電子印鑑と電子契約システムの導入方法とは?手順とメリットをわかりやすく解説
2023年07月20日 07:00
この記事に書いてあること
新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークが広がる中、従来の押印作業をどのように対応するかという問題が出てきています。
ペーパーレス化の障害としても問題視されていた印鑑の問題。今回は電子印鑑とは何か、紙媒体における印鑑と比べた際の効力や、電子での決裁を行うシステムの導入について解説していきます。
電子印鑑を導入する前に押さえておくべき用語とは
はじめに、印鑑を電子化する際に押さえておきたい用語をご紹介します。名前が似ている分、それぞれの違いをしっかりと認識しておくことが大切です。
電子契約とは
電子契約とは、従来書面によって行われていた契約を、インターネット上で交わすことを指します。合意の証として、契約者本人による電子署名や付与されるタイムスタンプが利用されます。
電子印鑑とは
電子文書で多く用いられる電子印鑑とは、インターネット上で電子文書に捺印できる印鑑データのことを指します。役割や種類については後ほど詳しく解説します。
印鑑データは印鑑作成ツールを使って作成できるほか、電子印鑑の機能がついた電子決裁システムを利用することもできます。
電子証明書とは
書面手続きにおける「印鑑証明書」に代わるものです。信頼できる第三者(認証局)が間違いなく本人であることを電子的に証明するもので、「マイナンバーカード」のような公的個人認証制度でのICカードに搭載されたり、ファイル形式で提供されたりしています。
公的機関にていくつかの手順を踏んで入手する必要はありますが、公的機関からの証明があるので信憑性が保証されます。今まで実印が必要とされていたような重要な契約には、この電子証明書が使われています。
電子決裁システムとは
電子決裁システムとは、紙の書類ではなく電子文書を使って社内の決裁処理を行うツール。申請や稟議を、オンライン上で申請・承認することができます。電子決裁における書類作成や捺印に、電子印鑑が使われます。
書面における印鑑の役割とは?
契約締結の最後に行う押印。実は法的な観点で見ていくと、押印は必ずしも必要というわけではありません。一部の公的機関に提出する書類を除いて、民間企業や個人間の取引では書面や押印がなくても契約が成立するものもあり、押印の有無は法的拘束力とは関係がないのです。
ではなぜ押印をするのでしょうか?書類における印鑑の役割と、電子印鑑でも代用できるのかを見ていきましょう。
印鑑の役割
書面における印鑑の役割とは、契約を交わす際の押印慣行です。つまり契約を交わす際に「当事者同士がきちんと合意の上で意思を表示した」ことを示すために押印をするという慣習にならったものです。
そのため押印の有無で法的な効力には影響ありません。あくまで押印がされた文書の方がより信頼性が高いというためのものであり、その流れとしてハンコ文化が浸透しています。
電子印鑑でも代用可能
上記の通り、押印は本人の意思を示すものであるため、電子印鑑でも合意の上で意思を表示したことを示す押印の代用として利用することができます。
ただし法的な有効性を持たせる場合は、2001年に定められた電子署名法の定めによって、押印された電子署名が本人のものと証明する必要があります。そのため紙面での押印の代わりとなる電子印鑑とするには、単なる印影データを使用するのではなく、国の認定を受けた第三者機関である認証事業者が発行する電子証明書によって本人性を証明する必要があります。
電子印鑑の種類
印鑑には、公的機関で印影が登録されていない「認印」や自治体に印鑑登録をしている「実印」などがある通り、電子印鑑でも用途に合わせていくつかの種類があります。
ここからは用途に合わせて使い分けることができる4つの電子印鑑について解説していきます。
①印影を画像にした電子印鑑
印影を画像化し、データ化したものです。実際の印鑑で紙に押印し、画像をデータ化すれば作成できるため、最も簡単に作れる電子印鑑となります。そのため印影の複製は非常に容易であり、セキュリティや安全性の観点で重要書類の押印には不向きです。
