職場と人を知り尽くした専門家に聞く (後編)  報連相を極めれば仕事が変わる /濱田秀彦氏

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マネジメントや人材育成などを専門に、執筆活動やセミナーで活躍する株式会社ヒューマンテック代表の濱田秀彦氏に、上司・部下間のコミュニケーションを軸にした仕事術を聞くインタビュー。前編では、労働時間削減を実現するための具体策について語ってもらいましたが、続く今回は、生産性やビジネススキルの向上につながる「報連相」や「雑談力」のポイントについて、詳しく聞きました。

生産性を上げるために磨くべきは「根回し力」
いざというとき助けてもらえる人になる

―社内のムダな仕事をなくすことが労働時間の削減につながり、さらには社内のコミュニケーションの活性化につながるというお話をお聞きしました。ダイレクトなコミュニケーションは、仕事にもいい影響を与えるのでしょうか。

そうですね。私は、スムーズに仕事を進める上で、「根回し」はすごく大切だと思っているんです。今、あまり根回しをする人は多くありませんよね。ただ、根回しをすることで仕事の効率が変わります。たとえば新しい提案を通したいときに、関係する部署の人に「今度、こういう提案を出したいと思うんですけど、どうですか?」と、ちょっと声をかけておくんです。「いいんじゃないかな。でも、もう少しここに気を付けておくといいよ」と言われたら、その意見を踏まえて提案を修正することもできます。事前に話をしておけば、提案が通りやすくなるんです。

根回しは、陰でこそこそやる卑怯なことだと思われがちですし、「良い提案なら、正々堂々とやれば通るはずだ」と思う方もいるでしょう。でも、ビジネスは人がやっていますから、当然、好き嫌いや感情にも左右されます。一言、言って知らせておくだけで印象も良くなりますし、事前の根回しで、作成の手間を省ける補足資料もあるでしょう。

―相手にふだんからいい印象を持ってもらうということも、根回しのひとつなのでしょうか?

そうです。以前、私が本に「ゴマはするべきだ」と書いたら注目されて、詳しく話を聞きたいと言われたことがありました。私が言う「ゴマをする」とは、一緒に仕事をする人をいい気分にさせておくことです。それは仕事の基盤づくりになりますし、自分にとってプラスになります。いざというとき助けてもらえるようなアクションは、日ごろからしておくべきという考え方です。

ただ、ゴマのすり方には注意が必要です。後輩から「先輩、仕事早いですね」なんて言われたら、あまりいい気持ちはしないですよね。そんなときは、相手を主語にせず、自分を主語にするのがコツです。「私は、先輩の仕事のスピードを目標にしています」と言えば、上から目線で評価をされている感じは薄れますし、褒められて嫌な気はしないですよね。自分のことをよく思っていたら、いざというとき助けてくれますし、助けてもらったら今度は別の形で恩返しをすればいい。その積み重なりが、職場のコミュニケーションをより強くしていくと私は思います。

上司・部下間の溝を埋める報連相
リーダーに必要なのは「話を聞く力」

―働き方改革の流れの中で、上司や部下の間に亀裂が入ってしまうのも、コミュニケーション不足に原因があるのでしょうか。

仕事の時間以外のプライベートの時間は大事にしたいと思う部下層と、飲み会や社内レクリエーションなど、仕事外の時間でコミュニケーションをとってきた世代の間に、溝が生まれています。それを解決する方法は、業務時間内に濃密なコミュニケーションをとることです。コミュニケーションを濃くするために大切なのが、報連相=報告・連絡・相談の徹底です。

―報連相の重要性について、働く人たちの間ではどうとらえられている印象ですか?

上司は、部下が報連相をしてくれないと嘆いている一方で、部下は、仕事以外の余計な作業を強いられていると感じていて、うまくできている職場は多くありません。今は昔と比べて、上司が部下のやっていることを把握しにくくなっています。ひとりひとりがパソコンに向かって仕事をしていますし、社用携帯で各自が電話をしていて、誰と何を話しているかもわかりません。頼りは、部下からの報告連絡相談だけですから、どうやって報連相をさせるべきか、悩んでいる上司層は多いです。

―では、報連相を活性化させるためにはどうすれば良いのでしょうか。

上司層がやるべきことは、①良い聞き方、②報連相へのほうび、そして③具体的なリクエストです。まず、ひとつめの「良い聞き方」について、上司層は、自分から発信することにばかり気が行っている人が多いのですが、聞くこともとても大事です。1分でいいので、相手の話をさえぎらずに聞いてあげる時間を作りましょう。この人は話を聞いてくれる人だと思われたら、相手も適切に報告や相談をしてくるようになります。たとえ雑談であってもしっかり聞いてあげましょう。雑談もコミュニケーションをよくするために、大切なものです。

それに、いい問いかけは、それだけで部下を動かすことができます。以前、私が上司から言われたのが「100円の売上で、110円儲ける方法を考えてくれ。君ならできると思うよ」ということです。信頼してそう投げかけてくれたということが嬉しかったですし、半年くらいの間、すごく考えました。自分の仕事を見直したり、どういう可能性があるか考えたりすることが、成長につながったんです。

1分間で報告させて1分間で指導
報連相のレベルアップが上司の仕事を楽にする

―「報連相へのほうび」とは、具体的にどのようなものでしょうか?

