DX認定制度とは|デジタルガバナンス・コード2.0の内容やメリット、企業内プロセスを解説

From: 働き方改革ラボ

2023年08月31日 06:00

この記事に書いてあること

デジタル技術の活用によって企業に変革を起こすデジタルトランスフォーメーション(DX)普及策のひとつである「DX認定制度」をご存じでしょうか。DX認定制度は今、企業規模や業種に関わらず認定が受けられ、税額控除などのメリットがある制度として注目を集めています。

この記事では、働き方改革やデジタル化を進めたい企業が確認しておきたいDX認定制度についての概要や申請方法、認定を受けることのメリットを解説します。

DX認定制度とは

DX認定制度とは、2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。

DX認定制度は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の認定審査事務が審査し、最終的に経済産業省が決定を下します。認定を受けると付与される「DX認定ロゴマーク」を広告として載せることでDXに対する取り組みを行なっていることをアピールできる、経営計画の実現に近づくなどのメリットがあります。

DX認定制度の目的

デジタル技術を使って業務プロセスの改善を行うだけでなく、企業に改革を起こすデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するために施行されたのが、「DX認定制度」です。

DX認定制度は、国が定めた情報処理システムの促進に関する指針をふまえて、DXの優良な取り組みを行う企業や、DXを進める一定の準備が整っている会社を国が認定することで、企業や経営者のDXに対する意識改革を目的に施行されました。

DX認定制度の背景

DX認定制度が施行された背景として、日本の「Society 5.0」実現へ向けた情報処理基盤の整備の必要性と、旧来型の情報処理システムがDX推進をさまたげているという問題の解決が挙げられます。

Society 5.0とは

Society 5.0とは、サイバー空間と現実空間を融合させたシステムによって経済発展と社会的課題の解決を両立できる社会のことを意味します。デジタル技術の活用による便利な社会の実現と社会の変化への対応、そして国際的な競争力の確保のためにも、DXによる生産性向上や、多様な働き方の推進が求められています。

Society 5.0によって新たな価値創出につながる

情報社会をあらわすSociety 4.0では知識や情報が集約されつつあったものの、共有するまでには至っておらず、それによって地域の課題や高齢者のニーズへの対応、情報精査、分野を横断する連携などがあまりできていないという課題がありました。

Society 5.0においては、IoT(Internet of Things)によってすべての人とモノがつながり、知識や情報が共有されることで、Society 4.0では解決できなかった課題や困難を乗り越えられ、新たな価値創出にもつながると考えられています。

DX認定レベルは4種類

それでは、具体的にDX認定制度がどのようなものなのか見ていきましょう。

DXの認定レベルは、次の4つに分類されます。

  1. 1.DX-Excellent企業

  2. 2.DX-Emerging企業

  3. 3.DX認定事業者(DX-Ready)

  4. 4.DX-Ready以前

  5. DX認定事業者(DX-Ready)はDX推進の準備が整った状態を指し、そこからさらに、期待値が高いと認定されるとDX-Emerging企業に、DX推進に関する実績が優れていると認定されるとDX-Excellent企業に選ばれます。

    DX認定事業者になるための条件|「デジタルガバナンス・コード2.0」とは

    2022年9月に作成された「デジタルガバナンス・コード2.0」は、デジタル技術による社会変革をふまえた経営ビジョンの策定・公表など、経営者に求められる対応として策定された「デジタルガバナンス・コード」を改訂したものです。

    デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応することがDX認定を受ける条件でしたが、デジタルガバナンス・コードの改訂により「デジタル人材の育成・確保」が追加されました。

    また、デジタルガバナンス・コードの際には『DX推進ガイドライン』が配布されましたが、「デジタルガバナンス・コード2.0」では統合されました。そのため、「デジタルガバナンス・コード2.0」では、条件だけでなく、下記のような項目が追記されています。

    1. デジタル人材の育成・確保をDX認定の認定基準に追加

    2. 経営戦略と人材戦略を連動させた上でのデジタル人材の育成・確保の重要性を明記

    3. DXとSX/GXとの関係性を記載

    4. 企業の稼ぐ力を強化するためのデジタル活用の重要性を指摘

    5. 経営ビジョン実現に向けたデジタル活用の行動指針を策定する必要性を記載

    6. DX認定事業者の申請時期・対象など

      DX認定事業者の申請は、1年を通していつでも可能です。また、中小企業や個人事業主などを含めたすべての事業者が対象となります。さらにDX認定事業者の申請や維持に費用もかかりません。

