同一労働同一賃金をおさらい!不合理な待遇差をなくすポイントを解説

From: 働き方改革ラボ

2020年12月22日 07:00

この記事に書いてあること

国が推進する働き方改革の一環として、2020年4月に社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁止するパートタイム・有期雇用労働法が施行。中小企業に対しては2021年4月1日から適用されます。今回は、適用のタイミングに備えて、同一労働同一賃金の考え方について概要を整理し、企業に必要な対応のポイントを解説。法律に違反した場合に企業に発生するリスクや、法律上問題となる待遇の具体例も含めて、詳しくお伝えします。

同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金とは、正規雇用社員と非正規雇用社員の不合理な待遇差を禁止する取り組みのこと。2020年4月施行のパートタイム・有期雇用労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正によって、同一企業内での正規・非正規の間の不合理な待遇差が禁止されました。仕事内容が同じ従業員に対しては、雇用形態に関わらず、基本給、ボーナスなどの賃金のほか、研修や福利厚生などの待遇においても差をつけることはできません。なお中小企業に対しては、パートタイム・有期雇用労働法は2021年4月1日から適用されます。

同一労働同一賃金のポイント

では、同一労働同一賃金に関する法律では、具体的にどんな内容が定められているのでしょうか。ポイントを解説します。

基本給

正規雇用社員と同じ能力・経験を持つ短時間・有期雇用労働者に対しては、同額の基本給を支払うことがルール化されます。また、非正規雇用労働者の昇給に関しても、正社員と同じ能力の向上に対しては同じ、違いがあれば違いに応じた昇給が行われなければいけません。

賞与

賞与(ボーナス)が、会社の業績への貢献度に応じて支払われる場合は、正規雇用の労働者と同じ貢献をした短時間・有期雇用労働者には、同額の賞与が支払われるべきと定められています。

各種手当

役職手当などの各種手当に関しても同様です。非正規雇用社員に対して、正規雇用社員と同じ役職に対しては同じ、違う場合は違いに応じた役職手当が支払われなければなりません。業務の危険度に応じて支給される特殊作業手当、時間外労働手当の割増率、食事手当や単身赴任手当に関しても、同額の支給を行うべきと定められています。

福利厚生・職業訓練

食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設や、転勤の有無などの要件が同じ場合の転勤者用住宅などは、雇用形態に関わらず同様に利用ができるようにしなければいけません。慶弔休暇や病気休職に関しても同一の付与が必要です。職務に必要な技能・知識を習得するために行う職業訓練も、正規雇用社員と同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行う必要があります。

待遇に関する説明義務の強化

法改正により、非正規雇用労働者は、正社員との待遇差の内容・理由など、自分の待遇に関して会社に説明を求めることができるようになりました。会社側は、非正規雇用労働者から求められた場合、説明をする義務があることも定められています。

待遇差の問題が裁判外紛争解決手続の対象に

雇用形態の違いによる待遇差の問題が、「裁判外紛争解決手続」の対象と定められました。裁判外紛争解決手続とは、労働者と会社の間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続きのこと。会社と社員の双方、または一方からの申し出に応じて、都道府県労働局が問題の早期解決に向けたサポートを行います。

同一労働同一賃金、問題となるケースは?

では、具体的にどのようなケースが不合理な待遇差として禁止されるのでしょうか。問題となる具体的な例は、次の通りです。

・正規雇用社員Aさんに対して、Aさんと会社の業績への貢献度が同じ非正規雇用社員のBさんより、高い額のボーナスを支払っている。

・非正規雇用社員Aさんと同じ業務を行う正規雇用社員Bさんに、多くの経験を持っていることを理由に高い基本給を支払っているが、Bさんのそれらの経験は、Bさんの現在の業務内容と関係がない。

・正規雇用社員Aさんと同じ時間数と、同じ内容の仕事の深夜労働を行った非正規雇用社員Bさんに対して、深夜労働以外の労働時間がAさんよりも短いことから、深夜労働手当の単価を低く設定している。

同一労働同一賃金、問題にならない例は?