まず、報告してくれたことにお礼を言いましょう。上司の皆さんは、部下が報告することは当たり前だと思っていて、意外と「ありがとう」の一言を言う人が多くありません。でも、「ありがとう」「サンキュー」と言うだけで、次から部下はちゃんと報告してくれるようになります。メールでの報告に対しても同じです。5秒でできて、1円のコストもかからない、でも確実に部下の行動の変化という報酬が得られます。手間もかからず、コスパが高いコミュニケーションなのに、意外と皆さんはやっていないんです。

ただ、難しいのは「クレームをいただきました」とか、あまり褒められない報告への反応です。それを聞いて「サンキュー」と言うのはちょっとおかしいので、そういうときは「そうか。まずは、ちゃんと報告してくれてよかったよ」という形で感謝の気持ちを伝えましょう。最初にポジティブなことを言ってからなら叱ってもいいと私は思いますよ。

―では3つめの、具体的なリクエストというのは、どういうことですか?

部下に、報告の仕方を具体的に伝えることです。部下層が報連相で意識してやるべきことのひとつが、短時間でわかりやすく簡潔に伝えること。たとえ言いにくいことであっても、「結論から言うと、3日間遅れます」というふうに、もっとも大事なことを先に話すことが大切です。

ただ、そういった報告の仕方がわからない部下層もいます。ですから、とりとめのない部下の報告をひととおり聞いたあとで、「わかった。少し頼みがあるんだけど、報告するときに、結論から話をするようにしてくれないかな?」と頼むんです。そして、「もし5秒しかなかったら、今の話の中で何を言う?」と問いかけ、部下の答えに対し「そう!それから話しはじめてよ」と言いましょう。このようなやりとりをしていれば、次から、結論から話してくれるようになります。報告は短く正確になり、上司は1分聞けばほしい情報を得られるようになります。この指導も、1分あれば可能です。

―部下層にとっても、報告のために短く簡潔にものごとを整理する習慣が、仕事のスキルアップにつながりそうですね。

報告を簡潔に1分でできるようになれば、部下本人にも、話力が上がり、スピーチ、プレゼンがうまくなるというメリットが生まれます。レポート類も結論から書くようにすれば、短い文章で伝わりやすくなります。管理職層にとっても、部下の報連相のレベルを上げることで、自分の仕事が楽になるんです。

私がセミナーで使用している、報連相でできることのスキルを3段階で分けた「報連相のレベル表」でいうと、基本レベルとして求められることのひとつに、「こうしましょうかと自分の考えを持って相談している」という要素があります。これが中レベルになると「相談時に、自分の考えを複数準備し、選択肢として相手に提示できる」という段階に上がります。部下が報連相でできることのレベルが上がれば仕事がスムーズに進み、上司に必ずリターンがありますので、報連相の指導は必ずするべきです。

報連相のレベルを上げるためには、部下は1分で伝える努力をして、上司は1分で指導をすること。それが、コミュニケーションの質を濃くして、生産性向上につながるのです。

コミュニケーションを濃密にする雑談力
オープン質問で相手の心を開こう

―先ほど、コミュニケーションで大切なのは雑談だということをお聞きしましたが、雑談をうまく進めるコツを教えてください。

職場でのコミュニケーションの密度を上げるためにも、雑談力は大切です。上司も部下も雑談が上手にできず話が続かないという声もよく聞きます。雑談には、先ほどもお伝えした「良い聞き方」が必要です。

大切なことは、①相手の目を見て、②ペースをあわせてうなずく、③あいづちの言葉を添えて、④相手と同じ表情で、⑤大事なこと、相手の気持ちを繰り返す、この5つです。雑談が上手な人は、実は自分ではあまり話していません。相手の目を見て、うなずきやあいづちを適度に入れながら、大事な言葉を繰り返しつつ、話を聞きましょう。さらに、相手の気持ちをわかろうとしていることを示すために、相手と表情を合わせることも、気持ちよく話してもらうコツです。

―会話中の質問の仕方としては、どのようなポイントをおさえるべきでしょうか。

「イエス」か「ノー」で話が終わってしまうクローズ質問ではなく、相手に長く話をさせる「オープン質問」をすることです。たとえば、「どんな音楽が好きですか?」と相手に聞いて、「ジャズが好きです」という答えが返ってきたとします。そこから、「どんなアーティストが好きなんですか?」「どんなところが魅力的なんですか?」というふうに広げていきます。「私はあまり詳しくないんですが、入門編で1枚聞くとしたら、何がいいですか?」というふうに、1番を選んでもらうような質問も、相手に考える楽しみを与えますから効果的です。

さらに相手が喜ぶのは、相手の趣味について「もし自分がやるとしたら、何から始めたらいいですか?」という質問。相手は上の立場から話ができますから、非常に気持ちがいいわけです。これもある意味、ゴマすりの一種です。あの人と話していると気分がいい、と思わせることが仕事をうまく進める上でも大切です。

―プレイングマネージャーの中には、雑談をする時間がもったいないと感じる人もいるかもしれません。長い時間、話をしなければ意味がないのでしょうか?

雑談の長さは、1分で十分です。実は1分は短いようで意外と長いので、それだけで十分話を聞いてくれたという気分になります。忙しい皆さんは、10分、15分の時間を割くのは無理だと思いますが、1分ならできるはずです。部下のモチベーションや職場の生産性を上げるために、1分のコミュニケーションで関係を築こうという意識を、仕事に取り入れていただけると嬉しいですね。

職場と人を知り尽くした専門家に聞く (前編)  
生産性を上げるコミュニケーションのコツ

著者プロフィール

濱田秀彦

1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。
トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。
現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは3万人を超え、 著書は20冊を超える。

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