DXとは|BPRとの違いやメリット、導入事例をわかりやすく解説

From: 働き方改革ラボ

2022年10月20日 07:00

この記事に書いてあること

デジタル技術を使って製品や組織を変革する「DX」がビジネスの世界で浸透してきています。しかし、BPRと同一視されるケースや、DX化に関する用語の意味が混同しているケースが多く見受けられるのも事実です。

そこで本記事では、DXの意味やメリット、BPRとの違いを解説します。あわせてDX化のために必要なステップや事例も紹介するので、ぜひご参照ください。

※2021年3月に公開した記事を更新しました

DXとは|わかりやすく解説

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略名であるDXは、デジタル技術を用いてサービスや企業に変革を起こすことを意味します。

経済産業省の『DX推進ガイドライン』によると、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

DXの具体例としては、業務のあり方を根本から見直し、基幹システムを刷新することで取引先とのやり取りを変革するなど、企業のビジネスモデルを変えることが挙げられます。

DX化のメリット

では、DXによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

1. 業務が効率化される

DX化することの一番のメリットは、業務の効率化を図れることです。たとえば、経費精算など従来は手動で行っていた業務を自動化することでミスを防げる、クラウドストレージでファイルを一元管理することで必要な資料をすぐに見つけられるなどが挙げられます。

また、DXを取り入れるためには、ただ部分的に対策を練るのではなく、業務プロセスそのものを見直す必要があります。見直す際に、自動化できるところ、効率化を図れるところなどを洗い出すことで従業員の意識も変わっていき、生産性が向上するのもメリットといえるでしょう。

2. 働き方改革が実現できる

DX化によって業務の効率化を図ることは、働き方改革の実現にもつながります。

デジタル技術を使ってテレワークを実践する、手間や時間のかかる業務は自動化を取り入れて長時間労働を解消するなど、労働環境を整えることは働き方改革の実現のためには欠かせません。企業に今求められている働き方改革を押し進めるためにも、DX化は必要です。

3. 新たなサービス開発につながる

DX化することで、さまざまな情報を収集・分析しやすくなり、新たなサービスの開発やビジネスの創出につながることもあります。たとえば、これまでは店舗のみで経営していたものを、デジタル技術によって顧客の需要を分析し、オンラインショップを構えることで収益を増やすことなどが挙げられます。

消費者の行動を分析した上で需要を予測し、適切な量の在庫を管理することで、コストの削減にも期待できるなど、DX化による恩恵は計り知れません。

DXとBPRの違い

DXと同一のものとして誤解されがちなのが、BPRです。ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)の略であるBPRとは、既存の組織のあり方を見直し、プロセスの視点から、業務フローや情報システムを再構築する、企業改革の代表的手法のひとつです。

改革を行うという点では共通するDXとBPR。では、このふたつの違いはどこにあるのでしょうか。

DXはデジタルの力でビジネスモデルや組織そのものを変革することを意味しますが、一方でBPRは、企業内の各プロセスを再構築することによって効率化を図ることを指します。つまり、DXのようにビジネスモデルを変えることはせず、プロセスの改革によって企業のパフォーマンスを改善することをBPRと呼ぶのです。

ITツールの活用をDXと呼ぶこともありますが、全体の変革が伴わないデジタル活用はDXとは言い切れません。オンライン商談ツールや勤怠システム、チャットツールの活用や、経理システムの導入によるペーパーレス化などの個別の取り組みは、DXではなく、BPR によってプロセスを見直すための手法のひとつと言えます。

BPRが広まったきっかけ

BPRはマサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェームス・チャンピーの共著『リエンジニアリング革命』で提唱されて、注目を集めました。

バブル崩壊後に改革の必要を迫られていた日本企業でもBPRは話題となりましたが、BPRに則って組織改革を進めた企業のなかには、抜本的な改革は行われず、BPRの名目において人員削減が行われたケースもありました。

現在においては、働き方改革の観点から、生産性向上や顧客満足度アップを実現する取り組みとして、BPRの必要性が注目されています。

BPRに必要な5ステップ

BPRを実現するためには、検討、分析、設計、実施、評価の5ステップが必要です。BPRは工程が多い分、目的の共有から実行、評価まで、従業員が協力しあって進めていく必要があります。

