電子契約導入のメリット・デメリットは?サービス選定の4つのポイントも解説
2022年08月12日 07:00
この記事に書いてあること
あらゆる物事のデジタル化が進むなか、契約書も書面から電子化する流れが起きています。テレワークや環境保護など、現代のさまざまなトピックにぴったりな電子契約は、実際どのように導入・運用されているのでしょうか。今回は、電子契約導入の概要やメリット、書面契約との違い、導入するために必要なステップについて徹底解説します。
※2020年9月に公開した記事を更新しました
電子契約とは
電子契約とは、取引先との間で書面によって行われていた契約を、インターネット上で交わす方法です。電子データ上で電子署名を行うことで、書面の契約書での押印と同様に、双方の合意の証として残すことができます。
電子契約はテレワーク導入で加速化
ペーパーレス化による国民の書類保存の負担軽減と利便性向上を目的に、電子帳簿保存法(1998年)や電子署名法(2001年)といった法律が整備されました。
それによって、従来、文書での保管が義務付けられていた書類を電子データで保存すること、そして電子署名に、手書きの署名と同等の効力を持たせることが認められました。
とはいっても法律が整備されてからすぐ各企業に導入されたわけではありません。ここ数年のテレワーク推進や環境保護の流れとともに電子契約を導入する企業が少しずつ増えてきています。
電子契約を導入した企業はおよそ8割
JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)による2022年の調査では、電子契約サービスを利用している企業は69.7%、今後の利用を検討している企業は14.7%と発表されています。
つまり、8割もの企業が電子契約を採用、または採用を検討しているということです。
2020年の調査では約7割だったので、新型コロナウィルス感染症対策をきっかけにテレワークを取り入れる企業が増加した影響により、電子契約の導入はかなり進んできていると言えます。
電子契約と書面契約との違いとは
電子契約が導入される前は、書面での契約が主流でした。それでは「書面契約」と「電子契約」には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
書類形式の違い
電子契約と書面契約の違いは、なんといっても紙の有無です。書面契約は紙を使用する一方で、電子契約は電子データのやりとりで契約を交わします。
そのため、書面契約の署名・押印にあたるものが、電子契約では電子サイン・電子署名に代わります。
本人性を担保できる機能の違い
書面契約では、印鑑証明書によって契約の本人性を担保します。一方で、電子契約には印鑑証明書と同様の役割を果たす電子証明書があります。
電子契約を行う場合、メール認証を通して本人確認を行なうケースが多いです。契約を結ぶ相手にメールを送り、リンクをクリックしてもらうことによって認証できます。ただし、公的書類を契約・申請する場合には第三者機関による本人証明が必要です。
具体例としてあげられるのが確定申告で必要なマイナンバーカードです。マイナンバーカードの申請時に「電子証明書」を発行することでなりすましや改ざんを防ぎ、本人性を担保する仕組みです。
書類送付方法の違い
書面契約は紙を使用するため、契約書を持参もしくは郵送して受け渡し、相手側に確認してもらわなければなりません。
しかし電子契約ならインターネットを経由するため、持参・郵送の手間を省け、印刷費や郵送費のコスト、対応にかかる人件費の削減が期待できます。
保管方法の違い
紙の契約書はファイルにまとめたり、棚に並べたりと保管する場所が必要です。電子契約のデータはクラウドやサーバー上に保存されるため、物理的なスペースが必要ありません。
改ざん防止策の違い
改ざん防止策として、書面契約では契印・割印が挙げられます。一方、電子契約には契約書を作成した時刻の信頼性を担保するタイムスタンプがあります。
紙の書類の場合は印鑑の捏造による改ざんの可能性がありますが、電子契約は、電子署名とタイムスタンプを掛け合わせることによってそのリスクを減らせるのです。
電子契約では変更履歴の記録や、編集時のメッセージ表示といったシステム上の機能で不正をチェックできます。また、誰がいつどんな作業を行ったかというフローの記録も可能です。そのため、契約書の紛失や締結漏れといったリスクを軽減できます。
さらに、物理的な紛失や持ち出しによる情報漏洩も防げるため、契約書の管理体制の強化ができることも電子契約の特徴です。
収入印紙の違い
5万円以上の契約を書面にて行う場合には、収入印紙が必要となります。かかる金額によって必要となる収入印紙代は変動しますが、最低200円はかかります。
ですが、電子契約なら、現時点では規定がないため収入印紙が不要となります。もし複数の契約を結ぶことが多い場合は、電子契約を導入することで大幅なコスト削減が期待できます。
電子契約導入のメリット・デメリットとは
続いて、具体的な電子契約を導入するメリットとデメリットをあわせてご紹介します
電子契約のメリット
はじめに、電子契約のメリットから見ていきましょう。
業務の効率化
契約業務の手間を削減し、業務を効率化することができます。
紙の契約書を交わすケースは、作成から取引先の手元に届けるまでに、印刷、ホチキス止めや製本、押印や署名の手続き、封筒への封入、郵送という作業が必要です。また、相手側の確認と押印、返送も必要なため、契約締結に至るまで時間と手間がかかります。
電子契約ならインターネット上で契約業務が行えるため、パソコン作業のみで完結します。電子契約サービスによっては契約ステータスも確認できるため、到着確認などの作業負担も減らせます。
契約書の管理や検索がしやすい
電子契約によって交わされた契約書は、電子データとして保存されます。
紙の契約書を探すときにはキャビネット等に保存された契約書ファイルを取り出して目視で探す必要がありますが、電子データは検索がスムーズです。
相手の名前や日付を組み合わせて検索ができるため、契約の失効や更新の必要性のチェックといった、契約情報の適切な管理も可能です。
経費削減
先ほどご紹介したように、コストを削減できることも電子契約の大きなメリットです。印刷や紙の費用、郵送代など、紙の契約書に必要なコストも不要。製本などに要していた人員の人件費も減らせます。