主な用途としては、社内向けの認印として使用するケースが多く、押印は必要だが重要書類ではない時にシャチハタ感覚で利用するとよいでしょう。
②印影データに情報が付随した電子印鑑
印影データに押印者の情報や、押印した日時などの情報が入ったタイムスタンプを組み込んだものです。本人の証明がある上に、改ざんもできないため、セキュリティや安全面に優れた電子印鑑です。
主な用途は、社外文書への押印や社印としての使用など、書類の重要度を問わず幅広い場面で使用できます。本人証明データ付きの電子印鑑は有料システムであることが多く、様々な機能がセットになっています。システムの選定の際には、自社のニーズに合わせて慎重に選ぶようにしましょう。
③メール認証
本人証明付き電子印鑑の中でも、押印を必要としないものがメール認証です。メール認証とは、電子メールを利用して契約に伴う電子データのURLを送付し、相手が送付されたURLからアクセスすることで認証が完了し、本人が締結したとする契約方法です。
メール認証は、第三者によるメールサーバーへの不正アクセスなどの課題はありますが、基本的には本人しかアクセスできない仕組みになっているため、単に電子印鑑で押印するよりも信頼性が高い手段だと考えられています。
④電子証明書
書面手続きにおける「印鑑証明書」の代わりになるものが電子証明書です。電子証明書とは、認証局によって本人であることを電子的に証明したものであり、マイナンバーカードのような公的な公人認証制度でのICカードに搭載されたり、ファイル形式で提供されたりしています。
電子証明書の発行には、公的機関で申請をする必要がありますが、その分だけ証明書の信頼性が高く保証されています。今まで実印が必要とされていたような重要な契約には、この電子証明書が使われています。
電子契約システム導入のメリット
印鑑が多く使われるものとして、社外との契約書類があります。押印を電子化するだけでなく、承認ルートを電子化する電子契約システムを導入することで、さまざまなメリットが得られます。
申請から承認までの時間が短縮できる
電子化を進めることで、書類の印刷や押印待ち、書類の郵送などの工程を省略することができます。
書類契約の場合、相手の手元に書類が届かなければ押印できませんでした。しかし、電子印鑑を導入することで、インターネット上でデータを送るだけですぐに押印できます。
また電子契約のシステムを導入すれば、いま誰の承認を待っているのか、承認の進捗状況はどうなっているのかをリアルタイムで確認することができます。これによって承認完了の見込み予測ができるようになり、後続作業との連携が取れ、今までよりも業務の効率化をはかることができます。
承認場所の制約がなくなる
契約の承認フローを電子化することで、承認者がどこにいてもインターネット環境さえあれば承認を行うことができます。またスマホアプリ対応の電子契約システムを活用することで、出先へ移動していても承認を完了することが可能です。
こういった承認時間の短縮によって、書類の申請から承認までのサイクルが早まり、より業務の進展が早まります。
物理的スペースの確保
電子契約システムの導入によって、書類の管理が不要になるため従来まで必要だった物理的な書類管理スペースが不要になります。また保存期間が切れた書類を処分する際にかかっていたコストや時間も不要になります。
承認フローで生じるコストの削減
電子契約システムの導入によって、紙書類で必要だった紙代や印刷代を一括削減できるようになります。浮いたコストは社員に還元したり、設備投資に回したりすることができるため、業務効率を改善しながら新規のビジネスチャンスを掴むことができます。
安全に書類を送付できる
紙書類によるやりとりは、物理的な移動が必要になります。先方の本社遠方の場合は郵送になったり、相手先が海外などの場合は特に複数の手を渡るため、セキュリティ面の問題もあります。
電子契約システムの場合、ネットワーク上のセキュリティは必要になりますが、物理的なリスクは軽減することができます。
電子契約システム導入手順と流れ
電子印鑑を利用した電子契約システムを導入する際の具体的な手順と流れを見ていきましょう。電子契約システムの導入には、事前準備を含めて導入までに時間と労力が必要です。法務やITシステムを絡めた会社全体の取り組みとして検討するようにしましょう。
