準備不足で社員満足度低下も?テレワーク導入のポイント

From: 働き方改革ラボ

2020年12月02日 07:00

この記事に書いてあること

自分の都合の良い場所で働ける、通勤時間を省けるなど、会社で働く人にとってのメリットも多いテレワーク。感染症対策を目的とした導入も進んでいますが、テレワーク自体は、社員の満足度向上につながっているのでしょうか。今回は、テレワークと従業員満足度(ES)の関連性について、各種調査の結果もふまえて解説。テレワーク導入がESを下げてしまうリスクや、ES向上を実現するテレワーク導入のポイントについてもお伝えします。

テレワークは社員満足度を上げる?

働く場所や時間を柔軟に選べるテレワークは2020年に入り普及が進みましたが、働き方改革に先進的な企業を中心にこれまでも導入されてきました。レノボ・ジャパンは2019年6月に、20~50代の会社員5,922人を対象にテレワークの利用実態や満足度に関する「テレワーク利用実態調査」を実施。アンケートによると、テレワーク導入企業では、56%の人が勤務環境に満足していると回答しています。テレワーク未導入企業の約2倍の人が、働きやすさを感じていることがわかりました。

また、パーソルプロセス&テクノロジーが2020年9月、20代~60代の会社員400人に行った「テレワークに関する意識・実態調査」によると、テレワークと出社を組み合わせた働き方である「ハイブリッドワーク」をしている人は、高い効率や会社への愛着を感じる傾向にあることがわかっています。テレワークと出社を組み合わせて働いている人のうち76.9%が、「効率的に仕事ができている」と回答。また72.3%の人が「会社に対して愛着・信頼を感じている」と答えていて、ほぼ出社をして働いている会社員の60.2%という水準を12%上回っています。

テレワーク導入によって、余暇に対する満足度がアップしたという調査結果もあります。福利厚生代行サービスなどを提供するイーウェルが2020年4月から5月に20代~60代の会社員3,079名を対象に行った調査によると、リモートワークを実施している人に余暇時間の満足度の変化を聞いたところ、55%が余暇時間の量的満足度が「大きく上がった」「やや上がった」と回答。質的満足度についても、46%の人が「大きく上がった」「やや上がった」と答えています。

コロナ禍のテレワーク未実施は満足度の低下も

テレワーク導入が仕事の環境や余暇への満足度に影響しているというデータがある一方、テレワークを導入しない企業では、社員の意識にどのような変化が生じているのでしょうか。レノボ・ジャパンの同調査によると、テレワーク制度を導入していない企業に勤める人のうち、勤務環境に満足していると答えた人は28.7%。34%の人が「満足していない」と答えており、テレワーク導入企業と比較して勤務環境への満足度が低いという結果が出ています。

また、コロナ禍において、テレワークが実施できない状況に従業員の満足度が低下したという調査も。働く環境や組織の課題などの離職の原因を従業員へのアンケートで可視化するサービス「ハイジ」を提供するOKANによると、PC支給やインターネット環境整備の理由からコロナ禍にリモートワークを導入できていないある企業では、「働き方に関する制度の充実」や「メンタルヘルス」などのスコアが悪化。感染症に対する不安を抱えて出社することが、会社の制度や、働く上での健康状態に影響することがわかっています。

テレワーク導入で満足度が上がらないケースも

一方で、テレワーク導入をしたからといって、従業員の満足度が必ず上がるわけではありません。HR総研が企業の人事責任者、人事担当者を対象に2020年5月~6月に実施した「テレワークの実態」調査によると、テレワーク導入に関する目標達成度は、項目によって差が生じています。「社員の移動時間の短縮」「新型コロナ対策」という目的の達成度は8割を超えるのに対し、「社員エンゲージメントの向上」や「社員満足度の向上」を達成できたという企業は、47%と39%。「優秀な人材の確保」も21%にとどまり、従業員の満足度や働きやすさに関してはテレワークの効果を実感できていない企業も多いことがわかっています。