BPRに必要なステップ

企業にとってDXが求められている理由

それでは、話をDXに戻しましょう。先述したように、全体の変革が伴わないデジタル活用はDXではありません。なぜ今、企業にとってDXが求められているのでしょうか。

「2025年の崖」対策

第一の理由として、経済産業省が指摘する「2025年の崖」への迅速な対策が求められていることが挙げられます。

「2025年の崖」とは|経済産業省のDXレポート

「2025年の崖」は、経済産業省がDX推進のために2018年に発表した『DXレポート』で記載された言葉です。現在、DXレポートは2020年12月の『DXレポート 2』、2021年8月の『DXレポート 2.1』、2022年7月の『DXレポート 2.2』を含めた4種類が公表されています。

これらのDXレポートでは、多くの企業がDX化を進めているものの、基幹システムの維持にコストがかかってしまい、現状としては“変革”までに至っていないことが指摘されています。その理由として、「老朽化」や「複雑化」、「基幹システムのブラックボックス化」などが挙げられています。

さらに、2025年にはIT人材不足が拡大したり、SAP ERPのサポート終了でシステムの見直しが必要になったりと、企業そのものの改変を目指すタイミングが迫っています。「2025年の崖」を乗り越えられなかった場合、2025年から2030年までの間には最大でも年間12兆円もの経済損失がかかるとも言われており、早急な対策が求められているのです。

「2025年の崖」対策でかかるコスト

ユーザー企業におけるデジタル投資の割合

『DXレポート2.2』によると、DX推進の取り組み状況は上昇していますが、その一方で、IT技術の投資の内訳は2018年のDXレポート公表時とあまり変わっていません。相変わらず既存ビジネスの維持や運営=ラン・ザ・ビジネス予算が約8割を占めており、サービスの創造・革新のための予算=バリューアップ予算は増えていません。つまり、デジタル化を取り入れようとする意思はあるものの、“変革“までには至れていないということです。

実際に「2025年の崖」の対策をする場合、数百万?数億円かかると言われています。基幹システムの維持にコストがかかっているなかで、それだけの予算を確保するのが難しいのが現状と言えます。

「2025年の崖」を越えるためのDX実現シナリオも

しかし経済産業省は、企業が適切に現状を把握した上で「2025年の崖」を越えるためのDX実現シナリオも発表しています。これは『DXレポート』のなかに記載された、DX実現のための施策や結果をまとめたものです。

具体的には、2020年中に企業の現状を把握しDX推進に取り組み始めること、そして2025年までの5年間をシステム刷新のための準備期間にしつつ、経営面・人材面でもシフトチェンジしていく必要があることなどが挙げられていますが、先述したようにDX実現シナリオ通りに進んでいるとは言い難い状況が続いています。企業は危機感を持ってDX化に取り組まなければなりません。

経済産業省によるDXの推進

経済産業省は、DX化のために動いている経営陣に向けた『DX推進ガイドライン』を発表しています。2018年12月発表の『DX推進ガイドライン』は、企業がDX化をするにあたって、どのような手順を踏めばいいのかを示したものです。DXレポートの3ヶ月後に発表されたことから、「2025年の崖」に向けて対策すべく、国が企業のDX化を促していることが伺えます。

DXの推進ガイドラインのポイント

『DX推進ガイドライン』では、企業がDXを推進するにあたって経営者が押さえるべきポイントを12個の項目に分けて紹介しています。

DX推進ガイドラインの構成

DX推進にあたってのマインドセットのほか、DX化を実現するための基盤となるITシステムの構築の体制・仕組みから、実行プロセスまでが並んでいます。『DX推進ガイドライン』では、手順はもちろん、失敗ケースや先行事例が挙げられており、自社の課題や目標と照らし合わせながら進めるようになっています。

中小企業のDX化向けの支援も

さらに、国や自治体は、DX投資促進税制やIT導入補助金、事業再構築補助金など、さまざまな支援を用意しています。補助対象は、条件によりますが中小企業と小規模事業者がほとんどです。これらは、予算を割きづらい中小企業がDXを進めやすいように用意されているので、積極的に活用するとよいでしょう。