1. 現状の契約書管理体制・ワークフローの可視化
電子契約システムの導入の前に、契約書をどのような体制と仕組みで管理していくのか、現状の把握と可視化を行います。
取り扱っている契約書の種類、書類の作成や対応する頻度、かかっている工数、保管方法などを洗い出していきましょう。契約書の他にも、発注書や見積書、社内の稟議書など、業務の中で発生する書類は全て確認していきましょう。
電子契約を導入・定着させるためには書類に関するワークフローの整備が必要です。書類の記載内容や、承認ルートの明確化、電子契約システムを活用したワークフローの可視化が必要になります。
2. 電子契約導入範囲の検討(目的設定)
電子契約に関する管理体制とワークフローが可視化できたら、次は電子契約システムを導入する範囲の検討にうつります。
電子契約を導入する場合は、取引先の同意が必要になります。社外に関する書類も全て電子化することで、自社だけでなく取引先の業務効率も大きく向上する可能性があります。取引先にもメリットがあるため、電子契約導入の経緯を説明した上で、段階的に導入を進めていくとよいでしょう。
3. 電子契約システムの選定
電子契約システムの導入範囲が確定したら、システム選定に入ります。一口に電子契約システムといっても、ニーズや用途に合わせて様々な種類があります。一度導入したシステムを後々変更することは、金銭的にも業務フロー的にも大きな負担がかかるため、選定のタイミングで自社のニーズにあった適切なシステムを選択することが必要です。
4. システム及び業務の要件定義
導入する電子契約システムの選定が進んだら、システム担当者や電子契約を利用する部署の担当者も交えて、システムと業務の要件定義を行います。
電子契約システムの利便性に着目するだけでなく、実際に使用する担当者の意見をしっかりと吸い上げて、自社の状況に合わせたシステムを選定できるようにしましょう。システムの機能や必要な項目を整理した上で、運用体制や運用の社内フローを整備していきます。
5. 社内及び取引先との調整
導入する電子契約システムの選定と運用体制の整備が完了したら、いよいよ導入に向けた最終調整に入ります。
新しいシステムの導入の際には、社内に向けた導入の経緯とメリット、システムを有効活用するための研修と周知の時間を確保しておきます。必要に応じて現場の担当者への個別フォロー体制を整えておくとよいでしょう。
また社外に向けても電子契約システムを利用する際には、取引先に対して、システムの導入の前後で具体的に何が変わるのかを説明した上で、理解を得るようにしましょう。
6. 電子契約システムの本導入
電子契約システムに関する社内外への周知が済み次第、選定した電子契約システムを正式に導入していきます。システムの導入が済み次第、利用者登録や印鑑登録、アクセス制限などの初期設定を行いましょう。
受け入れの際には想定通りのツールが挙動するかテストを行い、問題なければ社内へ展開していきます。
7. 利用マニュアル準備や社内研修の実施
システムの導入が済んだ後は、ツールの利用マニュアルを作成して、本格的に社内周知を行います。マニュアルを読んだだけではわからない部分も多いため、必要に応じて社内研修と個別の質疑応答ができる体制を整えましょう。
また利用中に不明点が発生した際の問い合わせ窓口や、問い合わせのフローも準備しておくようにしましょう。
印鑑の役割を見直そう
現在では、電子帳簿保存法や電子署名法、IT書面一括法、e-文書法などにより、さまざまな文書の電子化及び電子契約が可能になっています。
働き方改革の推進と新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業でテレワークが浸透する中で、「電子印鑑」や場所にとらわれない電子契約システムは業務に欠かせないツールになりつつあります。
正しく活用できれば大幅な業務効率化を図ることができる電子ツール。ここで今一度、従来の印鑑の役割について見直し、「電子印鑑」への置き換えを検討してみてはいかかでしょうか。
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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