不合理な待遇差が法律で禁止されている一方で、どのような状況の待遇差は法律違反とならないのでしょうか。次のようなケースは問題にはあたりません。

・能力や経験に応じて基本給を決定している会社で、正規雇用社員のAさんは、能力向上を目的に会社が設定したキャリアコースを選択して、特定の能力を取得している。その能力に応じた基本給をAさんに支給し、能力を取得していない非正規雇用社員には同じ額の基本給を支給していない。

・将来的に職務内容や勤務地に変更がある想定で登用している有期雇用のAさんに対して、将来的に仕事内容や勤務地が変わることを理由に、職務内容や配置に変更のない有期雇用のBさんよりも高い基本給を支払っている。

・正社員Aさんは、数値目標への責任を課され未達成の場合には待遇上の不利益を受けている。非正規雇用社員のBさんは数値目標に対する責任がなく、達成率次第で待遇が変わらない。Aさんにはボーナスを支給し、Bさんには、待遇上の不利益を課していないこととの見合いの範囲内でボーナスを支給していない。

同一労働同一賃金、違反に罰則は?

正規雇用社員と非正規雇用社員の間の不合理な待遇差は禁止されているものの、違反したことによる企業に対する罰則は明記されていません。

ただ、不合理な扱いをした企業には、次のようなリスクが発生するということは押さえておきましょう。

人材確保が困難になる

雇用形態だけを理由に不合理な待遇差を設けることは、会社のイメージ低下につながります。不合理な待遇を受けた従業員から訴訟を起こされると、社員満足度の低い会社として認識される事態が発生します。今いる社員の離職や、人材を募集しても応募が集まらないなどの人材の課題に直面するでしょう。

CSRを果たせない

コンプライアンスの観点からも、法律など社会のルールを守ることが重要です。罰則がないとはいえ、労働者に合理的な待遇を保障するための法律に違反することは、会社が事業を続ける上での大きなダメージとなります。正規雇用、非正規雇用に関わらず、従業員が安心して働ける企業としての社会的責任(CSR)を果たせないというデメリットにも注意しましょう。

中小企業に必要な対策のポイントは?

では、2021年4月からの同一労働同一賃金のルール適用に向けて、中小企業はどのような準備を進めればよいのでしょうか。必要な対策のポイントを解説します。

職務内容の明確化

雇用形態が異なる社員間の不合理な待遇差がないかを把握するために、まずは、正規雇用社員と非正規雇用社員の職務内容を明確化しましょう。職務内容に違いがない場合は、待遇差を設けることが禁止されます。待遇の差を合理的に説明するため、職務内容に応じた待遇のルールを明確に定めましょう。

人員の適正な配置

法律の適用後は、職務内容が正社員と同じ非正規雇用社員に対して正社員と同じ給与を支給する必要があります。1人あたりの人件費が上がる場合に備えて、必要な社員を必要な人数分配置するよう、人員を調整しておくこともポイントです。各部署の正規雇用社員、非正規雇用社員の人件費を算出して、生産性に見合った適正な人員の配置を行いましょう。

正規雇用社員の基本給の見直し

正規雇用社員の待遇を見直すことも、法改正に対応する手段のひとつです。非正規雇用社員の給与額の引き上げが難しい場合は、正社員の基本給や手当を見直して非正規雇用との待遇の均一化をはかることも検討しましょう。ただし、正社員の給与の見直しは労使関係の合意をもとに進めることが前提です。

「キャリアアップ助成金」の活用

非正規雇用社員の正社員化や、処遇改善の取り組みをサポートする行政の「キャリアアップ助成金」も活用を検討しましょう。企業が、非正規雇用社員の賃金規定や手当制度を共通化する場合などに、助成金が受け取れます。また、各都道府県の「働き方改革推進支援センター」の利用もおすすめです。同一労働同一賃金の実現に関する電話での相談や、訪問による支援が無料で受けることが可能です。

働き方改革を支援する助成金一覧【2020年度最新版】 | 働き方改革ラボ

同一労働同一賃金をきっかけに生産性を見直そう!

いよいよ2021年4月から、中小企業に対してもパートタイム・有期雇用労働法の適用がスタート。法改正への対応には制度変更の手間やコストもかかりますが、従業員の職務内容や人員配置を整理することで、人件費の偏りなど社内のムダを見つけることもできます。

不合理な格差を解消することは、社員の満足度やモチベーションアップにもつながるため、働きやすい環境作りの第一歩にもなるでしょう。同一労働同一賃金のルールへの対応をきっかけに、働き方改革を進めてみてはいかがでしょうか?

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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