新語続々登場!?職場で気を付けたい「ハラスメント」とは

From: 働き方改革ラボ

2020年01月15日 07:00

この記事に書いてあること

1980年代後半ごろから「セクハラ」という言葉がよく聞かれるようになり、最近ではさまざまな種類のハラスメントを耳にするようになりました。毎日職場で顔を合わせる同僚や部下に対し、無意識のうちにハラスメント行為をしてしまっているケースも珍しくありません。今回は、会社で起こりそうな「ハラスメント」をピックアップして、紹介します。

ハラスメントの定義

ハラスメントとは、ジーニアス英和辞書によると、英語のharass(困らせる、悩ます)を語源としたもので、相手を不快にさせる、尊厳を傷つける、不利益を与える、脅威を与えるなどの行為を指します。行う側の意識の有無を問わず、相手が不快と感じればハラスメントとみなされることがあります。

そもそも、ハラスメントという言葉をよく聞くようになったのは、「セクシャル・ハラスメント(セクハラ)」という言葉がきっかけと言われています。1989年、セクハラが原因の民事裁判が国内で初めて起こされたことがきっかけとなり、その年の新語・流行語大賞の新語部門金賞を受賞しました。

最近では、“〇〇ハラスメント”や“〇〇ハラ”といった、語尾にハラスメント(ハラ)という言葉を付けたさまざまなハラスメントが出現し、社会問題となっています。

ハラスメントに関する法規制

ここで、職場におけるハラスメントに関する法律について見ていきましょう。 セクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法によって、事業主に対して職場におけるセクハラの防止が義務付けられています。また、マタニティーハラスメント(妊娠・出産等ハラスメント)についても、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法において防止措置が義務付けられています。

さらに、2019年6月5日、パワーハラスメント防止対策等ハラスメント対策の強化を盛り込んだ法律が公布され、職場のハラスメントに関する法律が部分的に改正されました。この中で、パワハラ対策が義務付けられることとなり、公布後1年以内の政令で定める日に施行されます(中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は努力義務)。
あわせて、マタハラの防止措置義務化が新設され、セクハラ防止対策も強化されることとなりました。

話題になることの多いメジャーなハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

厚生労働省では、職場のパワハラの定義を以下としています。

「 同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為 」
職場のパワーハラスメントの定義 │厚生労働省

さらに、職場におけるパワハラ行為の典型例について
「身体的な攻撃」 
「精神的な攻撃」
「人間関係からの切り離し」
「過大な要求」
「過小な要求」
「個の侵害」
の6類型に整理。パワハラは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指す場合が多いですが、職務上の地位に限らず、同僚間、または部下から上司に対するものなど、さまざまなケースが存在します。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

いわゆる「性的嫌がらせ」を指します。男女雇用機会均等法では、対価型(被害者が解雇・降格・減給等の不利益を被ること)と、環境型(職場環境が不快なものとなり、労働に大きな支障が生じること)の2種類に分けて定義しています。

職場内に限らず、取引先や顧客、患者、生徒なども行為者及び被害者になり得ること、男性も女性も行為者及び被害者になり得ること、異性に対するものだけでなく同性に対する性的な言動も該当することなどに注意が必要です。

マタニティーハラスメント(マタハラ)

働く女性が妊娠や出産をきっかけに、職場で嫌がらせを受けることを指します。妊娠・出産・育児休業等の“制度利用”に対する嫌がらせや、妊娠・出産による体調や環境の変化に伴って長時間労働が難しくなるといった、“状態”に対する嫌がらせなどが該当します。また、女性に限らず、男性労働者が育児休業を申し出た際に受ける嫌がらせは「パタニティハラスメント」などと呼ばれることも。

モラルハラスメント(モラハラ)