企業がDX化を実現するために必要な3ステップ

次に、企業がDX化をスムーズに実現するために必要なステップについて見ていきましょう。

DX成功に必要なステップ

これは『DXレポート 2』で“成功パターンの策定”とされている流れですが、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの順番に行う必要はなく、それぞれどのようなものなのか認識した上で、取り組めるところからはじめることが大切です。ただ、DXに馴染みのない企業はデジタイゼーションから取り組むとスムーズに進められるでしょう。

1. デジタイゼーション

『DXレポート2』では、デジタイゼーション(Digitization)は、「アナログ・物理データのデジタルデータ化」と定義されています。デジタイゼーションは、すでにあるアナログな製品やサービスを電子化することで、具体的には紙ベースや人手で行っていた業務やデジタルでなかった製品をデジタル化することが挙げられます。

2. デジタライゼーション

デジタライゼーション(Digitalization)は、「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と定義されています。デジタイゼーションと近しい意味を持っていますが、デジタイゼーションよりも広くデジタル化を導入するフェーズと考えるといいでしょう。

具体的には、デジタル製品に新たなデジタルサービスを追加したり、業務プロセスをすべてデジタル化した上で新しいビジネスモデルを完成させたりすることが挙げられます。

3. デジタルトランスフォーメーション(DX)

そして、本題のデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)です。これは「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」、「“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と『DXレポート 2』で定義されている通り、特定の業務でなく全体の業務プロセスをデジタル化した上で、企業に変革を起こすことを意味します。

具体例としては、ビジネスモデル全体のデジタル化や、デジタル製品を基盤とするデジタルサービスの創出などが挙げられます。

先述した支援金・補助金なども活用しながら、成功パターンを確認し、取り入れられるところから進めることが大切です。

DXを進める企業事例

では、実際に企業ではDXはどのように実行されているのでしょうか。具体策の参考になる企業事例をご紹介します。

IT技術とデータ分析で新たなビジネスモデルを創出

ものづくり現場で活用される、工場用副資材の専門商社・トラスコ中山株式会社。サプライチェーンの中流にいる問屋としてDXを進め、サプライチェーン全体の商習慣を改革し利便性を高めるため、基幹システムを刷新しました。

取引先とのデータ連携手段を多種用意し、在庫・物流などを担うサービスプラットフォームを取引先が活用できる環境を整備。そのほかにも、IT技術とデータ分析を利用したツール調達サービス「MROストッカー」を創出しました。結果、必要なときに必要な分だけ商品を利用できるビジネスモデルを実現することができました。

農業プロセスを一元管理し、生産性が向上

眼科の医療機器などを扱う光学機器メーカー・株式会社トプコンでは、独自の技術とDXソリューションによって、トプコンが携わる業界における社会的課題の解決に取り組んでいます。

眼科専門医以外でも使えるフルオート検査機器とICTを活用して、眼科の遠隔診断やAI自動診断を可能にする仕組みを構築しました。また、農機の自動運転システムやレーザー式生育センサーを活用し、農業プロセスの一元管理による生産性向上も実現することに成功しています。

建設業界においても、建機を自動制御できるICT自動化施工システムを開発し工事のワークフローを効率化するなど、「医・食・住」の分野でDXを進めています。

既存の業務システムを8割減。新規開発の比率を高める

食品メーカーの日清食品ホールディングス株式会社は、生産性200%を目指してDXを推進しています。年間最大10億食の生産能力を有する関西工場では、省人化/自動化を徹底した次世代型スマートファクトリーを実現。生産性を追求しながらも、自動監視管理室で全製造工程をモニタリングすることで不良品発生率を100万食に1つ以下にするなど、安全性も向上しています。

また、「レガシーシステム終了プロジェクト」により、既存の業務システムを8割も削減。バリューアップ(新規開発)を担うITの比率を高め、投資効率や生産性を大幅に向上することに成功しています。

まとめ

DXは、デジタルの力でビジネスモデル自体に変革を起こすことを意味します。BPRとの違いを理解した上で、DXレポートの内容や企業事例を確認し、自社の業務上の課題へアプローチしてみてはいかがでしょうか。

記事執筆

働き方改革ラボ 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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