      DX認定事業者は「DX-Ready」という名前にもある通り、DX推進の準備が整った状態を指すため、運用を開始していなくとも申請することができます。そのため、比較的ハードルが低く申請できるのも特徴です。

      DX認定制度の3つのメリット

      続いて、DX認定事業者に選ばれることによって得られるメリットをご紹介します。

      1. 企業価値やイメージの向上につながる

      DX認定を受けると、DX認定事業者として「DX推進ポータル」で公開されます。経済産業省にDXや働き方改革に積極的な企業として認められることで、取引先や顧客からの信頼を得ることができます。

      経済産業省が発表したDX認定事業者のアンケートでは、DX認定取得のメリットとして上位に「DX戦略の推進」、「顧客に対する企業イメージ向上」が挙げられました。これらは企業の規模問わず上位を占めており、共通するメリットといえるでしょう。

      また、中小企業においては、「日本政策金融公庫による低利融資の活用」もメリットとして挙げられています。顧客や人材に限らず、DX認定事業者であると社会に認知されることが、企業価値を向上させるのです。

      2. 税制優遇が受けられる

      DX認定を取得することで、DX投資促進税制の税額控除を受ける権利を得られるのもメリットのひとつです。DX投資促進税制とは、DX推進に必要なソフトウェアや関連する機器などの投資額に対して、3%もしくは5%の控除、または30%の特別償却が可能になる制度です。

      DX投資促進税制の利用には、DX認定事業者であることが必須となります。控除を希望する企業は、書類の作成時間や認定までの60日間という期間を考慮して、早めにDX認定を得るための準備を進めましょう。

      3. DX銘柄に応募できる

      東京証券取引所に上場している企業の場合、「DX銘柄」や「DX注目企業」に選ばれると、さらに社会からの高い評価を得られます。

      経済産業省ではDX銘柄は「東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を、業種区分ごとに選定して紹介するもの」と定義されています。

      経営ビジョン・ビジネスモデルや戦略など6つの評価項目をもとに経済産業省が毎年選定しており、選定企業は一覧として名前が掲載されるため、これも強いアピールポイントになります。

      中小企業にもDX認定制度の支援制度がある

      DX認定制度は、申請作業を通じて経営者がDXを進める手助けをする目的で作られました。企業の規模や業種に関わらず申請ができ、複雑な手続きも不要なため、中小企業にとっても認定が受けやすい制度といえます。

      DXの必要性はわかっているけれども何から手をつけたら良いかわからない中小企業も、申請作業を通じて、自社の課題の整理やDX推進の土台作りを進めることができる効果を得られるのです。

      現在は、IoTの活用やシステム構築といった技術面を支援する技術支援サービスや、DX人材の育成などのビジネス変革支援サービスなども提供されています。また、ものづくり補助金やIT導入補助金など中小企業向けのDX補助金制度も設けられているため、積極的に活用することでDX促進効果も高まるでしょう。

      DX認定取得のための企業内プロセス

      ご紹介したように、DX認定事業者に選ばれるとさまざまなメリットがあります。それでは、DX認定を取得するにあたってはどのような企業内プロセスを踏めばいいのでしょうか。

      DX認定取得のために必要と想定される企業内プロセスは、下記の通りです。審査に必要な「標準処理期間」は原則60日ですが、申請内容に不備があった際の再提出期間は含まれません。もしDX銘柄の選定や税制優遇が目的の場合は、早めに申請するといいでしょう。

      1.「経営ビジョン」を策定する

      まず、自社のビジネス状況や経営環境を把握・整理し、「経営ビジョン」を策定します。このとき、経営ビジョンの実現のためにビジネスモデルの方向性を検討し直すことでDXの目的である“企業の改革”にもつながります。その後、取締役会等に承認を取り、公表します。

      2.「DX戦略」を策定する

      次に、策定した「経営ビジョン」に基づくビジネスモデルを実現するために、体制・組織案やITシステム・デジタル技術活用環境の整備などの方策を含めた「DX戦略」を策定します。「DX戦略」を策定後、また取締役会等で承認を得た上で公表する必要があります。