また、リモートワーク導入によって仕事のしづらさを感じている人もいます。イーウェルの上記調査によると、リモートワークを実施することで仕事の量や質が下がったと感じている人が40%程度いました。また、集中力が続かずに労働時間が長時間化してしまう、リモートワーク時の作業設備等が不十分、上司や同僚とのコミュニケーションが減った等の課題を実感する人も多数。テレワーク導入時の準備不足によって、仕事環境に問題が生じているケースもあります。

ES向上を成功させるテレワーク導入のポイント

では、従業員満足度の向上につながるテレワークは、どのように実施すれば良いのでしょうか。従業員が働きやすさを感じる環境を作るためには、ただ単にテレワークを導入するのではなく、環境や制度面での事前準備が欠かせません。ES向上を成功させるための導入のポイントは、次のとおりです。

快適にテレワークができる環境の整備

テレワークをスムーズに行うための環境の整備は必須です。設備不足や安定しないネットワーク環境が、テレワーク中のストレスを生む一部の要因です。個人が自宅などでも快適に使える端末の配布や、モバイルルーターなどのネットワーク環境の確保を行いましょう。また、安全面の不安を解消するためにも、ウイルス対策ソフトのインストール等のセキュリティ対策は欠かせません。従業員が個人端末を使用する場合も、使用可能なネットワークやセキュリティに関するわかりやすいルールを定めましょう。

孤独感を解消するコミュニケーション促進

テレワーク中に、満足度や会社への愛着心が下がる理由のひとつが、コミュニケーション不足です。テレワークは出社での勤務に比べて会話の機会が減るため、コミュニケーションがとれないことによる問題が生じます。WEB会議ツールやチャットツールを整備して、必要なタイミングで適切に連絡が取れる環境を作りましょう。離れて働くテレワークだからこそ、困った時の相談やサポート依頼がすぐに行える環境と風土作りが必要です。周りに同僚がいない状態での在宅勤務を続けることによって生まれる従業員の孤独感も課題です。ウェブ会議ツールで毎日朝礼を行う、リモートで会話をしながら昼食を共にするなどの取り組みも、テレワーク中の社員のストレスを解消します。

社員間の溝を防ぐ仕組み作り

テレワークを実施する社員と、出社する社員の間で生じる不満を生まない仕組み作りも大切です。テレワーク社員は、出社する社員から情報が共有されない、会議に参加できないなどの理由から孤立感を抱えることがあります。また、出社する側は、電話対応や紙資料の作業など、会社でしかできない仕事を押し付けられていることに不満を感じることも。テレワーク社員と出社する社員の間で、働く場所を理由に不当な役割の差が生じないように、業務を割り振ることが大切です。また、勤務時間を正しく把握するシステムの導入や、働く場所を問わず社員を公正に評価する人事制度の設計など、社員間の溝を作らないための取り組みを進めましょう。

長時間労働を防ぐ取り組み

上司の目が届かず、単独で仕事をする時間が長いテレワークは長時間労働に陥りやすいという課題もあります。正確な出退勤時間を把握する仕組みがないままテレワークを導入すると、上司が部下の労働時間をチェックできないという状況が生まれます。オンオフの区別がつきづらいため、終業後や休日のメールチェックや、急ぎの仕事への対応が常態化してしまうことも。テレワーク中の長時間労働を防ぐために、勤怠管理ツールの導入やメールや電話での出退勤報告のルール化によって、労働時間を正確に把握しましょう。日中に集中できずに勤務時間が長引いてしまうという課題がある場合は、パソコンのログイン状況を上司がチェックできる在席管理ツールを活用するのも有効です。

満足度を上げるテレワーク運用を!

ES(従業員満足度)と深い関わりがあるテレワーク。準備を整えた上で、自社の状況や従業員の仕事内容に合った形で導入すれば、会社へのエンゲージメント向上や新しい人材獲得にもつながります。成功のポイントは、テレワーク自体を目的にしないこと。準備不足で導入を急ぐと、従業員の不満を招く結果にもなりえます。テレワークを働き方改革や従業員のワークライフバランスを実現する方法と考えることが基本。そして導入後も、社員のニーズに応えるためにヒアリングや、柔軟な制度変更を行いながら運用していくことが大切です。従業員満足度アップに課題を感じている方は、テレワーク導入を検討してみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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