言葉や態度、身振りや文書などによって、相手の人格や尊厳を傷つけたり、精神的に傷を負わせて追い詰めたりすることをいいます。精神的な嫌がらせは外から見えにくいのが特徴であり、行う側だけでなく被害者側も、該当している自覚がないまま、気づかないうちに精神的なダメージが蓄積されてしまうケースも。精神的虐待とも呼ばれており、セクハラやパワハラと同様、被害者が職場を辞めざるを得ない状況に追い込まれ、労働に支障をきたすハラスメントです。

セカンドハラスメント(セカハラ)

ハラスメントを受けた人が、その被害を相談したことによって、逆に相談相手から傷つけられたり、職場で嫌がらせを受けたりといった二次被害を受けることをいいます。具体的には、ハラスメントの相談をしたものの、「自分の頃はもっと大変だった」「自分にも責任があったのでは?」などと責められてしまうケースが該当します。ハラスメントの相談を受けた際、被害者の立場を考えずに対応してしまうと、意図せずセカハラの加害者になってしまうことも。また、セクハラのようなデリケートな内容の相談については、被害者・加害者両方の立場への配慮が必要です。

アルコールハラスメント(アルハラ)

飲酒による暴言・暴力やセクハラなどの迷惑行為を指します。特定非営利活動法人ASKでは、具体的に「飲酒の強要」「イッキ飲ませ」「意図的な酔いつぶし」「飲めない人への配慮を欠くこと」「酔った上での迷惑行為」の5項目をアルハラと定義しています。命を奪う「急性アルコール中毒」を引き起こすこともある、大変危険な嫌がらせです。

ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)

社会的・文化的役割としての性(ジェンダー)によるハラスメントをいいます。たとえば、職場で女性だけにお茶くみや雑用を任せたり、男性だけに力仕事を任せたりすることなどが該当します。セクハラと重なる部分もありますが、セクハラが「性的な言動」を対象としているのに対し、ジェンハラでは性的な言動ではなく、性に対するステレオタイプなものさしに基づく、差別的な言動を対象としている点で区別されます。

あまり耳にしないマイナーなハラスメント

ブラッドタイプハラスメント(ブラハラ)

血液型によって個人の人格を決めつけ、特定の血液型の人をほかの血液型の人よりも不当に扱うなどの差別的な言動をすることをいいます。特に日本人は、世界の中でも血液型にこだわって性格等を判断する傾向が強いようです。

ハラスメントハラスメント(ハラハラ)

何かにつけて「○○ハラスメントだ」と言い立て、相手を困らせることをいいます。ハラスメントに過敏な人が増え、当初は職場環境の改善を目的に使われていたはずのハラスメントという言葉が、新たなハラスメントになるという状況が起きています。

時短ハラスメント(ジタハラ)

長時間労働を改善するための具体策もないまま、部下に対して上司が残業を禁止したり、定時退社を強要したりすることをいいます。成果はこれまで同様に求められるため、部下は取引先との板挟みになったり、持ち帰り労働をせざるを得なかったりする状況が発生しています。

スモークハラスメント(スモハラ)

職場などで喫煙者が非喫煙者に対して、タバコの煙によって害を与えることや、喫煙を強要するなどの嫌がらせをすることをいいます。2020年4月から施行される改正健康増進法では、職場の受動喫煙防止措置が義務付けられ、企業としてスモハラ対策が急がれます。

テクスチュアルハラスメント(テクハラ)

執筆した文書(テクスト)について、性差別的な評価を行うことをいいます。たとえば、「女の割に論理的な文章だ」「こんな女々しい文章を男性が書いているのか」などの批判が該当します。創作活動をしている人にとっては死活問題であり、名誉毀損や男女雇用機会均等法違反となる恐れがあります。

テクノロジーハラスメント/テクニカルハラスメント(テクハラ)

ITスキルが低い人に対して、わざと苦手なパソコン操作を割り振ったり、難しい専門用語で指示したりするなどのいじめや嫌がらせを指します。ITスキルという専門能力の優位性を背景としたパワハラの一種といえます。

就活終われハラスメント(オワハラ)

