、データをもとに解説していきます。

1.     テレワークの導入

まず、テレワークの導入です。総務省が2021年に発表した『令和3年版 情報通信白書のポイント』の第一部によると、企業のテレワーク実施率は、新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年3月時点で大手企業が33.7%、中小企業が14.1%でした。

2020年4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県にて緊急事態宣言が出され、全国に拡大した4月16日の直後である4月23日から5月12日は、大手企業が83.3%、中小企業が50.9%を超えており、半数以上の企業がテレワークを導入しています。

しかし1年後には、大手企業が69.2%、中小企業が33.0%とやや下降傾向にあることがわかります。感染症対策を徹底したうえで、対面での業務に切り替えた企業が多いことをあらわしている結果だといえるでしょう。

総務省のこのデータは2021年3月までの情報で止まっていますが、2022年10月にWeWork Japan合同会社が行ったアンケートでは、『テレワークと通勤を組み合わせた”ハイブリットワーク”が認められている』という回答が前年よりも増えており、すべての業務をテレワークで進める企業の割合は減っていると考えられます。

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2.     交代制勤務や時差出勤の導入

交代制勤務や時差出勤の導入については、2021年に東京都による多様で柔軟な働き方の導入状況と意向をまとめた調査結果が公表されています。

新型コロナウイルスの影響もあり、時差出勤制度をすでに導入済みの企業は21.9%、交代制勤務を導入済みの企業は26.5%でした。また、「導入済みだがさらに拡大したい」、「今後導入したい」と回答している企業をあわせると、時差出勤制度は7割近く、交代制勤務制度は4割近くでした。

このことから、新型コロナウイルスが半強制的に働き方を変える機会となっており、柔軟な働き方の導入を前向きに捉えている企業が増えたと考えられます。

【2023年最新版】コロナ禍で変わった働き方は戻った? 調査結果を解説

2023年3月13日から、新型コロナウイルスの象徴といえるマスクが屋内・屋外を問わず着用するかどうか個人の判断とされるようになり、5月8日には新型コロナウイルスが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することが決まりました。

新型コロナウイルスの影響も落ち着いてきており、withコロナへと生活が変わっていくなかで、コロナ禍によって変化した働き方は戻っているのでしょうか。この章では、最新の調査結果を解説します。

1.     テレワーク実施率は下降傾向

まずは、テレワーク実施率からみていきましょう。東京都が2023年1月に発表したテレワーク実施率調査結果によると、2022年1月には63.9%だったテレワーク実施率が、12月には52.4%と10%ほど下がったことがわかりました。

時期によって若干の波があるものの、全体を通して下降気味であること、2023年の方針が発表される前のデータであることから、今後はより下降すると考えられます。

2.     副業解禁は進んでいる

コロナ禍のテレワークの普及により副業解禁の動きが進みました。2022年10月に一般社団法人日本経済団体連合会が発表した『副業・兼業に関するアンケート調査結果2022』によると、副業・兼業を認めている企業割合は、5000人以上の規模では66.7%、1000人〜5000人未満では52.3%と5割を超えていました。また、1000人未満の中小企業においても4割程度と、多くの企業が副業を解禁しています。

さらに、副業・兼業を認めている企業割合のうち、副業・兼業を「認める予定」と答えている企業も一定数おり、企業の副業解禁はこれからも進むと考えられます。

2023年卒学生の仕事観の変化

では、コロナ禍のなかで学生時代を過ごし、これから社会に出る学生の仕事観には変化があったのでしょうか。この章では、2023年卒学生の仕事観を解説していきます。

1.     大手企業にこだわらない

2023年卒学生の仕事観のひとつに、大手企業にこだわらないことが挙げられます。マイナビの調査によると、「絶対に大手企業がよい」「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」と考える大手企業志向は48.5%と半数を割っており、「中堅・中小企業がよい」「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」中堅・中小志向は47.8%で前年比2.9%増えていることがわかりました。

2011年の東日本大震災、2019年の消費税を10%に引き上げなど、社会が大きく変わるタイミングで大手企業志向の学生が増えているようにみえますが、新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年(2021年卒)以降、大手企業志向は減っています。

その理由のひとつとして、就活生の企業を見る指標が多様化しており、会社の規模だけではなく、緊急事態への対応力、「やりがいのある仕事ができるかどうか」などを視野に入れるようになったことが考えられます。

2.     安定している企業を好む

一方で、企業選択のポイントは「安定している」が最多の43.9%であることがわかりました。

長年、「自分のやりたい仕事ができる会社」が企業選択のポイントの上位にありましたが、2020年卒から「安定している会社」が追い抜いています。前回の結果を踏まえると、先行きの見えない不安のなかで、「やりがい」と「安定性」の両立を求めている学生が多いことがわかります。

3.     転勤やノルマなどの多い企業を避ける傾向にある

また、学生が「行きたくない」と思う会社にも、変化があります。これまでは「暗い雰囲気の会社」と、社内の空気感を重視する学生が多い傾向にありましたが、2023年卒学生は「ノルマのきつそうな会社」が34.5%と追い抜き、業務内容を重視する学生が多いことがわかりました。数年間のなかで、学生の仕事観にさまざまな変化があったことが伺えます。

今後の働き方に関する3つの課題

最後に、今後の働き方に関する3つの課題を解説していきます。

1.     少子高齢化の加速

1つ目が、少子高齢化の加速です。厚生労働省の出生数、合計特殊出生率の推移によると、1970年代より出生数は減っており、2019年には87万人の出生数が、2040年には推定74万人になるといわれています。

少子高齢化が加速するということは、それだけ労働人口も減るということです。事業を成立させるためには、従業員の離職を防止することはもちろん、新たな人材の確保などを検討しなければならなくなるでしょう。

2.     管理職の負担が増加

2つ目が、管理職の負担の増加です。コロナ禍以降、テレワークとオフィス出勤を組み合わせたハイブリットワークに注目が集まっています。

働き方の多様化には従業員の満足度を向上させられるという一面もありますが、同時に、管理職にかかる負担が増加してしまうのがデメリットといえます。人事評価などを含め、どのように管理職の負担を軽減させるか、考える必要があるでしょう。

まとめ

終身雇用、長時間労働などが当たり前だった時代を知る方々にとっては、最近の働き方の変化は受け入れがたいこともあるでしょう。反対に、若い世代にとっては、数十年前から日本に根付く考え方を当たり前だととらえる人に違和感を覚えるかもしれません。

世代によって「働く」ことについての価値観が違うのは当たり前です。大切なのは、自分の考えを相手に押しつけず、多様なスタイルを認めること。時代の変化や周囲の人の希望に応じて、ベストな働き方を柔軟に選んでいきましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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