      3.「DX戦略推進管理体制」を策定する

      続いて、戦略の達成度を測るための指標などを検討する「DX戦略推進管理体制」を策定、公表します。これらは定期的に自己分析を行い、発信をしたり、書類にまとめたりしなければなりません。

      DX認定制度の申請方法3ステップ

      最後に、DX認定制度の申請方法を3ステップに分けてご紹介します。

      1.DX認定の基準「デジタルガバナンス・コード」を満たしているか確認

      最初に、DX認定の基準となる「デジタルガバナンス・コード」を満たしているかを確認します。これらはDX認定の申請に必要な「申請チェックシート」にも記入するポイントとなりますが、あらかじめ確認することで申請の不備を減らせます。

      デジタルガバナンス・コードの基準は、大きく分けると「経営ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「成果と重要な成果指標」「ガバナンスシステム」の4種類です。

      1.経営ビジョン・ビジネスモデル

      まず、経営ビジョンの策定とそれを実現するためのビジネスモデルを検討し、デジタル技術の活用によってどのような効果があるのか具体的に記していきます。また、「申請チェックシート」ではそれらを社内で公表しているかどうかも確認されます。

      2.戦略

      次に、デジタル技術をどのように活用するか戦略を策定し、記していきます。

      戦略には「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」と「IT システム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策」の2種類があり、前者ではデジタル技術を活用するために必要な体制や組織設計・運営の在り方を、後者ではデジタル技術の活用に必要な方策や計画などを、それぞれ明確に記載します。さらに、これらについて公表しているかも確認します。

      3.成果と重要な成果指標

      続いて、定めたデジタル技術を活用する戦略の達成度を計測する指標や成果を記します。そして公表しているかも確認します。

      4.ガバナンスシステム

      DXを進めるためには、経営者の力や従業員との協力、サイバーセキュリティリスクへの対応が欠かせません。

      ガバナンスシステムの項目では、経営者自らが発信しているかを確認する「情報発信」、経営者のリーダーシップのもとで自社の現状を把握できているかを確認する「経営者の課題把握」、経済産業省発表のサイバーセキュリティ経営ガイドラインに基づいて対策を行い、定期的に監査等を行なっているかを確認する「サイバーセキュリティ対策」が設けられています。

      上記の内容を確認した上で申請を行うといいでしょう。

      2. 「認定申請書」などをダウンロードし記入

      次に、IPAのDX認定制度のホームページから「認定申請書」「申請チェックシート」をダウンロードし、具体的な取り組みを記入していきます。さらにDX戦略などの補足資料がある場合は、それらも提出します。

      3.IPAのホームページより申請

      記入を終えたあとはDX認定制度のホームページに提出書類をアップロードし、申請します。DXポータルを利用する際に求められるID取得が身分確認に相当するため、押印は必要ありません。情報が更新されている場合もあるため、最新版の書類を使用するよう気をつけましょう。

      まとめ

      幅広い企業のDXを後押しするために設けられた、DX認定制度。デジタル技術の活用はハードルが高いと立ち止まるのではなく、自社に何ができるのかを考えてみることが大切です。DXへと舵を切るために、まずは、DX認定制度の申請準備を進めてみてはいかがでしょうか。

      働き方改革ラボでは、YES/NO形式の質問に答えるだけで、会社に必要な取り組みがわかるオリジナル資料の無料ダウンロードを実施しています。自社に必要な取り組みは何か、診断チャートで確認してみませんか?まずは資料の無料ダウンロードをお試しください。

      記事執筆

      働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

      「働き方改革ラボ」は、”働き方改革”が他人ゴトから自分ゴトになるきっかけ『!』を発信するメディアサイトです。
      「働き方改革って、こうだったんだ!」「こんな働き方、いいかも!」
      そんなきっかけ『!』になるコンテンツを提供してまいります。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

記事タイトルとURLをコピーしました!

https://www.ricoh.co.jp/magazines/workstyle/column/dx-nintei/

業種別で探す

テーマ別で探す

お問い合わせ

働き方改革ラボに関連するご質問・お問い合わせは
こちらから受け付けています。お気軽にご相談ください。

お問い合わせ