企業が就職活動中の学生に対して、内定を出す代わりに他社の選考辞退を強要する行為をいいます。企業が優秀な人材を確保したいがために行うケースがほとんどですが、このような囲い込みはかえって企業の評判を落としかねません。また、最近では就活の際に採用担当者から受けるセクハラも問題となっています。

パーソナルハラスメント(パーハラ)

容姿やくせ、個人の趣向など、パーソナルな面における嫌がらせのこといいます。いわゆる「いじめ」の一種で、個人の特徴をからかったり、本人が気に入らないあだ名などを付けたりすることが該当します。

リストラハラスメント(リスハラ)

リストラ対象者に行われる嫌がらせのことをいいます。リストラ対象者に対して、無理難題な仕事を押しつけたり、不当な配置転換や望まない部署への異動などを行ったりして自主退職に追い詰める行為などが該当します。

SOGIハラスメント(ソジハラ)

主にセクシュアルマイノリティーの人たちに対する嫌がらせのことをいいます。SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向)Gender Identity(性自認)の略です。LGBTがセクシュアルマイノリティーの人たちを指すのに対し、SOGIはすべての人が持つ性的指向・性自認を表す新たな言葉として使われ始めています。

エイジハラスメント(エイハラ)

年齢による差別や嫌がらせのことをいいます。「もう若くないんだから」「いい歳こいて」「最近の若い奴は」といったような発言で相手を不快にさせることを指すため、老若男女すべての人が加害者・被害者になり得ます。また、求人の際に仕事の特性に関係なく年齢制限を設けることもエイハラに該当する可能性があります。

スメルハラスメント(スメハラ)

臭いによって周囲を不快にさせることをいいます。迷惑となる臭いには、体臭や口臭などの誰にでもあるものから、香水、化粧品、柔軟剤などの人工的なものまでさまざま。繊細な問題であるため、周囲は臭いの元になっている本人に対して、上手な伝え方を考える必要があります。

ソーシャルハラスメント(ソーハラ)

ソーシャルメディアを利用した嫌がらせのことで、特に職場の上下関係がTwitterやFacebookなどのSNSに持ち込まれて困っている状況を指します。上司が友達登録を迫ったり、自分の投稿に対する反応を強要したり、部下のSNSをチェックして度を過ぎたコメントをしたりすることなどが該当します。

レイシャルハラスメント(レイハラ)

人種や民族、国籍に関する、不快かつ不適切で配慮に欠く言動を指します。たとえば、外国人労働者に対して、合理的な理由なく賃金に差をつけたり、侮辱的な発言を浴びせたりすることなどが該当します。人権侵害の一つとして、アメリカではセクハラ同様の大きな問題となっています。

レリジャスハラスメント(レリハラ)

特定の宗教を信仰する人に対する嫌がらせや、執拗な宗教勧誘などの迷惑行為を指します。職場においては上下関係を背景として行われるケースが多く、パワハラの一種と捉えられます。また、外国人労働者の増加に伴い、宗教の違いによる習慣や食事メニュー等への配慮も必要です。

エアコンハラスメント(エアハラ)

エアー・ハラスメントとも呼ばれ、主にエアコンの温度設定に関する嫌がらせを指します。コスト削減などを目的に、職場のエアコンの温度設定を過度に制限することによって、労働環境を悪化させることがあります。温度設定の希望を上司に言い出せないといったパワハラの要素が絡むケースも。

ラブハラスメント(ラブハラ)

職場などで、恋愛や性的な話題について執拗に聞いたり干渉したりして不快感を与えることをいいます。たとえば「彼氏(彼女)はいないの?」「その歳で恋愛経験ないの?」などと、恋愛価値観を一方的に押し付ける言動が該当します。

マリッジハラスメント(マリハラ)

単身者に対して、結婚しない理由を詮索したり、結婚を促したりすることで不快感や苦痛を与えることをいいます。先に触れたパワハラの6類型のうち「個の侵害」に該当します。「どうして結婚しないの?」「いい人紹介しようか?」など、よかれと思って言うパターンも多いですが、相手が不快に感じた場合はマリハラとみなされます。