電子契約のデータはクラウドやサーバー上に保管されるため、紙の契約書の保管に必要だったオフィスのスペースもカットできます。
受け取りや押印のために出社する必要がない
新型コロナウィルス感染症対策でテレワークが普及する中でも、押印や書類の発送、受け取りなどの契約書関連業務のために出社を余儀なくされる事態が発生しています。
電子契約なら、契約書作成から相手とのやり取りまでをパソコン上で行えるため出社が不要。働き方を柔軟に選べるのも、電子契約のメリットです。
電子契約のデメリット
次に、電子契約のデメリットについてもご紹介します。
電子契約が認められない契約書がある
現時点ではすべての契約を電子化できるわけではありません。書面契約を法的に義務付けている契約もあります。
たとえば、不動産売買における重要事項説明書(宅地建物取引業法第35条)、投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律第5条)といった、書面での契約が必要な種類の多い企業の場合は、電子契約サービスを導入するメリットが少なくなります。
取引先の理解が必須
電子契約導入のためには、社内だけでなく、契約書を交わす社外に対しても業務フローの変更を依頼する必要があります。書面による契約が浸透している企業の中には、電子化に抵抗感を持つ会社もあるでしょう。
電子契約への理解を得るために、上記のメリット・デメリットをしっかりと伝えることが求められます。
電子契約サービス選定の4つのポイント
電子契約は、電子契約サービスを利用するのが一般的です。電子契約サービスでは、契約書の作成から電子署名・タイムスタンプの押印、そして相手先の確認や押印を経て契約書を完成するまでの業務が行えます。
電子文書の保管や検索、また承認ステータスの把握など、契約業務を効率化する機能も付いていることが多いです。
それでは、電子契約サービスはどのようなポイントを重視して選定すればいいのでしょうか。
電子帳簿保存法への対応状況を確認
電子帳簿保存法では、紙の文書と同様の効果が認められる電子データの条件として、信頼に値する書類としての「完全性」を確保することが定められています。
電子データ作成の時刻を記録できるタイムスタンプと電子署名を組み合わせることで、改ざんなどがない安全な契約書であることが証明できます。
法的効力のある契約書をインターネット上で交わして電子データで保存したい場合は、電子契約サービスにこの機能が整備されているかどうかチェックしましょう。
セキュリティ対策は万全か
インターネット上で契約業務を行う上で欠かせないのがセキュリティ対策です。サイバー攻撃による情報漏洩を防ぐセキュリティ対策の有無についても、サービス選びの重要なポイントだといえます。
電子契約サービス導入をする前に、アクセス制限や従業員の操作ログの確認など、内部から発生するリスクを防ぐ機能があるかどうかも確認しましょう。
契約を結ぶ相手にとっての使いやすさもチェック
契約を行う相手先にとって使いやすいシステムかどうかも重要なポイントです。電子契約サービスには、契約を締結する相手側も登録が必要なサービスもあれば、メールを開封するのみで契約書の確認ができるものもあります。
取引先に多くの負担をかけないサービスを選ぶことが、電子契約のスムーズな運用のために大切です。
既存システムとの連携の可否
電子契約サービスのなかには、社内の既存システムと連携する機能が整ったサービスもあります。会計管理システムや顧客管理システム等と電子契約システムを連携させることで、書類の自動保管やデータの転記が可能です。
社内の業務のさらなる効率化を実現したい方はチェックしましょう。
電子契約サービスのなかにはトライアルプランや無料プランを用意しているものもあるので、まずは試しに利用して使い心地をチェックしてみるのがおすすめです。
電子契約導入に必要なステップとは
それでは最後に、電子契約を導入するにあたって必要なステップを5段階に分けてご紹介します。
契約書管理体制の把握
まずは、現在の社内の契約書管理体制を確認します。これは、適切な電子契約サービスの選定や、業務フロー見直しを行うために必要なステップです。
発生・管理している契約書の種類や内容、契約に関する意思決定フローや業務フロー、契約書の保管方法などを把握しましょう。
電子契約導入範囲の決定
次に、電子契約を導入する契約書の種類や範囲を決定します。
最初からすべての契約書で導入せずに、取引先の同意を得られた契約書や、社内向けの雇用契約書から導入を始めるのもおすすめです。だんだんと慣れてきて使いこなせれば、取引先への説明も容易になります。
電子契約サービス・契約書管理サービスの選定
電子契約を導入する上で利用する電子契約サービスや、契約書管理サービスの選定を進めます。
電子契約を実際に運用する部署の担当者の意見もヒアリングした上で、契約書運用体制の現状を照らし合わせて、自社に合ったサービスを選びましょう。
電子契約のルール整備
電子契約についての社内ルールを整えます。電子契約を行う契約書の種類、承認フロー、業務フローを明確に定めておくことがスムーズな導入に不可欠です。
ルールを周知するための社員への説明会の開催や、運用時の問い合わせ対応に備えたマニュアルの準備も進めましょう。
社内外への電子契約導入の周知
導入前に、社内や社外の取引先に電子契約を導入する旨を連絡しましょう。
理解を得た上で、電子契約システムの利用を積極的に進めてもらうために、電子契約のメリットや導入する理由を丁寧に説明することが大切です。
導入のポイントをおさえて業務効率化を実現しよう
テレワークの浸透で、今後ますます普及する見込みの電子契約。契約を交わす手続き自体を効率化するだけでなく、書類の管理や関連する業務の生産性向上も期待できます。
さまざまな電子契約サービスがあるので、自社に合ったシステムを選んで、生産性アップを実現しましょう!
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記事執筆
働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
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