告白ハラスメント(告ハラ)

関係性が薄い相手からの突然の告白や、職場で“告白したら関係が崩れてしまうかも?”という状態での無理な告白により、迷惑を被るケースを「告ハラ」と名付けた記事が話題となりました。ハラスメントというよりは、自分の恋愛感情を一方的に伝える「告白」が、場合によっては迷惑行為になってしまうという可能性を指摘しています。

子なしハラスメント

子どもをもたない人に対して、不快な思いをさせる言動を指します。子どもをもつ、もたないという考えは個人や夫婦によって異なり、その背景にはさまざまな事情があるもの。他人からの一方的な思い込みによる言動はハラスメントとなります。

シングルハラスメント

独身ハラスメントとも呼ばれていて、「結婚しない」「結婚していない」単身者に対して、不快な思いをさせる言動のことをいいます。シングルハラスメントをする人は加害意識が薄いことが多く、「結婚=善、幸せ」と思い込んだり、相手の人とのコミュニケーションの一つと思っていたりします。

ちょっと変わったハラスメント

お菓子ハラスメント(オカハラ)

職場などで、お菓子を特定の人だけ配らなかったり、旅行に行く人にお土産のお菓子を強要したりといった、お菓子にまつわる迷惑行為を指します。また、食べたくないのに上司や同僚からお菓子を勧められ、断れないといったケースもあるようです。

スイーツハラスメント

「女性はみんなスイーツが好き」という思い込みによる迷惑行為を指します。また、甘いものが好きな男性も、スイーツが好きというと同性にからかわれるケースがあるようです。善意でスイーツをあげても、ダイエットや健康上の理由で食事制限をしている人にとっては、迷惑になることも。

ヌードルハラスメント(ヌーハラ)

日本では、ラーメンや蕎麦などをズルズルとすすって食べる文化がありますが、海外ではそういった行為はマナー違反となる場合もあります。麺類をすすって食べる姿を不快に思う外国人は多く、ヌーハラと呼ばれることも。しかし、その定義には賛否両論あります。

エンジョイハラスメント(エンハラ)

「仕事は楽しんでやるべき」といった考えを周囲に強要することをいいます。お笑いコンビ・オードリーの若林正恭さんの発言に端を発します。

フォトハラスメント(フォトハラ)

本人の同意を得ずに勝手に撮影したり、SNSなどにアップロードしたりすることを指します。人間関係の悪化だけでなく、プライバシーや肖像権の侵害、個人情報の漏洩などのトラブルにつながることがあるため、注意が必要です。芸能人などの著名人がファンに撮影されて勝手にアップロードされる迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」も話題になりました。

テープハラスメント(テプハラ)

職場で、上司が会議や打ち合わせの様子などを録音していないかどうか確認することをいいます。職場においては、正当な目的のある場合の録音・録画に違法性はないと判断されることが多いようで、ハラスメントや犯罪を内部告発するための十分な証拠となり得るようです。

正月休み明けハラスメント

正月休み明けに、海外旅行に行ったどうか聞かれたり、海外旅行に行って当然のように思われていたりすることを指すもの。特に芸能界で横行しているようで、海外旅行に行かない人にとっては不快に感じるケースが多いようです。

食事ハラスメント(食ハラ)

本人が食べたくない食事を無理やり食べさせることをいいます。男性というだけで揚げ物などをたくさん食べることを強要されること、また、上司や先輩からおごってもらっているために拒否できないといったケースが該当します。

ハラスメントは 加害者にも被害者にもなりうる

よく耳にするものから珍しいものまで、さまざまなハラスメントについて見てきました。ハラスメントは、円滑な人間関係を築く上で重要な課題であり、気づかないうちに自分が行っていないかどう振り返ることも大切です。ハラスメントは、被害を受けた当事者はもちろん、ハラスメント行為を許した企業にも大きな責任を問われかねない危険なもの。今一度、どういったハラスメントがあるのかを把握し、きちんと対策に取り組みましょう。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
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